dj1001

音質
 ややかまぼこ。低域は厚みはそれなりにあるが、ローエンドが弱いし量も不足。良く言えばタイトだが、DJ用として見ると量が足りないだろう。中域はしっかり聴こえてくるが、ソースによってはやや癖が出る。高域は十分に出るが極端に強いわけではない。ハイハット等がやや浮いて聴こえるように感じる。
 分解能は価格なりの価値があるかどうか微妙なところ。特に悪くはない。音場感はULTRASONEと同様癖があるが慣れればかなり良い。原音忠実性は中域から中高域の癖がどうしても気になるためいまいちに感じる。エッジはきつくないのだが、音に芯が通っている感じで、キンキンしたソース等ではやや疲れる。
 明瞭さはかなり良いが、その割には音の鮮やかさは良くない。かなり厚みがあるしっかりした音。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。基本的にはノリが良いのだが、低域の量が不足に感じることがある。重厚さや迫力よりも、軽快さやスピード感によるノリの良さが勝っている。響きはあっさりで、切れが良い。どこか古臭い地味な音作りに感じる。
 弦楽器は決してうまいとは言えないのだが、独特の味がある。やや原音の粗が目立つような表現で、悪いものは悪く、良いものは良く聴かせてくれる印象。金管楽器はそこそこ鮮やかで芯がとおった表現だが、目の覚めるような表現とは言いがたい。前述の古臭さが感じられる。打ち込み系の音の表現はかなりうまい。低域は締まりがあるし、中域から高域の鮮やかさも文句ないレベル。
 正直言って、コストパフォーマンスが良いとは言えない機種だろう。

装着感
 普通。側圧がやや強めで、それほど重くないためずれにくい。頭頂部にはきちんとクッションがあるのだが、それでも長時間使用すると少し痛い。
 イヤーパッドは耳を覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はレザータイプの人工皮革で、肌触りは悪くないが、張り付く感じで蒸れる。
 普通のDJ用同様ヘッドバンドの長さ調節が固定できないのに加えて、調節位置がずれやすいため何度も着けたり外したりする場合には調節が面倒。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。
 本体の作りはHFI-650とほとんど同じ。形はともかく色が地味で総合的なデザインとしてはどう考えても良くない。デザインだけで敬遠している人が多いだろう。DJ用らしくカールコードでスイーベル機構、折りたたみ可能。普通のヘッドホンと違うところをあげるなら、ドライバーがコバルトマグネットで、ハウジングにモノラル/ステレオ切替スイッチが付いているところ。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは約4mm、やや硬く扱いづらい。イヤーパッドのサイズは、外周98mm×88mm、内周54mm×44mm、深さ16mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
キャリングポーチ



参考
不定期コラム『第16回 DJ用ヘッドホン比較』
不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-A900
ATH-A900はやや高音より、dj1001はややかまぼこ。低域は全体的にATH-A900の方がかなり出る。高域はほぼ同量だが、ATH-A900の方が硬くて細いため強く感じる。分解能、原音忠実性はATH-A900の方が良い。音場感はdj1001の方が良い。ATH-A900の方がエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さはdj1001の方が上だが、音の鮮やかさはATH-A900の方が上。厚みはdj1001の方があるが、情報量はATH-A900の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはATH-A900の方が上。ATH-A900の方がノリが良くしかも繊細。響きはATH-A900の方が豊か。弦楽器、金管楽器ともにATH-A900の方がうまい。弦楽器は伸びが良く心地よいし、金管楽器は一段高い音で鮮やか。打ち込み系の音の表現はどちらもうまいが、dj1001の方が線が太く相性が良いように感じる。ただし、低域が不足に感じられることが多い。得意分野はどちらもポップス。使い分けるならポップスはdj1001、それ以外はATH-A900。ATH-A900では線が細く音に厚みが足りないと言う場合にはdj1001を使うのが良いかもしれない。

HFI-650
dj1001の方が高音より。dj1001は低域、特に超低域がかなり不足しているが、中域・高域は十分。HFI-650の方が低音が出るが、やはり超低域は弱め。かなり似た音を鳴らすが、あえて差をつけるなら、dj1001は乾いた古臭い音、HFI-650はdj1001よりは水気のある鮮やかな音。分解能及び音場感は非常に近い。どちらもあまり原音に近いとは言えないが、dj1001は原音忠実を気にかけた音作りになっている分まだ原音に近い。HFI-650は原音忠実ではなく如何にノリよく楽しく音楽を聴かせるかに重点を置いており、原音忠実性は二の次。どちらもエッジはあまりきつくなく、聴き疲れしないが、それでいて明瞭。明瞭さはほぼ互角。温かみやヴォーカルの艶っぽさはHFI-650の方が上。dj1001の方が音の粒が細かく繊細。逆にHFI-650の方が芯の通った音で低域も出るため、ノリが良い。dj1001の方が響きが良く音に広がりがあるが、audio-technicaのようなスカスカした感じがある。弦楽器をこれらのヘッドホンで聴くのはあまりオススメできないが、意外なことに金管楽器はなかなか良い音を鳴らしてくれる。特に、dj1001のハイハットは独特の味があり美しい。ただし、金管楽器全般の一聴したときの違和感のなさはHFI-650の方がやや良い。得意分野はどちらもポップス等の打ち込み系の音楽。使い分けるなら、dj1001はハウスやラウンジ、HFI-650はトランスやユーロビートとなろうか。

HP-M1000
dj1001はややかまぼこ、HP-M1000はドンシャリ。低域は全体的にHP-M1000の方が出る。高域はほぼ同量、中域はdj1001の方が出る。分解能、音場感、原音忠実はすべてdj1001の方が上。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、どちらかと言えばdj1001の方が疲れるか。明瞭さ、厚み、密度はdj1001の方が上。鮮やかさや温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP-M1000の方がある。ノリの良さならHP-M1000、繊細さならdj1001。響きはHP-M1000の方が豊か。弦楽器はHP-M1000の方がマイルドで心地よく楽しめるが、原音に近いのはdj1001。金管楽器はdj1001の方が若干良い。打ち込み系の音の表現はどちらもうまいが、低音が出る分HP-M1000の方がやや有利か。得意分野はどちらもポップス。分解能や音場感はdj1001の方が良いが、あまり音楽を楽しむのに向いてない音作り。逆に、HP-M1000は音楽を楽しむためだけに作られたような音。どちらを好むかで評価はまったく変わると思われる。

PC-100
非常に近い音だが、低域はPC-100の方がやや出る。高域はほぼ同等、ヴォーカル等の中域はややdj1001の方が出る。と言っても、PC-100が凹んでいると言うよりはdj1001が出ているという印象。違いは微妙。一番の違いは音の粒の粗さで、PC-100はかなり粗く、dj1001は細かい。高域はPC-100はシャリつくがdj1001はそんなことはない。分解能はdj1001の方が上、音場感はほぼ同じ。どちらもエッジはきつくなくそれなりに聴きやすいが、dj1001の方が聴き疲れは少ない。どちらも非常に明瞭で、明瞭さという意味では差はない。温かみやヴォーカルの艶っぽさはどちらも不足気味だが、dj1001の方が若干良いか。どちらも響きがあっさりで、ノリ良く切れの良い音だが、低域が出るのと音の粗さからPC-100の方が若干ノリが良く感じる。どちらも打ち込み系の音と相性が良い。弦楽器はdj1001の方が繊細かつ自然。金管楽器はほぼ互角で、粗い感じが好きな人はPC-100、澄んだ感じが好きな人にはdj1001がオススメ。使い分けるなら、ロックやノリ重視のポップスはPC-100、それ以外はdj1001。

R/200
どちらもかまぼこだが、dj1001の方がフラット。低域はdj1001の方が全体的に出るし、高域はR/200の方が一段高い音だが量はdj1001の方が出る。分解能、音場感、原音忠実性すべてdj1001の方が上。R/200の方が聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてdj1001の方が上。dj1001の方がノリが良くしかも繊細。響きはどちらもあっさり。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてdj1001の方がうまい。ほとんど何を聴くにしてもdj1001の方が良い。

RP-DH1200
dj1001はややかまぼこ、RP-DH1200は低音よりのドンシャリ。低音は圧倒的にRP-DH1200の方が出る。逆に高域は圧倒的にdj1001の方が出る。分解能、音場感、原音忠実性はすべてdj1001の方が上。どちらもエッジはきつくなく聴きやすいが、低音が出るぶん大抵のソースではRP-DH1200の方が聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはdj1001の方が上。厚みはRP-DH1200の方があるが、密度は互角。温かみはRP-DH1200の方があるが、ヴォーカルの艶っぽさはdj1001の方が若干ある。ノリの良さならRP-DH1200、繊細さならdj1001。響きはRP-DH1200の方が豊かで、こもり感がすごい。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてdj1001の方が良い。ただし、何を聴くにしても若干低音が不足に感じられる恐れはある。それにしてもRP-DH1200の低音過多よりはましと思う人が多いだろう。得意分野はどちらもポップス。よほど低音が欲しい人でなければdj1001の方が何を聴くにしても良いだろうが、dj1001も癖がある上、DJ用とは思えないほど低音がタイトなので、万人にすすめられるヘッドホンではない。人によってはスカスカな上に妙な嫌味があると感じるだろう。

SE-900D
SE-900Dはかなりフラット、dj1001はかまぼこ。特に超低域は差がある。dj1001はまったく足りていないが、SE-900Dは少なくとも必要最小限は出る。分解能、音場感はdj1001の方が若干良い。SE-900Dの方が原音忠実でしかもエッジがきつくなく聴きやすい。dj1001の方が明瞭だがSE-900Dの方が鮮やか。厚みはほぼ互角。温かみヴォーカルの艶っぽさはSE-900Dの方が良い。SE-900Dの方がノリが良い。響きはSE-900Dの方が豊か。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてSE-900Dの方が良い。弦楽器は伸びが良く楽しめるし、金管楽器は一段高い音を鳴らしてくれる。ただし、金管楽器はPioneer独特の癖が出るし、打ち込み系の音は切れを求めるならdj1001の方が良いこともある。得意分野はどちらもポップス。ほとんど何を聴くにしてもSE-900Dの方が良いような気がするが、dj1001には独特の魅力があるのも確か。個人的には、常用にはSE-900Dを使って、たまにdj1001を聴くのが良いように思う。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 10Hz〜28kHz 107dB 64Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
280g 50mm 3m(カール) 片出し 折りたたみ可能

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 3 4 4 2 3 均(中、高) 25000円
※生産終了

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公開日:2004.12.12