HP-S150

音質
 やや高音より。低域はソースによって鳴らし方がかなり変わるような印象。高域と比べると量が少ないが、中域と比べるとそれほど大きな差はない。どちらかと言うと締まっている傾向。中低域は少なめ。中域は低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、やや癖がある。中域の中でも低めの音は問題ないのだが、高めの音は張り出すような感じで目立つことがある。中高域から高域は量が多く、太く金属的で目立つ。
 分解能はいまいちだが、価格の割には良い。ただ、一つ一つの音の微細な描写をもう少し粗なくこなしてくれればなお良かっただろう。音場感は小型の耳のせサイズなので良くはないが、ある程度の明確さはある。原音忠実性はいまいちだが、原音の粗や生っぽさはそれなりに感じられる。エッジはややきつく、多少聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろやや痛い。
 明瞭さはなかなか良いが、これは中低域の減衰と中高域の隆起によって得た不自然なもの。鮮やかさはそれなり。厚みは普通からやや薄め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。ヴォーカルは擦れがやや気になるが、この価格としては致命的な癖や欠点はない。明るく元気でノリが良い傾向。粗があるという意味で繊細さには欠ける。響きは適度からややあっさり。
 弦楽器は繊細さにしろ心地よさにしろ不満だが、ヴァイオリンを明るく聴きたいならそれほど悪くない。金管楽器は高く鮮やかで、力強さもある程度はある。なかなか楽しめるが、やりすぎな感はある。打ち込み系の音の表現はそれなり。音の質感の相性や明るさで聴かせるタイプ。
 ポップスや金管楽器を気軽に聴きたいときには悪くない機種。

装着感
 良好。側圧は普通。ヘッドバンドは剥き出しのプラスチックだが、側圧と軽量さのおかげで頭頂部が痛くなったりはしない。ずれやすいということもない。
 イヤーパッドは耳のせサイズで、上下方向の角度調節ができないが、特に問題はないように感じる。材質はレザータイプの人工皮革。それなりに柔らかく、耳が痛くなりやすい等の不満はない。

その他
 遮音性、音漏れ防止は良好。この点は見た目から想像されるより良いと感じる人が多いだろう。
 作りは価格が価格だけに良くはないが、それでもイヤーパッドがレザータイプの人工皮革でそれなりの質感だし、可動部も問題なく動く。価格を考えれば十分なでき。デザインは少し変わっている印象を受けるが、基本的にはシンプルで良い。スイーベル機構なのだが、普通とは違いイヤーパッドが手前に来る方向に回る。なお、初期不良(左右の音量違い)が多く、音質の個体差も大きい模様。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3.5mm・厚さ約1.5mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。イヤーパッドのサイズは、外周58mm×50mm、内周26mm×24mm、深さ10mm。

付属品
無し



参考
メーカー製品ページ

不定期コラム『第57回 ヘッドホンの個体差』

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-ES7
ATH-ES7はややドンシャリ、HP-S150はやや高音より。低域はATH-ES7の方が重心が低く厚みもあるため、かなり存在感がある。量もATH-ES7の方が多い。中域はHP-S150の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、張り出すような癖が気になる。中高域はHP-S150の方が多い。高域はどちらも明るく金属的である点は似ているが、ATH-ES7の方が線が細く粗がない。分解能はATH-ES7の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ多少差がある。音場感はATH-ES7の方が広く明確。原音忠実性はATH-ES7の方がやや上。周波数特性上の癖のなさや原音の粗や生っぽさが感じられる度合いは大差ないのだが、原音の実体感に大きな差がある。エッジはHP-S150の方がややきつく聴き疲れしやすい。明瞭さはHP-S150の方がやや上、音の鮮やかさはATH-ES7の方がやや上。厚みはATH-ES7の方がかなりある。温かみは基本的にはほぼ互角だが、低域が多い分ATH-ES7の方が良いように感じられることがある。ヴォーカルの艶っぽさもほぼ互角だが、HP-S150の方が擦れが気になる点がマイナス。ATH-ES7の方が低域の量感や音の厚みに基づくしっかりした迫力やノリの良さがある。ATH-ES7の方が粗がないという意味で繊細。響きはほぼ同レベル。弦楽器はATH-ES7の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-S150の方が明るく、張り出すように目立つ。打ち込み系の音の表現はATH-ES7の方がうまい。低域の量感、音の厚み、ダイナミックな鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはATH-ES7、ATH-ES7では低域が多すぎるならHP-S150。

ATH-ON3
ATH-ON3は高音よりのかまぼこ、HP-S150はやや高音より。低域はソースによってかなり鳴らし方が変わる印象だが、基本的にはHP-S150の方がやや量が多く重心も低い。中域はどちらも多少癖がある。中域の中でも低めの音ではATH-ON3が張り出すような感じで目立つことがあり、逆に高めの音ではHP-S150の方が張り出すような感じで目立つことがある。高域はHP-S150の方が量が多く、太く金属的で目立つ。分解能は大差ないが、どちらかと言えばHP-S150の方が上。音場感はHP-S150の方がやや広く明確。原音忠実性は微妙。どちらも周波数特性にやや癖がある。原音の粗や生っぽさはHP-S150の方が感じられる。エッジはHP-S150の方がややきつく、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHP-S150の方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-S150の方が上。厚みはHP-S150の方がある。温かみはソースによって違う。中高域から高域が強いソースではHP-S150は高域が明るすぎて温かみどころではない印象になるが、そうでなければ低域の量が多いぶん温かみが感じられる。ヴォーカルの艶っぽさは微妙。ATH-ON3の方がスモーキー、HP-S150の方が擦れが気になる。HP-S150の方が明るく元気でノリが良い。粗がないという意味でATH-ON3の方が繊細。響きはHP-S150の方がやや豊か。弦楽器はATH-ON3の方が粗がなく安心して聴けるが、生楽器らしさが欲しいならHP-S150の方が良い。金管楽器はHP-S150の方が鮮やかかつ力強い。打ち込み系の音の表現はHP-S150の方がうまい。音の質感の相性や音の厚みで勝っている。使い分けるなら、高域が強く聴き疲れしても良いならHP-S150、そうでないならATH-ON3。

HP-NC80
HP-NC80はややドンシャリ、HP-S150はやや高音より。低域はHP-NC80の方がやや量が多くぼやけている。特に中低域はHP-NC80の方が量が多い。中域はHP-S150の方が高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。中高域から高域はHP-S150の方が明るく目立つ。分解能はHP-S150の方がやや上。音の分離で多少勝っている。音場感は、HP-NC80の方が広く、HP-S150の方が明確。原音忠実性はHP-NC80の方がやや上。周波数特性上の癖のなさに差がある。ただし、原音の粗や生っぽさはHP-S150の方が感じられる。エッジはHP-S150の方がきつく聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-S150の方が上。厚みはほぼ同レベル。厚みよりも、HP-S150の方が締まった音である点が気になる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP-NC80の方が上。HP-S150の方が明るく元気でノリが良い。HP-NC80の方が粗がないという意味で繊細。響きはHP-NC80の方がやや豊か。弦楽器はHP-NC80の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-S150の方が鮮やかで張り出すように目立つ。打ち込み系の音の表現はHP-S150の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、自然さや聴き疲れのなさ重視ならHP-NC80、明瞭さや明るさ重視ならHP-S150。

SHL9600
HP-S150はやや高音より、SHL9600はやや低音よりのかまぼこ。低域はSHL9600の方が重心が低く厚みもあるため、かなり存在感がある。量的にはSHL9600の方がやや多いという程度。中域はどちらも低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。HP-S150の方がやや高い音で目立つ傾向があるのだが、ソースによってはSHL9600の方が張り出すような感じで目立つ。高域はHP-S150の方がかなり明るく金属的で目立つ。分解能はSHL9600の方がやや上。一つ一つの音の微細な描写を粗なくこなしてくれる。音場感はSHL9600の方がやや広く明確。原音忠実性はSHL9600の方がやや上。周波数特性上の癖のなさに差がある。エッジはHP-S150の方がきつく、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHP-S150の方が痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-S150の方が上。厚みはSHL9600の方がある。温かみはソースによって違う。中高域から高域が強いソースではHP-S150は高域が明るすぎて温かみどころではない印象になるが、そうでなければ地味で堅実なSHL9600より遊びのあるHP-S150の方が温かみがあると感じることもある。ヴォーカルの艶っぽさはどちらもいまいち。HP-S150の方が擦れが気になる。SHL9600はソースによっては張り出すような癖が気になる。したがって、擦れが気になりにくいソースではHP-S150の方が良い傾向があり、張り出すような癖が気になりにくいソースではSHL9600の方が良い傾向がある。HP-S150の方が明るく派手だが、SHL9600の方が低域の量感や音の厚みに基づくしっかりした迫力やノリの良さがある。SHL9600の方が粗がないという意味で繊細。響きはHP-S150の方がやや豊か。SHL9600の方が安定感のある鳴らし方。弦楽器はSHL9600の方が安心して聴けるが、ヴァイオリンを明るく聴きたいならHP-S150の方が良い。金管楽器はHP-S150の方がかなり高く鮮やかだが、やりすぎな感がある。打ち込み系の音の表現はSHL9600の方がうまい。音の質感の相性だけならHP-S150の方が良いくらいなのだが、低域の量感、音の厚み、ダイナミックな鳴らし方等で逆転する印象。使い分けるなら、高域が欲しいならHP-S150、低域が欲しいならSHL9600。あるいは、基本的にはSHL9600、SHL9600では暗いとか面白みに欠けるという不満があるならHP-S150

ZHP-005
HP-S150はやや高音より、ZHP-005は低音より。低域はZHP-005の方がかなり量が多く、薄く曇ったような質。締まりや制動はHP-S150の方が良い。中域は、HP-S150の方が高い音で低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。高域はHP-S150の方がやや量が多く、高く鋭い音を鳴らす。分解能はHP-S150の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろHP-S150の方が上。音場感はZHP-005の方がやや広いが、それでいて頭内定位が気になりやすい。原音忠実性はHP-S150の方が若干上。どちらも周波数特性に癖があるが、原音の粗や生っぽさはHP-S150の方が感じられる。エッジはHP-S150の方がかなりきついが、ZHP-005はこもり感や妙なハウリングのような感じが原因で疲れることがあるため、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろHP-S150の方がかなり痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-S150の方が上。厚みはZHP-005の方がややある。温かみは低域の量が多く曇っている分ZHP-005の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはHP-S150の方がやや上だが、HP-S150の方が擦れがかなり気になるし、スモーキーな感じを好むならZHP-005の方が良いだろう。HP-S150の方が明るく元気でノリが良い。切れやスピード感でも勝っている。ただし、ZHP-005の方が低域の量に基づく迫力がある。響きは、低域はZHP-005の方が豊か、高域はHP-S150の方が豊か。HP-S150の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はHP-S150の方が生楽器らしさが感じられて良いが、粗がないという意味でZHP-005の方が心地よい。ヴァイオリン等の澄んだ感じを楽しみたいならHP-S150の方がかなり良い。金管楽器はHP-S150の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はHP-S150の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、基本的にはHP-S150、HP-S150では低域の量が足りないとかエッジがきついという不満があるならZHP-005。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生



     










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 12Hz〜23kHz 105dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
68g 30mm 1.2m 両出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 4 4 4 4 3 均(高) 1500円

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公開日:2009.1.9