AT-HA2002
全体的にやや硬い鳴らし方だが、緻密で破綻のない表現。低域はかなり締まった質感。高域はAT-HA2002とHP-DX1000らしい粗のない表現。情報量はかなり多い。これはAT-HA2002とHP-DX1000両方の力だろう。残響音はHA-1Aと比べてかなりあっさり。
ヴォーカルはややすっきりした鳴らし方で、HP-DX1000のややうわずった感じはあるものの、悪くない表現力。澄んだ声に合う。曇っているヴォーカルは、良くも悪くも曇りがあまり気にならなくなる。艶っぽいというのとは違う傾向。コーラスは非常によく分離して聴こえる。ピアノは輪郭がはっきりして凝縮されたような濃い音になる。ロックはよく制動がきいた鳴らし方で、やや優等生的すぎる点があるものの、客観的に見てなかなか合う。打ち込み系の音は厚みと切れがありなかなか良く合う。オーケストラは各楽器を正確に描き分けてくれるし、迫力も十分。ジャズを楽しむにはやや明るすぎるし、ウォームさが足りない。ギターは明るくほどよい濃さがあり悪くない。弦楽器はローエンドがやや不足でチェロ等は物足りなさが残るが、しっかりした表現。金管楽器はAT-HA2002の濃さとHP-DX1000の鮮やかさがしっかり感じられる安定した鳴り。オルガンは十分な厚みはあると思うのだが、響きが足りないせいかどこか物足りない。
HA-1A
AT-HA2002やHD53では音の硬さや太さが気になるHP-DX1000だが、HA-1Aとの組み合わせではそんなことはない。特に低域の質感や響きはまったく別物。高域はHP-DX1000にしてはかなり細い音で好印象。質・量ともに十分なものを持っている。この辺りはHA-1Aらしいと言えるだろう。残響音はかなり豊か。しっかりと音が広がり、HP-DX1000の音場が生かされて非常に魅力的。お互いの長所を引き出している印象。
ヴォーカルはAT-HA2002やHD53と比べてかなり艶っぽい。それでいて力強さが必要な場面ではしっかりした強さを発揮する。コーラスは分離が良く、それでいてまとまりを失わない。ピアノは輪郭が甘いがあまりぼやけているという印象にはならない。響きが豊かでしかも音そのものの密度もしっかりあるためだろう。ロックを聴くにはやや響きが豊かな気もするが、基本的には悪くない。打ち込み系の音も同様。他のアンプと比べて低域の量が多いのが合う部分もあると思われる。オーケストラは迫力があり雄大な表現で非常に楽しめる。HP-DX1000はジャズには明るすぎる傾向があるが、HA-1Aとの組み合わせではそれほどでもなくなる。ただ、そうは言ってもHP-DX1000本来の明るさはある。ギターは濃い音で豊かな響きが楽しめる。弦楽器はAT-HA2002やHD53では不足に感じられるローエンドを補ってくれるし、真空管独特の良さが感じられる。金管楽器はHP-DX1000の鮮やかな表現にHA-1Aの余裕のある表現が加わり見事。オルガンはHA-1Aの低音補正と豊かな響きが加わり楽しめる鳴らし方。
HA-1A由来のノイズはやや気になるが、普通に音楽を聴く分には問題ないレベル。
HD53
やや密度が薄く音が粗い。エッジがきつく聴き疲れする印象。AT-HA2002やHA-1Aと比べて低域の厚みが薄い。高域は粗が気になるが、量はしっかり出してくれるのである意味楽しめる。情報量はそれなり。響きは適度だが、HP-DX1000の空間表現能力を考えると、その能力を生かし切っているとは到底言えない。比較的ヘッドホンを選ばないHD53だが、HP-DX1000との相性はあまり良くないと言わざるを得ないだろう。
ヴォーカルは艶っぽいと言えば艶っぽいのだが、ソースによっては擦れが気になる。キンキンした女性ヴォーカルは痛い感じ。ピアノは他のアンプとの組合わせと比べると無個性。良く言えば癖がないし、悪く言えば薄い音で魅力に欠ける。ロックはソースによっては音が割れるのが気になるが、ある種の刺激として楽しめる部分もあるかもしれない。打ち込み系の音は良くもなく悪くもなく、といった印象。やや音が薄いのが難点。オーケストラはブラスが目立つ上、やや粗が気になる。ジャズは音が薄く明るすぎる。ギターは明るく爽やかで、エッジがきいていて楽しめる。弦楽器は粗が目立つし、ローエンドがやや不足に感じる。金管楽器はHP-DX1000本来の良さは感じられるが、AT-HA2002やHA-1Aに比べて力不足なのは否めない。オルガンは厚み不足。
SXH2
HP-DX1000の硬さがやわらぎ、SXH2らしく滑らかで優しい音になる。ただし、HA-1Aほどの繊細さや重厚さはない。低域はSXH2らしく滑らかで、HP-DX1000の弱めのローエンドを補ってくれるが、厚みは薄い。高域はHD53と対照的な粗のない表現だが、HP-DX1000の鮮やかさはしっかり保ってくれる。残響音はやや豊か。情報量はあまり多くない。HP-DX1000の広大な空間から比べると、どこか物足りない。
ヴォーカルはHD53のような擦れや痛さとは無縁。キンキンした女性ヴォーカルも痛くない。コーラスは分離はいまいちだが必要な能力はあるし、一体感がありあまり気にならない。ピアノは輪郭が甘く滑らかで、ゆるゆるという擬音が適切なように感じる。優しい鳴らし方。ロックを聴くにはやや音が緩すぎか。打ち込み系の音は低域が緩すぎる。オーケストラはどこか迫力に欠けるおとなしい表現だが、大きな欠点はない。ジャズはウッドベースが薄くなりすぎる。ギターはもう少し刺激があってもいいように感じる。弦楽器は滑らかで伸びが良く心地よい。厚みは薄いものの、AT-HA2002やHD53ほどローエンドの不足が気にならない。金管楽器はやや力強さに欠けるが、それほど悪くはない。これはHP-DX1000の力だろう。オルガンは意外としっかりした鳴らし方。AT-HA2002と比べてもそれほど遜色ないように感じる。
また、HD53のようなボリュームのガリノイズやHA-1Aのような無音時のノイズがないのは良い。
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