ATH-T44

音質
 高音よりのドンシャリ。低域は厚みはそれほどないものの、量はかなり出る。締りのない、曇った低域。中域はやや埋もれ気味だが、ATH-T2ほどではない。高域は細くて硬い質感で、量も十分だがシャリつく。
 分解能は価格なり、音場感は価格の割にはなかなか良い。原音忠実性は悪いように感じるが、それでも価格なりではあるか。エッジはきつく聴き疲れしやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはすべていまいち。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。ノリが良いわけでも繊細なわけでもなく、ただ何となく鳴らしている印象。響きは適度からやや豊かでこもり感が気になるが、ATH-T2よりはかなり良い。
 弦楽器は繊細さが足りない。金管楽器は価格を考えれば悪くない表現をしてくれるが、力強さには欠ける。打ち込み系の音の表現は全体的には悪くないが、低域のぼやけ具合が気になる。
 欠点は曇りが気になる点と、どことなく魅力に欠ける点。

装着感
 普通。側圧は普通からやや弱め。重量は軽めでずれにくい。フリーアジャストで、ヘッドバンドが剥き出しのプラスチックのため、装着するとき頭頂部がやや痛い。その上、一度はずすとヘッドバンドの上下の調節が元の位置に戻る機構になっているため、次回装着時に再び痛い。ただし、ATH-T2と比べると多少は楽。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズ、上下左右に角度調節ができる。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は普通。
 作りは価格なりだが、見た目はそれほど安っぽくない。むしろ価格のわりにはかなり良いのではないか。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約2mm、合流後は幅約4.5mm・厚さ約2mm、硬さは普通からやや硬め、特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周102mm×88mm、内周54mm×34mm、深さ14mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-G100
AH-G100はややかまぼこ、ATH-T44はややドンシャリ。低域は全体的にATH-T44の方が出る。曇った感じのする量感は多少似ている。高域はATH-T44の方が細くて硬い。分解能、音場感ともにATH-T44の方が一段上。どちらも原音忠実とは程遠い。ATH-T44の方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはAH-G100の方が上、音の鮮やかさ、厚みはATH-T44の方が上。温かみは低域が強い分ATH-T44の方がやや上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。ATH-T44の方がノリが良い。響きはATH-T44の方が豊か。ATH-T44の方がこもり感が気になるものの、粗がなくしかも力強い鳴らし方。一方AH-G100はバランスが良い。弦楽器はATH-T44の方が滑らかで心地よい。金管楽器はどちらも意外と悪くないが、ATH-T44の方がやや鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらも悪くないが、低域が出る分ATH-T44の方が大抵の場合良いようだ。得意分野はAH-G100はポップス、ATH-T44はロック。使い分けるなら、こもり感が欠点のATH-T44と音の粗さが欠点のAH-G100の、どちらを妥協するかだろう。基本的にはATH-T44の方が良いように思う。

ATH-SQ5
ATH-SQ5はややドンシャリ、ATH-T44は高音よりのドンシャリ。低域はATH-SQ5の方が重心が低く弾力がある。ATH-T44の方が薄く曇っている。中域はATH-SQ5の方が低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。高域はATH-T44の方が金属的で鋭く、目立つ。分解能はATH-SQ5の方がやや上。音場感はATH-T44の方がやや広い。原音忠実性はATH-SQ5の方が上。ATH-T44の方が一聴して違和感がある。ATH-T44の方がエッジがきつい上にこもり感が酷く聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-SQ5の方が上。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-SQ5の方がやや上。ATH-T44の方がある種ダイナミックな鳴らし方。ATH-SQ5の方が繊細で、ニュートラル。響きはほぼ同等レベル。弦楽器はATH-SQ5の方が繊細かつ心地よい。金管楽器は好みが分かれるところだろう。ATH-SQ5の方が癖がないが、ATH-T44の方が金属的で良いと感じる面もある。打ち込み系の音の表現はATH-SQ5の方がうまい。ATH-T44は低域の質感が致命的に合わない。ただ、その点を除けばATH-T44の方が若干良いかもしれない。使い分けるなら、基本的にはATH-SQ5、音場感やダイナミックな鳴らし方が欲しいならATH-T44。

ATH-T2
基本的にかなり似た音。ATH-T2は低音より、ATH-T44はドンシャリ。低域はどちらもaudio-technicaらしい薄い音だが、どちらかと言えば量も厚みもATH-T2の方がある。高域はATH-T44の方が量が多いが、音の高さはほぼ同じかATH-T2の方が高いように感じる。ATH-T2もドンシャリだが、低域のあまりの曇りのために低音よりと錯覚していたのかもしれない。分解能、音場感、原音忠実性すべてATH-T44の方が上。どちらもエッジがきつく聴き疲れする。どちらも曇っているが、ATH-T44の方がまだマシ。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはATH-T44の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。ATH-T44の方がノリが良くしかも繊細。響きはどちらも適度。ATH-T44の方が力強く、音がストレートに耳に届く印象。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてATH-T44の方がうまい。得意分野はどちらもロック。ほとんど何を聴くにしてもATH-T44の方が良いように感じる。

HP830
どちらもややドンシャリ。低域は量はATH-T44の方がかなり出るのだが、HP830の方が一段低い音を鳴らすし、厚みと弾力があるように感じる。高域は量はATH-T44の方が出る上にシャリつくが、HP830の方がやや高い音を鳴らしてくれる上にシャリつかない。分解能、音場感、原音忠実性すべてHP830の方が上。ATH-T44の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてHP830の方が上。HP830の方がノリが良くしかも繊細。響きはどちらも適度。ATH-T44の方が曇りやこもり感が気になる。HP830の方が明るくテンションが高い。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてHP830の方がうまい。得意分野はATH-T44がロック、HP830はポップス。ほとんど何を聴くにしてもHP830の方が良いように感じる。

HPS3000
ATH-T44はドンシャリ、HPS3000は低音より。低域は量ほぼ同量だが、厚みはHPS3000の方がある。高域は量はATH-T44の方がやや出るが、HPS3000の方がやや高い音を鳴らす。してみると、HPS3000もそれほど低音よりではないのかもしれない。分解能、原音忠実性はHPS3000の方がやや上。音場感はATH-T44の方がやや上。ATH-T44の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはHPS3000の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。HPS3000の方が繊細。ATH-T44の方が勢いがあり、バランス無視のドンシャリ加減がマッチするソースも、ポップスやロックには多い。無難さを求めるならHPS3000だろう。響きはどちらも適度。ATH-T44の方が曇りやこもり感が気になる。弦楽器、金管楽器はHPS3000の方がややうまい。打ち込み系の音の表現はATH-T44の方がうまいようにも感じるが、曇った感じとこもり感が致命的。得意分野はATH-T44がロック、HPS3000はポップス。ほとんど何を聴くにしてもHPS3000の方が良いように感じるが、曇りが気にならない人はポップスやロックはATH-T44、クラシックやジャズはHPS3000と使い分けはできるかもしれない。ただし、どちらもクラシックには向かない機種であることは確か。

SE-M390
ATH-T44は高音よりのドンシャリ、SE-M390は低音よりのドンシャリ。低域はSE-M390の方が重心が低く、量もやや多い。中域はSE-M390の方が癖がない。高域はSE-M390の方が高く鋭い音を鳴らす。分解能はSE-M390の方がやや上。音場感はSE-M390の方が耳の近くで音を鳴らす感じが気になるものの、明確さはほぼ同レベル。原音忠実性は微妙。どちらも周波数特性に癖がありすぎる。ただ、原音の粗や生っぽさはSE-M390の方が感じられる。SE-M390の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-M390の方が上。ATH-T44は薄く曇っているように感じる。厚みはSE-M390の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSE-M390の方が上。SE-M390の方がノリが良い。響きはSE-M390の方が豊か。弦楽器はSE-M390の方がうまい。ATH-T44は違和感を感じやすいし、繊細さ・心地よさ・生楽器らしさすべて足りない。金管楽器はSE-M390の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はSE-M390の方が明るく楽しめる。使い分けるなら、基本的にはSE-M390、SE-M390では高域が気になる場合や聴き疲れが気になる場合はATH-T44。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生






※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 18Hz〜23kHz 104dB 40Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
190g 40mm 3m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 3 3 3 3 2 高(低) 3500円

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公開日:2005.7.3

※生産終了