第27回 傀儡謡 怨恨みて散る/「イノセンス O.S.T.」より

 今回はリクエストにはありませんが、これまでに取り上げていない傾向の曲ということで選んでみました。
 映画「イノセンス」のオリジナルサウンドトラックの2曲目です。腹に響くような和太鼓の低域、70人以上の民謡歌手による特徴的な中域、高く鮮やかな鈴の高域と、どの音域も高い表現力を求められる難曲です。
 ヘッドホンとしては、まず低域の量感が第一で、できれば総合的な完成度の高い機種が良いでしょう。


・1台目 ATH-ES7(audio-technica)
 低域の量感、高域の鮮やかさ等がこの曲に合うように感じたので選びました。思ったとおり、和太鼓の量感がかなり良いですし、鈴も高く鮮やかです。他にATH-PRO700、DJ1 PRO、HP1000、MDR-7506、MDR-Z700DJ、SE-A1000、SP-K300で聴いてみましたが、ATH-ES7ほど違和感無くしかも迫力のある鳴らし方をしてくれる機種はありませんでした。ATH-ES7はポータブル用と考えている人も多いと思いますが、室内での使用にも十分耐える機種であると再認識しました。
 不満点としては、声がやや不自然で控え目な点、分解能や音場感等の基本的な能力がもう少し欲しい点です。

・2台目 DT990PRO(beyerdynamic)
 低域の量感を保ったまま自然な声を表現してくれる機種ということで選びました。その点において、期待通りの鳴らし方をしてくれました。低域は密閉型のような圧力こそないものの十分な厚みと量ですし、高域も鮮やかです。それでいて声もしっかり主張してきます。1台目で不満に感じられた分解能や音場感も、ほとんど不満を感じないレベルです。
 不満点としては、高域がやや粗い点、低域に締まりが足りない点でしょうか。

・3台目 HFI-2200ULE(ULTRASONE)
 DT990PROより高域がおとなしく、低域に締まりがある機種ということで選びました。試しにPROline2500でも聴いてみましたが、低域が出すぎでしかもぼやけているように感じました。質的にも量的にもHFI-2200ULEくらいの方がちょうど良い印象です。しっかり低い音を鳴らしてくれますし、厚み・量ともに十分、しかも開放型とは思えないほど圧力がある鳴らし方です。声の魅力という点でもDT990PROに負けていません。高域のザラザラした感じだけは多少不満ですが、それにしても全体的には非常に魅力的です。


 今回はどうも100%満足とはいきませんでした。試しにedition7でも聴いてみましたが、完成度の高さは感じられるものの、人声の温かみに欠ける点が若干不満で、今回取り上げた機種と比べて特別良いというふうには感じませんでした。
 密閉型特有の圧力のある低域や金属的な鈴の高域を楽しみたいならATH-ES7、低域・高域ともに豊かで比較的自然な鳴らし方を求めるならDT990PRO、厚みや締まりのある魅力的な鳴らし方を求めるならHFI-2200ULEといった感じに、気分や求める音によって使い分けるのが良いように感じます。


試聴はこちら。













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