第3回 DODGE THE DODO/e.s.t.「SOMEWHERE ELSE BEFORE」より

 e.s.t.はスウェーデンのジャズピアノトリオです。ピアノトリオなので、メンバーはピアノ、ベース、ドラムスです。
 今回取り上げるのは2001年発表のアルバム「SOMEWHERE ELSE BEFORE」の2曲目です。e.s.t.の曲の中でもかなり人気のある曲だと思います。形式上はピアノトリオですが、実際に曲を聴いてみると旧来のピアノトリオの曲とは違った感じで、ロック的な要素があるようにも感じます。
 「どういう風に聴きたいか」「どういう点を重視するか」については、「ベースやピアノのアタック感重視」とのことです。それ以外には、普通にジャズとの相性が良いもので、この曲のある種のカッコ良さを出してくれるものが良いと思います。


・1台目 CPH7000(Classic Pro)
 アタック感重視で選びました。ただ、アタック感があると言っても密閉型特有の圧迫感のある感じやこもりを伴う感じではないですし、低域の量も少ないので、あまりアタック感がないと感じる人もいるかもしれません。アタック感以外に良い点としては、切れが良い点、ピアノに実体感がある点、生楽器らしさがしっかりと感じられる点が挙げられます。ただし、低域の量が足りず全体のバランスは良くありませんし、普通の意味で今回の曲との相性を考えるとあまり良くないと思います。
 アタック感をできるだけ残しつつその辺りを改善しようとするとHX-5000やSHL9600が良かったですが、どうしてもアタック感は犠牲になってしまう印象です。アタック感は度外視して全体のバランスや普通の意味での相性の良さを考えると、SE-M870やDT231PROが良かったです。
 不満点は、低域の量が足りない点です。

・2台目 K181DJ(AKG)
 1台目の不満点を踏まえて選びました。1台目と比べると低音の量が非常に多いですし、密閉型特有の圧迫感がある感じで1台目ではアタック感に不満を感じた人でも満足できるのではないかと思います。DJ用としては珍しく生楽器らしさが感じられる点も、今回の曲を聴くには長所だと思います。
 他にはATH-ES7、MDR-7506、RP-21、Studiophile Q40のアタック感もなかなか良かったです。切れが欲しいならMDR-7506、味付けの少ないモニター調が良いならStudiophile Q40という選び方が良いのではないかと思います。
 それ以外にも色々聴いてみたのですが、どうもDJ用ヘッドホンはどれもそこそこアタック感があるように思います。
 不満点は、多少違和感がある点です。

・3台目 HD25-1(SENNHEISER)
 2台目の不満点を踏まえて選びました。2台目と比べて地味な音ですが、低域が過剰ではなくバランスが良いですし、それ以外の点についても違和感が小さいです。アタック感は同等かそれ以上です。更に、この曲のある種のカッコ良さがしっかり感じられるように思います(この点はセンスの問題もあるので個人差はあるでしょうが)。
 不満点は、音場が狭い点、圧迫感で聴き疲れする点です。ただし、今回の曲について特に音場の広さが重要とは思いませんし、圧迫感で疲れるのはアタック感があれば仕方がない部分もあると思います。

・4台目 HP-DX1000(Victor)
 3台目の不満点を改善するのは聴くまでもなく困難なのは分かっていましたが、できる範囲で探した結果これになりました。
 3台目と比べると音場が圧倒的に広いですし、聴き疲れもしにくいです。ただ、どうしてもアタック感は犠牲になってしまいます。全体的な印象としてはやや明るめの音で、どちらかと言うと3台目よりは2台目に近いように思います。2台目で感じたような違和感がある点も似ています。2、3台目と比べて中盤のピアノソロが綺麗で澄んでいる点は良いと感じました。
 他にはedition7も良かったですが、時期的に曲別HP探索で選んで良いか微妙なので外すことにしました(曲別HP探索2で選択するヘッドホンは「本サイトでレビューが公開されているものの中から、その時点で入手可能なものであるか、入手できなくても音の似ている後継機が出ているもの」という条件に抵触)。

・5台目 m5(FUTURE SONICS)
 色々聴いてみましたが、オーバーヘッド型と比べると正直どれも大差ないような印象です。別にアタック感が無いというわけではなく、機種間の差が小さいという意味です。その中であえて選ぶなら、個人的にはm5だと思いました。総合的に見て今回の曲との相性はまずまずだと思いますが、低域はやや多すぎかもしれません。
 他にはCX95、ATH-CK7、CX300が良かったです。今回の曲をアタック感重視で聴く場合、価格差ほどの音質差はない印象です。
 余談ですが、私が所有していないものだとIE8はどうかな(聴いてみたい)と思いました。


 元々アタック感については密閉型の方が有利だと思ってはいましたが、今回アタック感重視で音楽を聴いてみてこの認識が間違っていないことを再確認しました。もっと言うなら、遮音性が高くこもり気味なものや、一般にロックとの相性が良いと言われているヘッドホンはアタック感がある傾向だと思います(もちろんイコールではありませんが)。ちなみに開放型ではATH-AD2000のアタック感が印象的でした。
 また、普通の意味での今回の曲との相性の良さとアタック感を両立させるのは難しいように思います。今回は要望どおりアタック感重視で選んだため、普通の意味での相性はあまり良くないヘッドホンも選ばれているように思います。アタック感ではなく普通の意味での相性の良さで選ぶなら、定番ですがやはりDT990PRO等beyerdynamicのヘッドホンが魅力的に感じられました。アタック感も悪くないと思います。
 ヘッドホンアンプは難しいです。単純なアタック感ならHD-1L Limited Edition(RC1)が良いように感じましたが、AT-HA2002は濃密さとエネルギッシュな鳴らし方でカバーし、Head Amp 2/MkII SEは切れでカバーするといった感じで、アタック感だけでなく総合的な相性まで考えるとヘッドホンによって最適なヘッドホンアンプは大きく変わってきそうです。なお、アタック感については私が所有していないものだとHeadRoomのヘッドホンアンプが良いのではないかと思います。
 今回の内容を参考に、好みに合わせて選んでください。


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