i-o-Ta
音質
低音よりのドンシャリ。低域は異常なほど量が多く、低域がある程度多いソースでは低域以外聴こえてこないような感じになる。質的にはぼやけていてかなり歪みが気になる。中域は大抵のソースでは低域に埋もれて聴こえてこない。やや嫌味が出ることがある。高域は、中域よりは量が多く質的にも金属的である程度目立つ。
分解能、音場感、原音忠実性いずれも価格の割に悪い。特に原音忠実性は価格を度外視しても良くない。一聴して違和感のある音で、周波数特性上の癖が非常に大きい。ただ、元々粗のある音であるせいか原音の粗っぽさはそれなりに感じられる。エッジはそれほどきつくないが、低域の量が非常に多い上に粗のある音で総合的に見るとかなり聴き疲れする。
明瞭さは悪いが、音の鮮やかさはそれなりに感じられる。厚みは普通。温かみは低域の量が多いため多少は感じられるが、それ以上のものはない。ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない。響きは、低域はかなり豊か、高域は普通。低域はかなりぼやけているのに対して、高域はやや硬い質感で、アンバランスな感じ。どことなく古臭い音で、粗がある。
弦楽器は苦手。繊細さも心地よさも不足。金管楽器はそれなりに鮮やかだが癖があり、普通に楽しむのにはあまり向かない。打ち込み系の音の表現はいまいち。低域の量が非常に多くしかもぼやけているため。
なお、本機はハウジングのチューニングポート(φ5/3/1/0の4種)を変更することによって音質を調節することができる。上記の内容はデフォルトであるチューニングポートフリー(完全開放)のときのもの。チューニングポートの穴を小さくするに従って低域の量が減っていき、完全に密封すると低域の量が非常に少なくなる。中間がバランスが良く、音質評点では2〜2.5点くらいに改善される。
個性的な音やチューニングポートによる音の変化を楽しみたいなら良いが、そうでないなら非常にコストパフォーマンスの悪い機種。
装着感
悪い。側圧はやや強め。ヘッドバンドのクッションは無きに等しいが、軽量のため頭頂部はそれほど痛くない。
イヤーパッドは耳のせサイズ、左右方向の角度調節ができないためあまり耳にフィットしない。長時間使用するとかなり耳が痛くなる。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。
その他
遮音性及び音漏れ防止は良くない。チューニングポートを完全密閉にすれば多少改善されるが、それでも密閉型と考えると良いとは言えない。
作りはハンドメイドな感じで、一般の量産品とは良くも悪くも異なる。デザインは悪くない。40mmウーファー+13mmツイーターという珍しい構成な上、ハウジング背面のチューニングポートの変更によって音質を調節できるという、他にはない機種。
プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約2.5mm、布巻きで扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周56mm×56mm、内周34mm×34mm、深さ4mm。
付属品
チューニングポート(4種類)
収納ケース
クリップ
参考
周波数特性グラフ
赤:チューニングポートフリー 青:φ5
赤:チューニングポートフリー 青:φ3
赤:チューニングポートフリー 青:φ1
赤:チューニングポートフリー 青:φ0
比較メモ
HFI-15G
HFI-15Gは低音より、i-o-Taは低音よりのドンシャリ。低域はi-o-Taの方がかなり量が多く、質的にも低い音を鳴らす。中域はHFI-15Gの方が低域に埋もれずはっきり聴こえてくる。高域はi-o-Taの方が金属的で目立つ感じ。分解能はHFI-15Gの方が上。一つ一つの音の微細な描写に差がある。音場感はHFI-15Gの方が耳の近くで音を鳴らすものの広がりがあって分かりやすい。原音忠実性はHFI-15Gの方が上。i-o-Taの方がエッジがきつい上、低域の量が多すぎて聴き疲れしやすい。明瞭さは低域が少ない分HFI-15Gの方が上、音の鮮やかさはi-o-Taの方がやや上。厚みはi-o-Taの方がやや上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHFI-15Gの方が上。HFI-15Gの方が繊細。響きはi-o-Taの方が豊か。弦楽器はHFI-15Gの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はi-o-Taの方がやや鮮やかだが明らかに癖のある音なので、無難な鳴らし方を望むならHFI-15Gの方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はどちらもいまいち。使い分けるなら、基本的にはHFI-15G、よほど低域の量や高域の硬い質感を求めるならi-o-Ta。
HP430
HP430はややかまぼこ、i-o-Taは低音よりのドンシャリ。低域はi-o-Taの方がかなり量が多く、しっかり低い音を鳴らす。中域はHP430の方が低域に埋もれずはっきり聴こえてくる。高域はi-o-Taの方が量が多く金属的な鳴らし方。分解能はほぼ同等レベル。音場感はHP430の方が明確。原音忠実性はHP430の方が良い。原音の粗はi-o-Taの方が感じられるが、あまりに癖がありすぎる。i-o-Taの方がエッジがきつい上、低域の量が多すぎで聴き疲れする。明瞭さは低域が出ない分HP430の方が良いが、音の鮮やかさはi-o-Taの方が上。厚みはi-o-Taの方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等レベル。i-o-Taの方がノリが良い。響きはi-o-Taの方が豊か。弦楽器はHP430の方が無難な表現。金管楽器はi-o-Taの方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現は中域から高域の鮮やかさはi-o-Taの方が良いが、全体的なバランスとしてはHP430の方がかなり良い。使い分けるなら、基本的にはHP430、バランスが崩れても良いから高域の明るさが欲しいならi-o-Ta。
Z headphones
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はi-o-Taの方がかなり量が多く、質的にもやや低い音を鳴らす。中域はZ headphonesの方が癖がなく、しかもはっきり聴こえてくる。高域はi-o-Taの方がやや金属的で高い音を鳴らす。分解能及び音場感はほぼ互角。原音忠実性はZ headphonesの方がかなり良い。これは、i-o-Taがあまりに癖のある音を鳴らすため。エッジはi-o-Taの方がややきつく、しかも低域が非常に多いため、聴き疲れしやすい。明瞭さは低域が少ない分Z headphonesの方が上。音の鮮やかさはi-o-Taの方が上。厚みはどちらかと言えばi-o-Taの方があるように感じる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはZ headphonesの方がやや上。どちらもノリが良いわけでも繊細なわけでもない鳴らし方。響きはi-o-Taの方が豊か。弦楽器はZ headphonesの方が繊細で癖がない。金管楽器はi-o-Taの方が鮮やかではあるが、癖が強すぎるように感じる。打ち込み系の音の表現はどちらもいまいち。低域の質感が合わない。中域から高域の表現はi-o-Taの方が明るく好印象。使い分けるなら、基本的にはZ headphones、癖があっても良いから低域の量や高域の明るさを求めるならi-o-Ta。
ZM-DS4F
i-o-Taは低音よりのドンシャリ、ZM-DS4Fはやや低音より。低域はi-o-Taの方がかなり量が多い。重心が低く厚みもあるが、かなり柔らかくぼやける。中域はZM-DS4Fの方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、質的にはi-o-Taの方がやや高い音。どちらもソースによっては張り出すような癖が出ることがあるが、そのソースは両機に共通ではなく、ソースによってはi-o-Taの方が張り出し、また別のソースではZM-DS4Fの方が張り出すという具合になる。高域はi-o-Taの方が硬く鋭い質。量もかなり多いため目立つ。分解能はほぼ同レベル。音の分離はZM-DS4Fの方がやや良い。一つ一つの音の微細な描写は、粗があるなりにi-o-Taの方がこなそうとはしてくれる印象。音場感はZM-DS4Fの方が明確。i-o-Taの方が頭内定位が気になる。原音忠実性はZM-DS4Fの方がやや上。i-o-Taは一聴して違和感が大きいし、周波数特性上の癖もZM-DS4Fの方が小さい。エッジはi-o-Taの方がきつく、かなり聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろi-o-Taの方が痛い。明瞭さは比較が難しい。低域が少ないソースでは、高域が多いこともあってi-o-Taの方が明瞭に感じられることが多いが、低域が多いソースではi-o-Taは低域が支配的になり明瞭とは程遠い印象になる。ZM-DS4Fの方がかなり地味で暗めであることも比較を難しくしている。音の鮮やかさはi-o-Taの方がやや上。厚みはi-o-Taの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはi-o-Taの方がやや上。i-o-Taの方が明るくノリが良い。響きはi-o-Taの方が豊かで、こもり感が気になる。i-o-Taの方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はi-o-Taの方が生楽器らしさが感じられる点は良いが、ZM-DS4Fの方が癖がなく安心して聴ける。金管楽器はi-o-Taの方が鮮やかだが、弦楽器同様ZM-DS4Fの方が癖がない。打ち込み系の音の表現はi-o-Taの方がややうまい。音の質感の相性や明るい表現で勝っている。使い分けるなら、低域が欲しいならi-o-Ta、そうでもないならZM-DS4F。あるいは、明るい方が良いならi-o-Ta、暗くても癖がない方が良いならZM-DS4F。
スペック
駆動方式 | 構造 | 周波数帯域 | 音圧感度 | インピーダンス |
ダイナミック | - | 8Hz〜22kHz | 100dB | 32Ω |
重量 | ドライバー直径 | コードの長さ | コードの出し方 | 備考 |
200g | 40mm+13mm | 1.2m | 片出し | 収納ケース付属 |
評点
音質 | 装着感 | 遮音性 | 音漏れ | デザイン | 携帯性 | 音の傾向 | 参考最安価格 |
1.5 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 低(高) | 20000円 |
公開日:2007.10.27