第70回 Only You/GREGORIAN「MASTERS OF CHANT III」より

 GREGORIANはFrank Petersonのプロジェクトです。Frank PetersonはEnigmaのMichael Cretuのパートナーであり、Sarah Brightmanのプロデューサーとしても知られています。GREGORIANのオリジナル曲もありますが、ロック/ポップスの名曲をグレゴリオ聖歌のようにアレンジするのがメインです。
 今回取り上げるのは3rdアルバムの4曲目で、原曲はYAZOOの2ndアルバムのタイトル曲です。グレゴリオ聖歌のような男性ヴォーカルと打ち込みの伴奏から成り、アレンジはかなりマイルドで痛い音をほとんど鳴らしません。
 ヘッドホンとしては男性ヴォーカルの表現をしっかり厚手にしてくれるもので、この曲の温かみを出してくれるものが良いでしょう。


・1台目 DR150(Goldring)
 声の表現が最も良かったので選びました。声にしっかり厚みがあり、人声の温かみが出ます。全体のバランスも良いです。DR150はサ行の痛さや高域の痛さが気になることも多いですが、今回の曲ではまったくと言って良いほど気になりません。
 他にはHP1000も良かったですが、DR150より声が薄い感じがしたので今回はDR150を選びました。ただ、心地よさを重視するならHP1000の方が良いだろうとは思います。また、RH-300も意外と良かったです。SE-900D、ATH-SX1、TR-HP03B、K181DJ、MUSIC SERIES ONE等でも聴きましたが、中域が張り出す感じでバランスが崩れていたり声が細かったりすることが多かったです。RH-300は比較的そういった欠点がなくバランス良くまとまっていました。ただ、魅力という意味ではDR150とHP1000より落ちると思います。
 不満点は特にありませんが、もう少し電子音が控え目に感じられた方が良いかもしれません。

・2台目 PROline2500(ULTRASONE)
 今回の曲の声の表現がDR150以上のものというヘッドホンは、かなり限られてきます。PROline2500はそのうちの一つです。PROline750の方が声が前に出てくる点は良いのですが、PROline2500と比べると声がかなり高いのが難点で、今回の場合にはPROline2500の方が合っているように感じました(このあたりは比較ベースがDR150になっていることと好みが影響しているとは思います)。
 声の表現はDR150とほぼ同レベルで、厚みや温かみがあります。DR150よりやや低く柔らかい感じです。
 不満点は低音の量がやや多いように感じることです。

・3台目 DT990PRO(beyerdynamic)
 3台目は非常に悩みました。違う傾向のものにしようかとも考えましたが、DR150やPROline2500の持つ声の厚みと温かみに慣れると、どれも魅力に欠ける気がしました。声の厚みや温かみという点だけならHD650やDT880もかなり良いのですが、HD650は中域が張り出すような感じになって気に入らず、DT880は少し味気ないように感じました。
 DT990PROを聴いたとき、DR150やPROline2500を聴いたときと同じようにしっくりくる印象を受け、すぐにこれに決めました。声の厚みと温かみがあり、中域が張り出すような感じにもならず、全体のバランスも悪くありません。しかも、DT990PROの長所である味わい深さが良い方向に出てくれます。


 今回選んだ3台は甲乙付けがたい印象です。低めの男性ヴォーカルを太くしっかりと、かつ心地よく鳴らして欲しい場合には、どれも最高レベルの機種です。
 あえて比べるならば、DR150が最も硬く締まっている印象、PROline2500が最も柔らかく良くも悪くもぼやけている印象、DT990PROがその中間くらいの印象です。
 好みに合わせて選んでみてください。


試聴はこちら(違うCDですが同一の曲です)。













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