第72回 Different Trains/Steve Reich「Different Trains」より

 Steve Reichはアメリカのユダヤ人作曲家です。ミニマル・ミュージック(パターン化された音を反復させる音楽)の代表的なアーティストとして知られています。
 今回取り上げるのは1988年発表のアルバム「Different Trains」の1〜3曲目です。演奏はKronos Quartet(アメリカの弦楽四重奏団で、ジャンルとしては現代音楽)で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの他に汽笛や人間の声が使われています。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「ミニマル音楽としての心地良さと、劇的音楽としてのドラマチックさがほしいです。 重視したいのは抽象的な表現で申し訳ございませんが高揚感・疾走感・暗示的・陶酔感などです。汽笛やインタビューで録音された古い肉声が魅力的に聴こえると嬉しいです」とのことです。基本的にはフィーリングになるでしょうが、あまり低域の量の少ないものや響きがあっさりしているものは合わないと思われます。


・1台目 DT231PRO(beyerdynamic)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。どの条件についても悪くないと思いますが、特に暗示的・陶酔感といったフィーリングの部分、それから汽笛や古い肉声が豊かな空気感を伴ってそれらしく聴こえる点が魅力です。疾走感については難しいところですが、今回の曲における疾走感は切れや制動によるものではなくグルーヴ感やミニマル音楽としての心地よさに関連する部分が大きいのではないかと思います。その意味では、DT231PROはなかなか良いと思います。DT231PROは曲によっては高域が痛かったりして聴き疲れが酷いことも多いのですが、今回の曲ではまったくと言って良いほど気になりません。
 他にはATH-TAD500、K121studio、PortaPro、UR/40等で聴いてみました。ATH-TAD500は悪くないのですが、汽笛がやや悪目立ちするような印象を受けます。K121studioはミニマル音楽としての心地よさとか古い肉声が魅力的と言うよりは、曇っていてただ何となく鳴らしているような感じです。PortaProは悪くないのですが、低域の量が多く迫力があるせいか暗示的や陶酔感と言うにはやや押し付けがましいように感じられます。UR/40は全体的に良くもなく悪くもなくといった印象です。
 不満点は特にありません。全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 DTX900(beyerdynamic)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。1台目と近い傾向ですが、やや音場が広く骨太な印象です。どちらが上と言うよりは好みの問題になってくると思われます。
 他にはMDR-1R、MUSIC SERIES ONE、SRH840、T50RP等で聴いてみました。MDR-1Rは低域の量が多すぎて明らかにおかしいです。MUSIC SERIES ONEは悪くないのですが、暗示的や陶酔感と言うにはやや明るすぎるように感じられます。SRH840は一つ一つの音をしっかりと力強く鳴らすような感じで暗示的や陶酔感とは違った印象を受けます。T50RPは難しいところです。暗示的・陶酔感といったフィーリングの部分では魅力的に感じられる面もあるのですが、一方で曇っていてただ何となく鳴らしているような印象を受けたりします。
 不満点は特にありません。次は色々聴いてみて選ぶしかないと思います。

・3台目 HD650(SENNHEISER)
 色々聴いてみた結果これになりました。最初に書いた条件についてはかなり満たしているように感じられます。基本的に1、2台目と近い傾向ですが、音場は2台目より更に広く、癖が小さくまとまりがあって聴きやすい印象です。この癖が小さくまとまりがあるという点が、ミニマル音楽としての心地良さや陶酔感に寄与しているように感じられます。汽笛や古い肉声についてもそれらしく聴こえる傾向だと思います。
 不満点は特にありません。

・4台目 DT880(beyerdynamic)
 更に色々聴いてみた結果これになりました。最初に書いた条件についてはすべてしっかり満たしています。これも1〜3台目と近い傾向です。3台目と比べると若干あっさりしていて個々の音が目立つ印象です。とは言え、それでも癖が小さくまとまりがあって聴きやすい傾向ですし、どちらが上と言うよりは好みの問題になってくると思われます。
 他にはDT990PRO、PRO900、PS500、SRH1840等で聴いてみました。DT990PROは悪くないのですが、個々の音のエッジがきついせいか全体としてややうるさい感じになってしまいます。PRO900は低域の量が多すぎる上に癖が強いため明らかにおかしいです。PS500は劇的音楽としてのドラマチックさという意味で独特の魅力があるようにも感じられますが、低域の量が多すぎる点が気になります。SRH1840はややあっさりしていて暗示的・陶酔感といったフィーリングの部分が物足りない感じです。

・5台目 SE535(SHURE)
 最初に書いた条件を最も満たしているように感じたので選びました。特に暗示的・陶酔感といったフィーリングの部分、それから汽笛や古い肉声の質感が魅力です。色々と聴いてみたのですが、HP-TWF11Rは一つ一つの音をしっかりと力強く鳴らすような感じで暗示的や陶酔感とは違った印象を受ける、IE8は悪くないものの低域の量がやや多すぎる、Image X10は悪くないもののSE535と比べると汽笛や古い肉声の質感で見劣りする等の不満がありました。
 他にはSE215とSHE9700が良かったです。どちらもやや低域の量が多めではありますが、最初に書いた条件をそれなりに満たしています。


 今回はフィーリングによる部分が大きかったので、正直あまり参考にならないかもしれません。
 ヘッドホンアンプはHD-1L Limited Edition(RC1)が良いと思います。今回の探索条件を総合的に見た上でのフィーリングです。次点はDR.DAC2です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


試聴は下のamazonのページで。













戻る





TOP > 曲別HP探索2 > 第72回