第51回 Mediterranean Sundance/Rio Ancho
 /Al Di Meola、John McLaughlin、Paco de Lucia「Friday Night in San Francisco」より

 Al Di Meola、John McLaughlin、Paco de Luciaは3人とも著名なギタリストです。ジャンルとしてはジャズ、フュージョン、フラメンコ等に分類されることが多いです。
 今回取り上げるのは1981年発表のライブアルバム「Friday Night in San Francisco」の1曲目です。使われているのはアコースティック・ギター2本のみ(上記3人のうちAl Di MeolaとPaco de Lucia2人の演奏)で、テンポが速くどちらかと言うとジャズよりフラメンコに近いように思います。2本のギターがほぼ左右のチャンネルに分かれているため、音が混ざって聴き取りにくいということは少ない印象です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「臨場感重視で会場の熱気に圧倒されるようなヘッドホンが良いです」とのことです。一言で臨場感と言っても様々な要素で変わってくると思いますが、今回の曲の場合にはギターのエッジの表現、メリハリ、音の近さ、こもり感や曇りのなさといった点が重要になってくるのではないかと思います。また、この曲は別にもリクエストがあったのですが、そちらは「特にパコデルシアはフラメンコ奏法を使うのでギターのボディーを叩く音なんかもするので、そこらへんが埋もれてしまわないようなヘッドホンを選んでほしいです」とのことでした。今回は両方を考慮して探索していきたいと思います。


・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。ギターのエッジの表現、メリハリ、音の近さ、こもり感や曇りのなさいずれも大きな問題はないと思いますが、あえて言うならメリハリ及びこもり感や曇りのなさはもう少し欲しいかもしれません。ギターのボディーを叩く音も普通に聴こえますし、ギターの弦の違いによる音の質の違いもしっかり感じられます。単にフィーリングで聴いてもなかなか良いと思います。
 他にはATH-TAD500、HI2050、PortaPro、UR/40等で聴いてみました。ATH-TAD500はややエッジが丸くメリハリに欠けます。HI2050は悪くないのですが、音が遠い点と響きがあっさりすぎる点がやや引っかかります。PortaProは単品でフィーリングだけで聴くならなかなか良いのですが、細部があまり聴こえない点と響きが豊かすぎる点がマイナスです。UR/40は前述の条件についてはそれほど悪くないのですが、ギターに実体感がないような感じで熱気に圧倒されるとは言いがたいです。
 不満点は、メリハリ及びこもり感や曇りのなさがもう少し欲しい点です。

・2台目 MUSIC SERIES ONE(ALESSANDRO)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。ちょうど1台目の不満点を適度に改善したような音です。1台目の音に慣れている人はあまり違和感なく聴くことができると思います。最初に書いた条件についてはどれもある程度満たしています。
 他にはHA-MX10-B、MDR-MA900、RP-21、SE-A1000、SRH840等で聴いてみました。HA-MX10-Bは最初に書いた条件についてはなかなか良いのですが、それでいて会場の熱気はあまり感じられません。おそらく音が硬く響きがあっさりすぎる点が問題なのだと思います。MDR-MA900はこもり感がまったくない点は良いのですが、MUSIC SERIES ONEと比べるとギターのエッジの表現でやや見劣りします。RP-21はなかなか良いのですが、こもり感がやや気になります。SE-A1000はギターのエッジの表現含め全体的に癖が気になります。SRH840は癖がなく聴きやすい点は良いのですが、それ以外は良くもなく悪くもなくといった印象です。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・3台目 SR-325i(GRADO)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。改めて見ると、「SR-325iを選べ」と言わんばかりの条件に思われます。ギターのエッジの表現、メリハリ、こもり感や曇りのなさすべてについて2台目以上です。音の近さだけは微妙ですが、音がストレートに耳に飛び込んでくるという意味ではSR-325iの方が上です。単にフィーリングで聴いても非常に良いと思います。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 DT860(beyerdynamic)
 色々聴いてみた結果これになりました。3台目と比べるとギターのエッジの表現で若干見劣りする印象ですが、それ以外はほぼ同レベルだと思います。
 他にはATH-AD2000、DT990 Edition 2005、RS-1、SRH1840等で聴いてみました。ATH-AD2000はやや曇りが気になります。DT990 Edition 2005は音が遠い点と曇りがやや気になります。RS-1はSR-325iと迷ったのですが、SR-325iの方が音がストレートに耳に飛び込んでくるような感じで会場の熱気が感じられる方向性に思われたのでそちらにしました。SRH1840は癖がなく聴きやすいですし最初に書いた条件についても悪くないのですが、3、4台目と比べるとややメリハリに欠けます。

・5台目 HP-FX500(Victor)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。カナル型としては3、4台目に似ていると思います。特にギターのエッジの表現とメリハリが良いです。色々と聴いてみたのですが、EPH-100はギターのエッジの表現が若干不自然、HiDefJax AcousticSteelは若干曇りが気になる、XBA-4SLはギターのエッジの表現含め全体的に癖が気になる等の不満がありました。
 他にはCeramiqueとHA-FX3Xが良かったです。HP-FX500と比べるとギターのエッジの表現や曇りのなさで若干見劣りしますが、総合的にはまずまずです。


 今回は「ギターのボディーを叩く音が埋もれないようなもの」という条件もありましたが、これについてはヘッドホンによってそれほど大きな差が出ないように感じられた上、あえて言うなら中低域のしっかり出る密閉型(今回聴いた中だとRP-21やSRH840)ではっきり聴こえるような感じで他の探索条件の足を引っ張る傾向だったため、実質的には探索結果にあまり反映されていません。
 ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。エネルギッシュという意味で会場の熱気が感じられる方向性に思われます。次点はHD-1L Limited Edition(RC1)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。



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