ATH-M40fs

音質
 ややかまぼこ。低域も高域も必要量は出る。低域は厚みも量もやや不足気味に感じるし、その割には多少曇っているように感じる。高域の量は少な目だが、細くて硬い感じで悪くない。
 分解能、原音忠実性はなかなか良い。音場感はそれなりと言った感じで、耳の近くで音が鳴っているのが気になる。エッジはややきつく、ソースのノイズをかなり拾うために聴き疲れするが、モニター用としては普通のレベルだろう。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、厚みはそれなり。温かみやヴォーカルの艶っぽさにはやや欠ける。モニター用らしい冷静な鳴らし方で、ノリが良いわけでもないし繊細なわけでもない。響きは適度からやや豊か。audio-technicaらしいスカスカした感じが気になる。全体的に見てモニター用の音を求めているなら悪くないが、音楽鑑賞にはあまり向かない。
 弦楽器は低域が不足のせいか、ややあっさりした表現。音がするすると流れていってしまう感じ。曇りの影響かもしれない。この点はモニター用らしくないように感じる。金管楽器は量はやや控え目なものの、そこそこ鮮やかで悪くない。打ち込み系の音の表現は悪くないが、ソースによっては低域が不足に感じられるし、力不足に感じる。

装着感
 普通。側圧、重量ともに普通なのだが、しっかり装着しないとややずれやすい。ヘッドバンドはやや硬めで痛い。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズ、上下左右に角度調節ができる。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革で、かなり蒸れる。また、イヤーパッドの内側が耳に当たるため長時間使用すると痛い。

その他
 遮音性は良好、音漏れ防止は普通だが外観から予想されるより悪いと感じる。
 作りは悪くはない。デザインはオーソドックスなモニター用といった感じだがやや古臭い。スイーベル機構なのだが、普通とは違いイヤーパッドが手前に来る方向に回る上、90度ではなく180度回転するため慣れるまでやや使いづらい。音質、装着感ともに長時間の使用にはあまり向かない機種。
 プラグは金メッキの標準プラグ。コードの太さは約4mm、硬めだが癖は付きにくく比較的扱いやすい。イヤーパッドのサイズは、外周110mm×88mm、内周60mm×38mm、深さ12mm。

付属品
無し



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-SX1
どちらもかまぼこ。超低域から超高域まで非常に近い音量バランス。ただし、ATH-M40fsの方が響きが豊かでこもり感があるため、ソースによっては低音が出るように感じる。分解能はATH-SX1の方が若干良く、音場感はほぼ互角。どちらも非常に原音に近い。ATH-M40fsの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、密度、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさ等すべてATH-SX1の方が若干上。どちらもモニター用の音でノリが良いわけでも繊細なわけでもない、芯の通った音。どちらかといえばATH-SX1の方がノリが良くしかも繊細。ATH-SX1の方が響きがあっさりで切れが良く、こもり感がない。ATH-SX1はaudio-technica独特のスカスカした感じはほとんどないが、ATH-M40fsはある。基本的にはかなり似ているのだが、音楽鑑賞に使うという観点から見ると、決定的な差がある。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてATH-SX1の方がやや上。何を聴くにしてもATH-SX1の方が楽しめる。

HD449
ATH-M40fsはややかまぼこ、HD449はかなりフラット。低域はHD449の方が若干量が多い。ATH-M40fsの方が弾力のある質、HD449の方が癖のない質。重心はATH-M40fsの方が若干低い。中域は微妙だが、どちらかと言うとATH-M40fsの方が低域の量が少ない分はっきり聴こえてくることが多い印象。質的にはHD449の方が癖がない。高域はほぼ同量。高域の中でも低い音はHD449の方がやや多いが、高域の中でも高い音はATH-M40fsの方がやや多い。ATH-M40fsの方が硬く鋭い質。分解能はATH-M40fsの方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はATH-M40fsの方が若干広く明確。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはHD449の方が上。原音の粗や生っぽさはATH-M40fsの方がやや感じられる。エッジはATH-M40fsの方がややきつく聴き疲れしやすい。高域はATH-M40fsの方がやや痛い、ヴォーカルのサ行は大差ない痛さ。明瞭さ、音の鮮やかさは大差ないが、どちらかと言うとATH-M40fsの方が上。厚みはATH-M40fsの方が若干ある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHD449の方が若干感じられる。ヴォーカルは、ATH-M40fsの方が透明感がある、HD449の方が癖がなくソースを選ばない。どちらもノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、ATH-M40fsの方が若干メリハリがある。響きはATH-M40fsの方が若干豊かでこもり感が気になる。弦楽器は、ATH-M40fsの方が生楽器らしさが感じられる、HD449の方が音色が自然。金管楽器は、ATH-M40fsの方が若干金属的な質感を出してくれる、HD449の方が癖がない。打ち込み系の音の表現はATH-M40fsの方が若干うまい。音の質感の相性でやや勝っている。使い分けるなら、分解能や生楽器らしさを求めるならATH-M40fs、周波数特性上の癖のなさや聴き疲れのなさを求めるならHD449。

MDR-CD900ST
ATH-M40fsはかまぼこ、MDR-CD900STはフラット。低域は全体的にMDR-CD900STの方が出る。高域はaudio-technica独特の癖があるためATH-M40fsの方が高い音に聴こえるが、量的にはほぼ互角。MDR-CD900STの方が若干分解能が良く原音忠実。音場感は互角。どちらもエッジがきつく非常に聴き疲れするが、響きが豊かで低音が出る分大抵のソースではMDR-CD900STの方が疲れる。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-M40fsの方が上。厚みや密度はMDR-CD900STの方が上。どちらも温かみやヴォーカルの艶っぽさには欠ける。モニター用らしい冷静な鳴らし方。弦楽器はMDR-CD900STの方が原音に近くしかも伸びも良い。金管楽器や打ち込み系の音の表現はATH-M40fsの方がうまい。使い分けるなら打ち込み系の曲やブラスメインの曲はATH-M40fs、それ以外はMDR-CD900ST。特に低音が欲しい場合にはMDR-CD900STの方が良い。

PRO DJ100
ATH-M40fsはややかまぼこ、PRO DJ100はやや高音より。低域はATH-M40fsの方が若干量が多い。ややぼやけたり曇ったりする質。重心はATH-M40fsの方が若干低い。中域はPRO DJ100の方が明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中高域はPRO DJ100の方がしっかり出る。高域はPRO DJ100の方がやや量が多い。明るい質で目立つ。ATH-M40fsの方が線が細く粗がない。分解能はほぼ同レベル。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大差ないが、どちらかと言うと音の分離はPRO DJ100の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はATH-M40fsの方が若干粗なく丁寧にこなしてくれる。音場感は、ATH-M40fsの方が上下に広い、PRO DJ100の方が左右に広い。PRO DJ100の方が明確。原音忠実性はPRO DJ100の方が若干上。周波数特性上の癖のなさは大差ないが、どちらかと言うとPRO DJ100の方が上。原音の粗や生っぽさはPRO DJ100の方が若干感じられる。エッジはPRO DJ100の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろPRO DJ100の方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはPRO DJ100の方がやや上。厚みはPRO DJ100の方がややある。温かみはATH-M40fsの方が若干感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。ATH-M40fsの方がスモーキー、PRO DJ100の方が擦れやリップノイズを出してくれる。PRO DJ100の方が明るくノリが良い。ATH-M40fsの方が繊細でおとなしい。PRO DJ100の方が切れやメリハリがある。響きはATH-M40fsの方がやや豊かでこもり感が気になる。ATH-M40fsの方が生気に欠ける印象。弦楽器は、ATH-M40fsの方が滑らか、PRO DJ100の方が生楽器らしさが感じられる。金管楽器はPRO DJ100の方がやや鮮やかかつ力強い。打ち込み系の音の表現はPRO DJ100の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量や粗のなさを求めるならATH-M40fs、高域の量やメリハリを求めるならPRO DJ100。

SE-900D
どちらもややかまぼこ。低域はSE-900Dの方が低い音。ATH-M40fsの方が薄く曇ったような低域。中域はSE-900Dの方がやや高い音で、低域と繋がっていないような感じではっきり聴こえてくる。高域はSE-900Dの方がやや高い音。分解能はほぼ互角。音場感はどちらもあまり良くはないが、SE-900Dの方がやや上。原音忠実性はATH-M40fsの方が上。ATH-M40fsの方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはSE-900Dの方が低域の曇りがなく、かなり上。音の鮮やかさもどちらかと言えばSE-900Dの方が上。厚みはSE-900Dの方がしっかりある。温かみはSE-900Dの方が多少感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは表現の違いはあるがほぼ同レベル。ノリの良さにしろ繊細さにしろ、SE-900Dの方がやや上のように感じられる。ATH-M40fsはモニター的で冷静な鳴らし方。響きはSE-900Dの方がやや豊か。弦楽器はSE-900Dの方が心地よい。ATH-M40fsはかなり味気なく冷たい感じ。金管楽器はSE-900Dの方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はSE-900Dの方がうまい。厚み、切れ、低域の質感等で勝っている。使い分けるなら、基本的にはSE-900D、原音忠実性を最優先するならATH-M40fs。

SP-K300
ATH-M40fsはかまぼこ、SP-K300はドンシャリ。低域の量は全体的にSP-K300の方がかなり出るが、質は似ている。高域はどちらもaudio-technica独特の癖がある感じで質的には似ているが、量はSP-K300の方がやや多い。分解能、原音忠実性はATH-M40fsの方が上。音場感はほぼ互角。どちらもエッジがきつく聴き疲れするが、線が細い分ATH-M40fsの方が疲れる印象。ただし、人によってはSP-K300は低域の量が出すぎで聴き疲れするかもしれない。明瞭さはATH-M40fsの方が上、音の鮮やかさはほぼ互角。温かみは低音が出る分SP-K300の方があるように感じるが、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。響きはSP-K300の方が豊か。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてほぼ互角。この2機種の大きな違いは、低域の量と音の細さ。使い分けるならクラシックやジャズはATH-M40fs、ポップスやロックはSP-K300。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 5Hz〜28kHz 100dB 60Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
250g 40mm 3.4m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
3.5 3 4 3 2 1 均(中) 10900円

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公開日:2005.1.14