SRS-2020

音質
 やや高音より。低域は厚みが薄めで、量も程々。繊細と表現されることの多いコンデンサー型だが、それは粗がないというだけで低音もそれなりに出る。ただしダイナミック型の一般レベルと比べると厚みのある低音は出ない。中域はしっかり聴こえるし、癖もない。高域は非常に細く、それでいて痛くない鳴らし方。
 分解能、音場感ともにかなり良い。特に音場感は、全面駆動独特の非常に広く明確な音場。ある種の自然さが素晴らしいという意味で、原音忠実性はそれなりにあるが、原音の粗や痛さを殺しているという意味ではあまり原音忠実とは言えない。エッジはきつくなく、線が細い割には非常に聴きやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさはかなり良いが、キンキンしたような痛い音は全くしない。厚みはやや薄い。低域が弱めの割にはかなり温かみがあるし、ヴォーカルの艶っぽさも非常に良い。とにかく繊細で、迫力やノリの良さ、力強さには欠ける。響きは豊かで、音の広がりも良い。
 弦楽器は非常に線が細くて繊細な表現で、かつ心地よい。ダイナミック型には不可能な表現。金管楽器はかなり鮮やかだが芯の通った力強い感じには欠ける。ハイハットやシンバルが非常に美しく楽しめる。打ち込み系の音の表現は、低域の不足と線の細さが仇となりあまり良くないが、中域から高域は悪くない。

装着感
 良好。外観から想像されるよりも重さを感じず、ソフトなかけ心地。側圧が弱いにもかかわらず、ずれにくい。ただし、その装着感の良さはヘッドバンドの面積の広さからきているため、逆に言うと髪形の乱れがかなり気になる。
 イヤーパッドは耳をすっぽり覆うサイズで、上下左右に角度調節ができる。材質はレザータイプの人工皮革で、肌触りは悪くないが蒸れる。

その他
 本機はイヤースピーカーSR-202とドライバ(アンプ)SRM-212のセット。STAXの中では入門機になる。
 開放型のため、遮音性や音漏れ防止は良くない。特に音漏れは他社の一般の開放型と比較しても悪い。
 作りは悪くないがデザインはいまいち。また、コンデンサー型のためケーブルが重く、オーディオ機器に直接接続できないなど、色々と使いづらい。
 コードは、合流前は幅約5.5mm・厚さ約1.5mm、合流後は幅約13mm・厚さ約1.5mm。イヤーパッドのサイズは、外周124mm×76mm、内周78mm×38mm、深さ16mm。

付属品
無し



参考
不定期コラム『第40回 ヘッドホンアンプの内部写真』

周波数特性グラフ


比較メモ
K501
SRS-2020は超低域までフラットなのに対して、K501は超低域がまったく出ない。中域はほぼ同量、高域は若干K501の方が強い。高域の澄んだ感じはK501の方があるのだが、キンキンして硬すぎると感じる人も多いかもしれない。分解能、音場感ともにSRS-2020の方が一段上。原音忠実性はほぼ同等だが、生の粗っぽさならK501、自然さならSRS-2020といった感じ。どちらもエッジはあまりきつくないが、さすがにSRS-2020は非常に聴きやすくまったく聴き疲れしないマイルドさがある。明瞭さでは超低域が出ない分K501の方が上に感じるが、超低域がないソースでは互角。音の鮮やかさはSRS-2020の方がやや上で、厚みは互角、芯の通った感じはK501の方がある。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSRS-2020の圧勝。どちらも非常に繊細だが、SRS-2020の方が上を行く。響きはSRS-2020は豊か、K501は適度。弦楽器は中域〜高域はほぼ互角だが、低域はSRS-2020の方が圧倒的に良い。K501は超低域がタイトすぎ、チェロ等の低域がまったく味気ない。金管楽器はSRS-2020の方が良い。澄んでいてしかも空気感も十分。K501も悪くないのだが、SRS-2020と聴き比べると芯が通り過ぎていて空気感が感じられず、チープに聴こえる。ただし、ロックやポップスを聴くにはSRS-2020は音が丸くてぬるく、響きが良すぎる。K501は超低域は足りないし音が細いという不満はあるが、SRS-2020よりは相性が良い。得意分野はどちらも間違いなくクラシック。クラシックなら何を聴くにもSRS-2020の方が上に感じるが、弦楽で生っぽさを感じたいならK501か。ロックやポップスはK501の方がノリ良く楽しめるが、K501を使うならもっと他の機種をおすすめしたい。

MDR-SA5000
どちらもやや高音より。超低域はSRS-2020の方が出るが、低域の厚みそのものはMDR-SA5000の方がある。高域はどちらも質・量とも非常に充実している。分解能、音場感ともにMDR-SA5000の方がやや良い。ただし、音場の広さだけならSRS-2020の方が上。どちらもかなり原音に近いが、SRS-2020は綺麗になりすぎている分やや原音とは違う。MDR-SA5000は特に弦楽器に共通の癖が出るが、それを除けば非常に原音に近い。聴き疲れのしなさはSRS-2020の方が上。MDR-SA5000が悪いわけではないが、SRS-2020と比べるとエッジがきつく原音の粗が目立つ。どちらも非常に明瞭だが、超低域が出る分SRS-2020の方がやや曇っているように感じる。SRS-2020は音の粒が細かくサラサラした感触である一方、MDR-SA5000はSONYにしては線が細いながら芯の通った音。音の鮮やかさ、厚みともにMDR-SA5000の方がやや上。温かみやヴォーカルの艶っぽさはSRS-2020の方がかなり良い。どちらもあまりノリが良いとは言えないが、響きがあっさりで芯の通った音を鳴らすMDR-SA5000の方がやや良く感じる。ただし超低域の量は不満。弦楽器は、チェロなどの低域にしろヴァイオリンなどの高域にしろSRS-2020の方が繊細で魅力的。MDR-SA5000は繊細さがあまり感じられず、やや癖がある。金管楽器は、SRS-2020は低域のふくよかな感じから高域の透明な感じまで非常に良いが力強さにやや欠ける。MDR-SA5000は低域のふくよかな感じはかなり不満ではあるが、トランペットなどの力強さではSRS-2020より上。打ち込み系の音の表現はMDR-SA5000の方が良い。得意分野はSRS-2020はクラシック、MDR-SA5000はオールマイティで、特にない。使い分けるならSRS-2020でクラシックとジャズ、それ以外はMDR-SA5000だろう。コストパフォーマンスを考えると、やはりSRS-2020は素晴らしいと言える。

SRS-4040
どちらもやや高音よりながら非常にフラット。低域は超低域までフラット、高域はやや強めで最高レベルの質。質的なものはSRS-4040の方が上。どちらかと言えばSRS-4040の方が高音よりに感じる。分解能はSRS-4040の方がやや上、音場感や原音忠実性はほぼ同等。どちらもエッジはきつくなく聴きやすい。明瞭さ、音の鮮やかさ、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSRS-4040の方が若干上。SRS-4040の方が音の粒が細かく繊細。SRS-2020の方が若干曇ったような感じがある。響きはどちらも豊か。弦楽器、金管楽器、打ち込み系の音の表現すべてSRS-4040の方がうまい。得意分野はどちらもクラシック。ほとんど何を聴くにしてもSRS-4040の方が良い。違いは微妙ではあるが、決定的であることも確か。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



※生産終了。後継機はSRS-2050A。その後SRS-2170。
 










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
コンデンサー 開放型 7Hz〜41kHz 100dB 132kΩ
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
295g - 2.5m 両出し ドライバとセット

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 2 1 3 1 均(高) 33800円
※生産終了。後継機はSRS-2050A。その後SRS-2170。

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公開日:2004.11.28