第77回 価格別favorite headphones インナーイヤー版 3回目

 インナーイヤー版となっていますが、実質カナル型版の3回目となる価格別favorite headphonesです。2回目が2011年12月なので、約3年ぶりということになります。カナル型だけでも100個ほど所有していますし、もう少し早くやることも検討していたのですが、優先順位はあまり高くなかったので今頃になってしまいました。


ZH-DX200-CT(5千円以下、ZERO AUDIO)
 5千円以下の価格帯ではすっかり定番になったのではないでしょうか。私が買った発売当時はそこまで高く評価されていませんでしたし、人気が出るまでだいぶ時間がかかったような気はしますが・・・・・・
 本サイトの基準で見ると音質的にかなり良い出来ではありますが、個人的には音が特別好きと言うよりも何となく使ってしまっているような感じです。これはおそらく、音質以外の部分を含め大きな欠点がなく使い勝手が良いからだと思います。もう少し具体的に書くなら、癖の小さい音で何でもそこそこ聴ける、着けたり外したりするのが簡単、小型軽量で耳への負担が小さい、ずれにくい、コードに癖がつきにくく扱いやすい、タッチノイズが小さい、再生機器のノイズを拾いにくい、遮音性がそこそこ高い、音漏れがそこそこ少ない、といった感じです(このうちいくつかは個人差があるでしょうが)。これらすべての点についてZH-DX200-CT以上のものとなるといくらお金を出してもほとんどないでしょうし、すべての点どころか半分でもあまり多くない気もします。音質的な欠点を挙げるなら、こじんまりまとまっていて何を聴いてもつまらないと感じる人がいそうな点です。余談ですが、その点だけが不満な人にはUE400VIがお薦めです。ZH-DX200-CTの低域を増やして音場を広くしたような音です。

HP-FX500(5千円〜1万円、Victor)
 その後シリーズ化されることになる、木の振動板を採用したイヤホン第1号です。今となっては上位機種がいくつも出たため存在感に欠ける気もしますが、かなり違う音なので上位機種があれば不要ということはないと思います。
 木の振動板という特徴やその外観から、音を聴くまでは柔らかく温かみのある音を想像する人が多かったようですが、実際はまったく違います。むしろ粗っぽい音と言えるのではないでしょうか。ただ、個人的には生楽器はこれくらい粗っぽいのが正常という気もします。もちろん粗があれば良いというものではありませんが、このところ異常なほど粗のない機種も見受けられますし、HP-FX500のような機種にも廃れてほしくないものです。他に特筆すべき点があるとすれば、コードの長さが最近では珍しい0.8mということくらいでしょうか。どのくらいの長さが使いやすいかは人それぞれでしょうが、最近は1.2mのものが多すぎる気がするので、もう少しバラエティがあっても良いのではないかと思ったりします。欠点はやや聴き疲れしやすい点と音漏れが多めな点です。もっとも、どちらの点についても特別酷いと言うほどではありませんが。

IE800(1万円〜2万円、TDK)
 ここ数年ヘッドホン・イヤホンに力を入れているTDKのデュアルドライバーイヤホンです。音質的な評判は悪くないようですが、それ以上にSENNHEISERのIE800と型番が被っていることで有名な気がします。発売はTDKの方が先なのですが、発表はSENNHEISERの方が先だったので、TDKがわざと被るようにしたのではないかと考える人もいるようです。とは言え、個人的にはその可能性は低いと思います。メーカーの人間はマニアほど他社製品を見ていないものですし、発売前なら尚更です。
 音質的には粗があるという意味でHP-FX500と近い傾向と言えるかもしれません。デフォルトのイヤーピースがフォームチップで、シリコンに換えるとかなり高域が刺さるようになります。フォームチップを採用しているイヤホンはさほど珍しくないと思いますが、ここまでフォームチップの方が良いと感じられるイヤホンはほとんどない気がします。それから外観が安っぽいという意見が散見されますが、そこだけが語られるのは少々疑問に思います。確かに本体はプラスチックで直感的に安っぽい印象を受ける人の気持ちは分かりますが、デュアルドライバー、フォームチップ2種類付属、フラットコードという仕様まで考えるとコストはかかっています。欠点は今書いた内容から分かるとおり、ランニングコストのかかるフォームチップでないと音質面で問題がある点、外観がパッと見安っぽい点です。

Image X10(2万円以上、Klipsch)
 ホーン型スピーカーで有名なKlipschがイヤホンに参入した際の製品です。今では1万円台として見ている人も多そうですが、発売から長いこと2万円以上で売られていましたし、本サイトの分類では2万円以上(レビューページの参考最安価格34800円)です。ちなみに、決まりごとのページに書いてあるとおりレビューページの参考最安価格はレビューを書いた時点で調査した最安価格です。なので、私の購入価格はそれよりもだいぶ高いことが多いです。Image X10は発売当時どの店も39800円で、私もその価格で買いました。39800円はぼったくりだと思う人もいるかもしれませんが、発売当時の海外の販売価格、為替レート、発売直後であることを考えると妥当な価格設定でした。
 音質的には良い感じに肩の力が抜けていてリラックスして聴ける印象です。小型軽量で着けていることを忘れるような装着感もあいまって何となく使ってしまうという意味ではZH-DX200-CTに近いものがあります。欠点は接続する機器によって音が変わりやすい点でしょうか。一般的にバランスド・アーマチュア型のイヤホンは接続する機器の出力インピーダンスによって音が大きく変わりますが、それが幅広く知られるようになったきっかけはImage X10だったと思います。
 なお、Image X10が一度生産終了になって類似製品のImage X11iが発売された後に、多数の要望があったらしく復刻版が発売されたという経緯があります。


 改めて見ると、価格の区切り方が微妙な気もします。価格別favorite headphonesのインナーイヤー版1回目は2007年5月で、その頃は今と全然状況が違っていた(高価なイヤホンがかなり少なかった)ので当然と言えば当然でしょう。もし次回があるなら、オーバーヘッド型と同じように「2万円〜3万円」「3万円以上」で区切っても良いかもしれません。もっとも、十分な数のレビューが公開されていない可能性もありますし、オーバーヘッド型にしても3万円以上ではなくもっと上で区切った方が良いと考える人もいそうですが・・・・・・







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