第53回 カリオカのサンバ/小野リサ「BOSSA CARIOCA」より
小野リサはブラジル生まれの日本人ボサノバ歌手です。ラテン系の音楽のアーティストとしては日本で1、2を争う知名度ではないでしょうか。これまで非常に多くのCDをリリースしています。
今回取り上げるのは12枚目のアルバム「BOSSA CARIOCA」の4曲目で、アルバムタイトル曲と言って良いと思います。
ヘッドホンとしてはハスキーなヴォーカルとギターやピアノの落ち着いた調子に合うものが良いでしょう。
・1台目 MUSIC SERIES ONE(ALESSANDRO)
MUSIC SERIES ONEはどんな曲を持ってきても非常にバランス良くしかも魅力的に鳴らしてくれるという意味では素晴らしい能力を持っていますが、今回の曲には特に相性が良いように思います。
他にはヴォーカル重視でHP1000も考えたのですが、落ち着いていると言うよりは暗くなってしまい、どうも全体のバランスがMUSIC SERIES ONEほど良くありません。MUSIC SERIES ONEは声や楽器の質感を出しつつ、落ち着いた音調でかつ派手にならない程度に爽やかさも備えています。
不満点は特にありませんが、音場を含めもう少し基本性能が高いとなお良いとは思います。
・2台目 RS-1(GRADO)
単純に考えてMUSIC SERIES ONEのランクアップとして妥当でしょうし、そういう考え方ではなく単に曲とRS-1の相性を考えても良いと思い選びました。
実際に聴いてみると、MUSIC SERIES ONEより良い点が各所に見受けられます。まず音場が立体感豊かになることによってコーラスの分離が際立ちます。声そのものの表現も透き通るようで心地よく聴けます。各楽器の表現もより細かいところまで手が届く感じで、原音の生っぽさのようなものがよりリアルに感じられます。全体的なバランスとしては、低域の抜けが良い分やや爽やかで明るい傾向です。MUSIC SERIES ONEで聴いていたときには気づきませんでしたが、どうもRS-1と比べると低域が重く引きずるような感じになってしまっているようです。
不満点はありません。次に選ぶなら傾向の違うものしかないでしょう。
・3台目 PROline750(ULTRASONE)
RS-1とは違う傾向でありながら、この曲を鳴らすときに必須なウォームさや声の表現を持っている機種ということで選びました。
声の表現では流石にRS-1には及びませんが、太くてかつ艶やかな感じはなかなか良いです。また、S-LOGICのせいかコーラスの分かれ方がRS-1とはかなり違う感じでおもしろいです。今回の曲はギター等の楽器はおとなしめの録音になっているので、ヘッドホンとしては多少エッジが効いている方が楽しめる部分があるのですが、その点PROline750は1、2台目と比べて色々な楽器が目立つ感じです。
今回は、ヴォーカルや全体のバランス重視ならRS-1、音の太さや楽器を楽しみたいならPROline750でしょうか。MUSIC SERIES ONEも明らかに価格を超えた能力を発揮してくれます。
ただ、総合的に見てRS-1が最も良かったように感じますし、曲の調子やニュアンスにこれほどピッタリマッチしてくれるヘッドホンは他にないように感じます。
試聴は下のamazonのページで。
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