第75回 フォレスト・レイン/木住野佳子「プラハ」より

 木住野佳子はジャズピアニストです。
 今回取り上げるのは2004年発表のアルバム「プラハ」の1曲目で、ピアノがメインですが、ウッドベースやハイハットもしっかり主張してきます。比較的しっとりと落ち着いていて、心地よく聴ける美しい曲だと思いますが、躍動感が欲しい面もあります。
 ヘッドホンとしては、ピアノの表現云々よりもこの曲の雰囲気を出してくれることの方が重要だと思います。また、ホワイトノイズがやや大きいので、ノイズが気にならないヘッドホンの方が良さそうです。


・1台目 DTX900(beyerdynamic)
 今回も色々聴いてみましたが、最終的には迷わずこれを選びました。選んだ理由は、今回の曲の雰囲気をしっかり出してくれること、各楽器がしっかり鳴ってくれること、バランスが良いこと、ノイズが比較的気にならないこと等、多岐に渡ります。特に印象的だったのは、ピアノ、ウッドベース、ハイハットそれぞれの存在感と表現力です。
 他にはHP1000やMUSIC SERIES ONEも良かったですが、DTX900と比べると気になる点もあります。HP1000は雰囲気の出し方のうまさはDTX900とほぼ互角なのですが、DTX900と比べて厚みが薄く各楽器の存在感が希薄なのがマイナスです。MUSIC SERIES ONEは、HP1000ほどではないにせよDTX900と比べて濃さが感じられませんし、やや明るい鳴らし方である点が合わないように感じました。
 また、DR150も質感はなかなか良かったのですが、低域・高域ともにもう少し控えめな方が良い気がしましたし、ノイズが気になりました。
 不満点はあまりありませんが、もう少し音場が広く明瞭で細かい表現をこなしてくれるとなお良いという点ぐらいでしょう。

・2台目 HD650(SENNHEISER)
 DTX900の濃さや雰囲気の出し方のうまさをそのままに、不満点を改善できると思い選びました。
 実際聴いてみると、まったくそのとおりの鳴らし方です。今回の曲との相性は非常に良いと言えますが、どこが良いと言うのは難しいです。色々な見方をしてみても、悪い点が見当たらないです。
 DT880やDT990PROでも聴いてみたのですが、DT880はHD650と比べて密度が薄いように感じる点がマイナス、DT990PROはハイハットがうるさすぎる点がマイナスでした。どちらもなかなか良いのは確かですが、今回の曲はHD650の方が合うように思います。また、HD650と比べてノイズが気になる点もマイナスです(特にDT990PROはかなり気になります)。
 不満点はほとんどありません。次は少し傾向の違うものを選びたいと思います。

・3台目 AH-D5000(DENON)
 1、2台目は雰囲気重視で選んだためか、ピアノの輪郭が甘いという共通点があります。今回の曲は甘くても良いと思うのですが、ピアノの輪郭が明瞭なものを好む人も多いと思います。それを改善するためにAH-D5000を選んでみました。
 実際に聴いてみると、1、2台目と比べてピアノの輪郭が明瞭で少し冷たく、原音に近い印象を受けます。雰囲気はともかく、心地よく聴けるのは確かですし、ウッドベースの量感等各楽器の表現ももなかなか好印象です。心地よく、それでいて明瞭な鳴らし方を求めるならかなり良いでしょう。


 他にも色々聴いてみましたが、その中ではK701が意外と良かったです。K701は中域に若干の硬さや嫌味を感じることがあるのですが、今回の曲ではほとんど気になりませんでした。ノイズも小さめです。雰囲気や密度という点でHD650には劣りますが、あっさり聴きたいならK701の方が良いでしょう。HD650とAH-D5000の間くらいの鳴らし方という見方もできると思います。
 今回は、総合的に見るとHD650が最も良かったように思いますが、価格を考えるとDTX900の良さが際立っていました。聴いてみるまではHP1000やDR150の方が良いだろうと思っていたのですが、完全に予想を裏切られました。
 予算や好みに合わせて選んでください。













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