A8

音質
 やや高音よりのかまぼこ。低域はローエンドが不足に感じるが、厚みや量は最低限ある。中域は若干うわずり気味で、非常にはっきり聴こえてくる。高域はかなり高く硬い音だが、量は過剰ではないし、質も悪くない。
 分解能及び原音忠実性はなかなか良い。音場感はそれなりだが、価格を考えれば悪いと言うべきかもしれない。エッジのきつさは程々で、適度な刺激が楽しめる。聴き疲れとしては問題ないレベル。
 非常に明瞭で、音の鮮やかさもなかなか良い。厚みは普通。温かみは感じられない。これは低域不足なだけでなく、根本的に硬く冷たい質感だからだろう。ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良いが、価格を考えると微妙。ノリの良さと繊細さをある程度両立している。ただし、ノリの良さは切れや軽快さからくるもので、低域の量で押してくる迫力のあるタイプではない。響きは音の高さによってかなり違う。低域はあっさりで高域はやや豊か。
 弦楽器はヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しみたいときには良いが、チェロ等の低域はかなり不満。繊細さはあるが、心地よさにはやや欠ける。金管楽器は高く鮮やかでかなり楽しめる。打ち込み系の音の表現はなかなかうまいのだが、低域の量が不足に感じられることが多い。
 上記の内容はアタッチメント不使用の際のもの。アタッチメントを使用するとやや低音よりになり、全体的に柔らかく温かみのある音になる。

装着感
 普通。可動部が多く、調節できる範囲が広いのは良いが、慣れるまではきちんとした位置に装着するのに手間取る。また、装着する際に髪を挟んで痛い思いをすることもある。フックがついている分、フックの無い通常のインナーイヤーよりずれにくいが、装着時の不快感が増しているのも確か。ただ、フックがゴムコートされているためか耳にそれほど負担はかからないようだ。当然ながら、フックの無い通常のインナーイヤーよりも重い。
 付属しているアタッチメント(通常のスポンジ状)を使用すると、ずれにくくなり更に装着感が良くなるように感じる。

その他
 遮音性は悪い。音漏れ防止は普通。
 作りはなかなか良い。デザインは派手さは無いが、万人向きでかなり良いと言って良いだろう。インピーダンスや音圧感度などのスペックは公開されていないが、実際に使用してみるとポータブル機器でも十分音量を取れるレベル。
 プラグはミニプラグ。コードの太さは合流前は約1mm、合流後は幅約2.5mm・厚さ約1mm、やや硬いが扱いづらさは感じない。

付属品
アタッチメント×2
2m延長コード
キャリングポーチ



参考
メーカー製品ページ

比較メモ
ATH-CM7TI
A8はやや高音よりのかまぼこ、ATH-CM7TIは高音より。全体的にかなり似た音を鳴らす。低域はA8の方がやや量が多いが、周波数によって鳴らし方が違ってくるので一概には言えない。中域から中高域はA8の方がやや高い音で目立つ。高域はATH-CM7TIの方が量が多く、硬くとがった音を鳴らす。分解能はATH-CM7TIの方がやや上。音場感、原音忠実性はほぼ互角。エッジのきつさはかなり近いが、ATH-CM7TIの方が芯の通った音で聴き疲れするように感じる。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-CM7TIの方がやや上。厚みはATH-CM7TIの方が若干ある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリの良さと繊細さをある程度両立している。響きはかなり近いし、低域があっさりで高域が豊かな点まで似ている。弦楽器はほぼ互角の表現。金管楽器は、どちらもなかなかうまいが、高い音になるほどATH-CM7TIの方が良いように感じる。打ち込み系の音の表現はどちらも相性は良いのだが、低域不足が難点なところは良く似ている。音質的にはどちらか片方持っていれば事足りるように感じるが、分解能や高域の質・量を求めるならATH-CM7TI、そうでなければA8か。

EP-AVNAIR
A8はやや高音よりのかまぼこ、EP-AVNAIRはややドンシャリ。低域はEP-AVNAIRの方がやや量が多い。重心が低く厚みもあるし、制動も良い。A8の方が薄く曇ったような質。中域はどちらも低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、質的には多少違いがある。A8の方がやや太く、EP-AVNAIRの方がやや明るい。高域はEP-AVNAIRの方が若干量が多い。EP-AVNAIRの方が細く硬く明るい質で目立つ。分解能はEP-AVNAIRの方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は、広さはほぼ同等、明確さはEP-AVNAIRの方が上。原音忠実性はEP-AVNAIRの方が若干上。どちらも一聴して大きな違和感はない。原音の粗や生っぽさはEP-AVNAIRの方が感じられる。エッジはどちらかと言うとEP-AVNAIRの方がきつく、若干聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろEP-AVNAIRの方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはEP-AVNAIRの方がやや上。厚みはEP-AVNAIRの方がやや上だが、それよりもEP-AVNAIRの方が硬く締まった音である点に目が行く。温かみはA8の方がやや感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベルだが、ヴォーカルの質にはそれなりに違いがある。柔らかく鳴らして欲しいならA8、透明感が欲しいならEP-AVNAIR。EP-AVNAIRの方がノリが良い。切れやスピード感で勝っている。EP-AVNAIRの方が明るく瑞々しい音。響きはA8の方がやや豊か。弦楽器は微妙。ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならEP-AVNAIRの方が良いが、チェロやコントラバスを心地よく聴きたいならA8の方が良い。生楽器らしさはEP-AVNAIRの方が感じられる。金管楽器はA8の方が太く、EP-AVNAIRの方が金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はEP-AVNAIRの方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、基本的にはEP-AVNAIR、EP-AVNAIRでは明るすぎるとか聴き疲れするという不満があるならA8。

HE580
A8はやや高音よりのかまぼこ、HE580はやや低音より。低域はHE580の方が低い音を鳴らすし量も多い。中域はA8の方がやや高めの音で低域の邪魔もないためはっきり聴こえる。高域はA8の方がやや細く高く、量も若干多い。分解能及び原音忠実性はA8の方がかなり良い。音場感は若干A8の方が良いように感じる。A8の方がエッジがきついが、絶対値的にはまったく問題ないレベルで、特に聴き疲れもしない。明瞭さ、音の鮮やかさはA8の方がかなり上。厚みは比較しにくい。A8が線の細い硬めの音であるのに対して、HE580は線の太い音。温かみは低域が出る分HE580の方が感じれる。ヴォーカルの艶っぽさはA8の方が上。ノリの良さならHE580、繊細さならA8。響きはA8の方がやや豊か。弦楽器はA8の方が圧倒的に繊細だが、チェロ等の低域が欲しい場合には物足りないだろう。金管楽器はA8の方が高く鮮やかだが、力強さと言う点ではHE580もなかなかのものを持っている。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなか良いが、一長一短な面もある。A8は硬い質感は合うのだが線の細さと低域不足は合わないし、HE580は低域の量と音の太さは合うのだが切れに欠ける。使い分けるなら、基本的にはA8で、A8では低域が足りないときにはHE580だろう。

MDR-E888LP
A8はやや高音よりのかまぼこ、MDR-E888LPはかなりフラット。低域はMDR-E888LPの方がローエンドまで素直に出る。A8はローエンドが不足。低域の量そのものにはそれほど差は無い。中域はA8の方が前に出てくる。高域はA8の方がやや高い音を鳴らす。分解能、原音忠実性はA8の方が上。音場感はMDR-E888LPの方がやや上。どちらもそれほど聴き疲れしないが、どちらかと言えばA8の方が芯の通った硬い音で聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはA8の方が上。厚みは質感が違うので判断しにくい。温かみはMDR-E888LPの方が上。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリの良さと繊細さをある程度両立しているが、低域が出る分MDR-E888LPの方がノリが良いと感じる人が多いだろうし、微細な音の表現がうまい分A8の方が繊細だと感じる人が多いだろう。ただし、芯の通った感じはA8の方がノリの良さに繋がっているし、柔らかい質感はMDR-E888LPの方が繊細さに繋がっている。ソースや聴く人によって感じ方が変わってくるだろう。響きは、低域はMDR-E888LPの方が豊か、高域はA8の方が豊か。A8の方が硬くて冷たく輪郭のはっきりした音。弦楽器はMDR-E888LPの方が心地よいが、ヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しみたいならA8の方が合うだろう。金管楽器はA8の方が高く硬く鮮やかな鳴り。打ち込み系の音の表現はA8の方が相性が良いが、低音が不足に感じられる人が多そう。その場合にはMDR-E888LPの方が良いかもしれない。使い分けるなら、硬い音が好きならA8、柔らかい音が好きならMDR-E888LPか。

MX500
A8はやや高音よりのかまぼこ、MX500はやや高音より。低域はA8の方が厚みがありしっかり鳴らしてくれる。MX500は厚みが薄く何となく鳴らしている印象。中域はどちらもかなりはっきり聴こえてくる。高域はどちらかもしっかり高い音を鳴らしてくれるが、A8の方が若干高いか。分解能、原音忠実性はA8の方が上。音場感はほぼ互角。MX500の方がややエッジがきつい印象だが、A8の方が硬く芯の通った音で疲れるため、総合的な聴き疲れはほぼ互角。いずれにせよ、どちらもそれほど聴き疲れしない。明瞭さ、音の鮮やかはA8の方が上。厚みはA8の方がかなりある。温かみはMX500の方がやや感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。A8の方がノリが良くかつ繊細。響きはどちらも適度でほぼ互角。弦楽器はBGMとしてでしゃばらないMX500の鳴らし方も悪くないが、しっかり聴き込むにはA8の方が良いだろう。金管楽器はどちらもなかなか高く鮮やかだが、A8の方がやや上の表現力を持っている。打ち込み系の音の表現はA8の方がうまい。音の厚みや切れが合う。使い分けるなら、基本的にはA8、A8の冷たい印象が嫌ならMX500か。

NW-STUDIO PRO
A8はやや高音よりのかまぼこ、NW-STUDIO PROはかなりフラット。低域はNW-STUDIO PROの方が若干量が多い。NW-STUDIO PROの方がぼやけていて癖のある質。重心はNW-STUDIO PROの方が若干低い。低域から中域にかけてNW-STUDIO PROの方が歪みが気になることが多い。中域はA8の方が埋もれずにはっきり聴こえてくる。中高域はNW-STUDIO PROの方がしっかり出る。高域はほぼ同量。A8の方が線が細く、粗や癖がない。A8がハイハットをシャンと鳴らすところを、NW-STUDIO PROはチンと鳴らすような音色の違いがある。分解能はA8の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。特に一つ一つの音の微細な描写を粗なく丁寧にこなしてくれる点は良い。音場感はA8の方がやや広く明確で、癖がなく把握しやすい。A8の方が音像がシャープ。NW-STUDIO PROの方が頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はA8の方が上。一聴して違和感がない。原音の粗や生っぽさはA8の方が若干感じられる。エッジはNW-STUDIO PROの方がややきつく、歪みや違和感で疲れる面もあり、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろA8の方がやや細く刺さる、NW-STUDIO PROの方が粗っぽく痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはA8の方が若干上。厚みはNW-STUDIO PROの方がややある。温かみはNW-STUDIO PROの方が若干感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。A8の方が粗や癖がなく聴きやすい、NW-STUDIO PROの方が響きの相性が良いソースでは魅力的に感じられることがある。A8の方がノリの良さと繊細さを両立している。A8の方が切れやスピード感がある。響きはNW-STUDIO PROの方がやや豊か。全体的にNW-STUDIO PROの方がかなり癖のある音。弦楽器はA8の方がうまい。繊細で粗がないし、音色も自然。金管楽器は、A8の方が細く癖がない、NW-STUDIO PROの方が太く力強い。打ち込み系の音の表現はA8の方がややうまい。NW-STUDIO PROは付帯音の多さが合わないことが多い。使い分けるなら、基本的にはA8、エッジや響きの相性が良いソースのみNW-STUDIO PRO。













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 開放型 - - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
16g - 1m 両出し(Y型) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 3 2 3 5 4 均(中、高) 14700円

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公開日:2006.4.22