MHP-AV1

音質
 ややドンシャリ。低域はぼやけていてやや量が多め。中域は、低域の薄い曇りに覆われる感じであまりはっきり聴こえてこないが、変な癖がない点は良い。高域はそれなりに高い音で必要量はあるのだが、あまり明るい感じではない。
 分解能、音場感、原音忠実性すべて価格の割に悪いが、いずれの点についても最低限のものは持っている。エッジはあまりきつくなく、聴き疲れしにくい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはいまいち。厚みは薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。ややサラサラした質感で、音に芯が通っていない。ノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、最低限のラインは保っている感じ。響きはやや豊か。
 弦楽器は繊細さ・心地よさ・生楽器らしさいずれも最低限のものは持っているが、決して良くはない。金管楽器は表面的にはそれなりに鳴らしてくれるのだが、鮮やかさにしろ力強さにしろ不満。打ち込み系の音の表現はいまいち。低域の量感、音の質感の相性、音の厚み、切れ等、様々な点で良くない。
 普通の有線のヘッドホンと音質だけを比べると、かなりコストパフォーマンスが悪い。
 上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の2チャンネルの音源を聴いたときのもの。サラウンド機能(ドルビープロロジックU)を使用したときの音は、ヘッドホンサラウンドアダプター・SU-DH1同様違和感のある音になるのが最大の特徴。また、一つ一つの音の輪郭が不明瞭になって不自然なエコーがかかったようになり、例えば歌詞が聴き取りづらくなる等の変化が起きるのもSU-DH1と同じ。音楽を聴ける音ではない。音楽を聴くならサラウンド機能(ドルビープロロジックU)は切るべき。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめると、いまいち。全体的に遠くから音が鳴るような感じの変化はあるが、それを除くとあまりサラウンドの効果は感じられない。左右の広がりや後方で鳴らす感覚に乏しく、音が前方に集まる感じ。SU-DH1+SE-A1000やリアルサラウンドヘッドホン(HP-850XB)の方がしっかり効果が感じられる。ただ、違和感の少ないサラウンドとは言えるのかもしれない。

装着感
 良好。側圧及びフリーアジャストのヘッドバンドの圧力は普通。ずれやすさも普通。ヘッドバンドには頭頂部に負担がかからないよう2箇所にパッドが設置されている点は良いが、パッドが硬いのはマイナス。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。ただ、深さはあまり深くないので、耳が当たる人が多いだろう。材質はケバケバしている安っぽい布製。肌触りが良いとは言いがたいが、蒸れにくい点は良い。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は悪い。普通の開放型と同レベル。
 作りはデコーダー部含め安っぽい。デザインはそれなり。一度電池が空になると、ある程度充電するまで使用不可能。充電しているつもりでも(充電中のランプが点灯しているにもかかわらず)実際には充電されていないことが多々ある(おそらくヘッドホン部とトランスミッター部の接点の設計の問題)。電池はeneloopなので、別途充電するのは可能と推測される。ただし、電池の取り外しがきつく、ドライバー等道具を使って慎重に行わないと手を怪我する恐れがある。遮蔽物なしの直線距離で30m・360度受信可能ということになっているが、遮蔽物があると5mほどで音が途切れることもある。ただし、普通の使用状況ではあまり問題ないレベルと思われる。
 イヤーパッドのサイズは、外周102mm×100mm、内周60mm×52mm、深さ12mm。

付属品
ACアダプター
光デジタルケーブル(角型-角型)
同軸デジタルケーブル
RCAケーブル
ステレオミニケーブル
専用ニッケル水素電池×2



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ

赤:DOLBY OFF 青:DOLBY ON

比較メモ
HP-850XB
HP-850XBは低音より、MHP-AV1はややドンシャリ。低域はどちらもぼやけていて量が多い点は似ているが、HP-850XBの方がよりぼやけていて量が多い。中域は基本的にはMHP-AV1の方が低域の曇りに覆われず聴こえてくるが、HP-850XBの方が張り出すような感じで悪い意味で目立つことがある。高域はMHP-AV1の方が高く鋭い音で量も多い。分解能はMHP-AV1の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ勝っている。音場感はHP-850XBの方が広いが、明確さや見晴らしの良さを含めた音場感トータルの評価としてはほぼ同レベル。原音忠実性はMHP-AV1の方が上。HP-850XBは高域が弱すぎるし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いでもMHP-AV1が勝っている。MHP-AV1の方がエッジがきついが、HP-850XBはホワイトノイズや中域の張り出しで疲れることがあるので、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さ、音の鮮やかさはMHP-AV1の方がやや上。厚みはHP-850XBの方がややある。温かみは、ぬるま湯のような生温かい感じでも良いならHP-850XBの方が良いだろうが、そうでなければMHP-AV1の方が自然に温かみを感じることができる。ヴォーカルの艶っぽさはMHP-AV1方が上。MHP-AV1の方が明るくノリが良い。響きは、低域はHP-850XBの方が豊か、高域はMHP-AV1の方が豊か。MHP-AV1の方がサラサラした質感で、ドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はMHP-AV1の方がうまい。繊細さや生楽器らしさで勝っている。ただ、MHP-AV1にしてもあまり良いとは言えないレベル。金管楽器はMHP-AV1の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はMHP-AV1の方がうまい。HP-850XBは高域が弱すぎるし明るさや刺激も足りない。上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の音楽を用いて比較したもの。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめると、サラウンドの効き方と言うよりもHP-850XBの方が根本的に音場が広い点に違いがあるように感じるが、何にせよHP-850XBの方が優れた音場と言えよう。マルチドライバ特有の明確な音の分離という点にも差がある。使い分けるなら、基本的にはMHP-AV1、サラサラした質感が気になる場合にはHP-850XB。あるいは、サラウンド機能を使用する場合にはHP-850XB、使用しない場合にはMHP-AV1。

HP-D7
HP-D7はやや低音より、MHP-AV1はややドンシャリ。低域はMHP-AV1の方がぼやけていて量が多い。HP-D7の方が厚みや圧力があり存在感がある。中域はHP-D7の方が低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。高域は多少似ているが、MHP-AV1の方が細く高い。HP-D7の方が明るく目立つ。分解能はHP-D7の方がやや上。音場感はHP-D7の方がやや広く明確。原音忠実性はHP-D7の方がやや上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。HP-D7の方がエッジがきつくやや聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-D7の方がやや上。厚みはHP-D7の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMHP-AV1の方がやや上。低域の曇りと音に芯が通っていない点で有利なため。HP-D7の方がノリが良い。響きはMHP-AV1の方が豊か。弦楽器はHP-D7の方がうまい。MHP-AV1は生楽器らしさが不足。金管楽器はHP-D7の方がうまい。鮮やかかつ力強い。打ち込み系の音の表現はHP-D7の方がうまい。音の質感の相性、低域の量感、ダイナミックな鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはHP-D7、聴き疲れや音に芯が通っている感じが気になる場合はMHP-AV1。

MDR-DS1000
MDR-DS1000はややかまぼこ、MHP-AV1はややドンシャリ。低域はMHP-AV1の方が量が多くぼやけている。中域はMDR-DS1000の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はMHP-AV1の方が高く明るい音で量も多い。分解能はほぼ同レベル。音の分離はMDR-DS1000の方がやや上、一つ一つの音の微細な描写はMHP-AV1の方がやや上。音場感は広さ・明確さともに大差ないが、ソースによっては音の鳴る場所がかなり変わることがある。原音忠実性はMHP-AV1の方がやや上。MDR-DS1000の方が一聴して違和感のある音を鳴らすことが多い。エッジはMHP-AV1の方がややきついが、MDR-DS1000は中域が張り出すような感じで疲れることがあり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはMDR-DS1000の方が上、音の鮮やかさはMHP-AV1の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMHP-AV1の方が上。MHP-AV1の方が上品で繊細。響きはMHP-AV1の方が豊か。MDR-DS1000の方が飾り気がなくチープに感じる。弦楽器はMHP-AV1の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMHP-AV1の方が鮮やかでしかも癖がない。打ち込み系の音の表現はMDR-DS1000の方がややうまい。音の質感の相性や切れで多少勝っている。上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の音楽を用いて比較したもの。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめると、サラウンドの効きは基本的にあまり大きな差はないが、MHP-AV1の方が音が前方に集まる印象。前方定位を望むならMHP-AV1の方が良いが、サラウンドらしくあちこちで音が鳴っている感覚を味わいたいならMDR-DS1000の方が良い。使い分けるなら、基本的にはMHP-AV1、MHP-AV1では低域の量が多いとか曇りが気になるという不満があるならMDR-DS1000。

SE-A1000
MHP-AV1はややドンシャリ、SE-A1000は低音よりのドンシャリ。低域はSE-A1000の方が重心が低く厚みがある。MHP-AV1の方が薄く曇っていてぼやけているような感じ。全体的な量としてはMHP-AV1の方がやや多いように感じる。中域はSE-A1000の方が低域の曇りに覆われず、やや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はMHP-AV1の方がやや細く高い音。SE-A1000の方が金属的で明るい音。分解能はSE-A1000の方が上。音場感はSE-A1000の方がやや広く明確。原音忠実性はSE-A1000の方が上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。SE-A1000の方がややエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-A1000の方が上。MHP-AV1は薄く曇っているように感じる。厚みはSE-A1000の方がある。温かみは低域の曇りのおかげでMHP-AV1の方が感じられる面もあるが、リアルな温かみという意味ではSE-A1000の方がある。ヴォーカルの艶っぽさは、MHP-AV1の方が落ち着いた音でスモーキーな感じが良い面もあるが、SE-A1000の方が細かい表現をこなしてくれる。SE-A1000の方がノリが良い。響きはMHP-AV1の方がやや豊か。弦楽器はSE-A1000の方がうまい。MHP-AV1は生楽器らしさが足りない。金管楽器はSE-A1000の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はSE-A1000の方がうまい。音の質感の相性や明るい鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、基本的にはSE-A1000、聴き疲れや高域の刺激を避けたいときだけMHP-AV1。

SE-MJ7NS
MHP-AV1はややドンシャリ、SE-MJ7NSは低音よりのドンシャリ。低域はSE-MJ7NSの方がしっかり低い音を鳴らすし、厚み・量ともに上。中域はMHP-AV1の方が低域に埋もれずはっきり聴こえてくる。高域は質的にも量的にもそれなりに似ているが、MHP-AV1の方がやや高く明るい。分解能はMHP-AV1の方がやや上。一つ一つの音の微細な描写に差がある。音場感はMHP-AV1の方が広く明確。SE-MJ7NSの方が耳の近くで音を鳴らす感じがかなり気になる。原音忠実性はMHP-AV1の方が上。SE-MJ7NSは低域が強すぎるし、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いもMHP-AV1の方が上。エッジはMHP-AV1の方がややきついが、SE-MJ7NSはこもり感や音の圧力で疲れる面があるので、聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さ、音の鮮やかさはMHP-AV1の方がやや上。厚みはSE-MJ7NSの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMHP-AV1の方がやや上。SE-MJ7NSの方が低音の量と音の厚みによるノリの良さがある。MHP-AV1はSE-MJ7NSに比べるとニュートラルで癖がない。響きは、低域はSE-MJ7NSの方が豊か、高域はMHP-AV1の方が豊か。弦楽器はMHP-AV1の方が繊細で良い。金管楽器はあまり大きな差はないが、MHP-AV1の方が明るく、SE-MJ7NSの方が力強い。打ち込み系の音の表現は微妙。音の質感の相性はどちらかと言えばSE-MJ7NSの方が良いが、MHP-AV1の方が明るい鳴らし方で良いと感じる面もある。上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の音楽を用いて比較したもの。サラウンド機能を使用したときの音は、どちらも違和感が強くなり一つ一つの音が聴き取りにくくなる点が似ている。MHP-AV1の方が遠くから音を鳴らしているような感じになることを除けば、サラウンドの効きはSE-MJ7NSの方が明確に分かるが、個々の音の音量バランスが多少狂ってしまうような印象。使い分けるなら、基本的にはMHP-AV1、音の厚みや低音の量感が欲しいときにはSE-MJ7NS。

サイン波応答

位相+高周波歪み

インパルス応答(CSD)

インパルス応答(録音波形)

100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
370g 40mm - - バーチャルサラウンドヘッドホン

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 4 2 2 3 1 均(低、高) 21000円

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公開日:2008.6.3