ATH-PRO700、dj1001、HP-M1000、MDR-Z700DJ、PC-100、RP-DH1200。
一部本当にDJ用に分類していいのか疑問の残る機種もありますが、ともかく今回はDJ用ヘッドホンの特集です。
初めにお断りしておきますが、私はDJではありません。従って、今回の内容はDJ用として使用する際の視点ではなく、あくまで音楽鑑賞に使用する際の視点で書いております。
・周波数特性
平均が3になるように5段階で表示しています。
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超低域 |
低域 |
中域 |
高域 |
超高域 |
ATH-PRO700 |
3 |
4 |
2 |
3 |
3 |
dj1001 |
2 |
3 |
4 |
3 |
3 |
HP-M1000 |
3 |
3 |
2 |
4 |
3 |
MDR-Z700DJ |
4 |
4 |
2 |
3 |
2 |
PC-100 |
2 |
3 |
3 |
4 |
3 |
RP-DH1200 |
5 |
4 |
2 |
2 |
2 |
・分解能
ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100≧MDR-Z700DJ≧RP-DH1200≧HP-M1000
HP-M1000以外は価格なりの分解能があると思います。
ATH-PRO700は超低域が若干弱いこと、高域の金属めいた鳴りがあること、芯の通った音であること等から最も分解能が高く感じます。もちろん根本的な実力があってこそですが。dj1001もなかなか良いですが、音の粒が感じられ、それが原因でATH-PRO700と比べると劣っているように感じます。PC-100はdj1001に非常に近いですが、更に音の粒が粗い感じです。MDR-Z700DJは音が太すぎです。RP-DH1200は音が太いだけでなく低音が物凄い量なので他の音域が埋もれています。HP-M1000は悪く言えば音が非常に濁っています。それが独特の味になっていて楽しめるのですが、分解能の悪化に繋がっていることは確かです。
・音場の明確さ
dj1001≒PC-100≧HP-M1000≧ATH-PRO700≧RP-DH1200≧MDR-Z700DJ
dj1001とPC-100はほぼ同じ音場になっています。HFI-650等と同じでやや癖がありながらも広くて明確です。HP-M1000は明確さでは上位2機種に劣りますが、オーソドックスで分かりやすいです。ATH-PRO700もDJ用にしてはかなり明確だと思います。RP-DH1200も悪くないとは思うのですが、とにかく低音が出すぎではっきりしません。MDR-Z700DJは狭すぎです。
・聴きやすさ
MDR-Z700DJ≧HP-M1000≧dj1001≧PC-100≧RP-DH1200≧ATH-PRO700
MDR-Z700DJとHP-M1000はエッジがきつくなく音が太めなためかなり聴きやすいです。ただ、HP-M1000の方が若干高域が出る上に濁りがあるためどちらかと言えば疲れる気がします。dj1001とPC-100もエッジはきつくないのですが、芯の通った中域がキンキンする感じで大音量ではかなり疲れます。RP-DH1200はとにかく低音が強い上響きも豊かでこもり感が酷く、低域で聴き疲れするタイプです。ATH-PRO700は逆にシャープな音でエッジがきつく疲れます。ただし、audio-technicaにしては疲れない方だとは思います。
・原音忠実性
ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100≧MDR-Z700DJ≧HP-M1000≧RP-DH1200
ATH-PRO700以外は原音忠実とは言いがたいです。DJ用に原音忠実性を求めるのは野暮だとは思いますが。
ATH-PRO700は今回取り上げた機種の中では頭一つ出ている感じです。dj1001は全体的に古臭い感じのする音作りですが、その癖さえ除けばそこそこ原音に近いです。PC-100は音の粒が粗い感じで、細部がいまいち表現し切れていない感じです。MDR-Z700DJは普通のDJ用といった音で、塗り潰したように繊細さがありません。HP-M1000は、塗り潰したような感じはMDR-Z700DJほどではないのですが、非常に味付けのされた音です。RP-DH1200はMDR-Z700DJ同様塗り潰した感じがある上、非常に低音が強いため大抵のソースでは原音よりも低い音を鳴らします。
・温かみ
HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧RP-DH1200≧ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100
HP-M1000は低音が出る上、音に丸みがありDJ用とは思えないほど温かみがあります。MDR-Z700DJとRP-DH1200は単純に低音が出る上に塗り潰したような音で、結果的に温かみもそこそこあるといった感じです。ATH-PRO700はエッジがきつめで高域もかなり出るため、温かみより刺激が目立ちます。dj1001とPC-100は太目の芯の通った音で、低域も不足気味なので温かみに欠けるように感じます。
・明瞭さ
ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100≧HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧RP-DH1200
ATH-PRO700は低音が出るわりには非常に明瞭です。音そのものがシャープで、低域が若干薄めで高域の硬い感じがあるためだと思います。dj1001とPC-100は低域が弱めで芯の通った音なので必然的にかなり明瞭です。音の粒が細かく低域が弱い分dj1001の方が若干明瞭に感じますが、ほぼ互角です。HP-M1000は下位2機種よりは低域が弱めで、高域が強い上、濁りはあるもののシャープな音で、明瞭と言って良いレベルだと思います。MDR-Z700DJは明瞭さと言う意味では極普通です。RP-DH1200は低音が出すぎな上に音に丸みがあるので明瞭とは程遠いです。ただし、あまり曇っている感じはしません。
・ノリの良さ
HP-M1000≒MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧RP-DH1200≧PC-100≧dj1001
HP-M1000とMDR-Z700DJはどちらも非常にノリが良く、甲乙つけがたいです。HP-M1000はとにかく楽しく聴ける味付けである一方、MDR-Z700DJは重厚で迫力のある音です。ATH-PRO700は音がシャープで上位機種よりはノリが悪いものの、十分ノリが良いと言えるレベルです。RP-DH1200は低音が出すぎで重苦しくなってしまっています。PC-100とdj1001はどちらも音そのものは悪くないのですが、低音が不足気味です。PC-100の方が音が粗く低音が出るためノリが良いです。dj1001も一般的な見方をするならノリが悪いわけではありません。
・弦楽器の表現
HP-M1000≧ATH-PRO700≧MDR-Z700DJ≧dj1001≧PC-100≧RP-DH1200
金管楽器もそうですが、基本的に今回取り上げた機種はこういった楽器を鳴らすことを想定していないと思います。なので、大前提としてこれらの機種は弦楽器や金管楽器に向いていないとした上で読んでください。
HP-M1000は、人によっては最も弦楽器の表現が下手だと言うかもしれませんが、とにかく心地よく楽しめるかどうかを重視すると、最もうまいと言えます。ただし、原音とは程遠いです。ATH-PRO700は芯の通った清冽な音が楽しめますが、温かみやまろやかさがないです。MDR-Z700DJはSONYらしくどんなソースを聴いても共通の癖が出ますが、それ以外はなかなか良いです。dj1001とPC-100はかなり近いですが、dj1001の方が粗がなく聴きやすいです。RP-DH1200は何を聴いても非常に低音よりで曇ってしまいます。
・金管楽器の表現
ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100≧HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧RP-DH1200
ATH-PRO700はaudio-technicaにしてはおとなしめかもしれませんが、それにしても鮮やかです。金属的な鳴りが嫌いでないなら非常に魅力的と言えます。dj1001とPC-100はかなり近いですが、PC-100の方が粗く、dj1001の方が澄んでいます。HP-M1000はなかなか楽しめますが、ソースによっては安っぽくなってしまいます。MDR-Z700DJとRP-DH1200は低い音で鮮やかさに欠けます。
・打ち込み系の音の表現
HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧PC-100≧dj1001≧RP-DH1200
どの機種も基本的になかなかうまいと思います。
HP-M1000は独特の相性の良さがあります。とにかくノリ良く打ち込み系の音を楽しみたいなら、これ以上のものはそうないかもしれません。ただし、人によっては濁りが我慢できないでしょう。MDR-Z700DJは万人にすすめられる非常に癖のない鳴らし方をします。ATH-PRO700はaudio-technicaのDJ用ということで想像したとおりの音だと思います。芯が通っていますがやや厚みが薄く、高域の線の細さがソースを選びます。PC-100とdj1001は相性は良いのですが、低音が不足に感じられます。逆にRP-DH1200は低音が出すぎで高音が不足しています。
・ヴォーカルの艶っぽさ
HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧dj1001≧PC-100≧RP-DH1200
HP-M1000はDJ用とは思えないくらい艶っぽいです。おそらくDJ専門機というよりは半ば音楽鑑賞用なのでしょう。MDR-Z700DJとATH-PRO700は特に艶っぽいというわけではありませんが、下位3機種よりは良いです。dj1001とPC-100は芯が通っていてなおかつ塗り潰したような濃さがあり、艶っぽさが足りません。RP-DH1200はさらに濃く塗り潰したような感じです。ですが、人によってはある種の色気を感じると言うかもしれません。
・側圧の弱さ
MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧HP-M1000≧dj1001≒PC-100≧RP-DH1200
どの機種も側圧はやや強めです。
MDR-Z700DJは最も側圧が弱いですが、反面イヤーパッドが浅く最も耳に当たるため、痛さ的にはかなりのものがあり、人によっては他の機種より側圧が強いと感じるかもしれません。ATH-PRO700はMDR-Z700DJよりわずかに強い程度です。HP-M1000、dj1001、PC-100は他の機種と違い、あまり耳に当たらないため側圧が弱いと感じる人もいるかもしれませんが、上位2機種よりは確実に側圧が強いです。RP-DH1200は最も側圧が強いです。重量も最も重いため仕方ないのかもしれませんが。
・耳への負担の小ささ
dj1001≒PC-100≧HP-M1000>MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧RP-DH1200
上位3機種は、耳の小さい人はほとんど当たらないレベルだと思います。そのため、側圧は強めにもかかわらず耳への負担はかなり小さいです。逆に、下位3機種はイヤーパッドの内周の縦が短く、もろに耳たぶを押さえつけるため痛いです。順位は側圧の弱い順になっていますが、イヤーパッドの深さはRP-DH1200>ATH-PRO700>MDR-Z700DJなので、人によっては順位が逆転すると思います。
・頭頂部への負担の小ささ
dj1001≒PC-100≧HP-M1000≧MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧RP-DH1200
正直言ってどの機種もかなり負担が大きいです。
dj1001とPC-100はヘッドバンドにクッションが付いていますが、小さい上にあまり柔らかくないため、クッションの付いていない他の機種とそれほど変わりません。HP-M1000は他の機種と比べてフィットする構造になっている上、下位3機種より軽めなため、クッションが付いていないわりには痛くありません。下位3機種は重量の軽い順ですが、側圧の弱さもこの順なので、人によっては側圧の最も強いRP-DH1200の負担が最も小さいと感じるかもしれません(側圧が強いほど頭頂部への負担が小さくなる傾向がありますので)。ただし、基本的にはどれもクッションが付いていない上、300g以上あるためかなり痛いです。
・頭部への接触面積
ATH-PRO700≒HP-M1000≒MDR-Z700DJ≒RP-DH1200>dj1001≒PC-100
上位4機種はやや幅広のヘッドバンドがそのまま当たります。どれも幅の広さはほとんど同じです。下位2機種はほとんど同じ作りで、ヘッドバンドの一部に付いたクッションが当たります。
・イヤーパッドの材質の肌触り
ATH-PRO700≒dj1001≒MDR-Z700DJ≒PC-100≒RP-DH1200≧HP-M1000
HP-M1000はシワが気になる非常に安っぽく耐久性に乏しそうな人工皮革、それ以外はレザータイプの人工皮革です。微妙な違いはありますが、HP-M1000以外の肌触りはほぼ同じです。ATH-PRO700はややビニールっぽく、dj1001とPC-100は天然皮に近い感じです。
・ずれにくさ
HP-M1000≧PC-100≧dj1001≧MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧RP-DH1200
DJ用というのは側圧が強くて激しい動きにも耐えられると言われますが、激しい動きはともかく普通の動きに対しては音楽鑑賞用の機種よりずれやすいです。側圧が強いのにずれやすい理由は、ヘッドバンドが滑りやすかったりイヤーパッドが耳を覆いきらなかったりすることです。
HP-M1000は真上を向いたり真下を向いたりしてもあまりずれません。PC-100とdj1001はヘッドバンドのクッションが小さいせいか、真上を向いたらずり落ちます。ATH-PRO700とRP-DH1200は真上を向いたらずり落ちるだけでなく、頭を左右に振ると上位3機種よりずれやすいです。MDR-Z700DJはイヤーパッドが浅いためどんな動きに対しても非常にずれやすいです。
・蒸れにくさ
MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700≧RP-DH1200≧HP-M1000≧dj1001≒PC-100
上位3機種は耳を覆いきらないため蒸れにくいです。ただし、耳たぶを押さえつけたりするので、下位3機種とは別の不快感があります。HP-M1000は極普通の密閉型のレベルです。dj1001とPC-100は非常に密閉度が高いため蒸れますが、全体的な装着感は良いですし、イヤーパッドが顔に触れる面積も狭めなので、不快感はあまり感じません。
・イヤーパッドの内周のサイズ
ATH-PRO700:50mm×50mm
dj1001:44mm×54mm
HP-M1000:38mm×66mm
MDR-Z700DJ:52mm×52mm
PC-100:44mm×55mm
RP-DH1200:52mm×52mm
最も幅の狭いのはHP-M1000ですが、それほど気にならないレベルです。縦が短いのはATH-PRO700で、もろに耳たぶを押さえます。その点はMDR-Z700DJとRP-DH1200もほとんど同じです。
・音漏れの少なさ
dj1001≒PC-100≧HP-M1000≧RP-DH1200≧MDR-Z700DJ≧ATH-PRO700
どれも音漏れは少ないと言ってよいレベルだと思います。あまり大きな差はありません。
ただ、下位3機種は耳をしっかり覆わないので、耳の大きさや形状によってイヤーパッドとの間にできる隙間の大きさが変わって、音漏れにも差が出ると思います。
なお、遮音性はdj1001≒PC-100≧HP-M1000≧RP-DH1200≧ATH-PRO700≧MDR-Z700DJです。
簡単にコメントを書いてみます。
ATH-PRO700:
いかにもaudio-technicaのDJ用といった音です。DJ用にしてはフラットです。
dj1001:
DJ用とは思えないほど低音がタイトです。ドライバがコバルトマグネットのせいか独特の癖があるので、なかなか人にすすめにくい機種です。
HP-M1000:
HP-D7と同様、分解能は低いものの非常に楽しめる機種です。
MDR-Z700DJ:
最もオーソドックスなDJ用と言って良いと思います。
PC-100:
音質、装着感、作り等dj1001にかなり近いです。価格は約半額なので、コストパフォーマンスは良いと思います。
RP-DH1200:
すべてのヘッドホンの中でも1、2を争うほど低音が出ます。よほど低音が好きな人以外にはおすすめできません。
今回取り上げたヘッドホンの得意なジャンルはすべてポップスです。その反面DJ用だけあってクラシックは苦手です。また、普通の音楽鑑賞用よりも耐入力性に優れていて、音量を大きめにしても音が割れにくい傾向があります。
原音忠実でフラットなものだけがいいヘッドホンというわけではありません。時には味付けされていてもノリ良く楽しみたい気分のときもあるでしょう。ソースがいまいちでも楽しく聴かせてくれたりもします。
そういうヘッドホンを求めている方々に今回の内容が参考になれば幸いです。
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