第65回 価格別favorite headphones インナーイヤー版 2回目

 インナーイヤー版となっていますが、実質カナル型版の2回目となる価格別favorite headphonesです。インナーイヤー版の1回目が2007年5月なので、なんと4年以上経っていることになります。その間にカナル型が多数発売され、本サイトもそれに合わせて多めに取り上げてきたので、今回のコラムでは候補が沢山ありました。どれを選ぶか迷うかもしれないと思いましたが、実際にはそれほどでもありませんでした。つまり、今回選ばれた機種は他の多くの機種と比べてかなり気に入っているということだと思います。


HP-CN40(5千円以下、maxell)
 フラットで有名な定番機種です。私が購入したのは発売されて間もない頃でしたし、当時maxellのイヤホンはほとんど話題になっていなかったのでここまでヒットするとは思いもしませんでした。とは言え、これほどフラットな機種は価格を度外視しても珍しいですし、購入当時からとても良いイヤホンだとは思っていました。発売から3年以上が経ち、その間に安価なカナル型の平均レベルはかなり高くなったように感じるのですが、それでもなお定番であり続けているのは凄いことだと思います。
 欠点を挙げるなら、本体が大きめでしかも縁があまり丸まっていないので耳が小さい人にはつらいと思われる点、音漏れが多い点です。日本では音漏れの多いカナル型はそれだけでかなり敬遠される風潮があると思うのですが、それでもなお定番であるということは欠点を補って余りある長所があることの何よりの証なのかもしれません。
 なお、厳密にはHP-CN40は生産終了になっていて、現行製品は付属品から携帯電話用平型変換プラグが省かれたHP-CN40Aとなっています。

MA850G/A(5千円〜1万円、Apple)
 別名Apple In-Ear Headphones with Remote and Micです。ネット上では評価が割れているところもあるようですが、その主な原因はカナル型としては低域の量が少なくあまりロック向きではないことではないかと思います。ロックをメインで聴く人が好みだけで判断するならコストパフォーマンスが悪いでしょうが、色々な曲を聴いて総合的な音質評価をするのであればぐっと評価が上がると思われます。
 個人的に好きな点はSTAXやER-4Sに通じるような繊細さです。透明感のある女性ヴォーカルやヴァイオリンとの相性が抜群です。それでいて硬すぎたりして窮屈な鳴りになったりはしません。なかなか代えがきかないイヤホンの一つだと思います。音質面以外の欠点としては、リモコンが付いていてプラグが4極の点でしょうか。4極プラグは使用する機器によっては接触不良が発生しますし、どうも使っているうちに接触不良が悪化してくるような印象も受けます。
 これもHP-CN40と同様に厳密には生産終了になっていて、現行製品はリモコンの対応機種が変更になったMA850G/Bとなっています。

HiDefJax AcousticSteel(1万円〜2万円、ATOMIC FLOYD)
 今ではだいぶ馴染んできた感もある新興メーカーATOMIC FLOYD、その第一弾製品の一つです。金属を多用したデザインが秀逸なのでそこから興味を持つ人も多いようですが、音質面でも十分期待に応えてくれる製品です。
 個人的に好きな点は響きの美しさやエッジの表現です。音楽を楽しめる音作りが成されているような印象で、とは言っても単にドンシャリだとかノリが良いとか言うことではなく、楽器の質感のリアルさが根本にあるように思います。欠点は音漏れが多い点です。とは言え、音漏れをなくそうとすると本機の長所の一つでもある(ように思われる)開放型的な自然さは損なわれると思うので、安易に「音漏れが少ない方が良かったのに」と言う気にはなれません。

MDR-EX1000(2万円以上、SONY)
 ダイナミック型カナルの最高峰と言うと以前はIE8一択というイメージでしたが、今はこのMDR-EX1000も有力な候補に上がるのではないでしょうか。
 非常に完成度の高い機種ですが、考えてみるとHiDefJax AcousticSteelとはある意味で真逆の音作りであるようにも思います。ある意味とは、響きについてです。HiDefJax AcousticSteelは響きが綺麗で引き込まれるようなところがありますが、MDR-EX1000は響きを削ぎ落としてでも音そのものをきっちり聴かせるようなところがあって響きに引き込まれるようなことはありません。「MDR-EX1000はモニター的で音楽を楽しむ上ではいまいち」というような評価をされることがありますが、このあたりが理由なのではないでしょうか。とは言え、個人的にはレビューで書いたとおりソースの生っぽさや強弱をきちんと出してくれるため音楽を楽しめる面も十分あるように感じます。欠点は遮音性の低さと装着したときの外観です。


 今回選んだ機種を改めて眺めてみると、カナル型としては低域の量が少なくこもり感がない傾向があるように思います。それに加えて、音質以外の点については遮音性や音漏れ防止があまり良くない傾向もあるようです。これは、私があまり電車で使用しないことが影響していると思われます(電車では遮音性や音漏れ防止が重要になってくるだけでなく、騒音で低域が相殺されて静かな場所で使うよりも少なく感じられるため)。
 さて、今回はこんなところです。第59回で「前回と同じくまたしてもかなり間が空いてしまったので、次はもう少し早くやりたいと思います」と書いておきながら1年以上空いてしまったので、次こそはもう少し早くやりたいと決意を新たにして終わりにしたいと思います。







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