PFR-V1

音質
 高音より。低域はローエンドがかなり弱めだが、バスレフダクトのおかげで外観から想像されるほどの極端な低域不足はないように感じる。それなりに低い音で締まりもある。ただし、低域はバスレフダクトの装着具合によってかなり変わるようだ。中域ははっきり聴こえてくるが、ややうわずる感じでかつ若干霞んでいるような癖がある。高域は高い音で量も多いがシャリつく。
 分解能はそれなりだが、普通のヘッドホンとして価格の割にどうかを考えると、あまり良くはない。音場感は外観どおり広がりがあって開放的。頭内定位が気にならないだけでなく、前方定位しやすい。原音忠実性はいまいち。ザラザラしていて付帯音が多い点がマイナス。エッジはきつくやや聴き疲れしやすい。
 明瞭さ、音の鮮やかさは非常に良い。厚みは普通。温かみはほとんど感じられない。冷たい音。ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。ザラザラした質感が合えばそれなりに聴けるが、基本的にはあまりうまくない。ノリが良いと言うには低域の量や音の厚みが足りないし、繊細と言うには音に粗がありすぎるが、どちらかと言えばノリが良い。響きはあっさり。
 弦楽器は繊細さにしろ心地よさにしろ不満だし、原音と違いすぎる。金管楽器は高く鮮やかで楽しめる。原音との違いは多少気になるが、弦楽器ほどではない。打ち込み系の音は、音の質感の相性は良いのだが、低域の量や音の圧力が不満。
 ザラザラしていて付帯音が多く低域の量が少ない等、欠点も多いが、広がりがあり開放的な音場は通常のヘッドホンにはない魅力。
 なお、本機は感度が低くやや音量が取りづらいが、付属のブースターを使用するとかなり音量が取りやすくなる。音質的にはブースターを使用した方が低域が増え、安定感が増す。ザラザラした質感も多少改善され、ヴォーカルの表現も良くなる。周波数特性グラフでは微妙な違いだが、聴感上はもう少し変化が大きいように感じる。音質的にはブースターを使用するデメリットはなく、メリットが多いので、可能であればブースターを使用したい。

装着感
 良好。側圧は弱いし、軽量な上ヘッドバンドがネット状で頭頂部も痛くならない。イヤーパッドがないため、当然ながら蒸れるということがない。上下方向の角度調節はできるが、左右方向はできない。
 ヘッドバンドの長さ調節とバスレフダクトの位置調節を別個に行う構造になっているので、初めて使用するときには念入りな調節が必要。ただし、一度調節すればそれほどずれやすくはないし、ほとんどの人は問題なく装着できるだろう。
 装着感として問題があるとすれば、金属製のバスレフダクトを耳穴に軽く入れるような感じに装着するため、それが合わない人はいるという点。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は非常に悪い。音漏れはSTAXレベルで、スピーカーよりは多少ましという程度に考えておいた方が良いだろう。
 作りはなかなか良いが、構造上貧弱に見える。デザインは独特だが、基本的には良い。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3mm・厚さ約1.5mm、硬さはやや柔らかめで扱いやすい。

付属品
ミニ→標準変換プラグ
ブースター
3m延長コード
キャリングケース
乾電池



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第58回 追加測定ピックアップと注意点』

周波数特性グラフ

赤:ブースターなし 青:ブースター使用
※ブースター使用時は約9dB音圧が高いので、同音量になるようにボリュームを調節

比較メモ
HDS-701
HDS-701は高音よりのかまぼこ、PFR-V1は高音より。低域はPFR-V1の方がやや量が多く圧力があるが、質的にはHDS-701の方がやや低い音を鳴らす。中域はどちらもうわずりながら霞んでいるような質が似ているが、PFR-V1の方が目立つ。高域はPFR-V1の方が高い音で量も多い。分解能はPFR-V1の方がやや上。音場感はPFR-V1の方が広がりがある。原音忠実性はHDS-701の方が良い。PFR-V1の方がザラザラして付帯音が多く癖がある。PFR-V1の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはPFR-V1の方が上。厚みはPFR-V1の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHDS-701の方が良い。PFR-V1の方が元気が良い。粗がないという意味でHDS-701の方が繊細。響きはPFR-V1の方がやや豊か。弦楽器はHDS-701の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はPFR-V1の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はPFR-V1の方がうまい。音の質感の相性が良いし、厚みや圧力でも勝っている。使い分けるなら、基本的にはPFR-V1、ザラザラした質感や聴き疲れを避けたいならHDS-701。あるいは、ヴォーカルや弦楽器はHDS-701、それ以外はPFR-V1。

MDR-F1
MDR-F1はやや低音より、PFR-V1は高音より。低域は、トータルの量はMDR-F1の方がやや多いが、中低域等はソースによってPFR-V1の方が出るように感じることもある。中域はPFR-V1の方が高い音ではっきり聴こえてくる。高域はPFR-V1の方がかなり高く鋭い音で量も多い。分解能はPFR-V1の方が上。音場感はPFR-V1の方が広く明確で開放的。MDR-F1の音場は普通の開放型の域を出ないが、PFR-V1は違う。原音忠実性はMDR-F1の方がやや上。周波数特性上の癖のなさや一聴したときの違和感のなさで勝っている。ただし、原音の粗や生っぽさは、ソースによってはPFR-V1の方がかなり感じられる。エッジはPFR-V1の方がかなりきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはPFR-V1の方が上。厚みはほぼ同レベルだが、厚みよりもPFR-V1の方が締まっているという質の違いが大きい。温かみはMDR-F1の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。基本的にはMDR-F1の方が癖なく安心して聴けるが、艶っぽさだけにしぼるとPFR-V1の方が付帯音が多い分有利な面もある。PFR-V1の方が明るく元気でノリが良い。粗のなさという意味で、MDR-F1の方が繊細。響きは、低域はMDR-F1の方が豊か、高域はPFR-V1の方が豊か。MDR-F1は没個性的、PFR-V1はかなり個性的で、ある意味正反対。PFR-V1の方がザラザラした質感がかなり気になる。弦楽器はMDR-F1の方が癖がなく安心して聴けるが、PFR-V1の方が生楽器らしさが感じられて良いこともある。金管楽器はPFR-V1の方が鮮やかだが、かなり癖があるので、癖を嫌うならMDR-F1の方が良いだろう。打ち込み系の音の表現はPFR-V1の方がうまい。音の質感の相性で勝っている。使い分けるなら、癖を嫌うならMDR-F1、癖があっても良いから音場や鮮やかさを求めるならPFR-V1。

MDR-SA5000
MDR-SA5000はやや高音より、PFR-V1は高音より。低域はどちらも少なめで特にローエンドが弱い点は似ているが、MDR-SA5000の方が低い音で量も多い。どちらも比較的締まりがあるが、PFR-V1の方がやや柔らかい質感。中域はどちらもうわずり気味でしっかり聴こえてくる点が似ている。高域はPFR-V1の方が高い音で量も多い。ただし、シャリつく。分解能はMDR-SA5000の方が上。音の分離に差がある。音場感はどちらも把握しやすい点は似ているが、PFR-V1の方が音に広がりがあり開放的。原音忠実性はMDR-SA5000の方が上。PFR-V1はザラザラしていて付帯音が多い点がマイナス。PFR-V1の方がエッジがきつく聴き疲れしやすい。明瞭さはMDR-SA5000の方が上、音の鮮やかさはPFR-V1の方が上。厚みはMDR-SA5000の方が上。温かみはどちらもあまり感じられない。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。艶っぽさというよりも質の違いが大きい。MDR-SA5000は硬質で無駄のない音、PFR-V1はザラザラしていて余計な音を鳴らしている感じ。MDR-SA5000の方が粗がないという意味で繊細。響きはPFR-V1の方がやや豊か。似ている点も多いこの2機種だが異なる点もある。MDR-SA5000が無駄な音を鳴らさない感じであるのに対して、PFR-V1は余計な音を鳴らしすぎる。MDR-SA5000は安定感のある鳴らし方であるのに対して、PFR-V1は自由で開放感のある鳴らし方。弦楽器はMDR-SA5000の方が良い。PFR-V1はザラザラしている上、原音とはかなり異なる。金管楽器はPFR-V1の方が高く鮮やかだが、原音忠実性を求めるならMDR-SA5000の方が良い。打ち込み系の音の表現は、どちらも音の質感の相性は良いが低域不足が不満な点は似ている。使い分けるなら、基本的にはMDR-SA5000、ザラザラしていて聴き疲れしても良いから開放的な音場を求めるならPFR-V1。

SR-325i
PFR-V1は高音より、SR-325iはややドンシャリ。低域はSR-325iの方がしっかり低い音を鳴らすし量も多い。中域はどちらもはっきり聴こえてくるが、PFR-V1の方がうわずり気味でありながら霞んでいるような感じ。高域はPFR-V1の方が高い音で量も多いが、粗もある。分解能はSR-325iの方が上。音の分離だけでなく、一つ一つの音の微細な描写もしっかりこなしてくれる。音場感はPFR-V1の方が広がりがあり前方定位しやすい。SR-325iの方が頭内定位が気になる。原音忠実性はSR-325iの方が上。周波数特性上の癖のなさだけでなく、原音の粗や生っぽさが感じられる点でも勝っている。SR-325iはPFR-V1と違ってあまり余計な音を鳴らさない。PFR-V1の方がエッジがきついが、SR-325iの方が耳の近くで圧力のある音を鳴らすので、聴き疲れは人によって違ってきそう。明瞭さ、音の鮮やかさはどちらも非常に良く、甲乙つけがたい。厚みはSR-325iの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはSR-325iの方が上。SR-325iの方がノリが良くかつ繊細。響きはどちらもあっさりだが、どちらかと言うとSR-325iの方が豊か。弦楽器はSR-325iの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はPFR-V1の方が高く鮮やかだが、原音と違いすぎるし癖がある。打ち込み系の音は、音の質感の相性はどちらも良いが、低域の量感や音の厚み等でSR-325iの方が勝っている。使い分けるなら、基本的にはSR-325i、音場を求めるときだけPFR-V1。

サイン波応答

位相+高周波歪み

インパルス応答(CSD)

インパルス応答(録音波形)

100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生

曲別HP探索
第94回 Our Town/Radio 4「Gotham!」より

曲別HP探索2
第6回 “武蔵と小次郎”part4〜アフリカ民族音楽"ソバヤ"/タモリ「タモリ」より













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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
フルレンジダイナミック 開放型 35Hz〜25kHz 93dB 16Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
96g 21mm 1m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
4 4 1 1 4 1 35900円

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公開日:2007.12.7