第69回 生産終了になった機種の思い出 2回目

 1回目をやったときには2回目をやることは考えていませんでしたが、あれから6年以上経ち生産終了になった機種もかなり増えましたし、要望もあったのでやってみることにしました。


HGP-755(ALPEX)
 TSUTAYAや新星堂に置かれていることが多いALPEXのヘッドホンです。ALPEXは5千円以下の製品ばかりだったのですが、その中で初めて約1万円という価格帯に登場したのがこのHGP-755です。TSUTAYAや新星堂の店頭でのみ販売されていたような気がします。少なくとも、私が購入したときはネット通販はなく、何店舗も歩き回ってようやく見つけました。ある意味で最も苦労して購入したヘッドホンかもしれません。音質については特に語るほどのものではない印象ですが、同じPremi-onシリーズのカナル型HGP-710と似た傾向の音なので、きちんと音作りしているように思いました。

ATH-W1000(audio-technica)
 ハウジングが美しいことで有名なヘッドホンです。audio-technicaは木のヘッドホンをいくつも出していますが、ATH-W1000はヘッドホンがブーム的に盛り上がり始めた時期の製品だったこともあり、その中でもかなり売れた製品なのではないかと思います。ATH-W1000Xが後継機的位置付けですが、外観も音質もかなり異なるので、ATH-W1000X発表当時はATH-W1000を惜しむ声が多く聞かれました。

T-7M(FOSTEX)
 要望にお応えして取り上げたものの、それからすぐに生産終了になってしまった機種です。そういうことはこれまでに何度もありますが、T-7Mについては15年以上に渡って販売されてきた機種が購入直後に生産終了になってしまったかたちで、間の悪さを呪わずにいられません。一応後継機のTH-7が出ていますが、音はある程度違います。T-7MにはK501に通じるような繊細さがあるのですが、TH-7はもう少しニュートラルよりになっているように思います。完成度は上がっているのかもしれませんが、個人的にはT-7Mの魅力がスポイルされているように思えて少し残念です。

SP-K300(Nakamichi)
 CDの試聴機で有名だったヘッドホンです。試聴機の音の評判が良く、このヘッドホンを探して買う人が大勢いました。もっとも、試聴機の音の良さはヘッドホンではなく試聴機本体による部分が大きかったようですが。ATH-PRO5のOEMですが、今はそのATH-PRO5も生産終了になってATH-PRO5MK2になっています。

i-o-Ta(NOBIL)
 NOBILはこの製品を発売してまもなく倒産してしまった不憫なメーカーです。私はi-o-Taが発売されてすぐに購入し、低い評価を下してしまったので、「もしかして経営が苦しい中で最後の賭けに出たメーカーに止めを刺してしまったのでは」と少し悪いことをしてしまったような気持ちになったのを覚えています。新興メーカーというわけではなく数十年続いていたメーカーで、当時ヘッドホンマニアの間では音質調整機構のあるインナーイヤーTPIシリーズでそこそこ知られたメーカーでした。i-o-Taにも音質調整機構が搭載されており、それによって非常に大きく音が変化します。他のメーカーにもこれくらい変化のある音質調整機構を搭載した機種を出してもらいたいものです。

SE-EX9(Pioneer)
 耳かけ型最後のヒット作かもしれません。私が購入した発売当時はたいして話題になっていなかった印象ですが、その後耳かけ型の新製品がほとんど出なくなったこともあってか、生産終了時には耳かけ型愛好家からかなり惜しまれていたように思います。音はPioneerらしいタイプのドンシャリで、個人的にはそういうメーカーの色がしっかり出ているところも好ましく感じられます。

SE-M870(Pioneer)
 生産終了になった時には1万円以下のヘッドホンとして定番だったように思いますが、私が購入した頃はまったく話題にならない機種でした。そんな中、定番中の定番で比較にならないほど話題になっていたATH-A500と同じ音質評点をつけたのは、我ながら大胆な評価だったと思います。後継機を望む声も出ていたように思いますが、最近のPioneerの動向を見ると難しいでしょう。ちなみに、交換用のイヤーパッドはSE-900Dと共通のWNV1052で、まだ販売されています。

TR-HP03B(shiroshita)
 ネット通販で何となく見つけて何となく購入したら、何の説明もなく保存食のしそわかめご飯が同封されていて、その後しばらく私の周囲ではしそわかめご飯の愛称で親しまれたヘッドホンです。音は不思議な魅力があります。普段多用しているわけではないのですが、時々私の所有しているヘッドホンの中で一番好きだと思うことがあります。一応後継機のSW-HP10が出ていますが、音は結構違っていてしそわかめご飯の魅力があまり感じられないのが残念です。

MDR-EX90SL(SONY)
 SONYの超定番モニター用ヘッドホンMDR-CD900STをベースに開発されたイヤホンです。その独特の形状(今はたいして珍しくもありませんが)から一部でガスマスクと呼ばれていました。音にはMDR-CD900STのエッセンスが感じられますし、MDR-CD900STほどではないにしても相当売れて定番になっていた製品です。その割にはすぐに(約2年半)生産終了になってしまい、一応後継機のMDR-EX500SLが発売されたものの形状も音質もかなり違っていたため、MDR-EX90SLにプレミアがついたりする事態になりました。

HP-M1000(Victor)
 少なくともHA-MX10-Bが出るまでは、所有しているVictorのオーバーヘッド型の中で最も好きだったと断言できる機種です。HA-MX10-Bが発売されたときに、もしかしたらHP-M1000のテイストを受け継いでいるかとも期待したのですが、残念ながら期待はずれでした(もっとも、HA-MX10-Bは別のベクトルで優れた製品だと思いますが)。

K27i(AKG)
 K26Pの上位機種(ボリューム付き)といった感じの製品です。K26Pはかなりヒットしたのでこれも売れるかと思ったのですが、それ以前の問題で日本では正式販売されることもなかった製品です。私は発売直後にサウンドハウスで購入したのですが、そのときは日本で販売されないとは考えもしなかったように思います。2006年のことなので、そのあたり私もまだまだ甘かったのでしょう。今だったら、有名メーカーの製品でも日本で販売されないことが実は結構多いということは十分理解しているのですが。

K319(AKG)
 日本で正式販売されなかったAKG製品その2です。これは当時(2009年)のAKGのインナーイヤーとして最上位機種だったので今度は日本でも売る確率が高いだろうと思っていたのですが、読みが外れました。ボリュームコントロールが大きくて邪魔なのが印象的な機種です。その後、他のメーカーからも似たような製品が発売されてきましたが、当時はかなり衝撃的な大きさ(φ約10mmで長さは約60mm)だったと思います。

K530(AKG)
 T-7M同様、要望にお応えして取り上げたものの、それからすぐに生産終了になってしまった機種です。個人的には割と好きなデザインですし、AKGが作ったポップス向きヘッドホンといった感じで音質も好印象です。ただ、発売当時の国内正規品は約2万円と海外の約2倍の価格で、それから数ヶ月(1年近く?)経ってサウンドハウスで並行輸入品の販売が開始されるまでは国内では安く買えなかったせいか、あまり人気が出なかったように思います。AKGの国内正規品(ハーマンインターナショナル経由)が約2倍の価格設定なのはいつものことなのですが、K530の場合はサウンドハウスを初めとした並行輸入業者の動きが他の機種と比べて非常に遅かったのです。ちなみに、最近のAKG製品の国内正規品は価格設定が海外と同等以下になっているので、今後AKGの新製品を買う場合には安易に並行輸入品に手を出さない方が良いかもしれません。

UHP301(ALTEC LANSING)
 2008年、ブームに乗じて有名オーディオメーカーALTEC LANSINGがヘッドホン業界に参入したものの、どの製品もまったくと言って良いほど売れなかった印象なのですが、UHP301はそのうちの一つです。そのときの製品群には予定されていた発売日になっても発売されない製品が多く、それどころか結局発売されないままの製品もあったように記憶しています。数ヶ月経ってから家電量販店に試聴機が少数並びましたが、後の祭りだったのではないでしょうか。それに比べればその約3年後に発売されたカナル型のMZX406やMZX606は多少売れたように思いますが、それでもメーカーのネームバリューからすると成功とは言いがたいレベルだったように思います。最後に、UHP301は私が所有しているヘッドホンの中で最もコストパフォーマンスが悪い製品の一つであることを付け加えておきたいと思います。

HN-505(CREATIVE)
 私の中で酷い音の代名詞的存在になったヘッドホンです。確か秋葉原の小さな電器屋で見かけ、店員に薦められて購入したような記憶があります。その頃には既にある程度ヘッドホンに詳しくなっていたのでそんなに期待して購入したわけではありませんでしたが、それにしても酷い音でした。今でこそCREATIVEはEP-630、EP-AURVN、EP-AVNAIR、HP-AURVN-LV等、コストパフォーマンスの良い製品を多数出しているというイメージがあるように思いますが、当時は無名でした。しかも安価なノイズキャンセルヘッドホンとなれば、今考えても音質に期待できないのは当然という気がします。

IE-20 XB(M-AUDIO)
 Super.fi 5 EB(Ultimate Ears)のOEM品で、ダイナミック型とバランスド・アーマチュア型のハイブリッドイヤホンです。最近になってこのタイプがいくつか出てきましたが、当時は非常に珍しかったです。ただ、音質面の評価は「低音好きな人向き、ロック向き」という感じで総合的な音質はあまり高く評価されていなかったように思います。購入当時は特に好きでも嫌いでもなかったのですが、その後割と好きになった機種です。個人的に最も使い勝手の悪いイヤホンの一つです。

Z headphones(Numark)
 個人的にはヘッドバンドが非常に短いことが強いインパクトとして残っている機種です。私の持っているオーバーヘッド型の中で一番短いのではないかと思います。かなりマイナーで、日本では取り扱っている店も非常に少なかったです。

HP1000(PHILIPS)
 初めて購入したPHILIPSのヘッドホンです。当時(2004年)HP890やHP900というヘッドホンが販売されていて購入を検討していたのですが、AIRYでしか扱っていなかったため後回しにしていました。そんな中、石丸電気(当時はヘッドホンが多数試聴できる店として国内トップクラスでした)でHP1000を発見し、これ幸いとばかりに試聴もせずに購入した記憶があります。その出来が良かったことと当時PHILIPSのヘッドホンは非常にマイナーでレビューがほとんどなかったことから、その後HP830、HP430と購入していくことに繋がりました。

HD497(SENNHEISER)
 1万円以下の開放型ヘッドホンとして、一部で評判の良かった製品です。外観は個性的ですが、音は癖がなく今でも十分通用すると思います。現行製品にも一応似た形状のものがありますが、密閉型なのでHD497とそっくりというわけにはいかないのではないかと思います。生産終了になってしまったのが惜しい製品です。

MX500(SENNHEISER)
 インナーイヤーの定番だった製品です。当時からSENNHEISERの高価なオーバーヘッド型は日本のヘッドホンマニアの間で有名でしたが、それにしても海外メーカーのイヤホンをほとんど置いていない店でもこれは置いてあったりして、SENNHEISERというメーカーの力を別の意味で感じさせてくれた製品でもあります。もっとも、中身はFOSTERのOEMという説が有力ですが。

E2c(SHURE)
 カナル型普及のきっかけになった製品として有名です。今から考えると、コードが太くて扱いにくい、イヤーピースが全体的に大きく硬くなじみにくい、特殊な装着方式でまともに装着できない人も多い、断線報告が多いといった感じで色々と難がある製品です。

PROline2500(ULTRASONE)
 2004年に始まったULTRASONEのPRO系ヘッドホンの中で、私が最初に購入した機種です。当時ULTRASONEは非常にマイナーで、ヘッドホンマニアでもULTRASONEのヘッドホンを1台も所有していない人がほとんどだったと思います。ヘッドホンメーカーとしての知名度としては、今の感覚だとFischer AudioやStantonくらいの感じだったでしょうか。今はSENNHEISERやAKGと並ぶ有名メーカーという印象を持っている人もいると思いますが、多くの国では日本におけるほど有名ではないようです。ちなみに、PROline2500は3万円台のヘッドホンでしたが、この価格は今でこそ珍しくないものの当時3万円以上のヘッドホンで売れているものはHD650、MDR-CD3000、ATH-W1000くらいのもので、マニアでも気軽には買わない価格帯でした。なので、発売からしばらく経ってもネット上の購入報告は非常に少なかった記憶があります。


 そう言えば、生産終了になった機種の思い出1回目で「いずれ生産終了になったヘッドホンは別ページに移した方が良いかもしれないと考えています」と書いていましたが、現在は文字の色を変えて対応しています。これは、別ページにしてしまうと閲覧者が生産終了かどうかを知らないと不都合が生じるかもしれいということに加え、文字の色を変えておけば比較メモ等でも一目見て分かるためです。
 現在本サイトで取り上げているヘッドホンの2割以上が既に生産終了で入手困難(文字の色が黒)になっています。その上、既に生産終了になっていてまだ一応入手可能であるものの近いうちに入手困難になるであろう機種が、把握しているだけで40ほどあります。生産終了になったかどうか確認を取るのが難しい機種もあるので、実際には私が所有しているヘッドホンの約半数くらいが既に生産終了になっているのかもしれません。
 ちなみに、最近は月に1〜2台くらいのペースで"生産終了扱い"にしていますが、それでも間に合わない印象です。サイトを長く続ければ続けるほど生産終了の機種の比率が高くなっていくのは仕方のないことですが、やはり少し寂しく残念でもあります。何か生産終了になった機種を有効活用するページを作っても良いかもしれないと、今回のコラムを書いていて思いました。







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