今回はヘッドホンのバランス化です。K701を選んだのは、バランス化による音質変化が大きいことに定評があり、音質面含めやってみたいと考えている人が多いと思われたからです。
バランス出力のあるヘッドホンアンプが登場してしばらく経ち、個人輸入せずとも国内で入手できるものが増えてきていますが、ヘッドホン本体のバランス化の方はまだ少しハードルが高く、それが理由でバランス出力のあるヘッドホンアンプの購入を躊躇している人も多いように思います。海外のガレージメーカーが販売しているバランス化されたヘッドホンは高価ですし、最近になって日本国内でヘッドホンのバランス化を請け負う会社も出てきましたがコストや手間が未知数です。自分の大切なヘッドホンを人に預けるのは不安な人もいるでしょう。色んな人がいるとは思いますが、ヘッドホンのバランス化は難しくはないので、できる人は自分でやってしまうのが一番だと思います。
さて、そんなわけでそれなりに多くの人がヘッドホンを自分でバランス化していると思われますが、何故かヘッドホンのバランス化のやり方をネット上で公開しているのはほとんど見かけません。そこで、私が試しに公開してみることにしました。
まず初めに、使った道具は下記の通りです(カッコ内は必要に応じて)。
ヘッドホン K701
XLRプラグ オス NEUTRIK NC3MXX-B 2個
ハンダごて
ハンダ
ハンダ立て
ニッパー
検電ドライバまたはテスタ
(ペンチ)
(輪ゴム)
(グルー)
(グルーガン)
(熱収縮チューブ)
(ヒートガンまたはドライヤー)
それでは本題に入りたいと思います。
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プラグ部から数センチのところをニッパーで切断します。どこを切断しても良いのですが、私の場合コードの長さは元の3mが良いので、プラグの近くで切りました。数センチ残すのは、何かの理由で再度プラグを使うときに使いやすいようにという理由です。このプラグとケーブルを使って、バランス⇔シングルエンド変換ケーブルを自作しようと考えている人は、もっと長く(10cm以上)残しておいた方が良いです。
次に、灰色の被覆を剥きます。中の線材を傷つけないように気をつけます。XLRプラグのハンダ付けする部位からプラグのケーブル出口までが約5cmなので、10cmくらい剥いておくと良いと思います。それ以上短いと、アンプに接続できない可能性があります(アンプの出力端子のLとRがどれくらい離れているかによって変わってきます)。
中から赤(オレンジ)、黒、黄色、白の4色の被覆の線材が出てきます。この被覆も1本1本剥きます。ハンダ付けするだけなので、5mmほど剥けば十分だと思います。あまり長く剥くと接触してショートの原因になるのでほどほどが良いでしょう(後で絶縁すれば関係ありませんが)。4本の線材以外に白い繊維が5本ほどありますが、これは不要なので根元で切断します。
ヘッドホンのケーブルは、左右のチャンネルがそれぞれホットとコールドから成っていますが、どの色の線材がどれに当たるのかは書いていないので分かりません。とりあえず深く考えずに導通を調べたところ、赤と黒、黄色と白が導通していました。
普通に考えたら赤は右チャンネルのホットなので、すると黒は右チャンネルのコールド、黄色と白はケーブル被覆の常識から考えると黄色が左チャンネルのホット、白が左チャンネルのコールドと推測されます。一応まとめておくと、下記のようになります。
赤:右、ホット
黒:右、コールド
黄:左、ホット
白:左、コールド
ちなみに、この被覆の色はヘッドホンの機種によって違うので、他のヘッドホンをバランス化するときには考えたり試行錯誤したりする必要があります。もし間違っていても、簡単にやり直せるのでとりあえずやってみることにします。
XLRプラグはNEUTRIKのNC3MXX-B(ブラック、オス)を2個使用しました。もっと高価で品質の良さそうなものもあるのですが、私はNEUTRIKの金メッキのものを使いたかったのでこれを選びました。秋葉原のオヤイデで購入しました。1個450円ほどです。
このXLRプラグは写真の4つのパーツから成っています。
このように組み合わせて使います。上のパーツと真中のパーツは差し込むだけですが、2箇所の凹凸で位置決めするようになっているので、位置をしっかり合わせないと入りません。上のパーツと下のパーツはねじ込みます。ねじ込むと真中のパーツの下の部分が締まって、中を通るケーブルを押さえる仕組みになっています。
端子部はピンが3本出ているので、ケーブルをハンダ付けする部分も当然3箇所あります。写真はプラグの根元側(ハンダ付けする側)から見たもので、写真では分かりづらいですが右上が1、左上が2、下が3とナンバリングしてあります。昨今のXLRは1番がシールド、2番がホット、3番がコールドとなっていることが多いです。ヘッドホンのバランス出力でも、2番ホットが基本のようです。使用するヘッドホンアンプのバランス出力に合わせてプラグとケーブルをハンダ付けしなければなりませんが、自分の持っているものがどうなのか分からない人は、2番ホットにしておけば間違いないと思います。
まずは右チャンネルからやってみたいと思います。
2番に赤、3番に黒をハンダ付けします。1番は使いません。ハンダ付けする前に、2つのパーツにケーブルを通しておく必要があります。これを通しておかないとやり直しになってしまうので要注意です。
ハンダ付けが終わったら、カバーをねじ込みます。ハンダ付けした直後は金属部が熱くなっているのでヤケドに注意します。
左チャンネルも同様ですが、一応解説します。
2番に黄色、3番に白をハンダ付けします。2つのパーツにケーブルを通しておくのを忘れないようにします。
カバーをねじ込んで完成です。
このプラグの場合、ハンダ付けする部分が皿になっているのでハンダ付けが簡単です。一応注意点としては、時間をかけすぎるとプラグのプラスチック部が加熱されて溶けてしまう可能性がありますので、あまり時間がかかるようなら途中で冷ましながら作業した方が良いです。
ハンダ付けするときのプラグの固定は人それぞれやりやすいようにすれば良いと思いますが、私はペンチと輪ゴムでやりました。
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微妙な角度調節もできますし、意外としっかり固定できるのでお気に入りの方法です。
ハンダ付けした後、一応導通を確かめます。問題なければバランス出力のあるヘッドホンアンプで音を確認します。ソースは何でも良いのですが、オーディオチェックCD等を持っているのなら折角なので使えば良いと思います。普通の音楽CDより簡単かつ確実にチェックできます。私はXLOのBurn-In CDでチェックしました。
確認したところ、音は問題なく出ています。左右の音量差や定位のズレ等はありません。逆相の音も問題なく鳴ります。ケーブルをちょっと引っぱってみても音跳び等は発生しません。どうやらケーブルの識別は間違っていなかったようですし、ハンダ付けもしっかりできているようです。
基本的には以上で終わりですが、プラグ内で被覆を剥いてある部分が接触するとショートして音が鳴らないので、絶縁した方が良いです。
また、これではハンダだけでケーブルがプラグに固定されていることになるので(プラグ内部の仕組みでケーブルを挟んである程度固定はしますが)、音がきちんと鳴ることを確認したらグルーで固めてしまった方が良いです。グルーガンとグルーはダイソーでも売っています。グルーで固めるのは絶縁も兼ねられるので合理的です。私は、断線したときの修理のしやすさや、シングルエンドに戻すことになった時の戻しやすさを考えて、とりあえず固めませんでしたが。
それから、このままではプラグから色とりどりのケーブルが出ていて見映えが悪いですし、細い線が剥き出しで耐久性の面で不安が残ります。これが嫌なら熱収縮チューブでカバーしてあげれば良いです。ハンダ付けの前に熱収縮チューブを通しておいて、完成したらヒートガンかドライヤーで加熱して縮ませます。左右だけでなく分岐部も加えて計3本のチューブを通してあげると良いと思います。分岐後はφ3mm、分岐前はφ6mmくらいが良いのではないでしょうか。ただし、普通の黒い熱収縮チューブを使用すると左右が分からなくなってしまうので、こだわる人は赤と黒のものを使うと良いでしょう。気にしない人はマジックで印を付ければ良いと思います。私はそのままの方が如何にも手作りな感じがして良かったりするので、そのままです。シングルエンドに戻すときにも楽ですし。
さて、だいぶ長くなってしまいましたが、実際の作業としては写真撮影をしながら1時間もかかりませんでした。写真を撮るのにかなり時間を取られたので、写真を撮らなければ30分もかからないと思います。初めての人が慎重に作業しても1時間くらいでできてしまうでしょう。難易度としても、大抵の人にとっては難しくない作業だと思います。道具やパーツをどこで買えば良いのか分からない人もいるかもしれませんが、大抵はオヤイデのネットショップでそろいます。
基本的に何も知らない人向けに書いたので、多少知識のある人から見るとまどろっこしい内容になっているかと思いますが、ご容赦ください。なお、今回の内容は私が深く考えずに適当にやってみただけのものなので、間違っているかもしれません。改造は自己責任でお願いします。また、詳しい方は間違いを発見したらご指摘ください。
追記
その後、熱収縮チューブでカバーしてみました。
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手元にスミチューブのφ3mmとφ10mmのものがあったのでそれを使いましたが、やはりφ10mmだとやや太いように感じます(太すぎてずれたりするようなことはありません)。耐久性は上がったでしょうが、見映えが良くなったかどうかは微妙な気がします・・・・・・
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