K501

AT-HA2002
 AT-HA2002とK501の両方が持つ低域の弱さと硬さが合わさり、聴けないような音になるのではないかと予想していたが、それほど悪くない。分解能、情報量の多さ、明瞭さ、繊細さは非常に良い。ある意味K501の能力をフルに発揮しているように感じる。ただ、やはり全体的なバランスとしては音に芯が通り過ぎている上、低域がタイト過ぎるように感じる。あまりに明瞭なために、温かみに欠ける。残響音はかなり希薄。MDR-SA5000とAT-HA2002の組み合わせに似た感触を受けるが、その組み合わせよりは、まとまりのある印象。
 ヴォーカルの艶っぽさは最低限あるように感じるが、それよりも芯の通った力強い感じの方が前面に出ている。曇っているヴォーカルも曇りがほとんど感じられなくなる。コーラスは分離が良いのはいいが、協調性に欠けるように感じる。打ち込み系の音はAT-HA2002らしく、明るくしかもなかなか美しい。K501でポップスを楽しみたいならかなり相性が良さそうではあるが、いかんせん低域が不足で音の抜けが良すぎるのが難点。ロックは音に芯が通り過ぎていてかなり痛いように感じることが多い。ピアノは意外と硬くない上、輪郭がはっきりしていて澄んだ音を聴かせてくれる。オーケストラは分離が良い上、意外とまとまりのなさを感じない。低域の量の不足も情報量である程度カバーできているような印象で、物足りなさをそれほど感じない。ハイハット等の高域は期待通り美しい。ジャズはウッドベースが厳しい。ギターは明るく爽やか。チェロ等の弦楽器は濃密でいてやや明るめの表現。ヴァイオリンは澄み切った線の細い表現が楽しめる。ブラスの表現はどこか力強さに欠けるものの、なかなか鮮やか。オルガンはチェロ等と同様、全体的に明るめの表現ではあるものの、濃密で楽しめる。

HA-1A
 HD53と比べると全体的にやや骨太で力強くなる印象。それでいて、K501の特徴である繊細さと硬さは感じられるし、曇りはない。元が硬い音で低域が不足に感じられるだけに、適度に低域の量感と柔らかさを得ているように感じる。高域はK501の硬く美しい音を堪能できる。余裕のある表現力。残響音は思ったほど豊かにはならないが、AT-HA2002やHD53と比べれば豊かだし、K501本来のあっさりさを考えれば十分豊かと言って良いレベル。K501のあっさりした音が好きな人にはあまり合わないかもしれないが、一般的な意味ならかなり相性が良いと言えるだろう。
 ヴォーカルの艶っぽさはAT-HA2002やHD53と比べて一段上。K501の硬さがあまり気にならなくなる。コーラスの分離はHD53とさほど変わらないように感じるが、一つ一つの声の密度が高く、HD53と違って、ただ何となく鳴らしているような感じはしない。打ち込み系の音は、意外にもAT-HA2002に劣らぬ表現を見せてくれる。その上、AT-HA2002より低域が出るため、HA-1Aの方が良いと感じる人も多そう。K501はロックとの相性は悪いが、もしK501でロックを聴くならかなり合う。余計な硬さが軽減され、低域が補填されるためだと思われる。ピアノは輪郭がやや甘くなるものの必要なラインは保っているし、なかなか心地よい。オーケストラは、各楽器の分離はAT-HA2002ほどではないし情報量でも負けているが、HA-1Aの力で低域がかなりカバーされる上に各楽器の表現が柔らかく好印象なため、総合的に見てAT-HA2002に引けを取らない。ハイハット等の高域は、AT-HA2002とほぼ互角の表現をしてくれる。ジャズはウッドベースが厳しい。この点は残念ながらAT-HA2002やHD53とさほど変わらない。ギターはかなり柔らかく心地よい。チェロ等の弦楽器はAT-HA2002ほどの濃さは感じられないものの、柔らかく残響音豊かで、心地よさという点では勝っている。K501の低域不足を考えれば、非常に豊かな低域の表現と言ってよいだろう。ヴァイオリンでもその点は変わらない。ブラスはAT-HA2002と比べると柔らかい表現で鮮やかさでは負けるが、力強さでは勝っている。オルガンはどちらかと言うとHD53に近いぼやけた印象だが、HD53よりは力がある。
 HA-1Aのノイズは、インピーダンスの設定を一段下げればあまり気にならない。

HD53
 低域が不足に感じるわりに、曇っているように明瞭さが足りない気がする。これは情報量の少なさも原因の一つだろう。もちろん、一般的な見方をするなら明瞭で繊細、やや硬質で響きはあっさり。高域は線が細く硬質なせいか、HD53の粗が目立つように感じる。
 ヴォーカルは線が細すぎる嫌いはあるが、なかなか艶っぽい。ただし、ソースによっては粗が気になる。コーラスはあまり分離が良くなく、ただ何となく鳴らしているように感じる。打ち込み系の音は、AT-HA2002やHA-1Aと比べて音が薄く、やや粗が目立つ。ロックはAT-HA2002ほどの痛さは感じないが、粗は目立つし、K501本来のロックとの相性の悪さがそのまま出ている感じがする。ピアノはAT-HA2002と比べると曇ったような感じで輪郭が甘い。しかもHA-1Aのような心地よさもない。オーケストラはAT-HA2002やHA-1Aと比べて全体的に力不足な感は否めない。これはHD53の限界だろう。ハイハット等の高域は、意外にもAT-HA2002やHA-1Aにそれほど引けを取らない。ジャズはウッドベースが厳しいが、AT-HA2002やHA-1Aと大きな差は無い。ギターはどちらかと言えばAT-HA2002に近い、明るい印象を受ける。チェロ等の弦楽器は特別伸びが良いわけではないのだが、良くも悪くもするすると流れていく印象。ヴァイオリンも同様。ブラスはAT-HA2002やHA-1Aと比べてやや薄いものの、それほど遜色ない。オルガンはHD53の薄さがかなり目立つ。

SXH2
 K501はローエンドが弱めでやや硬い低域になりがちだが、SXH2との組み合わせでは適度に緩くなり心地よい低域が聴ける。K501の特長である繊細な高域もしっかりとした粗のない表現をしてくれる。接続する機器によっては硬い音が気になるK501だが、SXH2との組み合わせではかなり柔らかい音で好感が持てる。逆に、K501の硬さを好む人にとってはいまいちに感じるかもしれない。かなり地味でおとなしい鳴らし方。情報量はあまり多くない。それよりも心地よく聴かせるタイプ。残響音はK501らしくややあっさりだが、伸びは良い。元々ポップス向きではないK501だが、SXH2との組み合わせでは更にその傾向は増しているように感じる。
 ヴォーカルはHA-1Aほどの艶っぽさはないが十分なものを持っているし、HD53と比べて滑らか。線が細すぎないのも良い。明るいAT-HA2002とは対照的。温かみはあるが、澄んだ感じにはやや欠ける。コーラスは分離があまり良くないが、もともとK501の分離は良いのでトータルとしてはそれほど悪くない。キンキンした女性ヴォーカルもあまり痛くない。ピアノはそれほど輪郭が甘いとは思わないが、それよりも芯の通った感じがしないことの方が印象的。ロックはK501らしく低域が足りないのと線が細いせいであまり合わない。その上パンチのなさが加わり、ロックらしさがまったく感じられない音になっている。硬い音を鳴らす点だけは打ち込み系の音と相性が良いと感じられるK501だが、SXH2との組み合わせではその点さえもなくなり、かなり相性が悪くなっている。オーケストラは予想通り迫力に欠けるものの、各楽器がしっかりと役割を果たしてくれている感じがして悪くない。K501の上品な鳴らし方が好きなら、なおのことそう感じるだろう。ジャズは他のヘッドホンアンプとの組み合わせ同様ウッドベースが厳しい。ギターはもう少しエッジが立っている方が楽しめるように感じた。弦楽器はK501の繊細さとSXH2の滑らかさがマッチして、非常に心地よい。ただ、チェロ等の低域が物足りない感は否めないし、原音の粗を求める人や濃い音を望む人には合わないだろう。ブラスはもう少し明るく鮮やかな表現を期待したかった。オルガンは迫力に欠け、するすると流れていってしまう。この点もAT-HA2002と対照的。K501、SXH2ともに室内楽向きの感があるが、この二つを合わせるとその印象は更に強くなる。







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