第30回 ATH-L3000試聴レポ
音質
やや低音より。低域は厚みはそれほどないが、量がやや多め。どこかぼやけた印象。中域は低めの落ち着いた音で、やや低域に押され気味。中高域はかなり地味で量も少ない。高域は細く繊細な鳴らし方で、必要量はある。
分解能、音場感は価格の割にはいまいちだが、絶対値としてはなかなか良い。ただ、音場はaudio-technicaらしい耳の近くで音が鳴っている感じが気になる。原音忠実性は良いが、原音の粗や生っぽさ等はあまり感じられない。エッジはきつくなく、かなり聴きやすい。
明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはかなり良い。ノリの良さと繊細さをある程度両立しているが、どちらかと言うとおとなしく地味な鳴らし方。響きは、低域は豊かで高域に行くに従って弱くなる。audio-technicaにしては非常に柔らかい音。
弦楽器は繊細かつ心地よい。特にチェロ等を楽しむには質も量も十分。金管楽器はあまり聴こえてこないが、変な癖やおかしい点はない。打ち込み系の音の表現はいまいち。切れ、低域の締まり、スピード感と言ったものが総合的にあまり合わない印象。
価格を考えれば色々不満もあるが、総合的な能力は決して悪くないし、国内メーカーのヘッドホンとしてはクラシックやジャズを心地よく聴かせてくれる珍しい機種。
装着感
良好。側圧は普通。audio-technica独自のウィングサポートのため頭頂部に圧力がかからず、ずれにくい。重量は重めだが、それをあまり感じさせない。
イヤーパッドは耳を覆うサイズだが内側が耳に当たる。上下方向の角度調節ができないが、しっかりフィットする。材質はラムスキンで、心地よいかけ心地。
その他
遮音性及び音漏れ防止は良好。
作り、デザインともに良い。コノリーレザーが他機種にはない魅力を持つ。配色もシックな感じで好印象。
プラグは金メッキの標準プラグ。コードの太さは合流前は約3mm、合流後は幅約4mm・厚さ約8mm、布巻きで太い割には扱いやすい。
付属品
キャリングポーチ
参考
周波数特性グラフ
比較メモ
ATH-W1000
ATH-L3000はやや低音より、ATH-W1000はやや高音より。低域はATH-L3000の方がローエンドまで出るように感じる。質感的にはATH-L3000の方が柔らかい。中域はATH-W1000の方がはっきり聴こえる。低域に邪魔されないだけでなく、やや高い音。中高域から高域は、中域の違いがより明確になる感じで、ATH-W1000の方がかなり高く、量も多い。分解能、音場感はほぼ同等。ただし、ATH-L3000はATH-W1000と比べると低域に邪魔される部分があるため、低域の少ないソースならATH-L3000の方が良く感じるだろう。原音忠実性はATH-L3000の方が上。ATH-W1000のような作ったような明るさや硬さが無い。ATH-W1000の方が若干エッジがきつい上、芯の通った音でやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-W1000の方が上。厚みはATH-L3000の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-L3000の方が感じられる。ATH-W1000の方が元気で明るくノリが良い。ATH-L3000の方がおとなしくゆったり聴かせる印象。響きはATH-L3000の方がやや豊か。弦楽器はヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しみたいならATH-W1000の方が良いが、そうでなければATH-L3000の方が心地よく楽しめる。金管楽器はATH-W1000の方がかなり高く硬い音で鮮やか。ただ、その不自然さを嫌うならATH-L3000の方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はATH-W1000の方がうまい。明るく硬い音が合う。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、高域の量や明るさが欲しいときにはATH-W1000、そうでなければATH-L3000。
edition7
ATH-L3000はやや低音より、edition7はややドンシャリ。低域の量はATH-L3000の方が多いが、厚みはedition7の方がある。中域はedition7の方がはっきり聴こえてくる。中高域から高域はedition7の方がかなり高く硬い音を鳴らす。分解能、音場感、原音忠実性すべてedition7の方が上。ATH-L3000はedition7と比べると全体的にぼやけているように感じる。ただし、edition7の方がかなり派手な音作りなので、それを受け付けない人にとってはATH-L3000の方が不自然さが無いように感じるだろう。edition7の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはedition7の方がかなり上。厚みはedition7の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-L3000の方が感じられる。edition7の方がかなりノリが良い。響きは、低域はATH-L3000の方が豊か、高域はedition7の方が豊か。弦楽器は、単に心地よく聴きたいならATH-L3000の方が良いが、ヴァイオリンの澄んだ感じや原音の実体感はedition7の方が上。金管楽器はedition7の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はedition7の方がうまい。音の厚みやスピード感が違う。使い分けるなら、クラシックやヴォーカルもの等をゆったり聴きたいならATH-L3000、それ以外はedition7。
HP-DX1000
ATH-L3000はやや低音より、HP-DX1000はかなりフラット。低域はATH-L3000の方が量が多くてローエンドまで出るように感じるが、厚みはHP-DX1000の方がある。中域はHP-DX1000の方がやや高くはっきり聴こえてくる。高域はHP-DX1000の方が高く硬い鳴らし方。分解能はほぼ互角。低域が少ないソースならATH-L3000の方が良く感じるだろうが、そうでなければHP-DX1000の方が良いように感じる。音場感はHP-DX1000の方が良い。広く、明確。原音忠実性はATH-L3000の方が上。HP-DX1000は中域がややうわずり気味で明るい音作りに感じる。どちらもエッジはきつくないが、硬く芯が通っている分どちらかと言えばHP-DX1000の方が聴き疲れするかもしれない。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-DX1000の方が上。厚みはHP-DX1000の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはATH-L3000の方が上。ノリの良さならHP-DX1000、繊細さならATH-L3000。ATH-L3000の方が線が細くて柔らかく、おとなしい鳴らし方。響きは、低域はATH-L3000の方が豊か、高域はHP-DX1000の方が豊か。弦楽器はATH-L3000の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-DX1000の方が高く鮮やかだが、ATH-L3000と比べるとソースによってはチープに感じる。打ち込み系の音の表現はHP-DX1000の方がうまい。明るく、音に厚みがあり、低域の締まりもある。使い分けるなら、温かみや繊細さを求めるならATH-L3000、明るさや音場感を求めるならHP-DX1000。
K271studio
ATH-L3000はやや低音より、K271studioはやや高音より。低域はATH-L3000の方が厚み・量ともにある。中域はどちらもやや低域に負け気味であったり、曇りを感じたりするところは似ている。高域はK271studioの方が細く高く量も多い。分解能、音場感はATH-L3000の方が上。原音忠実性は微妙。原音の実体感はATH-L3000の方があるが、癖のなさという意味ではK271studioもさほど劣っていない。どちらもエッジはきつくなく聴き疲れしない。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべて若干ATH-L3000の方が良いように感じるが、全体的にあまり大きな差は感じられない。ノリの良さならATH-L3000、繊細さならK271studio。響きはATH-L3000の方がやや豊か。弦楽器は線の細さが欲しいならK271studioだが、基本的にはATH-L3000の方が心地よく楽しめる。金管楽器はK271studioの方が高い音を鳴らすが、ATH-L3000と比べるとどこか弱々しく感じられる。打ち込み系の音の表現はATH-L3000の方がうまい。低域の質感や音の厚みで勝っている。得意分野はどちらもクラシック。使い分けるなら、基本的にはATH-L3000、よほど線の細さが欲しいときだけK271studioか。
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スペック
駆動方式 | 構造 | 周波数帯域 | 音圧感度 | インピーダンス |
ダイナミック | 密閉型 | 5Hz〜45kHz | 104dB | 48Ω |
重量 | ドライバー直径 | コードの長さ | コードの出し方 | 備考 |
380g | 53mm | 3m | 両出し | - |
評点
音質 | 装着感 | 遮音性 | 音漏れ | デザイン | 携帯性 | 音の傾向 | 参考最安価格 |
5 | 4 | 4 | 4 | 5 | 1 | 均(低) | 165000円 |
今回は、audio-technicaの限定500台の高級機ATH-L3000をお借りする機会がありましたので、その試聴レポです。形式は普段のヘッドホンレビュー+比較メモという形で行いたいと思います。