ER-6

音質
 やや高音より。低域は最低限の量は出るし極端に不足に感じることはないが、基本的には弱い。中域は非常にはっきり聴こえてくる。高音よりというよりかまぼこと言ったほうが正しいのかもしれない。ほとんど気にならないものの若干うわずり気味。中高域から高域は線が細くしっかりと粗のない表現をしてくれるが、金属的な硬さはない。
 分解能、音場感、原音忠実性すべてなかなか良い。特に分解能は非常に良いと言えるレベルだろう。音場も奥行きがあり飽きさせない。線が細いためややエッジがきつく感じられるが、聴き疲れとしてはまったく問題のないレベル。
 明瞭さは非常に良い。音の鮮やかさもなかなか。厚みはほどほど。それよりも線の細さが前面に出てくるためか、あまり厚みがどうこうと言う風には感じにくいように思う。低域が不足気味のこともあり、温かみはあまり感じられない。ヴォーカルはなかなか艶っぽい表現が楽しめるが、極端な色付けはない。全体的に線が細く、かなり繊細な鳴らし方。響きはややあっさりで、低域が弱いこともありこもり感はほとんど気にならない。繊細でありながら必要以上に細くとがって硬くなったりしていない、絶妙なバランス。
 弦楽器はヴォーカル同様繊細な表現が楽しめるが、チェロやウッドベースはもう少し低域が欲しかったところ。金管楽器はそれほど目立つわけではないし、金属的な鳴りも感じられない。やや刺激不足ではあるが、それ以上の不満は感じない。打ち込み系の音の表現は低域不足と線の細さが合わない。
 音楽を楽しむのに万能とは言えないが、高い実力を備えた機種。

装着感
 良好。イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプなので長時間使用すると耳の穴が痛くなることがあるが、イヤーピースが柔らかいため外観から想像されるよりは痛くない。また、非常にずれにくい。装着方法はE2c等と違って耳の奥に押し込むだけで、特に難しくない。重い、コードが顔に当たりやすい等の不満はない。
 デフォルトのイヤーピースの材質は薄く柔らかいシリコンのようなものでフランジ(2段きのこ)型。交換用のイヤーピース(フォーム、スポンジ)が1種類付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は非常に良い。
 作りはやや安っぽいがスケルトンのデザインがなかなか良い。インナーイヤーにしては多少音量がとりづらいが、基本的には問題にならないレベル。タッチノイズは意外なことにかなり小さい。
 プラグは金メッキのL型ミニプラグ。コードの太さは合流前は約1mm、合流後は幅約2.5mm・厚さ約1mm、硬くなく扱いやすい。

付属品
イヤーピース2種類
収納ケース
ホルダー
交換用フィルター
フィルター交換用ツール



参考
メーカー製品ページ
代理店製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
E2c
E2cはかなりフラット、ER-6はやや高音より。低域はE2cの方が全体的にかなり出る。中域はER-6の方がややうわずり気味ではっきり聴こえてくる。高域はER-6の方が細く高い音。分解能は線が細い分ER-6の方が若干良いように感じるが、単純に複数の音が重なったときの分離具合はほとんど差が無いように感じられる。ただし、低域が強いソースではER-6の方が有利。音場感はER-6の方が上。特に奥行きに差がある。原音忠実性は微妙。広い目で見ればE2cの方が癖のない音のように感じる。ER-6は中域がややうわずっているのが難点だが、線が細く細部の表現はうまい。ER-6の方がエッジがきつくやや聴き疲れするが、ほとんど問題ないレベル。明瞭さは低域が弱く線が細いER-6の方が上だが、音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはE2cの方がやや上。温かみは低域が出る分E2cの方があるように感じるが、基本的にはどちらもあまり温かみがあるとは言い難い。ヴォーカルの艶っぽさはER-6の方が上。ノリの良さならE2c、繊細さならER-6。響きはどちらもあっさりだが、E2cの方がやや豊か。弦楽器はER-6の方が繊細だが、心地よさならE2cの方が良いだろう。金管楽器はER-6の方が高い音だが、E2cの方が力強く迫力がある。打ち込み系の音の表現はE2cの方がうまい。ER-6は低域の不足と線の細さが合わない。使い分けるなら基本的にはE2cで、室内楽や女性ヴォーカル、繊細さが欲しい曲はER-6か。

EHP-IN200
EHP-IN200はかまぼこ、ER-6はやや高音より。低域はどちらも控え目だが、ER-6は少ないながらも素直にローエンドまで出るのに対して、EHP-IN200はソースによってかなり質感がばらばらで、場合によっては紙のように薄い低域になる。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、EHP-IN200は変に癖があり悪い意味で目立つ。中高域は質的にも量的にも意外と似ている。高域はER-6の方が若干細く高い音を鳴らす。分解能、音場感、原音忠実性すべてER-6の方が圧倒的に上。どちらもエッジはきつくないが、EHP-IN200はソースによっては中域が硬くて痛い。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてER-6の方が上。ER-6の方が圧倒的に繊細。響きはER-6の方がやや豊か。弦楽器はER-6の方が繊細かつ心地よい。金管楽器は意外と似た表現だが、ER-6の方が細部まで描写してくれる。打ち込み系の音の表現もER-6の方がうまい。EHP-IN200は音の厚みが薄すぎる。ほとんど何を聴くにしてもER-6の方が良いだろう。

ER-4S
ER-4Sはフラット、ER-6はやや高音より。低域はER-4Sの方が若干強い。中域はどちらも非常にはっきり聴こえてくるが、ER-6の方がスカスカしているように感じる。高域は質・量ともに非常に近いが、ER-4Sの方が若干細く硬いか。分解能、音場感、原音忠実性すべてER-4Sの方が上。単純に複数の音を同時に鳴らすときの分離も良いし、一つ一つの音のディテールの描写も勝っている。ER-4Sの方がややエッジがきついが、聴き疲れするほどではない。明瞭さ、音の鮮やかさはER-4Sの方が上。これは周波数特性のバランスではなく、純粋に持っている能力が違う。厚みもER-4Sの方が上。ただ、これは厚みというよりも音の密度や実体感が上と言った方が適切だろう。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさともにER-4Sの方が上。低域がやや強くスカスカした感じがしない上、線が細いため。どちらも繊細だが、ER-4Sの方が段違いの繊細さを持っている。ただ、そうは言ってもER-6の繊細さも普通に考えればかなり高いレベル。響きはどちらもややあっさりでよく似ているが、ER-4Sの方が残響音の最後の一粒まで楽しめる。非常に密閉度が高い割には、こもり感はどちらもあまり気にならない。弦楽器、金管楽器ともにかなり似た音を鳴らすが、ER-4Sの方が総じてうまい。これは純粋に各楽器の細部までしっかりと描ききってくれるため。打ち込み系の音の表現は低域が出る分ER-4Sの方が合うが、線の細さが合わないときもある。得意分野はどちらもクラシック。ほとんど何を聴くにしてもER-4Sの方が良いように感じる。

IE-1
どちらもやや高音より。低域はIE-1の方がややぼやけて量が多い。中低域はER-6の方がしっかり鳴らしてくれるが、それより下はIE-1の方が出る。中域はER-6の方がはっきり聴こえてくる。これは全体的にER-6の方が無駄な音を鳴らさず芯の通った音であるため。ER-6は中域が通り過ぎて痛いこともあるので、そういう意味ではIE-1の方が聴きやすい鳴らし方ではある。高域はIE-1の方が高い音で量も多い。この2機種を比べると、IE-1の方がややドンシャリと言えるが、どちらかと言うとER-6がかまぼこと言った方が正しいだろう。分解能はER-6の方がやや上。音の分離が良いだけでなく、細かいところまで鳴らしてくれる感じ。IE-1の方が良くも悪くも大味。音場感はER-6の方が広く明確だが、IE-1の方が耳の近くで音を鳴らしているために臨場感があり楽しめる面もある。原音忠実性はER-6の方が上。IE-1はER-6と比べて付帯音が多く、特に中高域から高域にかけてザラザラしているように感じることがある。IE-1の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さはどちらも非常に良い。音の鮮やかさはIE-1の方が上。厚みはIE-1の方がある。温かみはIE-1の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。ER-6はうわずる感じが気になることがある点がマイナス、IE-1は付帯音が多すぎるように感じることがある点がマイナス。多少味付け気味でも良いならIE-1の方が良いだろう。響きはIE-1の方が豊か。ER-6の方がタイトで繊細。IE-1の方が元気で明るい。弦楽器はER-6の方が澄んでいて無駄のない鳴らし方だが、心地よさという意味ではIE-1の方が良いこともある。金管楽器はIE-1の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はIE-1の方がうまい。中高域の鮮やかさに差がある。使い分けるなら、基本性能重視で無駄な音を鳴らして欲しくないならER-6、多少脚色気味でも明るく元気良く鳴らして欲しいならIE-1。

MA850G/A
どちらもやや高音より。低域はほぼ同量だが、どちらかと言うとMA850G/Aの方が多い。MA850G/Aの方がやや柔らかくかつ若干重心が低め。ER-6の方が圧力や制動の良さが感じられる。中域は、ER-6の方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。MA850G/Aの方が癖がない。中高域はER-6の方がややしっかり出る。高域はMA850G/Aの方がやや量が多い。明るく目立つ。分解能はほぼ同レベル。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大差ないが、どちらかと言うとMA850G/Aの方が上。音場感はMA850G/Aの方がやや広い。明確さは大差ない。原音忠実性はMA850G/Aの方がやや上。一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはほぼ同レベル。エッジはMA850G/Aの方がややきつく、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろMA850G/Aの方がやや痛い。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはMA850G/Aの方が若干上。厚みはほぼ同レベルだが、ER-6の方がやや硬く締まっているので、そういう意味で違いを感じることはある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMA850G/Aの方が感じられる。特にヴォーカルは単に艶っぽさで勝っているだけでなく、うわずったり張り出したりするような癖がなく自然で安心して聴ける。どちらも線が細く繊細な傾向。響きはMA850G/Aの方がやや豊か。弦楽器はどちらもかなり繊細な表現が楽しめる。MA850G/Aの方が伸びが良く心地よく聴けるし、癖も小さい。金管楽器はER-6の方がやや太い芯が通っている感じ、MA850G/Aの方が綺麗。打ち込み系の音の表現は微妙。どちらも線が細いところが合わない点は似ている。切れはER-6の方がやや良いが、MA850G/Aの方が癖がなく聴きやすい。使い分けるなら、基本的にはMA850G/A、切れや制動重視ならER-6。

RP-HJE70
ER-6はやや高音より、RP-HJE70はやや高音よりのドンシャリ。低域はRP-HJE70の方が一段低い音で量もやや多い。中域はどちらもうわずり気味ながらはっきり聴こえてくる点は似ているが、そのうわずり方がまったく違う。中高域から高域はRP-HJE70の方が出る。細く硬く金属的な鳴り。分解能はER-6の方が若干上か。音場感はどちらもなかなか良い。奥行きはER-6の方がややあるように感じるが、二次元的な横の広がりはRP-HJE70の方があるように感じる。原音忠実性はER-6の方が圧倒的に上。これはRP-HJE70が原音忠実とはかけ離れた音作りになっているせいだろう。RP-HJE70は根本的に音楽を楽しむための音作りになっていて、原音忠実性は考えていないように感じる。RP-HJE70の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。サ行の音等も痛い。どちらもかなり明瞭だが、傾向が違うので優劣はつけにくい。ER-6は低域不足と分解能の高さから来る明瞭さ、RP-HJE70はエッジのきつさと明るさから来る明瞭さ。音の鮮やかさはRP-HJE70の方が上。ER-6は地味であるのに対して、RP-HJE70はかなり派手。厚みはRP-HJE70の方がある。温かみはどちらもあまり感じられない。低域が出る分RP-HJE70の方が温かみがあるようにも感じるが、作ったような明るさのせいで台無しになっている部分も多い。ヴォーカルの艶っぽさはどちらもそれなり。ER-6は原音をそれほど脚色しないレベルの艶っぽさ、RP-HJE70は脚色しすぎでソースによってはかなり擦れが気になる艶っぽさ。ノリの良さならRP-HJE70、繊細さならER-6。RP-HJE70は元気が良すぎでソースによっては音割れが気になる。響きは全体的にRP-HJE70の方が豊か。それでいてRP-HJE70の方が硬い音。弦楽器はRP-HJE70の方が楽しめる。これは適度な低域があるだけでなく、しっかりした実力に裏づけされた魅力だろう。ただ、ER-6の表現も素晴らしいのは間違いない。人によって好み・評価が大きく分かれそうな点。金管楽器はRP-HJE70の方が高く鮮やかだが、不自然すぎて受け付けない人も多そう。打ち込み系の音の表現は低域の量と音の厚みでRP-HJE70の方が合うが、エッジのきつさがあるため厳しい部分もある。得意分野はER-6がクラシック、RP-HJE70がポップス。使い分けるなら破綻しても良いから楽しくノリ良く聴きたいときはRP-HJE70、そうでなければER-6。

ZEN AURVANA
ER-6はやや高音より、ZEN AURVANAはかなりフラット。低域はどちらも豊かな方ではないが、ZEN AURVANAの方がやや量が多い。中域はER-6の方がやや高い音で目立つ。高域はER-6の方がやや高い音を鳴らす。基本的にZEN AURVANAの方が低めの音で落ち着いた鳴らし方だが、全体の雰囲気はそれほど大きな差は無い。分解能はER-6の方がやや上。微細な描写に差がある。音場感はER-6の方がやや広く明確だが、大きな差は無い。原音忠実性は、周波数特性上の癖の無さはZEN AURVANAの方が良いが、原音の粗はER-6の方が感じられる。ER-6の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはER-6の方がやや上。厚みはZEN AURVANAの方がやや上。温かみは低域が出る分ZEN AURVANAの方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。ER-6の方が線が細く良い場合もあるのだが、ややうわずり気味でキンキンした感じになることも多い。そういう意味ではZEN AURVANAの方が安心して聴ける。どちらもあまりノリが良い鳴らし方ではない。ER-6の方が線の細い鳴らし方、ZEN AURVANAの方が落ち着いた鳴らし方。響きはどちらもややあっさりだが、どちらかと言えばZEN AURVANAの方が豊か。弦楽器はER-6の方が繊細、ZEN AURVANAの方が心地よい。金管楽器はER-6の方がやや高い音を鳴らすが、基本的にあまり大きな差は無い。打ち込み系の音の表現はZEN AURVANAの方がうまい。ER-6は線が細すぎる。使い分けるなら、線の細さを求めるならER-6、線の細さはそこそこに心地よく安心して聴ける音を求めるならZEN AURVANA。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
バランスド・アーマチュア 密閉型 20Hz〜16kHz 97dB 48Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
4g - 1.5m 両出し(Y型) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 5 5 4 5 均(高) 12700円

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公開日:2006.2.24