第85回 12の練習曲/ショパン

 今回取り上げるのはショパンの12の練習曲です。演奏はポリーニで、1972年の録音です。
 ショパンは19世紀に活躍したポーランドの作曲家で、ピアノ曲を多く残したことで知られます。12の練習曲はその名のとおりピアノのための練習曲ですが、音楽的な魅力も備えていて演奏会でも人気の高い曲です。ポリーニはイタリアの著名なピアニストで、今回取り上げる録音も非常に高く評価されています。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「このピアニスト特有の、硬質でクリスタルな音の響きを最大限に活かせるHPで聴きたいです」とのことです。余計な付帯音や残響音の少ないもので、できれば音色の癖が小さいものが良いのではないかと思います。


・1台目 HD449(SENNHEISER)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。特別硬質というわけではありませんが、余計な付帯音や残響音は少ないですし、何より音色の癖が小さい点が良いです。総合的に考えて、これ以上のものは見当たりませんでした。
 他にはATH-WS70、CPH7000、K121studio、MDR-V6等で聴いてみました。ATH-WS70は余計な付帯音や残響音が多いわけではないのですが、低域の量が多くこもり感が気になるせいか輪郭がややぼやけることがあります。CPH7000は硬質な点は良いのですが、音色の癖が気になります。K121studioは最後までHD449と迷いましたが、HD449の方が若干硬質なように感じられたのでそちらにしました。MDR-V6は音色の癖がやや気になります。
 不満点は、もう少し硬質でも良いと感じられる点です。

・2台目 HA-MX10-B(Victor)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されますが、音色の癖のなさについては1台目の方が若干良いかもしれません。HA-MX10-Bは少し明るすぎるような印象です。
 他にはEX-29、HD280Pro、K240monitor、MDR-CD900ST、RH-300等で聴いてみました。EX-29とHD280Proは余計な付帯音や残響音が多いわけではないのですが、あまり硬質ではありません。K240monitorは音色の癖が小さい点は良いのですが、あまり硬質ではありません。MDR-CD900STは最後までHA-MX10-Bと迷いましたが、HA-MX10-Bの方が若干硬質なように感じられたのでそちらにしました。ただし、音色の癖のなさや質感のリアルさを重視するならMDR-CD900STの方が良いのではないかと思います。RH-300は悪くないのですが、HA-MX10-Bと比べると硬質ではありません。
 不満点は、厳しく見ると若干音色の癖が気になる点です。

・3台目 HD800(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。1台目と比べると硬質で2台目と比べると音色の癖がないという意味で、より完成度が高いと言えます。余計な付帯音や残響音は少ないですし、やや硬質ではあるものの質感のリアルさという点でもなかなかのものを持っていると思います。全体のバランスも良く、聴いていて何か不満が出るような印象も受けません。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 HFI-780(ULTRASONE)
 色々聴いてみた結果これになりました。硬質さと音色の癖のなさの両立という意味では3台目以上のものは見当たらなかったので、要望に立ち戻って硬質さの方を重視することにして選びました。ただ、そうは言ってもそこまで音色の癖が大きいわけではありません。HFI-780の癖の大きさの割に今回の曲では癖が気になりにくいという面もあるでしょうが、単純に今回聴いた中でももっと癖の大きいものがありました。硬質さと音色の癖のなさの合計点という見方をしても良い線を行っていると思います。
 他にはCrossfade M-100、HP-DX1000、K701、T1等で聴いてみました。Crossfade M-100は悪くないのですが、全体のバランスとしては低域の量が多すぎるのが気になります。HP-DX1000は音色の癖がやや気になります。K701は音色の癖が小さい点は良いのですが、あまり硬質ではありません。T1はなかなか良いのですが、3台目と比べると若干バランスが悪く、4台目と比べると若干硬質さに欠けます。

・5台目 e-Q7(ortofon)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。硬質さと音色の癖のなさの両立という意味でもなかなか良いのですが、フィーリングの部分でクリスタルのイメージに近い点が魅力です。色々と聴いてみたのですが、EPH-100は質感のリアルさは良いものの全体のバランスとしては低域の量が多すぎる、ER-4SとMDR-EX1000はなかなか良いもののe-Q7と比べるとフィーリングの部分でクリスタルのイメージから遠い等の不満がありました。
 他にはZH-BX500とXBA-1SLが良かったです。最初に書いた条件をそれなりに満たしています。


 今回はピアノの質感や音色をどのように追求するかという匙加減によってかなり結果が違ってくるのではないかと思います。その意味ではいつにも増して本文まで読んで考えていただきたいです。
 ヘッドホンアンプはhpa200b(ハイエンド仕様)が良いと思います。硬質さを出してくれます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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