第67回 価格別favorite headphones 5回目
第65回でインナーイヤー版をやってから約半年、favorite headphonesシリーズはこれまで間が空きすぎていて「次こそはもっと早く」と言ってきましたが、今回ようやくそのとおりにできた感じです。とは言え、オーバーヘッド型を取り上げるのは第55回以来のことで3年以上が経ってしまっています。インナーイヤー版の4年以上と比べればまだマシとは言え、もう少し早くても良かったかもしれません。
前置きはこの辺にして、第55回と同じように以前選んだヘッドホンを挙げて振り返りながら見ていきたいと思います。
・
HP-535
(5千円以下、JTS)
これまでの4回で選んだヘッドホンはHP-X122、HP830、K24P、RP-HT560です。HP-535はこの中だとHP-X122やHP830に近いベクトルで、癖がないと言うよりは多少味付けしてでも楽しく聴かせようとする音作りに感じられます。もっとも、HP-535にはHP-X122やHP830ほどの"楽しさ"はないと思います。
その代わりと言っては何ですが、HP-535の特長と言えば何と言っても音場の広さです。5千円以下どころか、2万円以下の括りでもある程度上位に入ると思います。多少癖はありますが、約2千円ということを考えれば欠点らしい欠点はありません。低域の量は多いですが実質半開放型なのでこもり感はほとんど気になりません。これでこもり感が気になると言う人は、おそらく低域の多さや中高域の少なさによる曇りや中域の音色のおとなしさをこもり感と表現する人だと思います。
前回選んだRP-HT560と同じく、比較的頭の大きい人でも快適な装着感なのではないかと思います。
・
PRO DJ100
(5千円〜1万円、KOSS)
これまでの4回で選んだヘッドホンはPortaPro、UR/40、HD497、SHP8900です。KOSSがこの価格帯で選ばれるのは3回目ということになります。他の価格帯では1台も選ばれていないことを考えると、やはりKOSSはこのあたりの価格帯が得意ということになるのかもしれません。
PRO DJ100は型番にDJと入っていますが、多くのDJ用とはまったく異なる音です。むしろ真逆に近いくらいではないでしょうか。低域の量が多すぎる、こもり感が気になる、線が太く細かい音が聴こえてこない、そういった不満はまったくありません。
日本ではあまり話題になっていないように思いますが、海外ではそこそこ評価が高く、PRO DJ100にマイク・リモコンを付けたPRO DJ200が発売されることを考えると、もっと評価されても良い機種なのではないかと思います。ハウジングが平らで飾り気がないので、自作のステッカーを貼ったりして遊ぶのにも適していると思います。
・
RP-21
(1万円〜2万円、Equation Audio)
これまでの4回で選んだヘッドホンはHP1000、DJ1 PRO、ATH-SX1、RH-300です。RP-21はそのどれとも似ていないという意味では個性的ですが、バランスが悪いとか曲を選ぶといったことはありません。
このヘッドホンの魅力を言葉で説明するのはなかなか難しいです。参考になるかもしれないと思って曲別HP探索で選ばれた際の傾向を見てみましたが、曲の幅がかなり広く、説明が難しいことを再確認する形になりました(
レビューページ
の最下部をご覧下さい)。あえて言うなら、あまり癖は大きくないものの雰囲気、味わい、勢いといったものをしっかり出してくれることが多い、といった感じでしょうか。「測定ではなかなか分からないけれど実際に音楽を聴くと魅力的」という機種はあるものですが、RP-21もそれに分類しても良いのではないかと思います。
なお、RP-21は既に生産終了になっているようですが、まだ取り扱っている店がありますし、後継機のRP-21xも発売されるようなので選ぶことにしました。現状ではこれに匹敵するほどfavoriteなヘッドホンがないということも大きな理由です。
・
KH-K1000
(2万円〜3万円、KENWOOD)
これまでの4回で選んだヘッドホンはSR-225、HD595、DT990PRO、HD25-1です。KH-K1000はこの中だとHD595に近い音だと思いますが、それにしてもかなりバリエーションに富んだ面子であることに違いはないと思います。
音質については、これを「全然ダメ」と言う人はほとんどいないのではないでしょうか。ヘッドホンに個性を求める人にはあまり合わないでしょうが、3万円以下の密閉型ヘッドホンの中ではAH-D2000と並んで最高レベルの完成度を誇っていると考えて良いでしょう。audio-technicaのOEMのようですが、音作りにはKENWOODがかなり口を出したようで、あまりaudio-technicaらしい音ではないように思います。
この機種の欠点について語るのであれば、音質よりも重さとイヤーパッドの形状の方が問題になりそうです。個人的には390gという重さ以上に重く感じられることがありますし、フルサイズなのに耳に当たるイヤーパッドの形状は装着感的にはいただけません。
・
SR-325i
(3万円以上、GRADO)
これまでの4回で選んだヘッドホンはHD650、RS-1、SRS-4040、AH-D5000です。言うまでもなく、SR-325iに最も近いのはRS-1です。時々まったく違う音だと考えている人がいますが、広い目で見ればかなり似た音です。ただし、音楽をどういう風に楽しむかという観点だけで考えるならかなり違うとも言えます。
SR-225とRS-1が先に選ばれていますが、これはSR-225とRS-1を選んだときにはSR-325iを所有していなかったことが原因で、SR-325iよりもSR-225とRS-1が好きということではありません。今の好みとしてはRS-1≒SR-325i>SR-225になると思います。周波数特性や抜けの良さという点で良く似ていますが、個人的な使い分けとしてはRS-1は響きを楽しむときに使うのに対してSR-325iはスピード感を求めるときに使う感じで、どちらが上と言うより方向性が違うように思います。
なお、厳密にはSR-325iは生産終了になっていて、現行製品はカラーやケーブルが変更になったSR-325isとなっています。
今回もなかなかバリエーション豊かな結果になっているように思います。これは1回目のときからなので、私のそういうある種"気の多い"ところはあまり変わっていないということだと思います。だからこそ、このサイトを長く続けて来られたのかもしれません。
書き終わってから気づいたのですが、オーバーヘッド型のfavorite headphonesシリーズは前も約3年のブランクがあったようです。その理由は第55回で書いていますが、それについては今でもあまり変わっていないので、次もまた3年くらい空くかもしれません。ただ、どうしても取り上げたいほどfavoriteなヘッドホンがいくつか出てくればそうも言っていられないと思いますので、そういう展開を期待しつつ今回はこの辺で終わりにしたいと思います。
戻る
TOP
>
不定期コラム
> 第67回