SE-CLX9

音質
 かなりフラットだが、細かいことを言うならややかまぼこから高音よりか。低域は質的にも量的にもあまり豊かではなく、必要量といった感じ。締まっているようにも感じるし、薄く曇っているようにも感じる、微妙な質。ただ、少なくとも厚みや量感には乏しい。中域は低域に邪魔されずにはっきり聴こえてくるし、基本的には変な癖はないのだが、ソースによっては中域から中高域がやや張り出すように感じることがある。高域は細く粗のない表現で、量的には程々。
 分解能及び原音忠実性はなかなか良い。音の分離といい微細な描写といい文句のないレベル。あまり原音の粗や生っぽさを感じさせる風合いではないが、最低限は感じられるし、全体的な癖の無さという意味ではかなりのもの。音場感は広さ・明確さともになかなか良い。エッジはきつくなくそれほど聴き疲れしないレベル。
 明瞭さ、音の鮮やかさはなかなか良いが、一部の機種に見られるような不自然で強烈な明るさはなく、むしろそれらの機種と比べると薄く曇っているように感じられる。厚みは普通からやや薄め。温かみは、低域の量が少なくさっぱりした鳴らし方なのであまり感じられないが、冷たい音ではない。ヴォーカルの艶っぽさはそれなり。もう少し柔らかければなお良かっただろう。かなりニュートラルな鳴らし方だが、どちらかと言えば繊細。響きはややあっさり。
 弦楽器は繊細かつ心地よいが、もう少し低域の量や生楽器らしさがあればなお良かっただろう。金管楽器はなかなか鮮やかで綺麗に鳴らしてくれる。打ち込み系の音の表現は微妙。低域の量や音の厚みが不満ではあるが、切れやスピード感は悪くはなく、トータルとしてはそれなりに鳴らしてくれる。
 価格の割にはこれといった魅力がなくいまいちな出来に感じるが、バランスの良い機種ではある。
 なお、上記の内容はデフォルトのノズルを使用したもの。他の4種類のノズルを使用すると、それぞれ多少の違いはあるが、劇的な変化はない。変化の小さいHigh tune 1とBass tune 1は人によってはまったく変化を感じられないレベルだろうし、変化の大きいHigh tune 2とBass tune 2にしても広い目で見ればフラットの範囲を出るような変化はない。周波数特性以外の音の変化はほとんどない。もう少し音の変化が大きい方が良かっただろう。

装着感
 良好。カナル型だが、イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプではないので装着しやすいし、耳の穴が痛くなりにくい。通常のカナル型と違ってイヤーホルダーがあるおかげで装着感が安定するが、長時間使用すると耳とイヤーホルダーの接する部分が痛くなることはある。重い、コードが顔に当たりやすい等の不満はない。
 イヤーピースの材質はシリコンのようだ。4サイズ付属している。また、イヤーホルダーも4サイズ付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。特に遮音性は国内メーカーのカナル型にしてはかなり良い。
 作り、デザインともに良いと言えるレベルだろう。付属品が充実している。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3mm・厚さ約1.5mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。

付属品
サウンドチューニング用ノズル5種類
イヤーホルダー4種類
イヤーピース4種類
0.8m延長コード
キャリングポーチ
収納ケース
クリーニングブラシ



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ

赤:Standard 青:High tune 2


赤:Standard 青:High tune 1


赤:Standard 青:Bass tune 1


赤:Standard 青:Bass tune 2

比較メモ
ER-4S
どちらもかなりフラット。低域はER-4Sの方がやや低い音で量も多い。中域はSE-CLX9の方がやや癖がある感じで、中域から中高域にかけて張り出すように感じることがある。高域はSE-CLX9の方がやや量が多く金属的。ER-4Sの方が細く繊細。分解能はER-4Sの方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ勝っている。音場感はER-4Sの方がやや奥行きがあり明確。原音忠実性はER-4Sの方が上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。エッジのきつさにはさほど差はないが、SE-CLX9の方が圧力がある感じで聴き疲れしやすいように感じる。明瞭さはER-4Sの方がやや上、音の鮮やかさはSE-CLX9の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはER-4Sの方が上。SE-CLX9の方がノリが良く、ER-4Sの方が繊細。響きは質が違う感じで比較が難しいが、あまり大きな差はない。弦楽器はER-4Sの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はSE-CLX9の方が明るく楽しめる。打ち込み系の音の表現は微妙。鳴らし方はSE-CLX9の方が元気が良く好印象なのだが、ER-4Sの方が低音の量や基本性能で勝っている感じ。使い分けるなら、繊細さ重視ならER-4S、ノリの良さ重視ならSE-CLX9。あるいは、生楽器を聴くならER-4S、そうでないならSE-CLX9。

HP101
HP101はややドンシャリ、SE-CLX9はかなりフラット。低域はHP101の方がある程度量が多い。重心が低く厚みもあるため、存在感にかなりの差がある。HP101の方が柔らかくぼやけ気味な質。中域はSE-CLX9の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。質的には、HP101の方がやや芯が通っている感じ、SE-CLX9の方が低いところが削られたような感じ。高域はほぼ同量。SE-CLX9の方が細く明るい質。分解能はSE-CLX9の方が若干上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろSE-CLX9の方が若干勝っている。音場感はSE-CLX9の方が若干広く、明確で見晴らしが良い。原音忠実性はほぼ同レベル。どちらも一聴して違和感が小さい。周波数特性上の癖はどちらもないわけではないが、どちらの方が癖があるかは人によって評価が割れる程度の差だろう。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはほぼ同レベル。エッジはのきつさや聴き疲れはほぼ同レベル。基本的にはHP101の方がやや粗っぽい音だが、高域にしろヴォーカルのサ行にしろSE-CLX9の方がやや細く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはSE-CLX9の方がやや上。厚みはHP101の方がある。温かみはHP101の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。線の細い感じを好むならSE-CLX9の方が合うだろう。低い男性ヴォーカルはHP101の方が合う。ただし、HP101はソースによっては張り出すような癖が多少気になることがある。HP101の方が低域の量に基づく迫力や力強さがあり、SE-CLX9の方が繊細であっさりした音。響きはHP101の方が豊か。弦楽器はHP101の方が心地よく、SE-CLX9の方が繊細。チェロ等を柔らかく心地よく聴きたいならHP101の方が良いが、ヴァイオリン等を澄んだ感じに聴きたいならSE-CLX9の方が良いだろう。金管楽器はHP101の方が太く金属的、SE-CLX9の方が細く綺麗。打ち込み系の音の表現は微妙。低域の量や厚みが欲しいならHP101の方が良いが、ウォームさが合わない面もある。切れ重視ならSE-CLX9の方が良いと感じることが多い。使い分けるなら、低域の量や温かみ重視ならHP101、明瞭さや繊細さ重視ならSE-CLX9。

HP-FX500
HP-FX500はややドンシャリ、SE-CLX9はかなりフラット。低域はHP-FX500の方が重心が低く厚みがあり量も多い。中域はどちらも低域に埋もれたりせずはっきり聴こえてくるが、やや癖がある。基本的にはHP-FX500の方がうわずってキンキンすることが多いが、ソースによってはSE-CLX9の方が張り出すような感じで目立つことがある。高域はHP-FX500の方が太く金属的。SE-CLX9の方が線が細く粗がない。分解能は微妙。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ大きな差はないが、質的な違いが大きいため人によって評価が変わってきそう。低域が多いソースでは低域が少ない分SE-CLX9の方がやや有利であることに加え、一つ一つの音の微細な描写はSE-CLX9の方が粗なく丁寧にこなしてくれることから、SE-CLX9の方がやや上と評価される傾向があるように思う。音場感はSE-CLX9の方がやや広い。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはSE-CLX9の方がやや上だが、原音の粗や生っぽさはHP-FX500の方が感じられる。エッジはHP-FX500の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHP-FX500の方がやや痛い。明瞭さは人によって判断が違ってきそう。低域が少ない分SE-CLX9の方が明瞭という見方もできるが、質的な問題でSE-CLX9の方が曇っていて明瞭さに欠けるという見方もできる。更に、HP-FX500はやや作ったような明るさがあるので、HP-FX500の方が明瞭と感じる人も多そう。音の鮮やかさはHP-FX500の方が上。厚みはHP-FX500の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSE-CLX9の方がやや上。HP-FX500の方が明るくメリハリがあってノリが良く、SE-CLX9の方が繊細で粗がなくおとなしい。響きは質が違うので判断が難しいし、ソースによっても違ってくるが、どちらかと言うとSE-CLX9の方が響きが豊かに感じることが多い。弦楽器はSE-CLX9の方が繊細かつ心地よいが、生楽器らしさやコントラバス等の低域が欲しいならHP-FX500の方が良い。金管楽器はHP-FX500の方が太い芯が通った感じで力強い。SE-CLX9の方が綺麗。打ち込み系の音の表現はHP-FX500の方がうまい。音の質感の相性、音の厚み、切れ等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、低域が欲しいならHP-FX500、控え目なくらいが良いならSE-CLX9。あるいは、生楽器らしさやノリの良さが欲しいならHP-FX500、繊細で聴き疲れしにくい方が良いならSE-CLX9。かなり違う音を鳴らす2機種なので、人によって色々な使い分けができるだろう。

IE-1
IE-1はやや高音より、SE-CLX9はかなりフラット。低域はIE-1の方が柔らかい質感でやや量が多い。中域はどちらもはっきり聴こえてくる。高域はIE-1の方が高く明るい音で量も多い。分解能は微妙。IE-1の方が良いと感じる面もあるが、これは付帯音が多いため。一つ一つの音の微細な描写の丁寧さという意味ではSE-CLX9の方が良い。音場感はSE-CLX9の方がやや広い。原音忠実性はSE-CLX9の方が上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはIE-1の方が良いくらいだが、いかんせん付帯音の多さと高域の癖が致命的。IE-1の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはIE-1の方が上。厚みはIE-1の方がある。温かみは音の質感が違いすぎて判断に困る。IE-1は温かみよりも明るさが前面に出てくるし、SE-CLX9は温かみがあると言うにはモニターライク。ヴォーカルの艶っぽさは付帯音のおかげでIE-1の方が良いように感じる面もあるが、擦れがかなり気になるし、SE-CLX9の方が無難と言える。IE-1の方が明るく元気、SE-CLX9の方が上品で繊細。響きはIE-1の方が豊か。弦楽器はSE-CLX9の方が良い。IE-1は余計な音を鳴らしすぎる。金管楽器はIE-1の方が鮮やかで楽しめるが、脚色しすぎな面がある。無難な表現を好むならSE-CLX9の方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はIE-1の方が元気が良く楽しめる。使い分けるなら、鮮やかさや元気の良さを重視するならIE-1、癖のなさや上品さを重視するならSE-CLX9。

ZEN AURVANA
別メーカーの割には非常に似た音を鳴らす。どちらもかなりフラット。低域は質・量ともにほとんど同じだが、ZEN AURVANAの方が若干重心が低いか。中域も似ているが、ソースによっては中域から中高域にかけてSE-CLX9の方が多少張り出すように感じることがある。高域も質・量ともに似ているが、どちらかと言えばSE-CLX9の方が明るい感じ。分解能はほぼ互角だが、SE-CLX9の方が若干良いか。音の分離には差異が見られないが、一つ一つの音の微細な描写で若干勝っていると感じることがある。音場感はSE-CLX9の方が若干広い。原音忠実性は互角。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、SE-CLX9の方がやや圧力があるので聴き疲れのしにくさとしてはZEN AURVANAの方が若干良い。明瞭さ、音の鮮やかさ、厚み、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさすべてほぼ互角。ただ、明瞭さと音の鮮やかさについてはどちらかと言えばSE-CLX9の方が良い。鳴らし方もかなり近いが、SE-CLX9の方がやや元気が良い。響きはほぼ同等。弦楽器はかなり似ていて甲乙つけがたい。金管楽器も同様だが、SE-CLX9の方が若干明るく楽しめる。打ち込み系の音の表現もほぼ互角だが、SE-CLX9の方が元気が良いためわずかに良いか。使い分けは困難。どちらか片方持っていれば十分な機種。

サイン波応答

位相+高周波歪み

インパルス応答(CSD)

インパルス応答(録音波形)

100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
バランスド・アーマチュア 密閉型 20Hz〜20kHz 105dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
8g - 0.8m 両出し(ネックチェーン) 収納ケース付属

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 4 5 4 5 17600円

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公開日:2008.2.23