第62回 左手のためのピアノ協奏曲/ラヴェル

 今回は多くのピアノ作品を残しているラヴェルのピアノ協奏曲です。この曲は、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト・ヴィトゲンシュタインの依頼を受けて作曲されたもので、現在でも多くのピアニストによって演奏されています。
 今回とりあげたCDの指揮はクリュイタンス、演奏はフランソワ(ピアノ)、パリ音楽院管弦楽団、録音は1959年です。
 ヘッドホンとしては、ピアノの速くダイナミックな演奏がしっかり聴こえるものが良いでしょう。また、古い録音なのでノイズが目立たない機種が良いでしょう。


・1台目 K240monitor(AKG)
 今回の曲を聴いて改めて感じたのは、ノイズの多い古い録音はヘッドホンとの相性が良くない、ということです。スピーカーであればあまり気にならないレベルでも、ヘッドホンでははっきりと耳障りに聴こえてしまうことが多いです。1959年の録音であることを考えると今回のCDが特別悪いとは思いませんが、使用するヘッドホンによっては演奏を聴いているのかノイズを聴いているのか分からないレベルです。多くのヘッドホンは、正直ノイズで使用に堪えないレベルでした。
 K240monitorは今回のCDに限らずノイズが気にならないという意味で非常に優れた機種です。他にもSE-900D、RH-300、TR-HP03B、MUSIC SERIES ONE等で聴いてみましたが、K240monitorと比べるとノイズの段階ではじかれてしまう感じでした。
 K240monitorは、ノイズが少ないという点以外にも、演奏の気品のようなものがしっかり出る点が良いです。
 不満点は、もう少し明瞭さやダイナミックさが欲しい点です。とは言え、ノイズを抑えつつそれを求めるのは難しいでしょう。

・2台目 MDR-SA5000(SONY)
 ノイズが目立たないものを探しつつ明瞭さを求めた結果これになりました。
 まず、古い録音であるが故の曇った感じが払拭されます。ピアノのタッチがはっきりと聴き取れるようになり、録音状態が一気に良くなったかのように感じます。年代で言えば、1950年代から1980年代になったくらいの違いがあります。MDR-SA5000は新しい録音では明瞭なだけで面白みに欠けたりしますが、今回のような古い録音ではその明瞭さが良い方向に働くようです。
 ノイズはK240monitorよりは多少目立ちますが、比較的目立たない方だと思います。
 不満点は、もう少し低域が欲しい点です。

・3台目 K701(AKG)
 2台目同様、ノイズが目立たないものを探しながらの作業になりました。HD650やDT880が良いかと思ったのですが、意外にノイズが気になる上、MDR-SA5000の後ではどうにも明瞭さに欠けるように感じました。更に色々試した結果、ノイズの少なさ、明瞭さ、低域の量感等のバランスで、K701が最も良いという結論に至りました。
 明瞭さという点ではMDR-SA5000に及びませんが、それでもかなり明瞭な部類には入ると思いますし、この演奏の気品を非常に良く出してくれます。


 今回はいつもと少し違って、個人的にはノイズの少なさが重要でした。そのため、選べるヘッドホンがかなり限られてしまった印象があります。そういう意味でも、録音状態は大事だと再確認しました。
 まとめると、ノイズの少なさを最優先するならK240monitor、明瞭さを重視するならMDR-SA5000、総合的なバランスの良さを重視するならK701といった感じです。
 好みに合わせて、今回の内容を参考に選んでみてください。


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