第45回 KNIGHT'S SONG/T-SQUARE「BLUE IN RED」より

 T-SQUAREは日本を代表するフュージョンバンドです。1976年のデビューからこれまでに何度もメンバーが入れ替わっていますが、基本編成はギター、サックス、ドラムス、キーボード、ベースです。
 今回取り上げるのは1997年発表のアルバム「BLUE IN RED」の2曲目です。T-SQUAREの曲の中ではロック調で、キャッチーなメロディーライン(EWI、ウインドシンセサイザーと思われます)が印象的な曲です。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「特にドラムの音がはっきりと奇麗に聴こえ,他の楽器も埋もれることなく艶っぽく聴こえるヘッドホンを希望です」とのことです。今回の曲はロックっぽくノリ重視で楽しむ聴き方もあると思いますが、この希望だと個々の楽器がはっきり聴こえた上で全体的に綺麗な感じに鳴らしてくれるものを求めているようなので、そういう方針で探索したいと思います。


・1台目 PRO DJ100(KOSS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。ドラムは軽いアタック感がある感じではっきり聴こえてきます。他の楽器も埋もれることはありませんが、低域が少なめなので量的には物足りないと感じる人もいるかもしれません。全体の印象としては、すっきりしていて綺麗な感じです。ただし、どちらかと言うと硬めの音でソースの粗はある程度出してくれるタイプなので、そういう意味では艶っぽさが足りないおそれはあります。
 他にはATH-A500、HD215、HP-535、UR/40等で聴いてみました。ATH-A500は悪くないのですが、PRO DJ100と比べると全体的に綺麗な感じとは言いがたいです。HD215は最後までPRO DJ100と迷いましたが、PRO DJ100の方が高域の粗が若干少ないように感じられたのでそちらにしました。HP-535は低域の量が多すぎるせいでバランスが悪く個々の楽器がはっきり聴こえてきません。UR/40は音が混ざるような感じで個々の楽器があまりはっきり聴こえてきません。
 不満点は、もう少し艶っぽさが欲しい点です。

・2台目 ATH-SX1(audio-technica)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されるように感じられます(艶っぽさはフィーリングなので個人差が大きいと思いますが)。特にウインドシンセサイザーが柔らかく電子楽器くささがない点が良いです。全体的に音に粗がなく滑らかな点も艶っぽさに寄与していると思います。こういう傾向の音だと個々の楽器がはっきり聴こえてこないことが多いものですが、ATH-SX1は低域が少なめで性能的にもある程度のものを持っているおかげかそういう不満はあまり感じません。ただし、ドラムのアタック感を重視したり主役級に目立って欲しいと考えるなら合わないと思われます。
 他にはHA-MX10-B、HP-AURVN-LV、K530、RH-300、RP-21等で聴いてみました。HA-MX10-Bはドラムははっきり聴こえてくるのですが、1台目の不満点は改善されません。HP-AURVN-LVはATH-SX1と比べるとウインドシンセサイザーの艶っぽさが感じられません。K530は悪くないのですが、全体的に明るめで1台目の不満点はあまり改善されません。RH-300はATH-SX1と比べると低域の量が多いせいか迫力のある鳴らし方になってしまいあまり綺麗で艶っぽくはありませんし、ウインドシンセサイザーが電子楽器くさい点も今回の探索条件ではマイナスに感じられます。RP-21はロックっぽい鳴らし方になってしまい、綺麗で艶っぽくはありません。
 不満点は、ドラムがもう少し目立って欲しい点です。

・3台目 SRS-4040(STAX)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。2台目の不満点についてはある程度改善されますが、ドラムのアタック感はそれほどないので、そういう方向性を求めているなら合わないと思います。全体的に綺麗な感じに鳴らしてくれますし、2台目同様ウインドシンセサイザーが柔らかく電子楽器くささがない点が良いです。低域が少なめで性能的にも優れているため個々の楽器が埋もれずに聴こえてくる点も2台目と近い傾向と言えるのではないかと思います。2台目との違いは、3台目の方が線が細くかつ全体のまとまりがある点です。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 KH-K1000(KENWOOD)
 かなり迷いましたが、最終的にはこれになりました。広い目で見れば2、3台目と近い傾向だと思います。ウインドシンセサイザーに電子楽器くささがなく、全体的に音に粗がなく滑らかです。2台目では音色の癖が気になるとか3台目ではコンデンサー型特有の質感が気になるという不満があるなら良い選択肢なのではないかと思います。
 他にはAH-D5000、ATH-AD2000、K701、RS-1等で聴いてみました。AH-D5000は最後までKH-K1000と迷いましたが、AH-D5000の方がやや明るくノリが良い傾向であまり綺麗で艶っぽくはないように感じられたため外しました。ATH-AD2000は全体的にがっしりしていて圧力もあるため、あまり綺麗で艶っぽくはありません。K701は悪くないのですが、ウインドシンセサイザーにやや芯が通っているような感じになるのが気になります。RS-1はドラムははっきり聴こえてくるのですが、ロックっぽい鳴らし方になってしまいあまり綺麗ではありません。

・5台目 ER-4S(Etymotic Research)
 ドラム含め個々の楽器がはっきり聴こえてくる点が非常に良かったので選びました。この点に比べると、「艶っぽく」という点は好みの差程度しかないように思われます。全体の印象としては、すっきりしていて綺麗な感じです。色々と聴いてみたのですが、GR8、HiDefJax AcousticSteel、SE535いずれもER-4Sと比べると個々の楽器がはっきり聴こえてこないという不満がありました。ただし、当然のことながらER-4Sがあらゆる点で勝っているわけではなく、ER-4Sと比べてもう少し柔らかい方が良いならGR8、楽器の質感のリアルさや重さが欲しいならHiDefJax AcousticSteel、もう少し低音よりのバランスが好ましいならSE535といった選択肢があるかと思います。
 他にはMA850G/AとSiberia In-Ear Headphoneが良かったです。どちらも比較的ER-4Sに近い傾向で、すっきりしていて綺麗な感じです。


 今回は探索条件が感覚的なものでなおかつ相反する要素を含んでいる面があったため、理解に苦しむ人も多いのではないでしょうか。そのような場合には、他人との感覚の違いや両立困難な音質面の要素といった点について考えながら読んで頂けたらと思います。
 ヘッドホンアンプはSA-15S1(SACDプレーヤーのヘッドホン端子)やKAF-A55が良いのではないかと思いますが、ドラムのアタック感や楽器の質感のリアルさを求めるなら合わないと思います。これもヘッドホンと同じように感覚的かつ相反する面があります。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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