第8回 BATTERY/Metallica「S&M」より

 Metallicaはアメリカのヘヴィメタル・バンドです。メンバーはヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスとオーソドックスです。
 今回取り上げるのは1999年発表のライブアルバム「S&M」のトリを飾る曲です。「S&M」は「Symphony&Metallica」の略で、その名の通りMetallicaがオーケストラ(サンフランシスコ交響楽団)と共演したライブを収録したものです。それだけではどういう形になっているのか良く分かりませんが、Metallicaの楽曲にオーケストラのアレンジを加えたようなものになっています(つまり、オーケストラと共演と言ってもあくまでMetallicaの作品という印象です)。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「音の分離とメタルのもつ迫力の融合(相反するかもしれませんが)、ライブならではの音場感(ストリングスが空から降り、大地がベース、ドラム、その他打楽器で揺れ動くような)」とのことです。簡単にまとめると、音の分離、相当量の低域、ある程度の音場の広さ・明確さということになるかと思います。


・1台目 MDR-XB700(SONY)
 まずは低域の量感がしっかりあるもので、音の分離が良いものを探した結果これになりました。音場の広さ・明確さという点でもこの価格帯としてはかなり良いと思います。「ストリングスが空から降り、大地がベース、ドラム、その他打楽器で揺れ動くような」感じに最も近いと感じました。
 他にはHGP-755、HX-5000、RH-200、SE-M870等で聴いてみました。HGP-755は低域の塊のような質感が魅力的ですが、音の分離が不満ですし、低域に比べて中域・高域を適当に鳴らしているように感じられる点が気になります。HX-5000は低域の質・量ともに存在感がありその意味では最も良いと感じる人も多そうですが、MDR-XB700と比べると音の分離にしろ音場にしろ不満です。RH-200はMDR-XB700と比べると分離が悪いです。SE-M870は分離は良いのですがMDR-XB700の後だと低域の量が足りず大地が揺れ動くような感じに欠けます。色々と不満点を書きましたが、今回の曲を聴くのにはどれもそれほど悪くないように思います。
 不満点は、前述の条件についてはほとんどありません。それ以外の点としては、低域が柔らかすぎる点、切れが足りない点が不満です。ちなみに、先ほど挙げた機種の中でこの辺りを改善するならSE-M870、次いでHX-5000が良いのではないかと思います。

・2台目 Studiophile Q40(M-AUDIO)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。1台目より低域が硬く、全体的に切れが良いです。質的にも量的にも存在感のある低域が特徴で、1台目と同等以上に大地が揺れ動くような感じを出してくれます。音場は耳の近くでガンガン鳴らす感じである点が1台目と違いますが、今回の曲を聴くにはこちらの方が好ましいのではないかと思います。1台目と比べて骨太でしっかりした音です。低域が目立つ点を除くと音色に癖がなく自然に音楽に没頭できる点、モニター的でストイックな格好良さがある点も好印象です。
 他にはK181DJ、RP-21、RP-DH1200等で聴いてみました。K181DJは低域の質・量ともに存在感がありその意味ではStudiophile Q40とほぼ同レベルですが、中域から高域の音色の自然さはStudiophile Q40の方がやや上です。RP-21は基本的にはかなり良いと思うのですが、Studiophile Q40やK181DJと比べると低域不足です。RP-DH1200はStudiophile Q40と比べると大地が揺れ動くような感じを出してくれませんし、音の圧力でも負けていて迫力に欠ける印象です。
 不満点は、音の分離がもう少し欲しい点、高域が少し物足りない点です。

・3台目 PRO900(ULTRASONE)
 2台目の低域を維持したまま音の分離を改善できる機種はほとんどありません。その数少ない機種の一つということで、これを選びました。
 音の分離だけでなく2台目で物足りなかった高域も改善されますが、音色としては2台目の方が癖が小さいです。低域は質的にも量的にも2台目と同じくらい充実していて、大地が揺れ動くような感じを出してくれます。音場は2台目の方が耳の近くでガンガン鳴らす感じで、PRO900はどちらかと言うと1台目の方に近いです。2台目と比べて全体的に柔らかく味付けや贅肉がある感じです。2台目の不満点はそれなりに改善されますが、トータルとして良くなっているかは微妙なところです。
 不満点は、もう少しスピード感が欲しい点、音色の癖が気になる点です。

・4台目 HD25-1(SENNHEISER)
 2、3台目の低域を維持しながらスピード感を出すのは至難の業です。その妥協点として最も妥当と思われるのがこれだったので選びました。
 3台目と比べるとスピード感にしろ音色の癖にしろ劇的に改善されますが、低域の量が明らかに少なく音場も狭いため「ストリングスが空から降り、大地がベース、ドラム、その他打楽器で揺れ動くような」感じでは劣ります。迫力もやや落ちる印象ですが、2台目に似て耳の近くでガンガン鳴らす感じで絶対値として迫力に欠けるとは感じません。音の分離については特に不満はありません。
 他にはAH-D5000、Bose on-ear headphones、HFI-780等で聴いてみました。AH-D5000とHFI-780は一般的には十分な低域だと思うのですが、2、3台目と比べると明らかに低域が足りず大地が揺れ動くような感じがしません。更に、HFI-780は中域から高域が突き刺さってくる感じでかなり聴き疲れするのが難点です。Bose on-ear headphonesは低域がしっかり出る割に中域・高域に癖がないという意味で2台目に似ていてそれほど悪くはないのですが、スピード感の改善はできませんし、低域が柔らかい点が合わない印象です。

・5台目 IE-20 XB(M-AUDIO)
 最初に書いた条件を最も満たしていると感じたので選びました。質的にも量的にも低域の存在感があって大地が揺れ動くような感じを出してくれますし、その割には中域・高域もしっかり聴こえてきます。m5と迷ったのですが、IE-20 XBの方が中域・高域に癖がなかったので最終的にはこちらになりました。低域についてはm5の方がやや塊のような質で存在感があるという見方もできるので、そういう意味ではm5の方が良いと感じる人もいると思います。どちらもかなりしっかりした低域であることに違いはありませんが、オーバーヘッドと比べるとどうしてもスケールが小さく迫力に欠けます。
 他にはKEB/79とATH-CKM50が良かったです。どちらもかなり存在感のある低域が特徴です。


 今回は相当量の低域が必要となる曲・聴き方だったので、その時点でかなり絞られた印象です。最初に書いた条件のうちどれを重視するかによって選ぶヘッドホンは多少変わってくるでしょうが、基本的には高価なヘッドホンを使えば良いというわけではない感じです(これはどんな曲にも当てはまりますが、今回の曲は比較的その傾向が強いという意味です)。個人的には、最初に書いた条件をすべて考慮した場合Studiophile Q40が最も良いように感じられました。
 ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。濃密でエネルギッシュな感じが今回の曲とマッチします。ただし、MDR-XB700やPRO900を使うなら硬く締まる傾向のヘッドホンアンプ(例えばHead Amp 2/MkII SE等)の方が良いと思います。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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