第27回 Part 1/Keith Jarrett「The Koln Concert」より

 Keith Jarrettはアメリカのピアニストです。ジャンルとしてはジャズに分類されることが多いですが、クラシックの楽曲を演奏することも多い上に独自の世界観を作り上げているところもあり、ジャズというジャンルに収まらないミュージシャンと言えると思います。
 今回取り上げるのは1975年発表のライブアルバム「The Koln Concert」の1曲目です。このアルバムは全曲完全な即興演奏になっているのが特徴で、世界中で高く評価されたKeith Jarrettの代表作の一つです。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。ピアノソロなのでピアノの音色や質感をきちんと表現してくれること、今回の曲の美しさや静と動が感じられることを重視したいと思います。加えて真摯にピアノに向き合っている姿が目に浮かぶような鳴らし方であればなお良いです。


・1台目 T-7M(FOSTEX)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に音色の自然さはこの価格帯としては素晴らしいです。ピアノの質感もある程度きちんと再現してくれます。静と動のうち静の表現はなかなか良いのですが、動は物足りない感じです。美しさはしっかり感じられます。これは音色が自然で歪みが小さい上に響きが美しいおかげだと思われます。
 他にはATH-A500、HD215、HD497、HPS5000、SE-M870等で聴いてみました。ATH-A500とHPS5000はピアノの質感は良いのですが、音色はやや不自然です。HD215とHD497はどちらもなかなか良くT-7M含めてどれが選ばれてもおかしくないと思いますが、HD215は音色の自然さが若干見劣りする点、HD497はピアノの質感が若干見劣りする点が気になったので外しました。SE-M870はピアノの質感がいまいちです。今回の曲はピアノの硬さや輪郭がある程度しっかり感じられ、ヘッドホンとしては(質感の表現という意味だけでなく美しさや静と動を感じるためにも)それを素直に出してくれるものが良いように感じられました。
 不満点は、厚みやメリハリがやや足りない点です。

・2台目 MDR-CD900ST(SONY)
 最初に書いた条件と1台目の不満点を踏まえて選びました。特にピアノの質感が素晴らしいです。音色もそれなりに自然ですし、静と動の表現も平均以上にこなしてくれます。厚みやメリハリは1台目よりもかなり感じられます。MDR-CD900STは聴き疲れのしやすさと音場の狭さが欠点ですが、今回の曲ではそれらの欠点はあまり気になりません。
 他にはATH-ES7、HP-AURVN-LV、K181DJ、RH-300、RP-21、SRH840等で聴いてみました。どれも1台目の不満点はしっかり改善されます。ATH-ES7とK181DJはピアノの質感は良いのですが、音色はやや不自然です。HP-AURVN-LVは最後までMDR-CD900STと迷いましたが、HP-AURVN-LVの美しさはMDR-CD900STと比べると作られたものであるような感じが若干して、真摯にピアノに向き合っている姿が目に浮かぶのはMDR-CD900STだったのでそちらにしました。RH-300とSRH840は動の表現がもう少し欲しかったところです。RP-21はなかなか良いのですが、MDR-CD900STと比べるとピアノの質感が若干見劣りするので外しました。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・3台目 AH-D5000(DENON)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。その結果、必然的にバランスが良く完成度の高いものを選ぶことになったのではないかと思います。特別どこが良いという感じではありませんが、あえて挙げるならピアノの音色の自然さと静の表現が優れている印象です。とは言え、ピアノの質感や動の表現についても平均以上だと思いますし、美しさや真摯にピアノに向き合っている姿が目に浮かぶかどうかという点についてはそれ以上のものを持っているように感じられます。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・4台目 HD800(SENNHEISER)
 色々と聴いてみましたが、最終的には3台目と同じくバランスが良く完成度の高いものになりました。3台目と比べると、最初に書いた条件についてはどれも大きな差はありませんが、HD800の方が音が硬く響きがあっさりしています。総合的に見てどちらが上と言うよりは、好みの違いだと思います。
 他にはHP-DX1000、K701、KH-K1000、MDR-SA5000、SR-325i等で聴いてみました。HP-DX1000はピアノの質感は悪くないのですが、音色はやや不自然です。K701は音色の自然さと静の表現はかなり良いのですが、動の表現はいまいちです。KH-K1000は静の表現は良いのですが、それ以外は全体的にやや不満です。MDR-SA5000は全体的に悪くはないのですが、静の表現とそれに伴う美しさがいまいちな印象です。SR-325iは最後までHD800と迷いましたが、HD800の方が静の表現が良く真摯にピアノに向き合っている姿が目に浮かぶようだったのでそちらにしました。

・5台目 Turbine Pro Copper(Monster Cable)
 ピアノの質感と動の表現が良かったので選びました。美しさという意味でも平均以上ですが、それよりも目の前で弾いているような実体感がある点が良いです。ピアノの音色や静の表現も悪くはありません。色々と聴いてみたのですが、ATH-CK10とER-4Sはピアノの質感がいまいち、HiDefJax AcousticSteelは静の表現は良いもののTurbine Pro Copperと比べるとピアノの質感や動の表現では若干見劣りする等の不満がありました。
 他にはHP-FX500とAH-78が良かったです。どちらもピアノの質感と動の表現がなかなか良いです。特にHP-FX500はTurbine Pro Copperと最後まで迷ったほどです。


 本当は静と動の表現を別個ではなく静と動の対比まで追及したかったのですが、実際にはどちらか片方に不満が出るケースが多くピアノの音色や質感まで含めて考えるとそこまでハイレベルな探索はできませんでした。静と動の対比だけに絞って探索してみてもおもしろいのではないかと思います。
 ヘッドホンアンプは微妙なところです。ピアノの硬さや輪郭を求めるならhpa200b(ハイエンド仕様)、ピアノの音色や動の表現を求めるならHD-1L Limited Edition(RC1)、静の表現や美しさを求めるならSA-15S1(SACDプレーヤーのヘッドホン端子)といった選択肢が出てきます。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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