第11回 熱情の律動/「ロマンシング サガ -ミンストレルソング- オリジナル・サウンドトラック」より

 今回取り上げるのは、ゲーム「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」のオリジナル・サウンドトラックから、Disc2の4曲目です。作曲は伊藤賢治です。伊藤賢治は他に聖剣伝説シリーズの音楽を担当したことでも有名です。
 今回の曲はなかなか個性的で、ゲーム音楽と言ったときに普通に想像されるものとはかなり違う印象です。テンポが速く情熱的な曲調で、フラメンコのようなテイストを感じます。音としては、アコースティック・ギターのような音と低めの女性ヴォーカルがメインで、そこにシンセが多少加わってきます。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、特に書いていなかったので私が決めたいと思います。今回の曲の情熱的な部分を出すためにエッジがある程度立っていること、ゲーム音楽らしくないところ(アコースティックで異国情緒が感じられるようなところ)を出してくれること、ヴォーカルが魅力的に聴こえることの三点を重視したいと思います。


・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。切れやスピード感という意味ではいまいちですが、エッジはしっかり立っていてそれなりにメリハリが感じられます。「ゲーム音楽らしくないところ」はこれ以上なくらいしっかり出してくれますし、ヴォーカルは濃密で艶がありファルセットの表現もうまいです。総合的に見て、今回の曲を情熱的かつ雰囲気たっぷりに鳴らしてくれると言えます。DT231PROは聴き疲れが気になることも多いヘッドホンですが、今回の曲では高域が少ないこともあってほとんど気になりません。
 他にはHD215、SE-M870、UR/40等で聴いてみました。HD215はギターのエッジは魅力的ですが全体的にドライで「ゲーム音楽らしくないところ」はあまり出してくれません。むしろどちらかと言うとゲーム音楽らしい鳴らし方のように感じられます。SE-M870は基本的には悪くないのですが、ヴォーカルに不要な芯が通っているような感じがやや気になります。UR/40は最後までDT231PROと迷いましたが、DT231PROの方が「ゲーム音楽らしくないところ」を出してくれますし、ヴォーカルの魅力という点でも勝っているように感じられたのでそちらにしました。
 不満点は、やや暗く切れが足りない点、音場が狭くスケールが小さい点です。

・2台目 DR150(Goldring)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。広い目で見れば1台目と近い傾向の鳴らし方ですが、1台目と比べてある程度音場が広くスケールが大きくなります。暗く切れが足りない点もやや改善される印象です。1台目と比べると一つ一つの音をしっかり鳴らしきっているような感じで、躍動感があります。最初に書いた条件については、三点ともそれなりに満たしていると思います。
 他にはDTX900、HP-AURVN-LV、RP-21、SE-A1000等で聴いてみました。DTX900はスケールは大きくなるのですが、エッジや切れは1台目よりやや悪くなります。HP-AURVN-LVとSE-A1000は、1台目の不満点はある程度改善されるのですが、「ゲーム音楽らしくないところ」をあまり出してくれずやや明るすぎる印象です(ただし、これは1台目と比べたときの話で、単品で見るとあまり問題にならない気もしますが)。RP-21は最後までDR150と迷ったのですが、DR150の方が情熱的に感じられたのでそちらにしました。
 不満点は、ギターの音色がやや不自然な点です。

・3台目 DT990 Edition 2005(beyerdynamic)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。その点についてはしっかり改善される印象です。比較せずに単品で見ても、DT990 Edition 2005のギターの音色とエッジの立ち具合はなかなか魅力的だと思います。最初に書いた条件についても、2台目と同等かそれ以上に満たしています。2台目と比べると、良くも悪くもあまり制御されずに自由に鳴らしているような緩さを感じます。トータルとして見ると、2台目より若干良いといったところだと思います。
 不満点は特にありません。

・4台目 PROline750(ULTRASONE)
 3台目でほぼ満足してしまったので改めて色々と聴いてみて、その中で最も良いと感じたので選びました。
 最初に書いた条件は三点ともそれなりに満たしていますし、濃密な音でプラスアルファの魅力が感じられます。3台目と比べてどちらが違和感なく聴けるかという見方をするなら大抵の人が3台目を選ぶでしょうが、どちらが情熱的で楽しめる鳴らし方かという見方ならPROline750を選ぶ人も多いと思います。エッジの質を見ると、3台目は鋭く刺さる感じ、PROline750はざらつく感じという違いがあるので、そのあたりで好みが別れる面もあると思われます。
 他にはDT660 Edition 2007、DT880、RS-1等で聴いてみました。DT660 Edition 2007は低域が少なすぎてバランスが悪いですし、明るすぎて「ゲーム音楽らしくないところ」があまり感じられません。DT880はなかなか良いのですが、DT990 Edition 2005やPROline750の方がエッジが立っていてメリハリがあり情熱的に感じられます。RS-1は単品で見ると非常に魅力的で、特にギターの表現は素晴らしいのですが、これまでに聴いてきた他の多くのヘッドホンと比べると低域が少なく明るすぎるように感じます。また、今回の曲はどちらかと言うとしっかりと中身の詰まったような実体感のある表現をして欲しい傾向なので、RS-1の透明感のあるヴォーカルは少し違う印象です。

・5台目 m5(FUTURE SONICS)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に「ゲーム音楽らしくないところ」についてはイヤホンとしてはかなり良く出してくれます。全体のバランス、「ゲーム音楽らしくないところ」を出してくれる点、情熱的に感じられる点、濃密な点等、様々な角度から見てPROline750に近い印象です(もちろんそっくりと言うほどではありませんが)。やや低域が多すぎる点は不満ですが、そうは言ってもこれ以上に条件を満たすものは見当たりませんでした。
 他にはHP-FX500とHP-FXC50が良かったです。とは言え、これは「ゲーム音楽らしくないところ」を出してくれるものが少ないためにエッジで選んだ面が大きいですが・・・・・・ ヴォーカルを柔らかく鳴らして欲しいというような聴き方でなければ、総合的に見てもなかなか良いと思います。


 探索を始めてから気がついたのですが、今回の曲は意外とヘッドホンによって差が出にくい印象です。その理由は、低域・高域ともにあまり量が多くないこと、曇り気味でエッジの丸い録音でヘッドホンが多少偏った音でも影響が小さいといったところにあると思われます。
 今回選んだヘッドホンはエッジがきつめで聴き疲れしやすいものが多いですが、今回の曲は先ほども書いた通りエッジが丸めで高域も少なめなので、聴き疲れという点ではあまり問題はなく、むしろ魅力的に鳴らすためにはエッジはきつければきついほど良いとさえ言えるように感じました。
 ヘッドホンアンプはAT-HA2002が良いと思います。AT-HA2002の濃密でエネルギッシュなところがマッチしますし、「ゲーム音楽らしくないところ」も比較的良く出してくれます。エッジや切れを重視するならHead Amp 2/MkII SEが良いと思います。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。













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