SHL9600
音質
やや低音よりのかまぼこ。低域はかなり締まっていて、かつ厚みもある。存在感がある低域だが、量的には中域よりやや少なめ。中域は低域に邪魔されずにはっきり聴こえてくるのは良いが、ややうわずり気味なのが気になる。高域は質・量ともにかなり控え目。低音よりのかまぼこと書いたが、高域が少ないと言った方が正しいだろう。
分解能及び原音忠実性は価格の割には良いが、一つ一つの音の微細な描写をもう少し細かいところまでして欲しかった。原音の粗や生っぽさはある程度感じられる。音場感はこの価格の耳のせサイズにしては良いと言える。エッジはきつくないが、音の圧力で疲れる面はある。
明瞭さはなかなか良いが、作ったような明るさはないので、あまり良く感じない人もいるだろう。音の鮮やかさはいまいち。厚みはやや厚め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。ヴォーカルはソースによってはややうわずってキンキンする。派手さはないが、切れやダイナミックな鳴らし方に基づくしっかりとしたノリの良さがある。響きはややあっさり。堅実で飾らない音。
弦楽器は繊細さや心地よさという点では不満だが、凝縮したように締まった音で生楽器らしさもある程度感じられるので、むしろ好ましく感じる人も多いだろう。金管楽器は鮮やかさに欠けるし、量も少ない。打ち込み系の音の表現はなかなかうまい。派手さはないし、音の質感の相性も特別良いわけではないが、切れやダイナミックな鳴らし方で楽しめる。
全体的に見て、この価格のポータブル用ヘッドホンとしては素晴らしい出来だが、それに加えて本機の最大の魅力は低域の質にある。ロック系のソースでベースやバスドラを締まった音で聴きたいのなら、これ以上の機種はそうない。それこそHD25-1くらいのものだろう。
装着感
悪い。側圧は強め。ヘッドバンドにある程度しっかりクッションが入っているし、軽量で側圧も強いので頭頂部はあまり痛くならないはずなのだが、ヘッドバンドが短いために頭に押し付けるような感じに装着することになるため、長時間使用すると痛くなる人もいるだろう。ずれにくい。
イヤーパッドは耳のせサイズ、上下左右に角度調節ができる。材質はレザータイプの人工皮革。硬くはないし肌触りも悪くないのだが、側圧が強めなため長時間使用するとやや耳が痛くなる。
ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。
その他
遮音性及び音漏れ防止は良好。
作り、デザインともになかなか良い。スイーベル機構で折りたたみ可能。コードにボリュームコントロールが付いているが、実用に堪えるレベル。ただし、やや大きいため邪魔に感じる人もいるかもしれない。
プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は約2mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周68mm×68mm、内周30mm×30mm、深さ12mm。
付属品
ミニ→標準変換プラグ
1.8m延長コード
参考
周波数特性グラフ
比較メモ
AH-P372
AH-P372はやや低音より、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はSHL9600の方がやや重心が低く、厚みや圧力がある。量は大差ない。中域はAH-P372の方が癖がない。SHL9600の方が張り出すような感じで目立つことがある。中高域はAH-P372の方が明るく目立つ。高域はSHL9600の方がやや細く粗がない。どちらも高域よりは低域が目立つ印象だが、AH-P372の方が高域がしっかり出る。分解能はほぼ同レベルだが、どちらかと言うとSHL9600の方が若干上か。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はSHL9600の方が粗なく丁寧にこなしてくれる。音場感はAH-P372の方がやや広い。原音忠実性はSHL9600の方が若干上。周波数特性上の癖のなさにしろ原音の粗や生っぽさが感じられる度合いにしろ大きな差はないが、SHL9600の方が味付けされていない素の音に近い。AH-P372は音楽鑑賞用、SHL9600はモニター用とでも言うような違い。エッジはAH-P372の方がややきついが、SHL9600は音の圧力で疲れる面があるので、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはAH-P372の方がやや上。厚みはSHL9600の方がやや上だが、厚みよりもSHL9600の方が締まっていることに目が行く。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同レベル。AH-P372の方が明るくポップス向きな音調、SHL9600の方が地味で堅実な音。ただし、音の圧力や低域の質から見てロックをガンガン聴きたいようなときにはSHL9600の方が合う。響きはほぼ同レベル。弦楽器は好みによって評価が割れそう。明るく瑞々しく聴きたいならAH-P372の方が良いが、味付けの少ない音を聴きたいならSHL9600の方が良い。金管楽器はAH-P372の方が明るく楽しめる。打ち込み系の音の表現は基本的にはSHL9600の方がややうまいが、中高域から高域の明るさが欲しいならAH-P372の方が良い。使い分けるなら、高域が欲しいならAH-P372、そうでもないならSHL9600。あるいは、明るめの音楽鑑賞用ヘッドホンを求めているならAH-P372、味付けの少ないモニター用ヘッドホンを求めているならSHL9600。
ATH-ES7
ATH-ES7はややドンシャリ、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はATH-ES7の方がややぼやけていて量が多い。また、200Hz以下はATH-ES7の方がかなりしっかり出る。SHL9600の方が締まっている。低域の厚みや圧力、存在感という点ではSHL9600の方がやや上のようにも感じる。中域はSHL9600の方が量が多いが、中域の上の方はATH-ES7の方が作ったような明るさがあり目立つ。高域はATH-ES7の方がかなり量が多く明るく金属的で目立つ。この点がこの2機種の最大の違いだろう。分解能はATH-ES7の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ勝っている。音場感はATH-ES7の方が耳の近くで音を鳴らす感じで平面的だが、広さや明確さという意味ではほぼ同レベル。原音忠実性は微妙。ATH-ES7の方が明らかに味付けされた音で、そういう意味ではSHL9600の方が原音に忠実なのだが、生楽器らしさはATH-ES7の方が感じられるようにも思うし、SHL9600は高域が少ない点がマイナス(もっとも、それを言うならATH-ES7の高域は派手すぎるのだが)。ATH-ES7の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-ES7の方が上。ただ、明瞭さについては作ったような明るさがあるため良く感じる面が大きい。SHL9600も決して不明瞭ではないが、地味。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-ES7の方が感じられるが、冷たい質感である面もあるので、ソースによってはSHL9600の方が良いと感じることもある。ATH-ES7の方が明るく元気で分かりやすいノリの良さがある。SHL9600も切れや力強い鳴らし方では負けていないが、ATH-ES7と比べると地味なノリの良さという感じ。響きはATH-ES7の方がやや豊か。ATH-ES7の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器は基本的にはATH-ES7の方が楽しめるのだが、味付けの少ないモニター的な鳴らし方を好むならSHL9600の方が良いだろう。金管楽器はATH-ES7の方が圧倒的に鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はATH-ES7の方がうまい。音の質感の相性や中高域の明るい表現が魅力。使い分けるなら、明るく元気なものが良いならATH-ES7、堅実で色付けのない音が良いならSHL9600。
HD25-1
HD25-1はややドンシャリ、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域は質的にも量的にも近いが、HD25-1の方がやや量が多く厚みがある。中域はSHL9600の方が張り出すような感じで目立つ。高域はHD25-1の方が高く鋭い音で量も多い。分解能はHD25-1の方がやや上。一つ一つの音の微細な描写に差がある。音場感はHD25-1の方がやや立体的。原音忠実性はHD25-1の方が上。周波数特性的にはSHL9600のような中域の癖や高域の不足がないし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでも勝っている。HD25-1の方がエッジがきつくやや聴き疲れしやすい。明瞭さはSHL9600の方がやや上、音の鮮やかさはHD25-1の方がやや上。厚みはHD25-1の方がやや上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHD25-1の方がやや上。どちらも音そのものは地味でありながら切れやダイナミックな鳴らし方でノリの良さが感じられる点が似ている。響きはHD25-1の方がやや豊か。弦楽器はHD25-1の方がややうまい。細部の描写をしっかりしてくれる。金管楽器はHD25-1の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はHD25-1の方がややうまい。低域の量感や音の厚みで勝っている。使い分けるなら、基本的にはHD25-1、聴き疲れや高域の量を減らしたいならSHL9600。
HP430
HP430はややかまぼこ、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はHP430の方が柔らかくぼやけている。SHL9600の方が厚みや圧力があり存在感があるが、全体の量はほぼ同程度。中域はSHL9600の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域は質的にも量的にもそれなりに似ているが、SHL9600の方が若干細く高い印象。分解能はSHL9600の方がやや上。音の分離に差がある。音場感は、HP430の方がやや広く、SHL9600の方がやや明確。原音忠実性はSHL9600の方が良い。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。エッジはどちらもきつくないが、SHL9600の方が圧力があり聴き疲れすることが多い。明瞭さはSHL9600の方が上、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはSHL9600の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP430の方がやや上。ヴォーカルはどちらもややうわずってキンキンするような感じが似ている。SHL9600の方がノリが良い。切れがありダイナミックな鳴らし方。響きはHP430の方がやや豊か。SHL9600の方が締まっていて凝縮されたような音。弦楽器はHP430の方が柔らかく心地よいが、SHL9600のしっかりした鳴らし方も悪くない。どちらが良いかは好みだろう。金管楽器はどちらも派手さに欠けるが、SHL9600の方が力強い点は良い。打ち込み系の音の表現はSHL9600の方がうまい。音の厚み、圧力、低域の質感、切れ、ダイナミックな鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、おとなしくてまったり聴ける方が良いならHP430、ノリの良さ重視ならSHL9600。
HP-S150
HP-S150はやや高音より、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はSHL9600の方が重心が低く厚みもあるため、かなり存在感がある。量的にはSHL9600の方がやや多いという程度。中域はどちらも低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。HP-S150の方がやや高い音で目立つ傾向があるのだが、ソースによってはSHL9600の方が張り出すような感じで目立つ。高域はHP-S150の方がかなり明るく金属的で目立つ。分解能はSHL9600の方がやや上。一つ一つの音の微細な描写を粗なくこなしてくれる。音場感はSHL9600の方がやや広く明確。原音忠実性はSHL9600の方がやや上。周波数特性上の癖のなさに差がある。エッジはHP-S150の方がきつく、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHP-S150の方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-S150の方が上。厚みはSHL9600の方がある。温かみはソースによって違う。中高域から高域が強いソースではHP-S150は高域が明るすぎて温かみどころではない印象になるが、そうでなければ地味で堅実なSHL9600より遊びのあるHP-S150の方が温かみがあると感じることもある。ヴォーカルの艶っぽさはどちらもいまいち。HP-S150の方が擦れが気になる。SHL9600はソースによっては張り出すような癖が気になる。したがって、擦れが気になりにくいソースではHP-S150の方が良い傾向があり、張り出すような癖が気になりにくいソースではSHL9600の方が良い傾向がある。HP-S150の方が明るく派手だが、SHL9600の方が低域の量感や音の厚みに基づくしっかりした迫力やノリの良さがある。SHL9600の方が粗がないという意味で繊細。響きはHP-S150の方がやや豊か。SHL9600の方が安定感のある鳴らし方。弦楽器はSHL9600の方が安心して聴けるが、ヴァイオリンを明るく聴きたいならHP-S150の方が良い。金管楽器はHP-S150の方がかなり高く鮮やかだが、やりすぎな感がある。打ち込み系の音の表現はSHL9600の方がうまい。音の質感の相性だけならHP-S150の方が良いくらいなのだが、低域の量感、音の厚み、ダイナミックな鳴らし方等で逆転する印象。使い分けるなら、高域が欲しいならHP-S150、低域が欲しいならSHL9600。あるいは、基本的にはSHL9600、SHL9600では暗いとか面白みに欠けるという不満があるならHP-S150
K27i
K27iは低音よりのドンシャリ、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はK27iの方がかなり量が多く、ぼやけている。中域はSHL9600の方が低域に埋もれず、やや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はK27iの方が硬くて明るい鳴らし方。SHL9600の方が粗がない。分解能はあまり差はないが、SHL9600の方がやや上。音の分離で多少勝っている。音場感はSHL9600の方が広く明確。原音忠実性はSHL9600の方が上。K27iは低音の量が多すぎるし、原音の粗や生っぽさもSHL9600の方が感じられる。エッジはどちらもきつくないのだが、K27iは低音の量が多すぎてこもり感で疲れることがあるのに対して、SHL9600は音の圧力で疲れることがある。明瞭さはSHL9600の方が上、音の鮮やかさはK27iの方が上。厚みはほぼ同レベル。違いがあるように感じるとすれば、低域の量や音の締まりの違いが原因。温かみは低音の量が多く音が柔らかい分K27iの方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはK27iの方がやや上。SHL9600はややうわずったりキンキンしたりするように感じることがあるが、K27iはそういうことはない。どちらもノリが良いが、K27iが低域でごり押しするようなノリの良さであるのに対して、SHL9600は切れや制動に基づくノリの良さ。響きはK27iの方が豊かでこもり感が気になる。弦楽器はK27iの方が心地よさだけはあるのだが、生楽器らしさが欲しいのならSHL9600の方が良い。金管楽器はK27iの方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はSHL9600の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域・高域の量が欲しいならK27i、そうでもないならSHL9600。あるいは、基本的にはSHL9600、柔らかさや温かみが欲しいときはK27i。
サイン波応答
位相+高周波歪み
インパルス応答(CSD)
インパルス応答(録音波形)
100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生
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スペック
駆動方式 | 構造 | 周波数帯域 | 音圧感度 | インピーダンス |
ダイナミック | 密閉型 | 10Hz〜28kHz | 106dB | 32Ω |
重量 | ドライバー直径 | コードの長さ | コードの出し方 | 備考 |
140g | 40mm | 1.2m | 両出し | 折りたたみ可能 |
評点
音質 | 装着感 | 遮音性 | 音漏れ | デザイン | 携帯性 | 音の傾向 | 参考最安価格 |
3 | 2 | 4 | 4 | 4 | 3 | 均(中、低) | 3900円 |
公開日:2008.5.19