第70回 生産終了になったfavorite headphones

 favorite headphonesはその時点で入手可能なものだけを取り上げるようにしているため、どのヘッドホンが取り上げられるかは不定期コラムをやるタイミングに左右されますし、その際に存在している競合製品の影響も受けます。したがって、実際にはかなり好きなヘッドホンでもfavorite headphonesに選ばれていないものがあります。そういった不遇なヘッドホンがだいぶ増えてきたので、今回はあえて実用性を無視して生産終了になったヘッドホンのみから選んでみることにしました。
 また、レビューページのfavorite!表記について単に私が好きなヘッドホンにつけていると勘違いしている人が相当数いるようなので、その勘違いによって発生する誤解を多少なりとも緩和する役に立つのではないかという考えもあります。


P-801/L2(5千円以下、NAGAOKA)
 生産終了になる前に選ばれなかった理由はタイミングです。レビューを公開したのが2009年9月5日で、その後にfavorite headphonesをやったのが2012年6月29日、そのときには既に生産終了になっていました。
 5千円以下という価格帯では珍しい繊細な傾向のヘッドホンです。STAXのような音と言えば分かりやすいでしょうか。もちろんダイナミック型なのでそっくりというわけにはいきませんが、ダイナミック型のヘッドホンでこれよりSTAXに近い傾向のものは1割に満たないと思います。販売店が新星堂等かなり限られていたこともあって知名度が低いように思いますが、非常に多くの製品が存在するこの価格帯においてP-801/L2は希少かつ魅力のあるヘッドホンなので、もう少しこういった方向性のヘッドホンが出てきても良いのではないかと思います。

T-7M(5千円〜1万円、FOSTEX)
 生産終了になる前に選ばれなかった理由はタイミングです。レビューを公開したのとほぼ同時期に生産終了になりました。
 こういう音を鳴らすヘッドホンは最近少なくなっているように思います。それには色々な理由が考えられますが、何にせよこういう製品を求めている人はいつの時代もいるはずなので、残して欲しかったところです(一応後継機は出ています)。もっとも、これから発売するならデザインは変える必要があるかもしれませんが・・・・・・
 ちなみに、T-7Mについては前回のコラム『第69回 生産終了になった機種の思い出 2回目』でも触れています。

TR-HP03B(1万円〜2万円、shiroshita)
 生産終了になる前に選ばれなかった理由はタイミングです。レビューを公開したのが2006年12月30日で、その後にfavorite headphonesをやったのが2009年1月30日、そのときには既に生産終了になっていました。
 何を聴いても悪くないヘッドホンだと思いますが、特定の再生環境で一部の生楽器やヴォーカルものと非常に相性が良いことがあり、そういう点もfavoriteな一因だと思います。何となくですが、買ったばかりの頃よりも数年経ってからの方がより好きになった気がします。これはエージングで音が変わったとか聴力が変化したとかいうことよりも、様々な音楽を様々な機器で聴いて経験を積んだことが大きいのではないかと思います。
 T-7M同様、前回のコラム『第69回 生産終了になった機種の思い出 2回目』でも触れています。

K501(2万円〜3万円、AKG)
 生産終了になる前に選ばれなかった理由は、他にもっと好きなヘッドホンがあったためです。レビューを公開したのが2004年11月28日で、生産終了になるまでの間に3回favorite headphonesをやっています(その3回で選ばれたのはSR-225、HD595、DT990PROです)。その意味で、これまでの3台と比べると不遇ではなかったと思います。
 ただし、他に似た傾向の製品が出てこなかったという意味で、レビュー公開当時よりも数年経ってからの方が相対的に価値がアップしたような印象も受けます。一応K601がありましたが、これはK501とK701の間のような音で、個性や使い分けという意味ではK501の方が有用です。個人的にはK501で聴くチェンバロは唯一無二だと思います。完成度としてはK701の方が上だと思いますが、私のように多くのヘッドホンを使い分ける人間にとっては甲乙つけがたいものがあります。

PROline2500(3万円以上、ULTRASONE)
 生産終了になる前に選ばれなかった理由は難しいところですが、結果的には他にもっと好きなヘッドホンがあったためということになると思います。レビューを公開したのが2004年12月27日で、生産終了になるまでの間に2回favorite headphonesをやっています(その2回で選ばれたのはRS-1、SRS-4040です)。
 非常に癖の強い機種ですが、好きな人は好き、はまるソースにははまる、ということは言えるのではないかと思います。個人的にはメタルや民族音楽でしょうか。その両方の要素を持っているような曲では頻繁に使います。それ以外でも、男性ヴォーカルがなかなか味わい深かったり開放型で迫力を求める場合に有用だったりと、意外とストライクゾーンが広いような気もします。
 前回のコラム『第69回 生産終了になった機種の思い出 2回目』でも触れています。


 今回取り上げたヘッドホンを大雑把に分類すると、3つのグループになるかと思います。繊細な方向性のP-801/L2・T-7M・K501、迫力のある方向性のPROline2500、その間のTR-HP03Bという3つです。他にも色々な分け方があると思いますが、個人的にはこれが一番しっくり来ます。
 改めて眺めてみても、今回取り上げたヘッドホンは過去にfavorite headphonesで取り上げたヘッドホンと比べて見劣りしません。その意味で今回のコラムはやって良かったと思います。
 実は今回取り上げなかった"生産終了になったfavorite headphones"がまだいくつか残っているのですが、今回と比べるとやはり質が落ちますし、全価格帯で十分な候補があるとも思えないので、とりあえずしばらくは保留ということになると思います。







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