第14回 Black Winter Night/DragonForce「Valley of the Damned」より

 DragonForceはイギリスのメロディックスピードメタルバンドです。メンバーはヴォーカル、ギター、ベース、ドラムス、キーボードです。
 今回取り上げるのは2003年発表の1stアルバム「Valley of the Damned」の4曲目です。テンポが速いのが最大の特徴だと思います。ヴォーカルは明るく芯が通っているような感じで埋もれたりすることはあまりありません。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「煌きと疾走感、爽快感を重視したいです」とのことです。これをもう少し別の表現にすると、中域から高域の明るさがあること、切れや制動が良いこと、抜けが良いこと等の条件になると思います。


・1台目 HPS5000(BEHRINGER)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。低域はある程度量が多いですが、締まっていて制動も良いです。中域から中高域の明るさもあります。抜けが良いと言えるかは微妙ですが、こもり感や低域の曇りはほとんど気になりません。煌き、疾走感、爽快感すべてこの価格帯としては良い方だと思います。長所は沢山ありますが、中でも最も良いと感じたのがヴォーカルです。低域の量が多い割に埋もれませんし、自然で聴きやすく生っぽさの感じられる魅力的な表現です。HPS5000で今回の曲を聴くと、1曲の中でも得意な箇所と苦手な箇所でかなり明確に差が出るような印象ですが、サビはとても気持ち良く聴けます。逆に苦手なのはイントロの低域です。厚み、締まり、制動といったポイントは良いのですが、質感や音色に癖があります。他の箇所ではそれほど気にならないのですが・・・・・・
 他にはHD215、PortaPro、RH600、SE-M870、SHL9600、UR/40等で聴いてみました。HD215は総合的にはなかなか良いのですが、無難にまとまっていて疾走感にしろ爽快感にしろどこか不満が残ります。PortaProはこれはこれで楽しめると思いますが、柔らかい低域が足を引っ張って疾走感、爽快感ともにいまいちです。RH600は中域から高域の明るさがあって抜けも良いので煌きや爽快感はかなり良いのですが、ヴォーカルが悪目立ちしますしローエンド不足も気になります。SE-M870はヴォーカルがあまりに痛かったので外しました。SHL9600は低域の制動が良く疾走感は出るのですが、高域が控え目で煌きや爽快感が出ません。UR/40は切れ、制動、厚みといった点でHPS5000には若干及ばない印象です。
 不満点は、低域の質感・音色がややおかしい点、各楽器の分離や表現力が足りない点です。

・2台目 ATH-ES7(audio-technica)
 最初に書いた条件を満たすことを前提に、1台目の不満点を踏まえて選びました。中域から高域の明るさがあるため煌きはしっかり感じられます。低域はややぼやけるところがありますが、全体の切れや制動はそれなりに良いため疾走感は悪くないです。抜けは良くないですし低域の量も多めなので爽快感はそれほど良くありませんが、それでも1台目と比べて悪いということはないと思います。1台目の不満点だった低域の質感・音色は改善されますし、各楽器の分離や表現力も若干良くなる印象です。
 他にはATH-ES7、EX-29、K181DJ、MDR-7506、SE-A1000等で聴いてみました。EX-29は低域の制動が良く疾走感はかなり良いのですが、他の機種と比べると低域の量が絶対的に不足している点が気になります。K181DJは最後までATH-ES7と迷いましたが、低域が目立ちすぎるために爽快感よりも重厚さや迫力に寄ったバランスに感じたので外しました。音の圧力や各楽器の表現力が欲しいならK181DJの方が良いと思います。MDR-7506は基本的にはATH-ES7やK181DJと並んでかなりハイレベルなのですが、他の2機種と比べてかなりヴォーカルが痛かったので外しました。SE-A1000は中域から高域の明るさがあって抜けも良いので煌きや爽快感はかなり良いのですが、ヴォーカルが痛いですし疾走感はそれほどでもないです。
 不満点は、爽快感が足りない点、各楽器の分離や表現力がもう少し欲しい点です。

・3台目 SR-325i(GRADO)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。定番ですが、良いものは良いです。今回の曲を疾走感や爽快感重視で聴くという時点で、SR-325i一択という人も多いのではないかと思います。中域から高域の明るさがあるため煌きがあり、切れや制動が良いため疾走感があり、抜けが良いため爽快感がある、といった具合に、最初に書いた条件をかなり高いレベルで満たしています。2台目の不満点の中だと、特に各楽器の表現力が良くなる印象です。音色だけでなくエッジにもリアリティがあります。
 不満点は特にありませんが、1、2台目と比べると密閉型のような圧力がないので多少物足りなくはあります。

・4台目 ATH-AD2000(audio-technica)
 4台目はかなり迷いましたが、最終的にはこれになりました。3台目と比べると中域から高域の明るさが控え目で煌きが感じられませんし、抜けが悪いため爽快感でも劣ります。ただ、抜けが悪い分3台目の不満点は若干改善される印象です。疾走感や全体のバランスもなかなか良く、他の多くのヘッドホンと比べてメタルらしさとでも言うべきものが感じられる印象です。
 他にはATH-A2000X、DT660 Edition 2007、HD25-1、HFI-780、PFR-V1等で聴いてみました。ATH-A2000Xは煌きと爽快感は良いのですが、低域が遅れるような感じで疾走感が出ません。DT660 Edition 2007は煌き、疾走感、爽快感いずれもなかなか良いですが、低域が少ない点と全体的にかなり粗っぽく音が割れ気味な点が気になります。HD25-1は疾走感と各楽器の表現は素晴らしいのですが、中域から高域の明るさや抜けの良さはないので煌きや爽快感はいまいちです。HFI-780は煌きと爽快感がかなり良くATH-AD2000と最後まで迷ったのですが、低域が一つ一つの音をくっきり鳴らすような感じで繋がりが悪いせいか疾走感がいまいちだったので外しました。PFR-V1は煌きと爽快感は良いのですが、高域の癖があまりに強すぎます。

・5台目 ATH-CK7(audio-technica)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に中域から高域の明るさがあるため煌きが感じられる点が魅力的です。疾走感と爽快感についても十分平均以上と言えると思います。低域の量感や音の厚みがある点も、今回の曲を楽しむのに向いていると思います。
 他にはCX300とKH-C311が良かったです。CX300の方が中域から高域の明るさがあるため煌きが感じられ、KH-C311の方が低域の制動が良く疾走感があります。また、カナル型にこだわらないならEP-AVNAIRとMX760も魅力的でした。特に爽快感を求めるなら良いと思います。


 今回は総合的に見てSR-325iが最も良かったと思いますが、HPS5000も価格を考えればかなりのものだと思いました。総合的な音質評価があまり良くなくても、相性の良い曲を聴く際には魅力的に鳴らしてくれるという良い例だと思います。
 ヘッドホンアンプはHead Amp 2/MkII SEが良いと思います。切れや制動が今回の曲に合います。次点はHD-1L Limited Edition(RC1)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。













戻る





TOP > 曲別HP探索2 > 第14回