MDR-DS1000

音質
 ややかまぼこ。低域はローエンドが不足だし、全体的な量もやや少なめ。中域は低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、ソースによっては張り出すような癖が気になる。高域は質的にも量的にもやや控え目。高域の伸びが良くない。
 分解能はいまいち。音の分離はまだしも、一つ一つの音の微細な描写はかなり不満。音場感は分解能ほどの不満はない。広さ・明確さともにある程度はある。原音忠実性はいまいち。何を聴いても一聴して原音とは違うと分かる音を鳴らす。エッジはあまりきつくないが、中域が張り出すような感じで疲れることがある。
 明瞭さは低域の量が少ないこともあってそれなりに感じられるが、その点を除くとかなり評価が下がる。音の鮮やかさはいまいち。厚みはやや薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。しかもヴォーカルは張り出すような癖が気になることが多い。ノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、どちらかと言えばノリが良い傾向か。響きはややあっさりだが、変に響く感じが気になることがある。
 弦楽器は繊細さも心地よさも不足。金管楽器は線が太く張り出すような感じでそれなりに聴こえるが、癖が気になるし鮮やかさにも欠ける。打ち込み系の音の表現はいまいち。音の質感の相性、音の厚み、切れ等、どれも特別悪くはないが不満はある。
 普通のヘッドホンと音質だけを比べると、かなりコストパフォーマンスが悪い。
 上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の2チャンネルの音源を聴いたときのもの。サラウンド機能(ドルビープロロジックU)を使用したときの音は、ヘッドホンサラウンドアダプター・SU-DH1同様違和感のある音になるのが最大の特徴。また、一つ一つの音の輪郭が不明瞭になって不自然なエコーがかかったようになり、例えば歌詞が聴き取りづらくなる等の変化が起きるのもSU-DH1と同じ。音楽を聴ける音ではない。音楽を聴くならサラウンド機能(ドルビープロロジックU)は切るべき。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめるとそれなりに感じられるが、リアルサラウンドヘッドホン(HP-850XB)と比べるとやや劣る。左右の広がりや後方で鳴らす感じをある程度は出してくれるが、リアルサラウンドヘッドホン(HP-850XB)ほどには明確に分離しない。また、デコーダー部のスイッチでCINEMAモードとMUSICモードが切り替えられるが、CINEMAモードはMUSICモードと比べて低音の量が多い。それ以外の点はそこそこ似ているが、音の遠さ等にも多少の違いはあるようだ。
 MDR-DS1000のデコーダー部とSU-DH1のサラウンドの効きを比較すると、ほぼ同レベル。違いはあるのかもしれないが、HP-850XBと比べればかなり小さく、効き方も似ているので違いを判別するのが難しい。ヘッドホン部をHD53に接続したときの音は、デコーダー部に接続したときと比べて明らかに明瞭でメリハリがあり、ワンランク上の音になる。どうやらデコーダー部のヘッドホンアンプとしての性能はあまり良くないようだ。また、インピーダンスが小さく感度の高いヘッドホンを使用すると、無音時のホワイトノイズが気になる(デフォルトのヘッドホン含め大抵のヘッドホンは実用ボリューム域では問題ないレベル)。

装着感
 良好。側圧はやや弱め。ヘッドバンドはプラスチックだが、二股に分かれているし軽量でなので頭頂部が痛くなるようなことは無いし、かなりずれにくい。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、左右方向の角度調節ができないがそれほど気にならない。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は密閉型と考えると悪い。特に遮音性は酷く、外部騒音の種類によってはヘッドホンを装着していないとき以上に気になることがある。
 作りは安っぽいが、ヘッドホン部とデコーダー部を合わせた価格としては実際かなり安いので致し方なかろう。デザインそのものはそれほど悪くはないのだろうが、作りが安っぽいために悪く感じる。ヘッドホン部はMDR-XD050という型番が示すとおりMDR-XD100の下位機種のようだ(MDR-XD050は単品販売しておらず、取扱説明書には増設する際はMDR-XD100を推奨と書いてある)。
 デコーダー部をサラウンド機器として他のヘッドホンを使用できるという意味でヘッドホンサラウンドアダプター・SU-DH1と同様の使い方ができるので、簡単に比較しておく。入力は角型光とステレオミニで、RCAやデジタル同軸はない(SU-DH1は光デジタルミニとステレオミニなので、数は同じだが使い勝手はMDR-DS1000の方が良いだろう)。出力はヘッドホン端子がミニサイズが2個(SU-DH1はミニプラグ1個)。電源はACアダプタ(SU-DH1はバッテリー駆動でオプションのACアダプタも使えるので、電源面はSU-DH1の方が使い勝手が良い)。両機ともにゲイン切り替えスイッチが付いている。動作モードは、ドルビープロロジックUでOFF、CINEMA、MUSICの3通り(SU-DH1はドルビープロロジックUの3通りに加えてドルビーヘッドホンモードが3パターンあるので、選べる音質の種類はSU-DH1の方がかなり多い)。ボリュームのガリノイズやギャングエラーはほとんどない。ゲインはやや低めで、デフォルトのヘッドホンで録音レベルの低いソースを聴くと、12時以上まで上げることも有り得る。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約3mm、合流後は幅約5.5mm・厚さ約3mm、やや硬いが癖が付きやすいわけではなく、特に扱いづらさは感じない。ただし、ベタベタしてホコリが付着しやすい点が気になる(個体差はあるかもしれない)。イヤーパッドのサイズは、外周88mm×86mm、内周60mm×42mm、深さ14mm。

付属品
ACアダプター
光デジタルケーブル(角型-角型)



参考
周波数特性グラフ

赤:OFF 青:CINEMA


赤:OFF 青:MUSIC

比較メモ
HP-850XB
HP-850XBは低音より、MDR-DS1000はややかまぼこ。低域はHP-850XBの方がかなり量が多くぼやけている。中域はMDR-DS1000の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はMDR-DS1000の方が太い質でやや量が多い。分解能はMDR-DS1000の方がやや上。音の分離に多少差がある。音場感はHP-850XBの方がやや広く、前方定位する感じ。原音忠実性はどちらも良くない。どちらも周波数特性に癖があり、その癖の傾向が違うので人によってどちらが原音忠実に感じるかは多少違ってくるだろう。原音の粗や生っぽさはMDR-DS1000の方がやや感じられる。エッジはどちらもきつくないが、MDR-DS1000は中域が張り出すような感じで疲れることがあり、総合的な聴き疲れはMDR-DS1000の方がやや酷いように感じる。明瞭さ、音の鮮やかさはMDR-DS1000の方が上。厚みはHP-850XBの方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP-850XBの方が上。HP-850XBの方がおとなしく繊細な印象だが、低域が多いためソースによっては迫力があるように感じる。響きはHP-850XBの方が豊か。弦楽器はHP-850XBの方が心地よく癖がない。金管楽器はMDR-DS1000の方が太く明るい質で楽しめる。打ち込み系の音の表現はMDR-DS1000の方がやや上。音の質感の相性や切れで勝っている。上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の音楽を用いて比較したもの。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめると、HP-850XBの方がしっかり感じられる。マルチドライバ特有の明確な音の分離という点に差がある。使い分けるなら、低域の量が欲しいならHP-850XB、それほど必要ないならMDR-DS1000。あるいは、サラウンド機能を使用する場合にはHP-850XB、使用しない場合にはMDR-DS1000。

MDR-XD400
MDR-DS1000はややかまぼこ、MDR-XD400はやや低音より。低域はMDR-XD400の方が重心が低く、量も多い。中域はMDR-DS1000の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はMDR-XD400の方が高く明るい音で、量も多い。分解能はMDR-XD400の方が上。一つ一つの音の微細な描写に差がある。音場感はMDR-XD400の方がやや広く明確。原音忠実性はMDR-XD400の方が上。MDR-DS1000は一聴して違和感のあることが多いが、MDR-XD400はそれほどでもない。原音の粗や生っぽさもMDR-XD400の方が感じられる。エッジはMDR-XD400の方がきついが、MDR-DS1000は中域が張り出すような感じで疲れることがあり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはMDR-XD400の方が上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMDR-XD400の方が上。MDR-XD400の方がノリが良くかつ繊細。響きはMDR-XD400の方がやや豊か。MDR-XD400に比べるとMDR-DS1000は生気に欠け、何を聴いても楽しくない印象。弦楽器はMDR-XD400の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMDR-XD400の方が鮮やかでしかも癖がない。打ち込み系の音の表現はMDR-XD400の方がうまい。音の質感の相性や低域の量感で勝っている。使い分けるなら、基本的にはMDR-XD400、MDR-XD400ではエッジのきつさや低域の量が気になるときだけMDR-DS1000。

MHP-AV1
MDR-DS1000はややかまぼこ、MHP-AV1はややドンシャリ。低域はMHP-AV1の方が量が多くぼやけている。中域はMDR-DS1000の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はMHP-AV1の方が高く明るい音で量も多い。分解能はほぼ同レベル。音の分離はMDR-DS1000の方がやや上、一つ一つの音の微細な描写はMHP-AV1の方がやや上。音場感は広さ・明確さともに大差ないが、ソースによっては音の鳴る場所がかなり変わることがある。原音忠実性はMHP-AV1の方がやや上。MDR-DS1000の方が一聴して違和感のある音を鳴らすことが多い。エッジはMHP-AV1の方がややきついが、MDR-DS1000は中域が張り出すような感じで疲れることがあり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはMDR-DS1000の方が上、音の鮮やかさはMHP-AV1の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはMHP-AV1の方が上。MHP-AV1の方が上品で繊細。響きはMHP-AV1の方が豊か。MDR-DS1000の方が飾り気がなくチープに感じる。弦楽器はMHP-AV1の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMHP-AV1の方が鮮やかでしかも癖がない。打ち込み系の音の表現はMDR-DS1000の方がややうまい。音の質感の相性や切れで多少勝っている。上記の内容は、サラウンド機能オフで通常の音楽を用いて比較したもの。マルチチャンネルの映画でサラウンドの効果を確かめると、サラウンドの効きは基本的にあまり大きな差はないが、MHP-AV1の方が音が前方に集まる印象。前方定位を望むならMHP-AV1の方が良いが、サラウンドらしくあちこちで音が鳴っている感覚を味わいたいならMDR-DS1000の方が良い。使い分けるなら、基本的にはMHP-AV1、MHP-AV1では低域の量が多いとか曇りが気になるという不満があるならMDR-DS1000。

UR/29
どちらもかまぼこ。低域はUR/29の方がやや重心が低くしっかりしている。全体的な量は大差ない。中域はMDR-DS1000の方がやや高い音で、張り出すような感じで目立つ。高域はUR/29の方が明るく金属的で、量もやや多い。分解能はほぼ同レベル。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大差ない。音場感はMDR-DS1000の方がやや広い。原音忠実性はUR/29の方がやや上。MDR-DS1000の方が一聴して違和感のある音を鳴らすことが多い。エッジはUR/29の方がややきついが、MDR-DS1000は中域が張り出すような感じで疲れることがあり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。明瞭さはMDR-DS1000の方がやや上、音の鮮やかさはUR/29の方がやや上。厚みはUR/29の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはUR/29の方がやや上。UR/29の方がノリが良いし、粗がないという意味で繊細でもある。響きはほぼ同レベル。弦楽器は多少似た傾向ではあるが、UR/29の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はUR/29の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はUR/29の方がややうまい。音の質感の相性やダイナミックな鳴らし方に差がある。使い分けるなら、基本的にはUR/29、UR/29ではエッジがきつい等の不満があるならMDR-DS1000。

サイン波応答

位相+高周波歪み

インパルス応答(CSD)

インパルス応答(録音波形)

100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック - 12Hz〜22kHz - -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
175g 40mm 2m 両出し デジタルサラウンドヘッドホン

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
1.5 4 2 3 3 1 均(中) 7400円

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公開日:2008.12.5