第30回 情熱大陸(live imageヴァージョン)
  /葉加瀬太郎「情熱大陸 葉加瀬太郎セレクション」より

 葉加瀬太郎はヴァイオリニスト・作曲家です。ヴァイオリニストと言っても、クラシックよりはヒーリングやニューエイジに分類されることが多い印象です。
 今回取り上げるのは2002年発表のアルバム「情熱大陸 葉加瀬太郎セレクション」の15曲目です。ドキュメンタリー番組「情熱大陸」オープニング曲のliveバージョンです。このバージョンでは、オリジナルでも共演しているバンドネオン奏者の小松亮太に加えて、フランスのユニットDeep Forestがキーボードで参加しています。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「迫力があり音場や臨場感が良いliveに近い感じをお願いしたいです」とのことです。迫力は音の圧力や低域の量があると有利ですが、こもり感や過剰な低域があるとliveに近い感じにはなりません。そのあたりを聴きながら選んでいきたいと思います。


・1台目 SHP8900(PHILIPS)
 前述の条件を最も満たしているように感じたので選びました。厚みや低域の量が十分あるためある程度迫力がありますし、音場は広めで前方定位する傾向なのでliveに近い印象です。パーカッションの抜けが良い点もliveに近いと感じる一因になっていると思います。
 他にはHP-535、MDR-XB700、RH600、SE-M870、SHP2500等で聴いてみました。HP-535は最後までSHP8900と迷いましたが、SHP8900の方が曇りがない上に制動が良く迫力があるように感じられたのでそちらにしました。MDR-XB700は音場は悪くないのですが、低域の量が多すぎて曇りが気になりますし、メリハリにも欠けます。RH600はパーカッションの抜けが良く全体的にliveに近い感じではあるのですが、耳の近くで音を鳴らす感じで音場はliveに近いとは言いがたいです。SE-M870は迫力はあるのですが、いかにもヘッドホンで鳴らしているという感じでliveに近い音場ではありませんし、パーカッションの抜けが不満です。SHP2500はそれほど悪くないのですが、ウォーム過ぎてliveとは違う感じです。
 不満点は特にありませんが、全体的に少しずつ改善できれば良いのではないかと思います。

・2台目 RP-21(Equation Audio)
 1台目とは全然違いますが、色々と聴いてみた結果これになりました。迫力と臨場感があり、自然と体が動くようなノリの良さがあります。特に前半盛り上がっていくところで勢いが感じられます。この点については1台目より良いと思います。密閉型にしてはパーカッションの抜けも良いです。ただし、音場についてはliveに近い感じではありません。
 他にはDR150、K530、SE-A1000、SW-HP10等で聴いてみました。DR150は今回の曲を単に楽しみたいだけなら悪くないと思いますが、色々な意味でliveに近い感じではありません。K530はliveに近い感じと言うよりはむしろlive録音なのにスタジオ録音のような感じになってしまいます。SE-A1000は全体としては1台目に近い印象ですが、音場が前方定位する傾向でない点は違います。SW-HP10はイージーリスニング的に聴くなら良いと思いますが、最初に書いた条件とはあまり合わない印象です。
 不満点と言うか希望は、1台目と2台目の良いとこ取りをしたいということです。

・3台目 SR-325i(GRADO)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。全体的な印象としては2台目よりも1台目に近い傾向ですが、臨場感があり自然と体が動くようなノリの良さがあるという点では2台目に近いです。パーカッションの抜けが良い点や、音色が明るく切れが良いもののそれほど不自然な音ではない点も長所だと思います。2台目のような密閉型特有の圧力に基づく迫力はありませんが、メリハリや生楽器らしさによって別の意味で迫力が感じられます。音場は前方定位せず耳元で鳴らす感じでliveに近いとは言えませんが、そのおかげで臨場感が出ているとも言えます。
 不満点は音場がliveに近くない点ですが、これを改善してなおかつ他の点を維持するのは無理だと思います。

・4台目 DT860(beyerdynamic)
 3台目に近い傾向です。明るい、臨場感がある、パーカッションの抜けが良いといった共通点があります。最大の違いは音場だと思いますが、これはどちらが良いと言うよりも好みだと思います。DT860の方がやや平面的で音像が大きい印象です。
 他にはDT990 Edition 2005、HD800、HP-DX1000、PFR-V1、RS-1等で聴いてみました。DT990 Edition 2005は個別のポイントについて見ていくとそう悪くないのですが、低域がもっさりしている点がliveらしさを打ち消してしまう印象です。HD800は音場はliveに近いですし切れが良い点も魅力なのですが、遠くから冷静に鳴らすせいか臨場感に欠けます。HP-DX1000は今回選んだものと比べると一歩引いたところで鳴らしているようなところが迫力不足に繋がっていますし、音色の癖が気になります。PFR-V1は音場はliveに近いものの迫力や臨場感には欠けますし、HP-DX1000同様音色の癖が気になります。RS-1はSR-325iと迷ったのですが、SR-325iの方がメリハリがあるぶん若干迫力があるように感じられたのでそちらにしました。単にどちらが好きかということなら、RS-1を挙げる人も多いと思います。

・5台目 HP-FX500(Victor)
 3、4台目と近い傾向です。明るい、臨場感がある、パーカッションの抜けが良いといった共通点があります。メリハリや生楽器らしさに基づく迫力やliveらしさがある点も似ています。色々と聴いてみたのですが、HiDefJax AcousticSteelは音場の広さは良いもののHP-FX500と比べるとメリハリや生楽器らしさに基づく迫力や臨場感に欠ける、HP-TWF11Rは低域の量に基づく迫力はあるものの曇りすぎでliveらしさに欠ける、Turbine Pro Copperは音像がシャープなせいで各楽器の間に距離がありすぎる感じで臨場感に欠ける等の不満がありました。
 他にはAH-78とIE-1が良かったです。カナル型は過剰な低域でliveらしさが殺されることが多い印象ですが、この2機種はそういうことがなく比較的臨場感があります。


 今回はliveに近い感じという条件で探索したのでこのような結果になりましたが、今回の曲の内容と録音から考えると心地よさを求めたり聴き疲れを嫌ったりする人も多いと思います。その場合にはまったく違う結果になりますので、いつものことですがご注意ください。
 ヘッドホンアンプはHead Amp 2/MkII SEが良いと思います。余計な味付けはせず切れが良いため、liveらしさがそのまま出ます。次点はHD-1L Limited Edition(RC1)です。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。













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