第6回 “武蔵と小次郎”part4〜アフリカ民族音楽"ソバヤ"/タモリ「タモリ」より
タモリについては説明の必要はないでしょう。非常に有名な日本のタレントです。
今回取り上げるのは1977年発表のアルバム「タモリ」の14曲目です。いかにもアフリカの民族音楽のように聴こえますが、もちろん民族音楽を録音したものではなくタモリの芸です。音としては、男性の声と民族音楽的な軽めのパーカッションのみで構成されています(イントロは電車の効果音と車内アナウンスで構成されていますが、これは今回の曲とは別に考えた方が良いと思うので除外します)。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「パーカッションがより際立っている・屋外で演っている感があれば嬉しいです」とのことです。この要望を見る限り、タモリの芸ではありますがリアルな民族音楽として聴きたいということだと思います。
・1台目 SHP8900(PHILIPS)
実際に聴き始めてから気づいたのですが、今回の曲では「パーカッションが際立っている感」と「屋外で演っている感」を両立するのは意外と難しいです。と言うのも、今回の曲のパーカッションで最も目立つのは太鼓を手で叩いているような低めの音で、これを際立たせようとして低音が多いヘッドホンを選ぶと開放感がなくなる傾向になり「屋外で演っている感」は出にくいからです(もちろん、パーカッションを際立たせるにはアタック感の良いものを選ぶという方法もありますし、他にマラカスのような高域のパーカッションも入ってくるのですが)。
いくつか聴いてみた印象としては、「パーカッションが際立っている感」と「屋外で演っている感」では後者の方がヘッドホンによる違いがかなり大きいように感じました。なので、まずは「屋外で演っている感」優先で選び、その中で「パーカッションが際立っている感」が出るものを探すことにしました。
さて、「屋外で演っている感」を出すためには、やはり開放型で音がどこまでも広がっていくようなタイプのものが良いと思ったのですが、この価格ではそういう機種は少ないです。その中で、SHP8900が最もこの条件を満たしていると感じたので選びました。
SHP8900は音場が広めで抜けが良いため「屋外で演っている感」がしっかり出ます。その上、低音の量が多めなのでパーカッションがある程度目立ちますし、それでいてこもり感や閉塞感のようなものはほとんど感じません。今回の曲を要望どおり聴くには、SHP8900の抜けの良さと低域の量感が良い方向に働くように感じました。
他にはHD497、PortaPro、RH600、UR/40等で聴いてみましたが、SHP8900と比べるとそれぞれ不満がありました。どの機種もSHP8900と比べると音場が狭く耳元で鳴らしているため「屋外で演っている感」に欠けますし、それに加えて例えばRH600は低音が少なくパーカッションが量的に目立たない、UR/40は低音の量が多めなのは良いのですがその分どうしても閉塞感が気になる等の不満があります。
不満点は、民族音楽的な泥臭さのようなものをあまり出してくれない点、パーカッションに空気感が足りない点です。
・2台目 ATH-AD700(audio-technica)
「パーカッションが際立っている感」と「屋外で演っている感」を出した上で1台目の不満点を解消するのはかなり難しいです。色々と聴いてみましたが、正直満足の行くものはありませんでした。結局、聴いてみた範囲で最も良いと思ったものを選ぶことにしました。それがATH-AD700です。
ATH-AD700は1台目と比べて開放感がないため「屋外で演っている感」ではやや劣りますが、パーカッションに空気感があります。また、1台目はメインの声がやや引っ込む感じになる上、声そのものの質もあまり自然とは言えませんでしたが、ATH-AD700はそのあたりは特に気になりません。民族音楽的な泥臭さについては、1台目と比べて特に良くもなく悪くもなくといった印象です。
他にはDR150、MUSIC SERIES ONE、SE-A1000等で聴いてみましたが、それぞれ不満があります。DR150は民族音楽的な泥臭さは良く出してくれますが、「屋外で演っている感」には欠けます。MUSIC SERIES ONEは耳元でパーカッションが鳴るため「屋外で演っている感」はかなり乏しいです。SE-A1000は1台目と比較的似ているのですが、1台目よりも耳の近くで音を鳴らすため「屋外で演っている感」では劣ります。
不満点は、まだ民族音楽的な泥臭さが足りない点、「屋外で演っている感」が足りない点です。
・3台目 PFR-V1(SONY)
これは反則気味な気もしましたが、実際に聴いてみたところ非常に開放感があり「屋外で演っている感」をしっかり出してくれたので選びました。
低音は少なめなので量的な意味で低域のパーカッションが目立つことはありませんが、質的には意外と軽快で空気感があり楽しめる感じです。また、マラカスのような高域のパーカッションについてはかなり目立ちます。
不満点は、全体的にあまり自然な音とは言えない点、民族音楽的な泥臭さが足りない点です。
・4台目 RS-1(GRADO)
3台目と比べるとやや開放感に欠けますが、絶対値としてはかなり開放的で「屋外で演っている感」をしっかり出してくれます。「パーカッションが際立っている感」はそこそこですが、パーカッションの空気感はしっかり感じられ、ある意味リアルです。それに加えて、民族音楽的な泥臭さも比較的感じられる傾向です。3台目と比べるとかなり自然な音ですし、総合的に見て最もバランスが良く完成度の高い鳴らし方のように感じます。
他には、DT990 Edition 2005、PROline2500、K701、SR-007+SRM-717等でも聴いてみました。DT990 Edition 2005とPROline2500は民族音楽的な泥臭さを出してくれる点やパーカッションの量的な意味での存在感は良いのですが、低音が多いこともあって開放感に欠ける点やパーカッションが重い点は良くありませんでした。K701とSR-007+SRM-717は音場の広さという点では良いのですが、開放感という意味ではPFR-V1やRS-1に劣りますし、上品なところが今回の曲には合わないように感じました。
・5台目 MA850G/A(Apple)
色々聴いてみましたが、オーバーヘッド型と比べるとイヤホンはどれもこじんまりとまとまっている上(特にカナル型は)閉塞感があるため「屋外で演っている感」を出すのはかなり厳しい印象です。
最初は音場の広さで「屋外で演っている感」を出そうと思いSuper.fi 5 ProやWestone3で聴いてみたのですが、曇りやこもりのせいで閉塞感が気になりそれどころではありませんでした。
そこで、少なくともそういった閉塞感がないものということでATH-CK10、E4c、ER-4S、MA850G/A等で聴いてみて、最終的にMA850G/Aを選びました。ATH-CK10は輪郭がくっきりしているためにパーカッションが目立つ面はあるのですが、不自然ですし高域のパーカッションが悪目立ちする点が気になりました。E4cも不自然という点がマイナス要素でした。ER-4Sは最後までMA850G/Aと迷いましたが、MA850G/Aの方が低域に弾力があることとパーカッションに空気感があることから魅力的に感じられたのでこちらにしました。ただ、「パーカッションが際立っている感」と「屋外で演っている感」については、この4機種ならどれも大差ない印象で、人によってどれを選ぶかは変わってくると思います。
他にはHP-FX500、IE-1、SHE9501等が良かったです。カナル型はオーバーヘッド型と比べると低音が多めで曇りやこもりが気になる機種が多い傾向があるようで、そういった機種では前述のとおり閉塞感のために「屋外で演っている感」を出すどころではないので、消去法で選んだような感じです。
「屋外で演っている感」を優先するなら、やはり開放型イヤホンの方が有利だと思います。「パーカッションが際立っている感」や民族音楽的な泥臭さ、全体の自然さ等を総合的に考えるとMDR-E888LPが良かったです。
今回は総合的に見るとRS-1が最も良いように感じられましたが、重視する点の優先順位によってはまた違ってくると思います。PFR-V1の開放感にしろ、DT990 Edition 2005やPROline2500の民族音楽的な泥臭さにしろ、それだけで十分今回の曲を楽しめてしまう魅力を持っています。
ヘッドホンアンプは、濃密なものや無機質なものは合わないように思います。AT-HA2002やhpa200b(ハイエンド仕様)よりは、HD-1L Limited Edition(RC1)やHead Amp 2/MkII SEの方が合う印象です。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴は下のamazonのページで。
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