第49回 クラリネット五重奏曲/モーツァルト

 今回取り上げるのはモーツァルトのクラリネット五重奏曲です。演奏はプリンツ(クラリネット)とウィーン室内合奏団で、1979年の録音です。なお、今回の探索にはBlu-spec CD版を使用しています。
 この曲の編成はクラリネットに加えてヴァイオリン2本とヴィオラ、チェロになっています。全体的に穏やかで聴きやすい曲調です。今回の録音はかなり評価が高く有名なもので、特にクラリネットの上品な甘さが魅力のように思います。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「室内楽的な適度な音場感とメインのクラリネットの音色です。できればクラリネットと弦楽四重奏との兼ね合いまで考慮してもらえると有り難いです」とのことです。言い換えると、音が遠くも近くもないこと、周波数特性の凹凸が少なく音色が自然なこと、あまり硬さがないこと、音の分離が適度であること、といった条件になるのではないかと思います。


・1台目 ATH-TAD500(audio-technica)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの点についてもある程度満たしているように思います。特にどこが良いと言うよりは総合的に見て良い印象です。例えば、クラリネットの柔らかさだけを見るならHP-RX900やMDR-ZX700に軍配を上げる人もいると思いますが、周波数特性の凹凸が少なく音色が自然である点や音が遠くも近くもない点ではATH-TAD500に分があります。
 他にはHD449、HP-RX900、MDR-ZX700、RP-HT560、UR/40等で聴いてみました。HD449はなかなか良いのですが、ATH-TAD500と比べるとクラリネットの柔らかさに欠けますし、音が近い点も若干気になります。HP-RX900はクラリネットの柔らかさはなかなか良いのですが、周波数特性の凹凸のせいで弦楽器の音色の癖が気になります。MDR-ZX700はクラリネットの柔らかさはなかなか良いのですが、音が近い点が気になります。RP-HT560は最後までATH-TAD500と迷いましたが、ATH-TAD500と比べるとクラリネットの柔らかさにやや欠けるため外しました。UR/40は悪くないのですが、音が近い点が気になります。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 K240monitor(AKG)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。1台目と同様、特にどこが良いと言うよりは総合的に見て良い印象です。1台目と比べるとやや音が丸く聴きやすいように思われます。
 他にはATH-AD700、HP-AURVN-LV、SRH840、SW-HP10等で聴いてみました。ATH-AD700は悪くないのですが、若干硬さが気になります。HP-AURVN-LVはなかなか良いのですが、音が近い点が若干気になります。SRH840は最後までK240monitorと迷いましたが、K240monitorと比べるとモーツァルトらしい上品さや爽やかさが感じられないため外しました(最初に書いた条件については大差ないように感じられます)。SW-HP10はクラリネットの柔らかさはなかなか良いのですが、周波数特性の凹凸は多少気になります。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・3台目 K701(AKG)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に周波数特性の凹凸が少なく音色が自然な点が良いです。単に周波数特性の凹凸の問題だけでなく、輪郭や付帯音を含む質感も魅力的に感じられます。クラリネットと弦楽器の量的・質的バランスや調和も見事です。2台目以上にモーツァルトらしい上品さや爽やかさが感じられる点も良いです。最初に書いた条件については総合的に見て1、2台目と大差ない印象ですが、漠然と聴くなら3台目が最も良いと感じる人が多いのではないかと思います。
 不満点は特にありませんが、もう少し音が近くても良いという人はいるかもしれません。

・4台目 SRS-4040(STAX)
 3台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはしっかり改善されます(逆に近すぎるという人もいるかもしれません)。最初に書いた条件については3台目の方が若干満たしているように思いますが、4台目の方が魅力的な点もあります。例えば、クラリネットに芯が通っておらず心地よい点、ヴァイオリンは線が細く澄んでいる点です。
 他にはAH-D5000、EXH-313、HD650、SR-007+SRM-717等で聴いてみました。AH-D5000とHD650はなかなか良いのですが、3、4台目と比べるとモーツァルトらしい上品さや爽やかさが感じられません。EXH-313はクラリネットの柔らかさはなかなか良いのですが、周波数特性の凹凸は多少気になります。SR-007+SRM-717は最後までSRS-4040と迷いましたが、SRS-4040の方が3台目の不満点改善に適している上に音色が自然でモーツァルトらしい上品さや爽やかさが感じられるためそちらにしました。ただし、SRS-4040では音が近すぎるとかクラリネットが硬いといった不満があるようならSR-007+SRM-717の方が合うと思います。

・5台目 ATH-CK100PRO(audio-technica)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。基本的にはどの点についてもある程度満たしているように思いますが、音の分離については意見が分かれるかもしれません。マルチドライバー特有の分離感があるためです。各楽器をきちんと聴きたいなら良いのですが、この独特の分離感を嫌うならGR8の方が良いのではないかと思います。色々と聴いてみたのですが、 GR8はなかなか良いもののATH-CK100PROと比べると厚みが薄く各楽器に存在感がない、Image X10はクラリネットの柔らかさはなかなか良いものの全体的におとなしめでモーツァルトらしい上品さや爽やかさが感じられない、SE535は音が近い点が気になる等の不満がありました。
 他にはHP101とHP-CN40が良かったです。どちらも最初に書いた条件をそれなりに満たしています。


 今回は多くの条件を満たすものを探索したので、その兼ね合いでどのヘッドホンが選ばれるかが変わりやすかったように思います。とは言え、仮に条件を抜きに漠然と今回の曲と相性の良いヘッドホンを考えたとしても、今回選ばれたヘッドホンはどれもなかなか良いと言える結果になっているのではないでしょうか。
 ヘッドホンアンプはSA-15S1(SACDプレーヤーのヘッドホン端子)が良いと思います。クラリネットの心地よさや曲全体に漂う上品さがきちんと感じられます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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