第65回 Next Life/「THE IDOLM@STER MASTER SPECIAL 03」より

 今回取り上げるのは、2009年発売のPSP専用ゲーム「THE IDOLM@STER SP」のサウンドトラックCDシリーズ「THE IDOLM@STER MASTER SPECIAL 03」から2曲目です。
 打ち込みと女性ヴォーカルで構成された曲で、ジャンルとしてはサイケデリックトランスに近い雰囲気です。ヴォーカルは我那覇響(沼倉愛美)、ある程度加工されていますが基本的に明るい質です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「曲の広い音場感・浮遊感を感じられるようなHP希望です」とのことです。音場の広さが重要になってくるのは間違いないと思いますが、問題は浮遊感です。浮遊感というのはフィーリングなので正解はないと思いますが、音の柔らかさや響きの多さによって感じられることが多く、そうすると打ち込み系の音とは相性が悪い傾向があるように思います。今回の曲における浮遊感がはたしてそういうものを指しているのか不明です(今回の曲だと単純に音場が広く遠くから音を鳴らすようなヘッドホンでこそ浮遊感が感じられるという見方もできます)が、今回は理屈抜きにフィーリングの浮遊感を優先し、その上でできれば打ち込み系の音とも相性が良いもの、というスタンスで探索していきたいと思います。


・1台目 HD215(SENNHEISER)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。この価格帯としてはかなり音場が広いですし、打ち込み系の音との相性も良いです。特に気になるような欠点もありません。実際に聴き比べてみて思ったのですが、今回の曲における浮遊感はやはり音の柔らかさや響きの多さによるものではなく、単純に音場が広く遠くから音を鳴らすことによる部分が大きいようです。
 他にはAPHN-AC30、HI2050、HP-535、HP-RX900等で聴いてみました。APHN-AC30は悪くないのですが、HD215と比べると音場が狭いです。HI2050はHD215と比べると音場が狭く近くで音を鳴らしますし、フィーリングでも浮遊感はあまり感じられません。HP-535は悪くないのですが、HD215と比べると定位が明確でないせいか浮遊感で若干見劣りします。HP-RX900は音場は広いのですが打ち込み系の音が打ち込み系の音ではないように聴こえますし、ヴォーカルも癖があります。
 不満点は特にありません。全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 DJ1 PRO(ULTRASONE)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。1台目と比べるとやや癖がありますが、打ち込み系の音との相性は良いです。音場感や浮遊感は大差ありませんが、どちらかと言うと2台目の方が良い印象です。弾力があるような低域も長所のように感じられます。
 他にはAH-D1100、HD280Pro、MDR-MA900、RH-300等で聴いてみました。AH-D1100はDJ1 PROと比べると音場が狭いですし、低域の量が多すぎるせいか別の曲のようになってしまいます。HD280Proはなかなか良いのですが、DJ1 PROと比べると浮遊感で若干見劣りします。MDR-MA900は最後までDJ1 PROと迷いましたが、DJ1 PROの方が音場に立体感があるせいか浮遊感もあるように感じられたのでそちらにしました。もっとも、これはDJ1 PROの個性的な音場を受け入れられるかどうか、あるいは密閉型と開放型の音場どちらを好むのかといった点も影響してくると思います。RH-300は打ち込み系の音との相性は良いのですが、音場の広さが足りません。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・3台目 SR-007+SRM-717(STAX)
 色々聴いてみた結果これになりました。音場が非常に広いですし、SR-007+SRM-717に関しては音の柔らかさや響きの多さも浮遊感にプラスの効果があるように思います。1、2台目とはまた違った傾向で、線が細すぎることもあって打ち込み系の音との相性では見劣りするように感じられます。ヴォーカルも落ち着いた音色ですし、全体的に明るさや切れよりも純粋に音場感や浮遊感を求める人に向いていると思います。
 不満点は特にありません。

・4台目 HD800(SENNHEISER)
 かなり迷いましたが、最終的にはこれになりました。どちらかと言うと消去法で選ばれた感じです。音場は広いのですが、その音場の広さに見合うだけの浮遊感が感じられるかどうかは微妙です。これはおそらく音場の質(上下左右奥行きの比率)や低域の質が影響しているのではないかと個人的には思いますが、人によって違ってくる気もします。ただ、総合的に見れば少なくとも今回聴いた他の機種と比べて明らかに劣るということはないと思います。
 他にはATH-A2000X、HD650、HFI-780、HP-DX1000等で聴いてみました。ATH-A2000Xは最後までHD800と迷いましたが、HD800の方が音場が広く全体的に癖がないように感じられたのでそちらにしました。ただし、今回の曲の浮遊感とはどういうことなのかということだけを考えるとATH-A2000Xの方が良いと感じる人もいると思います。HD650は音場が広く浮遊感も感じられるのですが、今回の曲の浮遊感は違うような気もしますし、4台目と比べると打ち込み系の音との相性で見劣りします。HFI-780は悪くないのですが、3、4台目と比べると音場が狭いです。HP-DX1000は音場の広さや浮遊感はなかなか良いのですが、ヴォーカルの癖が気になります。1、2台目はこれしかないという印象だったのですが、3、4台目は正直どれが選ばれてもおかしくなかったように思います。

・5台目 Turbine Pro Copper(Monster Cable)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。基本的にフィーリングですが、音像がシャープで空間を感じさせる表現である点と立体感がある点が良かったのだと思います。そのため、例えばIE8のように音の広がりによる浮遊感を求めるなら真逆の傾向になってしまい合わないと思われます(今回の曲の浮遊感はそういうタイプではないと判断しました)。打ち込み系の音との相性もかなり良いです。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK100PROは悪くないものの特別どこが良いとも感じられない、IE8は音場が広く浮遊感も感じられるものの今回の曲の浮遊感は違うような気もする上に低域の量が多すぎるせいか別の曲のようになってしまう、MDR-EX1000はフィーリングによる今回の曲の浮遊感という意味ではTurbine Pro Copperと比べて見劣りする等の不満がありました。
 他にはZH-BX500とZH-DX200-CTが良かったです。ただし、どちらもTurbine Pro Copper同様音像がシャープな傾向なので、前述の理由により人によってはまったく合わない可能性もあると思います。


 今回は価格による差があまりなかったように思います。価格に関係なく1台目や2台目が良いと言う人もいるでしょう。
 ヘッドホンアンプは難しいところですが、今回の探索結果を踏まえるならhpa200b(ハイエンド仕様)が良いように思います。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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