第25回 HE60/HEV70試聴レポ

音質
 かなりフラットだがやや高音より。低域はローエンドがやや弱めで、すっきりした鳴らし方。中域ははっきり聞こえてくるし、変な癖もない。高域はやや強めで粗がなく楽しめる。
 分解能、音場感ともに非常に良い。特に音場感はダイナミック型では味わえない広さと明確さ。かなり原音に近い音を鳴らすが、原音の粗っぽい感じはほとんど感じられない。エッジはきつくないが、線が細いせいか長時間聴くと多少疲れる。それにしてもかなり聴き疲れしにくいと言って良いレベルだろう。
 明瞭さは非常に良いが、音の鮮やかさはそれなり。ただ、明瞭な割には鮮やかさはそれなりに感じるだけで、絶対評価なら悪くない。厚みは薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさは十分感じられる。コンデンサー型らしく非常に繊細だが、変な柔らかさはない。むしろやや硬い鳴らし方をする点はSENNHEISERらしくないと感じる人も多そう。響きは必要量あるが、音の広がりが良く抜けも非常に良いので、ややあっさりに感じる。
 弦楽器は繊細さには文句はないものの低域が不足気味のせいか心地よさにはやや欠ける。金管楽器はダイナミック型のような力強さはないが、上品な鳴らし方で大きな欠点はない。打ち込み系の音の表現は意外とうまい。低域に締まりがあり、メリハリのある鳴らし方をしてくれるためだろう。
 繊細だが、繊細に過ぎることはない絶妙なバランス。

装着感
 良好。側圧がやや強いが、慣れればそれほど気にならない。重量は重くなく、ずれにくい。ヘッドバンドはかなり柔らかい。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質は心地よい布製。

その他
 通称Baby Orpheus。あのOrpheusの廉価版。ヘッドホン部HE60とアンプ部HEV70のセット。
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。特に音漏れ防止はコンデンサー型かつ開放型のため悪い。
 作りは価格の割には良くない。特にケーブルとアンプ部が安っぽい。デザインはごく普通。
 コードは、合流前は幅約6mm・厚さ約1.5mm、合流後は幅約14mm・厚さ約1.5mm。

参考
周波数特性グラフ


比較メモ
HD595
HD595はやや低音より、HE60/HEV70はやや高音より。低域はHD595の方が厚み・量ともにかなり上。HD595は多少曇っているように感じることがあるが、HE60/HEV70はそんなことはない。中域はどちらも癖がなくはっきり聴こえるが、どちらかと言えばHE60/HEV70の方がやや高い音ではっきり聴こえる。高域は質は意外と似ているが、HE60/HEV70の方が線が細い。ただし、どちらかと言えばHD595の方がやや金属的な鳴り。分解能、音場感はHE60/HEV70の方が上。特に音場感は圧倒的。原音忠実性はほぼ互角。どちらも原音の生っぽさや粗はあまり感じられない。どちらもエッジはきつくなく聴きやすい。明瞭さは線が細く低域が弱めなHE60/HEV70の方がかなり上。音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはHD595の方が上。温かみは低域が出る分HD595の方があるように感じられるが、その点を除けばほぼ互角。ヴォーカルの艶っぽさはHE60/HEV70の方が上。ノリの良さならHD595、繊細さならHE60/HEV70。響きはどちらも適度。弦楽器はHE60/HEV70の方が繊細で楽しめるが、低域の量は不満。そういう意味ではHD595の方が良いと感じる人も多そう。金管楽器は基本的にかなり似ているが、HE60/HEV70の方が線が細く、HD595の方が力強い。打ち込み系の音の表現は低域が出る上鳴らし方に力があるHD595の方がうまい。使い分けるなら低域が欲しい曲はHD595、それ以外はHE60/HEV70。ジャンルで分けるならクラシックはHE60/HEV70、それ以外はHD595。

RS-1
HE60/HEV70はやや高音より、RS-1はややドンシャリ。低域はRS-1の方が一段低い音を鳴らすし、量も多い。中域はどちらもはっきり聴こえるが、どちらかと言えばHE60/HEV70の方が明確。高域はRS-1の方がやや高い音を鳴らすし量も多い。分解能はHE60/HEV70の方が若干良い。音場感はHE60/HEV70の方が広く明確。原音忠実性はどちらもなかなか良いが、原音の粗が感じられないところは良く似ている。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、線が細い分HE60/HEV70の方がやや疲れるか。明瞭さはHE60/HEV70の方が若干上、音の鮮やかさはRS-1の方が若干上。厚みはRS-1の方がある。温かみはRS-1の方が感じられる。これは低域の量が多いだけではない。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。RS-1の方がノリが良い上、繊細さと言う意味でもHE60/HEV70と互角のものを持っている。響きはRS-1の方が豊か。弦楽器はどちらも十二分の繊細さを持っているが、RS-1の方が低域が出る分心地よさでは勝っているように感じる。金管楽器はRS-1の方が高く鮮やか。それでいて無駄な粗や作ったような感じは全くしない。打ち込み系の音の表現は低域の量が欲しいならRS-1の方が良いだろうが、どちらかと言うとHE60/HEV70の方がメリハリがあるので、単なる相性と言う意味ではHE60/HEV70の方がやや上だろう。使い分けるなら広い音場が欲しいときやメリハリが欲しいときはHE60/HEV70、それ以外はRS-1。

SRS-4040
どちらもやや高音よりだが、SRS-4040の方が若干低音よりか。低域はSRS-4040の方が低い音で量も多い。中域はどちらもはっきり聴こえてくるし変な癖もない。高域はSRS-4040の方が若干細い感じだが、量的にはほぼ同量。分解能はSRS-4040の方がやや上か。甲乙つけがたい。音場感はどちらも非常に良いが、SRS-4040の方がやや近くで鳴っているため、HE60/HEV70の方が良いと言う人も多そう。原音忠実性はどちらもかなり良いが、原音の生っぽさや粗はほとんど感じられない。この辺りはコンデンサー型に共通するところだろう。どちらもエッジはきつくなく非常に聴きやすいが、サ行の音等はSRS-4040の方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはほぼ互角だが、どちらかと言えばHE60/HEV70の方が上か。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSRS-4040の方が上。どちらも非常に繊細だが、繊細さだけに限るならSRS-4040の方が上。響きはSRS-4040の方がやや上。SRS-4040の方が柔らかい音。この2機種はメーカーが違う割にはかなり似た音だが、低域の量、響き、音の硬さが微妙に異なる。弦楽器はどちらも非常に繊細で心地よいが、どちらかと言えばSRS-4040の方が上か。ただしヴァイオリン等の清冽な感じが欲しいならHE60/HEV70の方が良いかもしれない。金管楽器はどちらかと言えばHE60/HEV70の方が金属的な鳴らし方で楽しめる。打ち込み系の音の表現はメリハリがある分HE60/HEV70の方がうまい。使い分けるなら低域が必要ない場合やメリハリが欲しいときはHE60/HEV70、柔らかい音が聴きたいときはSRS-4040。







戻る





スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
コンデンサー 開放型 12Hz〜65kHz - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
260g - 3m 両出し ドライバとセット

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
5 4 1 1 3 1 均(高) -

 今回は、SENNHEISERの高級コンデンサー型ヘッドホンHE60/HEV70をお借りする機会がありましたので、その試聴レポです。形式は普段のヘッドホンレビュー+比較メモという形で行いたいと思います。

TOP > 不定期コラム > 第25回