Form2

音質
 ややかまぼこ。低域は厚みが薄く量は程々で、やや曇っているように感じる。中域ははっきり聴こえてくるし、それほど癖はない。高域は控え目。
 分解能、音場感、原音忠実性すべていまいち。ただ、音場は見た目の割には悪くない。原音忠実性も、曇っていて原音の粗っぽさが感じられないだけで、それほど不自然な音を鳴らすわけではない。エッジのきつさは程々でそれほど聴き疲れしないが、ソースによっては中域の芯の通った感じが痛い。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みは薄めで迫力に欠ける。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさは最低限はあるように感じるが、良いとはいえないレベル。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない、強いて言うならおとなしい鳴らし方。音がぼやけている上に粗いのが気になる。響きは適度からやや豊か。
 弦楽器は繊細さが足りないが、滑らかではある。金管楽器は鮮やかさがまったく足りない。打ち込み系の音の表現はうまくない。低域は厚みが足りないし、中域から高域の鮮やかさも足りない。
 コストパフォーマンスはかなり悪い。

装着感
 普通。側圧はやや強めでずれにくい。ヘッドバンドは剥き出しのプラスチックだが、軽いため痛くはない。
 イヤーパッドは耳のせサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質は普通のスポンジで心地よく、蒸れない。
 ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。ただし、音漏れ防止は開放型にしては良好。
 作りは悪くはないというレベルだが、デザインが非常に良く、他にはない魅力を持つ。コストパフォーマンスは、オーディオ機器としてみると悪いが、インテリアとしてみると良い。オーディオ機器というよりは半分インテリアと考えたほうが良いかもしれない。小型・軽量でそれなりに使いやすいが、コードが両出しなのが残念。インピーダンスや音圧感度等のスペックは公開されていないが、実際に使用してみるとポータブル機器でも十分音量を取れるレベル。個人的には、ソファーに座って雑誌でも読みながらまったりと音楽を聴くなら、なかなか使えるヘッドホンだと思った。
 プラグはミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3.5mm・厚さ約1.5mm、硬さは普通だが、なかなか扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周48mm×38mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第12回 耳のせ開放型比較』

周波数特性グラフ


比較メモ
c-JAYS
c-JAYSは低音より、Form2はややかまぼこ。低域はc-JAYSの方がある程度量が多い。柔らかい質でかつ重心が低い。中域はForm2の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。Form2はソースによってはうわずりが気になるが、c-JAYSはそんなことはない。高域はそれなりに似ているが、Form2の方が若干量が多く、明るく粗がある。分解能はForm2の方が若干上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろForm2の方が若干上。音場感は、c-JAYSの方がやや広く、Form2の方が見晴らしが良い。原音忠実性は微妙。c-JAYSは低域の量が多い点がマイナス、Form2は中域の癖がマイナス。どちらかと言うとc-JAYSの方が一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさはForm2の方がやや感じられる。エッジはForm2の方がややきつく、中域のうわずりもあってやや聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さ、音の鮮やかさはForm2の方がやや上。厚みはどちらかと言うとc-JAYSの方があるが、それよりもForm2の方が締まっている点に目が行く。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはc-JAYSの方が感じられる。c-JAYSの方が低域の量に基づく迫力や力強さがあり、Form2の方が切れやスピード感がある。響きは、低域はc-JAYSの方が豊か、高域はForm2の方がやや豊か。Form2の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はc-JAYSの方が繊細かつ心地よい。ただし、生楽器らしさが欲しいならForm2の方が良い。金管楽器はForm2の方が明るく鮮やか、c-JAYSの方が綺麗で安心して聴ける。打ち込み系の音の表現はForm2の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量や温かみが欲しいならc-JAYS、明瞭さや切れが欲しいならForm2。

K24P
K24Pはドンシャリ気味、Form2はかまぼこ気味。K24Pは全音域過不足なしという印象だが、Form2は高域も低域も不足に感じる。分解能、音場感ともにK24Pの方が若干良い。原音に近いのはForm2かもしれないが、それは粗や生っぽさ、ライブ感という意味で、自然な音はどちらかと言われればK24Pに軍配が上がる。どちらもある種の明瞭さはあり、純粋な明瞭さの比較は難しい。温かみやヴォーカルの艶っぽさはK24Pの方が良いが、芯の通った音を求めるならForm2の方が良いかもしれない。K24Pは音が細めで繊細な部分があるが、Form2は塗り潰したように繊細さがない。ノリの良さという意味でも、K24Pは低音が十分で音の立ち上がりが良くスピード感があるのに対し、Form2は低域が出ない上にスピード感がない。K24Pは響きが豊か、Form2はあっさり。弦楽器、金管楽器ともにK24Pの方が圧倒的に魅力的。何を聴くにしてもK24Pの方が良いが、あえてForm2を使うならモニター的な用途には向いているかもしれない。

K501
Form2はかまぼこ、K501は高音より。超低域はForm2の方がかなり出るが、低域はほぼ同量。高域は全体的にK501の方がかなり出るし、一段高い音を鳴らす。ソースによってはどちらもスカスカで迫力のない音を鳴らすところは良く似ている。分解能、音場感、原音忠実性すべてK501の方が上。どちらかと言うとK501の方が聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度、情報量すべてK501の方が上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらも繊細。響きはどちらもあっさり。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてK501の方がうまい。ほとんど何を聴くにしてもK501の方が良いが、Form2の方が低域が出るぶん違和感を感じにくいし、聴き疲れもしない。そのあたりの加減で使い分ければ良いと思う。

PortaPro
Form2はかまぼこ、PortaProはドンシャリ。見た目は近いものがあるが、音域傾向はまったく違う。分解能や音場感はほぼ互角だが、若干Form2の方が良いように感じる。PortaProの方がノリが良く、しかも原音忠実。一聴して違和感がなく楽しめる上、音に鮮やかさがあり、しかも温かみもある。ヴォーカルの艶っぽさではPortaProの方がはるかに上。どちらも響きが豊かでありながら音の抜けが良く、エッジもきつくないためあまり聴き疲れしない。トランペットやシンバルの美しさはほぼ互角だが、PortaProの方が低音が出る分やや邪魔されて明瞭さがない。弦楽器や打楽器はPortaProの方が総じて良い。このような理由でクラシックを聴くならややPortaProが良い。その上、ロックやポップスになるとForm2は低音が出ずノリが悪いので、結局PortaProの方が良い。何を聴くにもForm2はいまいちなようだ。価格を考えるとコストパフォーマンスの差は歴然。

SE-F3
どちらもややかまぼこだが、Form2の方がやや低音より。低域は抜けが良いせいかどちらもやや迫力不足に感じるが、Form2の方が出る。高域はSE-F3の方がやや高い音を鳴らすし量も多い。分解能、原音忠実性はForm2の方がやや上。音場感はどちらもいまいちだが、Form2の方が立体感がある。どちらもエッジはきつくなく聴き疲れしないが、どちらかと言えばSE-F3の方が疲れる。サ行の音等も痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-F3の方がやや上。ただし、これはSE-F3の方が高音よりのためにそう感じる部分が大きいと思われる。厚みや密度はどちらかと言えばForm2の方が上。Form2の方が上品でおとなしい鳴り。SE-F3の方がスピード感がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいい勝負だが、若干Form2の方が上か。ノリの良さならSE-F3、繊細さならForm2。響きはSE-F3の方がやや豊か。Form2の方が音に粗がない。弦楽器は好みの差程度だろう。個人的にはForm2の方が好印象。金管楽器はSE-F3の方が一段高く鮮やかで、価格のわりには安っぽさを感じさせない音。打ち込み径の音はSE-F3の方がややうまい。使い分けるなら、クラシックやジャズはForm2、ポップスやロックはSE-F3。全体的に見て、価格ほどの差は感じない。どちらもロックをノリ良く聴きたいならかなり合わないので要注意。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生






※10年にマイナーチェンジ。コードの長さが1.2mに、プラグが金メッキに変更。










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 - - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
68g - 3m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3 3 2 2 5 3 中(低) 18900円

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公開日:2005.1.14