K240monitor

音質
 やや高音より。低域は厚みも量も程々で、柔らかい感触。中域は低域に埋もれたりしないし、変な癖もない。高域は繊細で痛くない鳴らし方ながら、しっかり聴こえてくる。
 分解能、音場感、原音忠実性すべて価格以上のものを持っている。非常に原音忠実だが、原音の粗はあまり感じない。モニター用であるのにエッジはそれほどきつくないが、線が細いのでソースによってはやや聴き疲れする人もいるかもしれない。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてそれなり。だが、どれ一つとってみても大きな欠点がないし、価格を考えれば良いと言ってよいレベル。どちらかというと余分な味付けをしていないために過剰な明瞭さや温かみがないだけに思える。非常に繊細。線が細いだけでなく、適度な柔らかさを持っており、とてもモニター用とは思えない。響きは適度。音の圧力はあまり感じることが出来ないが、そのぶん透明感や適度に線の細い音が好印象。全体的にはAKGらしい上品な音作り。K501では低域が不足に感じる人やK271studioでは曇っているように感じる人には最適だろう。
 弦楽器は繊細さ、心地よさともに十分だが、ややあっさりした表現。金管楽器は芯の通った感じや力強さには欠けるものの、なかなか鮮やか。打ち込み系の音の表現はあまりうまくない。音が細すぎるし、低域の締まりや厚みに欠ける。
 モニター用にも音楽鑑賞用にも使える素晴らしいヘッドホン。特にクラシックをメインで聴く人や、モニター用としても音楽鑑賞用としても使いたい人には非常にコストパフォーマンスが良いと思われる。

装着感
 良好。側圧は普通からやや弱めで、比較的軽量でずれにくい。ヘッドバンドはK271studioとほぼ同じだが、圧力はやや弱め。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズだが、内側が多少耳に当たるため耳の大きい人は気になると思われる。材質はレザータイプの人工皮革で、感触は悪くないがやや蒸れる。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。
 作りはなかなか良い。デザインは金色が気にならない人にはかなり良いと思われる。
 おそらく世界で最も使われている(いた)であろう、スタジオモニター用ヘッドホン。インピーダンス600Ω、感度88dBと非常に音量がとりづらい。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約3mm。硬さは普通で扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周104mm×104mm、内周58mm×58mm、深さ16mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
不定期コラム『第36回 周波数特性のグラフと実際』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-AD700
どちらもやや高音より。低域はK240monitorの方がやや低い音で量も多い。中域はATH-AD700の方が低域に邪魔されずに聴こえてくるが、K240monitorにしても十分聴こえてくる。高域はATH-AD700の方が金属的。この2機種を比べた場合、ATH-AD700の方が高音よりと言える。分解能はほぼ互角。音場感はATH-AD700の方が広い。原音忠実性はK240monitorの方が上。ATH-AD700の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-AD700の方が上。厚みはK240monitorの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-AD700の方がやや上。どちらも繊細な傾向だが、K240monitorの方がおとなしくモニター的。響きはどちらも適度だが、ATH-AD700の方がやや豊か。ATH-AD700の方が全体的に明るい音調な上、艶のある音を鳴らす。弦楽器は基本的にはK240monitorの方が良いが、色付けされていて艶が乗っても良いならATH-AD700の方が楽しめる面もある。金管楽器はATH-AD700の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもあまりうまくないが、明るい分ATH-AD700の方が良いことが多いようだ。ただし線の細さを嫌うならK240monitorの方が良いだろう。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、明るさや華やかさを求めるならATH-AD700、原音忠実性やおとなしさを求めるならK240monitor。

K121studio
K121studioはやや低音より、K240monitorはやや高音より。低域はK121studioの方がやや量が多い。ぼやけたり曇ったりする質。K240monitorの方が癖がない。重心の低さはほぼ同レベル。中域はK240monitorの方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。ソースによってはK121studioの方が若干不要な芯が通っている感じが気になることがある。高域はK240monitorの方が若干量が多い。線の細い質。分解能はK240monitorの方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はK240monitorの方がやや広く明確。K121studioの方が近くで音を鳴らす感じで頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はK240monitorの方が若干上。一聴して違和感がない。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはほぼ同レベル。エッジのきつさは大差ないが、K121studioの方が癖や頭内定位で疲れる面がある。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さはK240monitorの方がやや上、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはK121studioの方が若干ある。温かみは低域の量が多い分K121studioの方が感じられる面はあるが、それを除けばほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベル。K121studioの方がややスモーキー。K240monitorの方が繊細かつ上品。K121studioの方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはK121studioの方がやや豊か。弦楽器はK240monitorの方がやや繊細で、音色も自然。金管楽器は、K121studioの方が若干力強い、K240monitorの方が若干明るい。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はK121studioの方が若干上、切れはK240monitorの方が若干上。使い分けるなら、基本的にはK240monitor、K240monitorでは低域の量が足りないとか繊細すぎるという不満があるならK121studio。

K242HD
K240monitorはやや高音より、K242HDは低音よりのドンシャリ。低域はK242HDの方がやや量が多く、重心も低い。中域はK240monitorの方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はK242HDの方がやや金属的で高い音を鳴らす。この2機種を比べると、K242HDの方がドンシャリと言える。分解能はほぼ同レベル。音の分離はK240monitorの方が若干良く、一つ一つの音の微細な描写はK242HDの方が若干良い。音場感はK240monitorの方がやや広く、見晴らしが良い。原音忠実性はK240monitorの方がやや上。K242HDの方が音楽鑑賞向きの味付けがされている感じ。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いにはあまり差はない。エッジはK242HDの方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さは低域が少ない分K240monitorの方がやや上、音の鮮やかさはK242HDの方がやや上。厚みはK242HDの方がややある。温かみはK242HDの方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは大差ないが、ヴォーカルの表現力全体を見るとK242HDの方がやや上。ただし、K240monitorと比べるとやや擦れが気になるという面もある。K242HDの方がノリが良い。低域の量が多いだけでなく、鳴らし方そのものがダイナミックで迫力がある。響きはK242HDの方がやや豊か。K240monitorの方が軽くてあっさりした音で、どこか古臭い地味さがある。K240monitorの方がAKGらしい音。弦楽器はK242HDの方が心地よく聴けるが、モニター的な味付けのなさを好むならK240monitorの方が良い。金管楽器はK242HDの方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はK240monitorの方がややうまい。音の質感の相性で勝っている。ただし、低域の量感やダイナミックな鳴らし方という点ではK242HDの方が良い。使い分けるなら、低音控え目であっさりした音を求めるならK240monitor、低音がしっかり出て温かみのある音を求めるならK242HD。

K271studio
全体的に非常に良く似た音。どちらもやや高音よりながらかなりフラット。K240monitorの方が若干高音よりか。低域はK271studioの方が若干出るように感じるが、質・量ともにほぼ互角。中域〜高域は非常に似ている。分解能、原音忠実性はK240monitorの方が若干上か。音場感はほぼ互角。どちらもそれほど聴き疲れしないが、どちらかと言えばK240monitorの方が線が細いため疲れる。明瞭さはK240monitorの方がやや上、音の鮮やかさはほぼ互角、厚みは若干K271studioの方が上。温かみはK271studioの方が若干上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらも繊細だが、K271studioの方がやや音がストレートでノリが良い。響きはK271studioの方が若干豊か。弦楽器はK271studioの方が心地よいように感じるが、繊細さを求めるならK240monitorの方が上。金管楽器はどちらもかなり高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもあまりうまくないが、どちらかと言えばK271studioの方がうまい。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら音質よりも密閉型とセミオープンの違いや装着感だろう。個人的にはK240monitorの方が装着感が良いように感じる。

K612PRO
K240monitorはやや高音より、K612PROはかなりフラット。低域はK612PROの方が若干量が多い。K240monitorの方が薄く曇ったような質。重心はK612PROの方がやや低い。中域はK612PROの方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はほぼ同量。K612PROの方がやや線の細い質。分解能はK612PROの方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろやや勝っている。音場感はK612PROの方がやや広く明確。K240monitorの方が近くで音を鳴らす感じ。原音忠実性はK612PROの方がやや上。周波数特性上の癖のなさで若干勝っている。原音の粗や生っぽさはK612PROの方が若干感じられる。エッジはK612PROの方が若干きつく聴き疲れしやすい。高域は大差ない痛さ、ヴォーカルのサ行はK612PROの方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはK612PROの方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみは薄く曇っている分K240monitorの方が感じられる面もあるが、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではK612PROの方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはK612PROの方が若干感じられる。K240monitorの方がややスモーキー、K612PROの方が擦れやリップノイズを出してくれる。K612PROの方がノリが良くかつ繊細。メリハリがある。響きはK240monitorの方が若干豊か。弦楽器は、K240monitorの方が若干心地よい、K612PROの方が若干生楽器らしさが感じられる。金管楽器はK612PROの方が若干鮮やか。打ち込み系の音の表現はK612PROの方が若干うまい。音の質感の相性は大差ないが、切れで若干勝っている。使い分けるなら、音の近さや聴き疲れのなさを求めるならK240monitor、音の遠さやメリハリを求めるならK612PRO。

MDR-CD900ST
どちらもかなりフラットだが、K240monitorの方がややかまぼこか。低域は密閉型特有のこもり感の影響もあるのだろうがMDR-CD900STの方が強いように感じる。中域〜高域はほぼ同量だが、超高域はMDR-CD900STの方が出るし、鋭く突き刺さってくる。分解能、原音忠実性はMDR-CD900STの方がやや上。音場感はK240monitorの方がやや良い。MDR-CD900STの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みや密度はMDR-CD900STの方がやや上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはK240monitorの方が上。MDR-CD900STの方がノリが良い。響きはMDR-CD900STの方が豊か。MDR-CD900STはこもり感が気になるが、K240monitorはそんなことはない。MDR-CD900STの方がかなりスピード感のある鳴らし方。弦楽器はK240monitorの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はどちらもなかなか鮮やかだが、MDR-CD900STの方がやや音が太く圧力がある。打ち込み系の音の表現はMDR-CD900STの方がうまい。使い分けるなら、まずは聴き疲れの程度だろう。MDR-CD900STは音楽鑑賞には聴き疲れしすぎる。聴き疲れの点を除けば、クラシックはK240monitor、それ以外はMDR-CD900STか。

T50RP
K240monitorはやや高音より。T50RPはややかまぼこ。低域はT50RPの方が全体的に出る印象だが、どちらも厚みは薄い。高域はK240monitorの方がかなり細く高い。分解能、原音忠実性はK240monitorの方が上。音場感はT50RPの方が上。基本的にはK240monitorの方が線が細いのだが、何故かT50RPの方が聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはK240monitorの方がかなり上。厚みはどちらも薄めで、ほぼ互角。温かみはT50RPの方がやや上。ヴォーカルの艶っぽさはK240monitorの方がやや上。響きはT50RPの方がやや豊か。T50RPはかなり曇りが気になるが、K240monitorはそんなことはない。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてK240monitorの方がうまい。ほとんど何を聴くにしてもK240monitorの方が良いように思うが、どうしても広い音場が欲しいときや、独特の曇りがマッチするソースではT50RPの方が良いこともある。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索
第6回 交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」/マーラー
第22回 ブランデンブルク協奏曲/バッハ
第62回 左手のためのピアノ協奏曲/ラヴェル
第81回 牧神の午後への前奏曲/ドビュッシー

曲別HP探索2
第7回 ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49/メンデルスゾーン
第18回 Made In Hongkong/Fennesz「Endless Summer」より
第49回 クラリネット五重奏曲/モーツァルト


※生産終了。後継機はK240 Studio。その後K240 MKII、K242HD。
   










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 半開放 15Hz〜20kHz 88dB 600Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
240g - 3m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 2 2 4 1 均(高) 11500円
※生産終了。後継機はK240 Studio。その後K240 MKII、K242HD。

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公開日:2005.7.25