第75回 Split Kick/Art Blakey「A Night at Birdland, Vol.1」より
Art Blakeyはアメリカのジャズドラマーです。ハード・バップの代表的なアーティストの一人として知られています。
今回取り上げるのは1954年発表のライブアルバム「A Night at Birdland, Vol.1」の2曲目です。楽器としてはドラムスの他にトランペット、アルト・サックス、ベース、ピアノが入ってきます。録音はモノラルで状態もあまり良くありませんが、ライブらしさは感じられるように思います。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「ジャズのライブらしい熱い雰囲気を感じられるかどうか」とのことです。基本的にフィーリングだと思いますが、あまり線の細いものやメリハリのないものは合わないと思われます。
・1台目 PortaPro(KOSS)
前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。今回の音源は低域・高域の量が少ないため、ヘッドホンとしてはドンシャリの方がバランスが良いように感じられます。PortaProくらい低域の量が多くても過剰にはなりませんし、むしろまだ少し足りないくらいに感じられる人も多いかもしれません。また、モノラル録音なので音場と言うより単純に振動板と耳の距離が近いヘッドホンの方が迫力や臨場感があるように感じられる面があるように思います。その意味でもPortaProはなかなか良いです。録音の悪さがあまり気にならない点も長所と言って良いと思います。
他にはDT231PRO、HD215、HI2050、UR/40等で聴いてみました。DT231PROは最後までPortaProと迷いましたが、PortaProの方がやや低域の量が多く近くで音を鳴らすせいか迫力があるように感じられたのでそちらにしました。HD215はメリハリはあるのですが、今回聴いた中では低域の量が少なく遠くから音を鳴らすせいかスカスカに感じられます。HI2050はアルト・サックスばかり目立つような印象です。UR/40はややメリハリに欠け、ただ何となく鳴らしているように感じられます。
不満点は、ややもっさりしていると言うか、もう少し切れが良く細部の表現をこなしてくれた方が良いと思われる点です。
・2台目 MDR-CD900ST(SONY)
1台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはしっかり改善されます。1台目と比べると低域の量が少ない点は違いますが、音が近く臨場感がある傾向なのは似ています。原音の実体感が比較的強く感じられることが、熱い雰囲気を感じられることに繋がっているような印象です。
他にはDTX900、ES-HF300、K181DJ、MUSIC SERIES ONE等で聴いてみました。DTX900はなかなか良いのですが、1台目の不満点は改善されません。ES-HF300は熱いと言うには綺麗すぎるような印象です。K181DJは1台目の不満点は改善されるのですが、まとまりやグルーヴ感にやや欠けます。MUSIC SERIES ONEはアルト・サックスばかり目立つような印象です。
不満点は、アルト・サックスがやや目立ちすぎる点です。とは言え、これは音源に原因があると思われます。
・3台目 DT990PRO(beyerdynamic)
2台目の不満点を踏まえて選びました。この点についてはある程度改善されます。2台目よりは1台目に近い傾向で、1台目に高域を足して音を遠くしたような印象です。音が遠くなっているぶん迫力や臨場感では不利な面があるはずですが、十分な量の低域が出ていることやもっさりした感じがないことからあまり不利なようには感じられません。DT990PROは曲によっては高域が痛かったり音が割れるような感じになったりして聴き疲れが酷いことも多いのですが、今回の曲ではほとんど気になりません。
不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。
・4台目 HD25-1(SENNHEISER)
色々聴いてみた結果これになりました。1台目や3台目よりは2台目に近い印象です。音源に含まれている熱い雰囲気をそのまま出す感じです。音が近く臨場感がある傾向で、アルト・サックスが目立ちすぎたりしない点も良いです。ただし、3台目と比べると音色や質感が地味すぎて何が良いのか分からないという人もいると思われます。
他にはDT770PRO、PROline750、PS500、RS-1、T1等で聴いてみました。DT770PROは悪くないのですが、3台目と比べると低域不足でアルト・サックスがやや目立ちすぎます。PROline750は音の遠さと高域のざらつきが気になります。PS500は最後までHD25-1と迷いましたが、どうしても味付けしすぎという印象が拭えなかったため外しました。ただし、独特の魅力があるのも確かで、味付けされていても構わないのであればこれが最高という人がいてもおかしくないと思われます。RS-1とT1はアルト・サックスばかり目立つような印象です。とは言え、その点を除けばどちらもなかなか良いと思います。
・5台目 EPH-100(YAMAHA)
最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。音の近さやメリハリがどうこうと言うことより、楽器の質感がリアルでそれによって熱い雰囲気を感じられるような印象です。アルト・サックスが目立ちすぎたりしない点も良いです。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelはアルト・サックスがやや目立ちすぎる、IE8はややメリハリに欠ける、SE535は低域不足が気になる等の不満がありました。
他にはSE215とSHE9700が良かったです。ただし、どちらも消去法で選ばれたような感じでEPH-100ほどの魅力はないように思います。
今回は大雑把に分けて2種類のパターンがあったように思います。音源の熱い雰囲気をそのまま出すタイプと、味付けして熱さを増すタイプです。どちらにもそれぞれの良さがあって一概にどちらが上とは言いがたいように感じられたので、あえて優劣はつけずに中立の立場で選ぶようにしました。
ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。雰囲気を殺さずに出してくれます。次点はHead Amp 2/MkII SEです。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴は下のamazonのページで。
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