Super.fi 5 Pro

音質
 かなりフラット。低域はローエンドまで素直に出る印象で、量も過不足ない感じ。ただし厚みは薄く、中域まで曇っているように感じる。中域は低域の曇りに若干覆われて地味めだが、きちんと聴こえる。高域は変な癖や粗がないのは良いが、控え目で刺激に欠ける。ただ、その代わり安心して聴ける。
 分解能はかなり良いが、価格を考えればいまいち。低域の曇りがなければもっと良く感じただろう。あまり音の細部まで緻密に描写する感じではない。音場感はインナーイヤーにしては非常に良い。原音忠実性はかなり良いが、それは癖や味付けがないという意味で、原音の粗や生っぽさがそれほど強く感じられるわけではない。エッジはきつくなく、聴き疲れしにくい。ホワイトノイズが非常に大きいため、安価なポータブル機器等に接続するときには注意が必要。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みは普通からやや薄めか。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはあまり感じられない。ノリが良いわけでも繊細なわけでもなく、モニター的な冷静な鳴らし方。響きは普通。
 弦楽器はチェロ等の低域を楽しむには量感が足りないし、ヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しむには鮮やかさが足りない。ギターもエッジが感じられず、楽しめない。ただ、粗はないためそれなりに心地よい。金管楽器は地味。原音忠実性を求めるなら悪くないだろうが、刺激や鮮やかさを求めるには向かない。打ち込み系の音の表現はいまいち。低域の締まり、音の厚み、スピード感、鮮やかさといったものが足りない。
 基本性能は高いし、モニター用途には向いているのだろうが、音楽を楽しむにはあまり向かない機種。

装着感
 普通。ER-4Sほど耳の奥まで挿入するタイプではないが、MDR-EXQ1ほど浅くもない。コードを耳の後ろに回さなければならないため、コードが肌に触れるのが気になる人も多いだろう。また、耳にかけるフックの部分は針金が入っていてしっかり耳に固定できるためずれにくいのは良いが、これも不快に感じる人も多いだろう。装着するのもかなり面倒。耳の穴に対する負荷はE4cと同レベルで、特に痛くなる等の不満はない。
 デフォルトのイヤーピースの材質はシリコン(シングルフランジ・シリコンイヤチップのMサイズ)。デフォルトのイヤーピースに加えて、シングルフランジ・シリコンイヤチップツーサイズ各2個、ダブルフランジ・シリコンチップ、フォームチップと、多くのイヤーピースが付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 作りは価格の割には安っぽい。デザインはやや好みが分かれそう。
 ホワイトノイズが非常に大きいが、付属のサウンドレベル・アテニュエータを使用するとまったく気にならないレベルに抑えることができる(ただし、当然のことながらかなり音量が取りづらくなる)。コードを耳の後ろに回さなければならない特殊な構造で慣れるまで装着しづらい点や、LとRの表示があるとは言え非常に見づらい点等、使い勝手が極めて悪いのが残念。コードが着脱可能だが、やや固いので取り外すときには注意が必要だし、一般的な使い方をしている分には意味のない機構だろう。
 プラグは金メッキのL型ミニプラグ。コードの太さは約1.5mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。付属品が充実しているのが嬉しい。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
交換用イヤーピース4種類
キャリングポーチ
収納ケース
サウンドレベル・アテニュエータ
クリーニングツール



参考
メーカー製品ページ
代理店製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
E2c
全体的に、別メーカーにしてはかなり似た音を鳴らす。どちらもかなりフラットだが、どちらかと言うとE2cの方がドンシャリ。低域の量はほとんど同じだが、E2cの方が若干厚みがある。中域はどちらもそれなりに聴こえてくるが、E2cの方が低域の曇りに邪魔されない感じ。高域も低域同様意外と似ていて、どちらもそれほど派手な表現ではないが、どちらかと言えばE2cの方が高い音を鳴らす。分解能、原音忠実性はほぼ互角だが、どちらかと言えばSuper.fi 5 Proの方が上。音場感はSuper.fi 5 Proの方が良い。どちらもエッジはきつくなく聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてE2cの方が若干上に感じる。かなり似てはいるものの、E2cの方がノリが良く、Super.fi 5 Proの方がモニター的。響きはSuper.fi 5 Proの方がやや豊か。Super.fi 5 Proの方がホワイトノイズがかなり大きい。弦楽器、金管楽器ともに良く似た鳴らし方ではあるが、個人的にはE2cの方が味付けがあるぶん楽しめるように感じる。そもそも、E2cの味付けもSuper.fi 5 Proと比べれば感じられるだけで、基本的にはかなり原音忠実だし、普通は問題にならないだろう。打ち込み系の音の表現はE2cの方がうまい。低域の厚みや音の切れがマッチする。価格の割にはあまり差が感じられない2機種。使い分けるなら、音場感や原音忠実性を重視するときはSuper.fi 5 Pro、それ以外はE2c。

E4c
どちらもかなりフラット。低域は、ローエンドはSuper.fi 5 Proの方が出るし、全体的な量も若干多いように感じるが、厚みや圧力はE4cの方がある。中域はE4cの方が低域に邪魔されず、しかもやや高めの音ではっきり聴こえてくる。高域は意外と似た鳴らし方だが、E4cの方がやや高く硬い音。分解能はほぼ互角だが、E4cに比べるとSuper.fi 5 Proは若干曇っているように感じるため、どちらかと言えばE4cの方が良く感じる。音場感はSuper.fi 5 Proの方がやや上。原音忠実性はSuper.fi 5 Proの方が上。E4cは作ったような明るさがあるが、Super.fi 5 Proはかなり味付けの少ない音。E4cの方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはE4cの方が上。厚みはE4cの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSuper.fi 5 Proの方が上。ノリの良さならE4c、繊細さならSuper.fi 5 Pro。響きはSuper.fi 5 Proの方がやや豊か。Super.fi 5 Proの方がホワイトノイズがかなり大きい。弦楽器はSuper.fi 5 Proの方が原音に近い上、心地よく楽しめる。金管楽器はE4cの方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はE4cの方がうまい。音の厚み、切れ、スピード感が違う。使い分けるなら、ポップスやロック、ブラスメインの曲をノリ良く楽しみたいときはE4c、それ以外はSuper.fi 5 Pro。

ER-4S
どちらもかなりフラットだが、どちらかと言うとER-4Sの方がドンシャリか。低域はER-4Sの方がしっかり低い音を鳴らしてくれるし厚みもある。Super.fi 5 Proの低域は薄く曇っているような印象。中域は曇りに邪魔されないだけでなく、やや高い音を鳴らすためER-4Sの方がはっきり聴こえてくる。高域はER-4Sの方が細く高い。分解能はER-4Sの方が上。音場感はどちらもインナーイヤーにしては非常に良い。あえて違いを探すなら、ER-4Sの方が奥行きがあり、Super.fi 5 Proの方が二次元的な広さがある。原音忠実性はSuper.fi 5 Proの方がやや上か。ER-4SはSuper.fi 5 Proと比べると若干音楽鑑賞向けの音作りになっているように感じる。ER-4Sの方がエッジがきついが、聴き疲れとしてはまったく問題ないレベル。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてER-4Sの方が上。ER-4Sは非常に繊細であるのに対して、Super.fi 5 Proはモニター的。響きは、低域はSuper.fi 5 Proの方が豊か、高域はER-4Sの方が豊か。Super.fi 5 Proの方がホワイトノイズがかなり大きい。弦楽器はER-4Sの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はER-4Sの方が細く硬い音で楽しめるが、力強さや原音忠実性を求めるならSuper.fi 5 Proの方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はSuper.fi 5 Proの方が若干うまいか。ER-4Sは音の細さが合わない。使い分けるなら、基本的にはER-4S、よほど原音忠実性や音場を重視するときはSuper.fi 5 Pro。

IE-20 XB
IE-20 XBは低音よりのドンシャリ、Super.fi 5 Proはかなりフラット。低域はIE-20 XBの方が低い音で量も多い。特に、所謂重低音に大きな差がある。IE-20 XBに比べると、Super.fi 5 Proの低域は紙のように薄い。中域は、IE-20 XBが低音の量にかなり負ける感じなのに対して、Super.fi 5 Proは低域に曇りに少し覆われる感じ。高域はIE-20 XBの方が高い音で目立つ。分解能はほぼ互角。IE-20 XBの方がかなり低音の量が多いため、低域があるソースではSuper.fi 5 Proの方が音の分離がかなり良いように感じがちだが、低音がないソースならほぼ互角のものを持っているし、一つ一つの音の微細な描写はむしろIE-20 XBの方が勝っているように感じる。音場感はSuper.fi 5 Proの方がやや上。奥行きがあるし、低音のあるソースではどうしてもIE-20 XBの方が見通しが悪くなるため大抵のソースではSuper.fi 5 Proの方が良く感じがちになる。原音忠実性はSuper.fi 5 Proの方が上。IE-20 XBはとにかく低音の量が多すぎる。IE-20 XBの方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さは、低域がある程度あるソースではSuper.fi 5 Proの方が上だが、低域のないソースではIE-20 XBの方が上。音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてIE-20 XBの方が上。これは周波数特性の違いによるものではなく、音の質感そのものだけ比べたとしても同じ結果になる。IE-20 XBの方がノリが良い。響きはIE-20 XBの方が豊か。弦楽器はIE-20 XBの方が心地よい。粗のなさという点だけでいえばSuper.fi 5 Proの方が上だが、だからと言って繊細であるとか原音の生っぽさが感じられるとかではない。金管楽器はIE-20 XBの方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はIE-20 XBの方がうまい。Super.fi 5 Proは淡々と鳴らす感じで元気が足りないし、低域の量も不満。使い分けるなら、バランス良く聴きたいならSuper.fi 5 Pro、そうでないならIE-20 XB。

Image X10
どちらもかなりフラット。低域はSuper.fi 5 Proの方が薄く曇ったような質で、やや量が多い。中域はImage X10の方がやや高い音で、低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。高域はImage X10の方が細く高い音で量も多い。この2機種を比べると、Image X10の方が高音よりと言える。分解能はImage X10の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ多少差がある。音場感はSuper.fi 5 Proの方が広く、Image X10の方が見晴らしが良く明確。原音忠実性はImage X10の方が上。一聴して違和感が小さいし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。エッジはImage X10の方がややきつく聴き疲れしやすい。特にヴォーカルのサ行は痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはImage X10の方が上。厚みはほぼ同レベルだが、それよりもImage X10の方が締まった音である点に目が行く。温かみは、ヴォーカルの艶っぽさはImage X10の方がやや上。ただし、Super.fi 5 Proの方が薄く曇っていてスモーキーなので、そういう表現を求めているならSuper.fi 5 Proの方が良いこともあるだろう。Image X10の方が繊細。響きは、低域はSuper.fi 5 Proの方がやや豊か、高域はImage X10の方がやや豊か。弦楽器はImage X10の方が繊細で生楽器らしさも感じられて良い。金管楽器はImage X10の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はImage X10の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、基本的にはImage X10、Image X10では高域の量が多いとかヴォーカルのサ行が痛いという不満があるならSuper.fi 5 Pro。あるいは、基本的にはImage X10、ロック等の一部相性が良い音源のみSuper.fi 5 Pro。

MDR-EXQ1
MDR-EXQ1はややドンシャリ、Super.fi 5 Proはかなりフラット。低域はMDR-EXQ1の方がかなり低い音で厚みもある。中域は量的にはSuper.fi 5 Proの方が出るのだが、MDR-EXQ1の方が良く聴こえがち。Super.fi 5 Proの低域の薄い曇りと、MDR-EXQ1のやや硬い音がそう感じさせるようだ。高域はMDR-EXQ1の方が硬く高い音を鳴らす。分解能はSuper.fi 5 Proの方が良いのだろうが、低域の薄い曇りと塗りつぶしたような繊細さのなさのためにMDR-EXQ1の方が良いように感じがち。音場感はSuper.fi 5 Proの方が良い。原音忠実性はSuper.fi 5 Proの方が良いが、原音の実体感のようなものはMDR-EXQ1の方が感じられる。MDR-EXQ1の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてMDR-EXQ1の方が良いように感じる。ただし、これはSuper.fi 5 Proと比べて味付けが多いためだと思われる。MDR-EXQ1はかなりノリが良いのに対して、Super.fi 5 Proはモニター的で冷静な鳴らし方。響きはMDR-EXQ1の方が豊か。Super.fi 5 Proの方がホワイトノイズがかなり大きい。弦楽器はSuper.fi 5 Proの方が原音に近いのだが、心地よさはMDR-EXQ1の方が上。金管楽器はMDR-EXQ1の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はかなり違うので評価が別れそう。MDR-EXQ1はしっかりした低域と音の厚みがマッチする反面、線の細い感じや響きの豊かさが合わない。Super.fi 5 Proは響きがあっさりでスマートに鳴らしてくれるが、厚みやスピード感には欠ける。使い分けるなら、刺激的にノリ良く音楽を楽しみたいならMDR-EXQ1、刺激やノリの良さは不要で無難に鳴らして欲しいならSuper.fi 5 Pro。

Westone3
Super.fi 5 Proはかなりフラット、Westone3は低音よりのドンシャリ。低域はWestone3の方がある程度量が多い。重心が低く厚みもあるため存在感がある。Super.fi 5 Proの方が薄く曇ったような質、Westone3の方が柔らかくぼやけ気味な質。中域はSuper.fi 5 Proの方が低域に邪魔されないが、Westone3は低域の量に負けるところはあるものの独特の分離の良さで聴こえてくる印象。高域はWestone3の方がやや多く、明るく金属的で目立つ。分解能はWestone3の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろやや勝っている。音場感はSuper.fi 5 Proの方がやや広く、Westone3の方がやや明確。原音忠実性はWestone3の方がやや上。Westone3は低域の量が多すぎる点がマイナスだが、それを除くと違和感のなさではむしろ勝っている。原音の粗や生っぽさはWestone3の方が感じられる。エッジはWestone3の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろWestone3の方がやや痛い。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはWestone3の方が上。厚みはWestone3の方がある。温かみはWestone3の方がしっかり感じられる。低域が多いだけでなく、低域から中域が全体的に柔らかく心地よいため。ヴォーカルの艶っぽさはWestone3の方がやや感じられる。Westone3の方が低域に基づく迫力や力強さがある。切れやスピード感はどちらもあまり感じられない。響きはWestone3の方がやや豊か。Super.fi 5 Proの方が表面を塗りつぶしたようなのっぺりとした音に感じられることがある。Westone3の方が音楽の情感やニュアンスをしっかり伝えてくれる。弦楽器はWestone3の方が生楽器らしさが感じられて良い。チェロ等の低域の心地よさにしろヴァイオリン等の澄んだ感じにしろWestone3の方がしっかり出してくれる。金管楽器はWestone3の方が鮮やかかつ芯が通っていて力強い。打ち込み系の音の表現はWestone3の方がややうまい。音の質感の相性で勝っている。使い分けるなら、基本的にはWestone3、Westone3では低域が多すぎるとか聴き疲れするという不満があるならSuper.fi 5 Pro。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生


曲別HP探索2
第2回 Svefn-G-Englar/Sigur Ros「Agaetis Byrjun」より
第16回 Parachute/トクマルシューゴ「EXIT」より
第18回 Made In Hongkong/Fennesz「Endless Summer」より


       


※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
バランスド・アーマチュア 密閉型 20Hz〜16kHz 119dB 21Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
9g - 1.2m 両出し(Y型) 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4.5 3 4 5 4 5 31200円
※生産終了

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公開日:2006.5.28