P5

音質
 かなりフラットだが、ローエンドが落ちているという意味では若干高音より、それでいて薄く曇っていて明るさに欠ける面があるという意味では若干低音よりに感じられることもある。低域は中域と同量から若干少なめ。中低域からローエンドに向かってなだらかに減少している珍しい質。特に締まっているわけでもぼやけているわけでもないが、やや薄く曇ったような質に感じられることはある。量感や弾力には欠ける反面、ローエンドが弱いおかげもあってか制動はそれなりに良い印象。重心の低さは普通。中低域はしっかり出る。中域は基本的には低域に邪魔されず普通に聴こえてくるが、ソースによってはやや低域の曇りに覆われる。高域は中域と同量から若干多め。やや線が太い。中域から高域にかけて幅広くざらつく感じ。
 分解能は価格の割にやや悪い。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろそれなり。音場感は、広さは狭いが明確さはそれなり。耳のせサイズであることを考えると悪くはないが、価格を考えるともう少し何とかして欲しかったところ。原音忠実性はそれなり。一聴して大きな違和感はないが、余計な付帯音が多い点が気になる。原音の粗や生っぽさは必要量といった感じ。エッジのきつさは普通で、聴き疲れは特に問題ないレベル。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ若干粗っぽく痛いと感じることはあるが、特に酷くはない。
 明瞭さはいまいちと評価すべきかそれなりと評価すべきか迷うところ。音の鮮やかさはそれなり。厚みは普通。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。ヴォーカルはどちらかと言うとスモーキーで、明るさや透明感を求めるなら合わないだろう。音色としてはどんな声でも大きな癖がなくそれなりに聴ける点は良いが、質感としてはややざらつく点が気になることがある。どちらかと言うとおとなしい音。切れやスピード感、低域に基づく迫力や力強さ、いずれも特に悪くはない。ただし、若干メリハリに欠け音がするすると流れていってしまうような印象を受けることがある。響きは適度からやや豊か、こもり感は多少気になる。こもり感よりは曇りの方が気になることが多い印象。
 弦楽器は繊細さにしろ心地よさにしろ多少不満はあるが、音色はそれなりに自然。チェロやコントラバスを心地よく聴きたい場合にもヴァイオリンを瑞々しく聴きたい場合にも特に良くはないが、同じくらい向いている。金管楽器は癖のない範囲内で鮮やか。打ち込み系の音の表現はそれなり。音の質感の相性、切れ、低域の質等、様々な点から見て良くもなく悪くもなくといった感じ。
 分解能や音場感を重視するならコストパフォーマンスは良くないが、なかなかバランス良くまとまっていて、聴く音楽による得手不得手はあまり大きくない印象。あえて挙げるなら、木管楽器や弦楽器メインのクラシックを屋外で聴くなら悪くない選択肢だろう。

装着感
 良好。側圧は普通からやや強め。特にずれやすくはないが、構造が独特なせいか装着の仕方によってはややずれやすいことがある。ヘッドバンドのクッションはしっかり入っているし比較的軽いため、頭頂部が痛くなりやすいというようなことはない。
 イヤーパッドは耳のせサイズ、上下左右に角度調節ができる。材質は天然皮、内部は柔らかいが表面はやや硬いため、長時間使用すると多少痛くなることがある。
 ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。

その他
 遮音性は良好、音漏れ防止は普通だが密閉型にしてはやや悪い。
 作りは一見良いように見えるが、価格を考えると微妙なところ。ケーブルやプラグは安っぽいし、アーム部の金属の質感もいまいち。回転部からグリースがはみ出している。デザインはなかなか良い。ヘッドホン本体側でもコードの着脱が可能、スイーベル機構。デフォルトのコードはiPod/iPhone用のリモコンが付いている。イヤーパッドの固定を磁石で行う独特の作り。磁石の強さは適度で、外そうと思えば簡単に外れるが、意図せず外れることはほとんどないと思われる。
 プラグは金メッキのミニプラグ(マイクがあるため4極)。プラグが4極のせいか、通常の3極のプラグと比べて機器によっては接触不良が発生しやすいようだ(使えないほど酷いことはまずないと思われる)。コードの太さは約1.5mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周74mm×56mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
1.2m交換用コード(リモコン無し)
キャリングポーチ



参考
メーカー製品ページ
代理店製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
Bose on-ear headphones
Bose on-ear headphonesは低音よりのドンシャリ、P5はかなりフラット。低域はBose on-ear headphonesの方がある程度量が多い。Bose on-ear headphonesの方が柔らかくぼやけた質。重心はBose on-ear headphonesの方が低い。中域はP5の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はP5の方が若干量が多い。Bose on-ear headphonesの方が若干線が細い、P5の方が若干明るい。分解能はP5の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベル。原音忠実性はP5の方がやや上。Bose on-ear headphonesは低域の量が多すぎる。原音の粗や生っぽさはP5の方がやや感じられる。エッジはP5の方がややきついが、Bose on-ear headphonesの方が低域の量で疲れる面があるため、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろP5の方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはP5の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはBose on-ear headphonesの方がやや感じられる。ヴォーカルはBose on-ear headphonesの方が柔らかくスモーキーで心地よい。どちらも特にノリが良いわけでも繊細なわけでもない。P5の方が切れやスピード感がある。Bose on-ear headphonesの方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはBose on-ear headphonesの方がやや豊かでこもり感が気になる。Bose on-ear headphonesの方が全体的に音が柔らかく、芯が通っていない。弦楽器はBose on-ear headphonesの方が滑らか、P5の方が生楽器らしさが感じられる。チェロやコントラバスを心地よく聴きたいならBose on-ear headphonesの方が良いが、ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならP5の方が良い。金管楽器はP5の方が若干金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はP5の方が若干うまい。音の質感の相性は大差ないが、切れでやや勝っている。使い分けるなら、低域の量や温かみ重視ならBose on-ear headphones、明瞭さや切れ重視ならP5。

HD25-1
HD25-1はややドンシャリ、P5はかなりフラット。低域はHD25-1の方が若干量が多い。所謂重低音より下の多いソースではHD25-1の方がかなり存在感がある。重心はHD25-1の方が低い。中低域はP5の方がややしっかり出る。中域はどちらも低域に邪魔されず聴こえてくるが、どちらかと言うと中低域が少ない分HD25-1の方がはっきり聴こえてくる。中高域はP5の方がややしっかり出る。高域はほぼ同量。HD25-1の方が線が細い。P5の方がややざらつく感じ。分解能はHD25-1の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はHD25-1の方がやや広く明確。原音忠実性はHD25-1の方がやや上。周波数特性上の癖のなさは大差ないが、P5は余計な音を鳴らすのが気になる。原音の粗や生っぽさはHD25-1の方が若干感じられる。エッジのきつさや聴き疲れは微妙。HD25-1の方が細く刺さる感じ、P5の方が粗っぽく痛い感じ。HD25-1の方が音の圧力で疲れる面はある。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さはHD25-1の方がやや上、音の鮮やかさはP5の方が若干上。厚みはHD25-1の方がややある。温かみはほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。艶っぽさよりも他の質的な違いが大きい。HD25-1の方が素のまま、P5の方がざらつく。そのざらつきが艶のように感じられることもあるが、きめ細かさや響きの美しさには欠ける。HD25-1の方がノリが良い。切れやスピード感があるし、何より圧力が違う。それでいて音色や質感としては堅実でモニター的。響きはP5の方がやや豊か。P5の方が全体的に付帯音が多い。弦楽器はHD25-1の方が繊細で素のまま、P5の方が中低域が出る分チェロやコントラバスがリアルに感じられることがある。金管楽器はHD25-1の方が細くシンプル、P5の方が太く金属的。打ち込み系の音の表現はHD25-1の方がややうまい。音の質感の相性や切れで若干勝っている。使い分けるなら、基本的にはHD25-1、音の圧力やモニター的な音を嫌うならP5。

HP430
HP430はややかまぼこ、P5はかなりフラット。低域はP5の方が若干量が多い。厚みや圧力があるため存在感がある。重心の低さはほぼ同レベル。中低域はP5の方がしっかり出る。中域はHP430の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中域の中でも低めの音はHP430の方がやや明るいが、中域の中でも高めの音はそうでもない。高域はP5の方がやや量が多い。硬く明るい質でかなり目立つ。分解能はP5の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベル。原音忠実性はP5の方がやや上。どちらも一聴して大きな違和感はないが、HP430は高域の量が少ない点が気になる。原音の粗や生っぽさはP5の方が若干感じられる。エッジはP5の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろP5の方がやや痛い。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはP5の方がやや上。厚みはP5の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはP5の方がやや感じられる。ヴォーカルはHP430の方が中身がスカスカで心もとない感じ、P5の方がやや厚手でしっかりした感じ。P5の方が明るく元気でノリが良い。低域に基づく迫力や力強さがある。響きはP5の方がやや豊か。P5の方が響きまできちんと聴かせようとする音作りがなされている印象。HP430の方が乾いていてモニター的、P5の方が肉付けされていてオーディオ的。弦楽器はP5の方が厚手で心地よい。金管楽器はP5の方がやや金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はP5の方がややうまい。音の質感の相性やダイナミックな鳴らし方でやや勝っている。使い分けるなら、基本的にはP5、P5では聴き疲れしやすいとか中低域が多すぎるという不満があるならHP430。

MDR-570LP
MDR-570LPはややドンシャリ、P5はかなりフラット。低域はMDR-570LPの方が若干量が多い。MDR-570LPの方が薄く曇ったような質。P5の方が質的に存在感がある。重心はP5の方がやや低い。中域はP5の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はP5の方が若干量が多い。硬く明るい質で目立つ。P5の方がややざらつく感じ。分解能はP5の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は、MDR-570LPの方がやや広く、P5の方がやや明確。P5の方が音像がシャープ。原音忠実性はP5の方が若干上。周波数特性上の癖のなさは大差ない。原音の粗や生っぽさはP5の方がやや感じられる。エッジはP5の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろP5の方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはP5の方がやや上。厚みはP5の方が若干ある。温かみはMDR-570LPの方が若干感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。MDR-570LPの方がややスモーキーで聴きやすい、P5の方が明るい女性ヴォーカルに合う。P5の方が明るく元気でノリが良い。P5の方が切れやスピード感がある。MDR-570LPの方がメリハリがなくするすると流れていってしまう感じ。響きはMDR-570LPの方が若干豊か。弦楽器はMDR-570LPの方が滑らかで心地よい、P5の方が生楽器らしさが感じられる。金管楽器はP5の方が金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はP5の方がややうまい。音の質感の相性で勝っている。使い分けるなら、基本的にはP5、P5では明るすぎるとか聴き疲れしやすいという不満があるならMDR-570LP。

RD-A310
どちらもかなりフラット。低域はRD-A310の方が若干量が多い。特に所謂重低音より下はRD-A310の方がしっかり出る。P5の方が薄く曇ったような質、RD-A310の方が弾力のある質。制動はP5の方がやや感じられる。重心はRD-A310の方がやや低い。中域はRD-A310の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はP5の方が若干量が多い。P5の方がややざらつく感じ。RD-A310の方が線が細く明るい質。分解能はP5の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は、RD-A310の方がやや広く、P5の方がやや明確。RD-A310の方が頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はP5の方が若干上。P5の方が一聴して違和感がない。原音の粗はRD-A310の方が若干感じられるが、生っぽさはP5の方が若干感じられる。エッジはRD-A310の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろRD-A310の方がやや細く刺さる。明瞭さはRD-A310の方がやや上、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはP5の方がややある。温かみはP5の方がやや感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。P5の方がややスモーキー、RD-A310の方がやや透明感がある。RD-A310の方が明るく爽やか。RD-A310の方があっさりしていて軽い音。P5の方が何を鳴らしてもしっかりした音で良いと感じる人もいると思われる。響きはRD-A310の方が若干豊か。弦楽器はP5の方がやや心地よく、音色も自然。金管楽器は、P5の方が太く力強い、RD-A310の方が細く明るい。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性は大差ない。P5の方が厚みで勝っている、RD-A310の方が中高域から高域の明るさで勝っている。使い分けるなら、基本的にはP5、P5では低域の量が足りないとか暗いという不満があるならRD-A310。

TH-WR700
P5はかなりフラット、TH-WR700はややドンシャリ。低域はTH-WR700の方がやや量が多い。所謂重低音より下はTH-WR700の方がかなりしっかり出るが、それより上はP5の方がしっかり出る。TH-WR700の方が厚みや弾力のある質。重心はTH-WR700の方がかなり低い。中域はTH-WR700の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はTH-WR700の方が若干量が多い。P5の方がややざらつく感じ。TH-WR700の方が硬く明るい質。中低域から中域の鳴らし方がかなり違うため、音量の合わせ方によって他の帯域の相対的な量も変わりやすく、人によって評価が変わりやすいと思われる。分解能はTH-WR700の方が若干上。音の分離で若干勝っている。一つ一つの音の微細な描写は大差ない。音場感はTH-WR700の方がやや広く明確で見晴らしが良く把握しやすい。原音忠実性は微妙。P5は余計な音を鳴らすのが気になるのに対して、TH-WR700は中低域が凹んでいるのが気になる。どちらかと言うとP5の方が違和感が小さいことが多い。原音の粗や生っぽさはTH-WR700の方が若干感じられる。エッジはTH-WR700の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろTH-WR700の方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはTH-WR700の方がやや上。P5の方が薄く曇っているような感じ。厚みはTH-WR700の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベル。ヴォーカルはP5の方がやや癖がなくスモーキー、TH-WR700の方が擦れやリップノイズを出してくれる。TH-WR700の方がノリが良い。P5の方がメリハリがなくするすると流れていってしまう感じ。TH-WR700の方が鳴りっぷりが良い。響きはP5の方がやや豊か。P5の方が全体的にまとまりがある印象。弦楽器は、音色はP5の方が自然だが、質感はTH-WR700の方が素に近い。ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならTH-WR700の方が良い。金管楽器はTH-WR700の方がやや鮮やかかつ力強い。打ち込み系の音の表現はTH-WR700の方がややうまい。音の質感の相性や切れで若干勝っている。使い分けるなら、中低域が欲しいならP5、重低音が欲しいならTH-WR700。あるいは、周波数特性上の凹凸のなさやまとまり重視ならP5、音場感やノリの良さ重視ならTH-WR700。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
- - 10Hz〜20kHz 120dB 26Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
195g 40mm 1.2m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 4 4 3 4 3 34900円

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公開日:2010.10.13