第18回 Made In Hongkong/Fennesz「Endless Summer」より
Fennesz(Christian Fennesz)はオーストリアのアーティストです。ジャンルとしてはエレクトロニカになります。
今回取り上げるのは2001年発表の2ndアルバム「Endless Summer」の1曲目です。ほとんどメロディらしいものはなく、音としてはザラザラしたノイズばかりで構成されていす。
「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「この曲はノイズが中心となってできているのですが、DJ1proで聞くとあまりにもノイズが耳障りで聞いていられません。そこで、ノイズがきれいに聞こえるヘッドホンを探しています」とのことです。ノイズが耳障りでないものと言うと、ヘッドホンとしてはエッジがきつくなく高域が控え目なものになるかと思いますが、あまり極端だと今回の曲の良さが出ないようにも思われます。その辺りは聴きながら考えていきたいと思います。
・1台目 KTXPro1(KOSS)
まず、今回の曲の中の耳障りなノイズには大きく分けて3種類あるように感じました。ホワイトノイズのようなザラザラしたノイズ、「ブツッブツッ」という断続的なノイズ、高域のキーン(あるいはチー)というノイズの3種類です。KTXPro1はその3種類すべてについて比較的耳障りでない印象を受けたため選びました。そういったことを考えずに漠然と聞いても疲れにくい音になっていると思います。DJ1 PROと比べるとだいぶ聴きやすいです。
他にはHP-RX500、HP-RX900、MDR-XB700、SHL9600等で聴いてみました。HP-RX500とSHL9600は悪くないのですが、KTXPro1と比べると3種類のノイズすべてやや痛い印象です。HP-RX900はホワイトノイズのようなザラザラしたノイズより「ブツッブツッ」という断続的なノイズの方がかなり痛い印象です。MDR-XB700は最後までKTXPro1と迷いましたが、高域のキーンというノイズが若干痛いように感じる点と低域が多すぎて別の意味で疲れやすい点が気になったので外しました。
不満点は、薄く曇ったような感じで明瞭さに欠け、今回の曲のヴィジュアルが見えるような感覚があまり得られない点です。とは言え、これはノイズの聴きやすさとある程度トレードオフなので難しいところだとは思います。
・2台目 K240monitor(AKG)
1台目の不満点を踏まえて選びました。1台目と比べると聴き疲れという点では若干劣る印象ですが、それ以上に今回の曲のヴィジュアルが見えるような感覚が得られるように思います。また、大抵のヘッドホンと比べるとノイズの粗っぽい感じがかなり抑えられます。
他にはc-JAYS、DJX-1、SRH840、SW-HP10等で聴いてみました。c-JAYSは1台目と同じくらい聴きやすいのですが、同様の不満が出る上に低域が多いぶん疲れるので外しました。DJX-1とSW-HP10は似た傾向で悪くないのですが、K240monitorと比べるとホワイトノイズのようなザラザラしたノイズと「ブツッブツッ」という断続的なノイズが若干粗っぽく痛いですし、低域の量やこもり感のせいで疲れる面もあります。SRH840はDJX-1とSW-HP10より更に粗っぽく痛い印象です。ただ、そうは言ってもDJ1 PROと比べるとある程度聴きやすいです。
不満点は、聴きやすさと今回の曲のヴィジュアルが見えるような感覚をもう少し高いレベルで両立できないかという点くらいです。
・3台目 EXH-313(Audio Interu)
前述の3種類のノイズすべてついて最も痛くないと感じたので選びました。2台目と同様、大抵のヘッドホンと比べるとノイズの粗っぽい感じがかなり抑えられます。2つを比較するとどのノイズについてもあまり大きな差はなく、聴き疲れという点でもほぼ同レベルだと思います。1台目と比べると、低域・高域ともに控え目なため聴き疲れが抑えられている面があると思います。1台目の不満点は解消されますが、2台目の不満点は微妙なところです。ヴィジュアルが見えるような感覚についてはほとんどフィーリングなので、人によって違うという面も大きいと思います。
不満点は、露骨にエッジを丸めていてノイズらしさに欠ける点です。
・4台目 HD650(SENNHEISER)
迷ったのですが、色々聴いてみて消去法で決めました。3台目と比べると3種類のノイズすべてついて若干痛い印象ですが、大抵のヘッドホンと比べると痛くありませんし、ノイズらしさが感じられる上に低域のおかげか今回の曲のヴィジュアルが見えるような感覚が得られるという長所があります(もちろん、人によっては違うかもしれませんが)。
他にはBose on-ear headphones、K701、KH-K1000、MDR-F1、SR-007+SRM-717等で聴いてみました。Bose on-ear headphonesはノイズについては痛くないのですが、低域の量が多すぎて別の曲のようになってしまいますし、中盤以降鳴り続けている低音のせいでかなり聴き疲れします。K701はHD650と大差ありませんが、高域のキーンというノイズが若干痛いです。KH-K1000は最後までHD650と迷いましたが、HD650の方が3台目と違う傾向でしたし、柔らかい低域が今回の曲のヴィジュアルが見えるような感覚を引き出してくれるような印象を受けたのでそちらにしました。MDR-F1は悪くないのですが、「ブツッブツッ」という断続的なノイズが意外と目立ちます。SR-007+SRM-717は3台目と比べるとノイズを丸めずにそのまま鳴らすような感じで全体的に痛いです。
・5台目 Super.fi 5 Pro(Ultimate Ears)
前述の3種類のノイズすべてついて最も痛くないと感じたので選びました。薄いヴェールが一枚かかったような感じで、どのノイズも粗っぽい感じが抑えられます。高域は不足気味ですが、そのおかげで高域のキーンというノイズが気になりにくいです。色々と聴いてみたのですが、GR8はどのノイズも包み隠さず鳴らす感じで痛い、Image X10はなかなか良いもののSuper.fi 5 Proと比べると全体的に若干ノイズが耳障り、Westone3は低域の量が多すぎて中盤以降かなり聴き疲れする等の不満がありました。
他にはHP101とHP-CN40が良かったです。3種類のノイズすべてについてある程度のレベルに抑えられる印象です。Super.fi 5 Proほどではないものの、GR8やWestone3よりは疲れません。
今回は要望どおりノイズが耳障りでないものを優先して選びましたが、曲の性質上ある程度ノイズらしい質感を出してくれた方が良いという人もいると思います。その場合には、程度によって選ぶヘッドホンがまったく違ってくる可能性があります。それこそDJ1 PROやSR-325iが選択肢に入ってくることもあるでしょう。
ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。粗がなく輪郭もきつくないので、痛い音源もそれなりに聴きやすい傾向があります。
今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。
試聴は下のamazonのページで。
戻る