第23回 QuietComfort2試聴レポ

音質
 低音よりのドンシャリ。低域は厚みはそれほどでもないが、量はかなり出る。中域は、低域の強いソースでは多少低域に埋もれ気味に感じるが、基本的にはさほど気にならないレベル。高域は普通に聴こえてくる。ドンシャリと言うよりは低音よりと言った方がしっくり来るのかもしれないが、中域よりは高域の方が聴こえてくるように感じる。
 分解能はそれなりだが、価格分の価値があるかという話になると、ないと言わざるを得ない。音場感、原音忠実性も同様。原音忠実性は、癖のなさという意味ではかなりのものだが、原音の粗や生っぽさを感じられるかという点ではいまいち。エッジはきつくないが、低域が強すぎるのに加えてこもり感が気になるために、ソースによっては多少聴き疲れする。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはそれなり。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはなかなか良いが、温かみについては低域が出るためにそう感じるだけで、いわゆるウォームさはほとんどないと言って良いだろう。それなりにノリが良いように感じるが、これについても低域が強く迫力があるためにそう感じる部分がほとんどで、軽快さやスピード感といった意味ではむしろいまいち。響きは適度からやや豊かで、こもり感がかなり気になる。低域の量が多いことを除けば、基本的にはかなり癖のない音。
 弦楽器はなかなか心地よいが、繊細さや原音の生っぽさには欠ける。金管楽器はハイハット等はなかなか鮮やかでしっかり聴こえてくるが、トランペット等はいまいち鮮やかさに欠ける。打ち込み系の音の表現は悪くないが、低域は締まりが足りないし、中高域から高域はやや線が細く目立たない印象。
 ノイズキャンセルヘッドホンに良くあるノイズはほとんど気にならない。

装着感
 良好。側圧は普通から若干強めで、軽いため多少動いてもまったくずれない。ヘッドバンドのクッションはしっかり入っており、頭頂部への負担はほとんど気にならない。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はウレタンのため肌に張り付く感じが気になる上、かなり蒸れる。

その他
 遮音性は良好、音漏れ防止は普通。
 作りは特に悪くない。デザインは無難。スイーベル機構で持ち運びに便利。ヘッドホン本体側でもコードの着脱が可能。コードのヘッドホン本体側に切替スイッチがついていて、HIとLOの2段階のボリュームレベルの切替ができる。ハウジングの右側に電池を入れる場所とON/OFF切替スイッチが付いている。このスイッチをONにしないと、ノイズキャンセルが作動しないだけでなく、音も鳴らない。つまり、音を鳴らすときには必ずノイズキャンセルが作動する。電池がなくなると音を鳴らすことができないし、ノイズキャンセルの不要な環境でもノイズキャンセルがかかった状態でしか使用できない。また、単四のアルカリ電池1本で連続約30時間再生というのは短く感じた。仮にエージングに100時間かかるとするなら、それだけで電池が3本以上必要ということになる。
 音質的にはコストパフォーマンスが良いとは言えないが、それ以外の点はかなりの完成度。他に代わるものがない機種という意味では、コストパフォーマンス云々以上のものを持っている。
 プラグは金メッキのL型ミニプラグ。コードの太さは約2mm、特に扱いづらさは感じない。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
1m延長コード
航空機用Dual Plug adapter
収納ケース
乾電池

参考
周波数特性グラフ


比較メモ
MDR-Z900
どちらも低音よりのドンシャリだが、QuietComfort2の方がやや高音より。全体的に、MDR-Z900の方がやや低い音を鳴らす。どちらもかなり豊かな低音で、締まっているとは言いがたいが、どちらかと言えばMDR-Z900の方がぼやけていない低音。高域はQuietComfort2tの方がしっかり聴こえる。MDR-Z900は低域がかなり支配的だが、QuietComfort2はそうでもない。分解能はほぼ互角、音場感はQuietComfort2の方が上。どちらも原音忠実とは言いがたい。どちらも低音過多で疲れる傾向にあるが、どちらかと言えばQuietComfort2の方が疲れない。明瞭さはQuietComfort2の方が上、音の鮮やかさは若干MDR-Z900の方が上。厚みはMDR-Z900の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはMDR-Z900の方が上。どちらも低音を押し出す感じでかなりノリが良いが、軽快ではない。響きはどちらも豊かだが、QuietComfort2の方が若干あっさりか。弦楽器はMDR-Z900の方が繊細で良い。金管楽器はどちらも意外とそつなく鳴らすが、MDR-Z900の方が力のある鳴らし方。打ち込み系の音の表現はどちらもそれなり。切れが足りない。得意分野はどちらもロック。使い分けるなら低域過多でも良いならMDR-Z900、少しでもフラットな方が良いならQuietComfort2。

SE-900D
QuietComfort2は低音よりのドンシャリ、SE-900Dはかなりフラット。低域はQuietComfort2の方がかなり量が多い。中域はSE-900Dの方がはっきり聴こえてくるが、これはややうわずった表現であることも影響しているだろう。高域はQuietComfort2の方が硬く高い音を鳴らす。分解能はSE-900Dの方がやや上。音場感はQuietComfort2の方が上。原音忠実性は方向性が違うため判断に困るところだが、SE-900Dの方が上のように感じる。QuietComfort2は原音の生っぽさがほとんど感じられない。QuietComfort2の方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-900Dの方が上。厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはQuietComfort2の方がやや上。QuietComfort2の方がノリが良いように感じるが、切れはSE-900Dの方がある。響きはQuietComfort2の方が豊かで、こもり感がかなり気になる。弦楽器は一聴してQuietComfort2の方が心地よいが、SE-900Dの方が繊細で伸びが良く、聴き込むとSE-900Dの方が好ましいように感じる。金管楽器はほぼ互角だが、癖のなさという意味ではQuietComfort2の方が上。打ち込み系の音の表現は低域が出る分QuietComfort2の方が良いように感じやすいが、SE-900Dの方が切れがよく無駄のない鳴らし方。得意分野はQuietComfort2はロック、SE-900Dはポップス。使い分けるならロックはQuietComfort2、それ以外はSE-900D。コストパフォーマンスはSE-900Dの方がかなり良い。

TriPort
どちらも低音よりのドンシャリだが、QuietComfort2の方がフラット。低域はTriPortの方がやや量が多く一段低い音を鳴らす。中域はどちらもやや埋もれ気味。高域は似ているがTriPortの方が若干高く粗のある鳴らし方。分解能はQuietComfort2の方が若干上。音場感はほぼ互角。原音忠実性はQuietComfort2の方がやや上。どちらもそれほどエッジはきつくなく聴き疲れしないが、どちらかと言えばTriPortの方がエッジがきつい。ただし、QuietComfort2はノイズキャンセルによる無音の聴き疲れが多少ある。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてほぼ互角。TriPortの方がノリが良い。ドンシャリなだけでなく、一歩前に出る元気の良さがある。QuietComfort2の方が上品な鳴らし方。響きはどちらも適度からやや豊かで、ほぼ互角。こもり感が気になる点は良く似ている。弦楽器はQuietComfort2の方がやや繊細でうまい。金管楽器はどちらもそれなりの鳴らし方。良くもなく、悪くもなくと言った感じ。打ち込み系の音の表現はどちらもなかなかうまいが、切れに欠ける。得意分野はどちらもロック。使い分けるならロックやポップスをノリ良く楽しみたいならTriPort、それ以外はQuietComfort2。コストパフォーマンスはどちらも良くないが、TriPortの方がまだ良い。TriPortは、一般的な使用環境であればノイズキャンセル機能などなくとも十分な遮音性を持っている。







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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
アクティブ 密閉型 - 115/100dB 910/72Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
170g 35mm 1m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 4 5 3 3 3 低(高) 41700円

 今回は05年10月20日にリニューアルしたBOSEのノイズキャンセルヘッドホンQuietComfort2を3週間ほどお借りする機会に恵まれたので、その試聴レポです。形式は普段のヘッドホンレビュー+比較メモという形で行いたいと思います。

※音圧感度及びインピーダンスは「HI/LO」で表示

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