HP-FX77

音質
 低音よりのドンシャリ。低域はかなり量が多いが、厚みや圧力は程々といった感じ。中域はやや低めの音で、低域の量に埋もれる印象。高域はそれなりに高く、量も必要量あるが、質的にはあまり良いとは言えない。
 分解能は価格の割に良いように感じるが、低域の量が多すぎて良さが発揮されないことが多い。音場感はごく普通。良くはないが、価格を考えれば特別悪いわけではない。原音忠実性は良くない。低域の量が多すぎな上、高域もシャリつく。ただ、その点を除けば音そのものは極端に不自然ということはない。エッジはややきつめだが、それほど聴き疲れしないレベル。むしろ低域の多いソースで、低域の量が多すぎてこもり感のせいで疲れることの方が問題。
 明瞭さ、音の鮮やかさ、温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはすべてそれなりで、良くもなく悪くもなくといった印象。そういう意味ではバランスが良いのかもしれない。厚みは普通。ノリが良いわけでも繊細なわけでもないが、低域の量が多いためどちらかと言えばノリが良い印象を受ける。響きはやや豊かで、こもり感がかなり気になる。
 弦楽器は柔らかい低域があるためそれなりに心地よいのだが、繊細さが足りず、特にヴァイオリン等の済んだ感じを楽しみたいとき等は合わない。金管楽器はどこか鮮やかさや力強さが足りないように感じる。打ち込み系の音の表現は悪くはないのだが、音に締まりがなく圧力も足りない印象。
 カナル型全般に言えることではあるが、この機種は特に装着状態によって音が変わりやすい。浅く装着すると低域の量が多く、深く装着すると少ない。上記の内容は一般的な装着方法と思われる浅く装着したときのもの。

装着感
 良好。カナル型だが、イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプではないので装着しやすいし、耳の穴が痛くなりにくい。特にずれやすいわけではないが、少しずれただけでも音がかなり変わるため注意が必要。重い、コードが顔に当たりやすい等の不満はない。
 イヤーピースの材質はシリコン。3サイズ付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。ただし、遮音性はカナル型にしては良くない。
 デザインは悪くないが、作りは写真で見るよりかなり安っぽい。イヤーピースが一般的なものよりも薄く、少しずれるだけでガサゴソと音がすることがある。タッチノイズも大きい。
 プラグは金メッキのL型ミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は約2mm、やや硬く扱いづらい。

付属品
イヤーピース3種類
0.7m延長コード



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
AH-C700
どちらも低音よりのドンシャリ。低域は、柔らかくぼやけていて量がかなり多い点は似ているが、HP-FX77の方がやや量が多い。中域はAH-C700の方がかなりはっきり聴こえてくる。これは低域の量の問題よりも、基本的な能力の差が大きいだろう。高域はAH-C700の方がやや控え目で粗のない鳴らし方。分解能及び音場感はAH-C700の方が上。音の分離にかなり差がある。音場感はAH-C700の方が立体的で明確。原音忠実性はどちらも良いとは言えないが、どちらかと言えばAH-C700の方が上。HP-FX77の方がエッジがきつくやや聴き疲れする。明瞭さはAH-C700の方が上。音の鮮やかさはほぼ互角。厚みはAH-C700の方が上。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリが良いが、AH-C700の方が厚みや圧力で勝っているため総合的に見てノリの良さで勝っているし、粗の少ないしっかりした鳴らし方という点で繊細でもある。響きはどちらも豊かでほぼ同等レベル。弦楽器はAH-C700の方が粗がなく心地よい。金管楽器はHP-FX77の方が派手だが、AH-C700の方がしっかり芯の通った丁寧な鳴らし方。打ち込み系の音の表現はAH-C700の方がうまい。使い分けるなら、基本的にはAH-C700、粗があっても良いから派手さを求めるならHP-FX77。

BA-PC15
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はBA-PC15の方が若干量が多く低い音。中域はHP-FX77の方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はHP-FX77の方が高い音で量も多い。分解能、音場感、原音忠実性すべてほぼ互角レベルだが、どちらかと言うとHP-FX77の方が良いように感じる。エッジのきつさはほぼ同等だが、BA-PC15の方が圧力があり聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-FX77の方がやや上。厚みはBA-PC15の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等だが、どちらかと言えばHP-FX77の方が良い。BA-PC15の方がノリが良い。響きはHP-FX77の方が豊か。BA-PC15の方がやや締まっていて、暗めの音調。弦楽器はHP-FX77の方が心地よいが、多少癖があっても澄んでいて生っぽい音が欲しいならBA-PC15の方が良いだろう。金管楽器はHP-FX77の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はほぼ互角だが、厚みや圧力が欲しいならBA-PC15、明るさが欲しいならHP-FX77といった感じ。得意分野はBA-PC15がロック、HP-FX77がポップス。使い分けるなら、厚みや圧力が欲しいならBA-PC15、明るさや高域の質・量を求めるならHP-FX77。

CX300
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらもかなり量が多いが、CX300の方が若干タイトで制動のかかった低域。そのおかげで、中域もCX300の方が低域に埋もれず聴こえてくる。高域は、量や音の高さはかなり近いが、CX300の方がシャリつかない。メーカーが違う割には似た音を鳴らす。分解能及び原音忠実性はCX300の方がやや上。音場感はほぼ互角。エッジのきつさはほぼ互角。CX300は音の圧力で聴き疲れする一方、HP-FX77はこもり感で聴き疲れする。ただし、どちらも使用に耐えないほどではない。明瞭さ、音の鮮やかさはCX300の方がやや上。厚みはCX300の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。ノリの良さにしろ繊細さにしろ、CX300の方がやや勝っているように感じる。響きはほぼ互角だが、どちらかと言えばHP-FX77の方が豊か。CX300の方がしっかりと安定した鳴らし方をしてくれる。弦楽器はCX300の方が繊細。金管楽器はCX300の方が芯の通った音で力強い。打ち込み系の音の表現はCX300の方がうまい。HP-FX77は低域の量だけといった感じなのに対して、CX300は音の厚みや圧力も十分ある。得意分野はどちらもポップス。ほとんど何を聴くにしてもCX300の方が若干良いように感じる。下手に似ているだけに、どちらか片方持っていれば十分の機種。

DTX50
どちらも低音よりのドンシャリ。低域はどちらもぼやけていて量が多い点は似ていて基本的には質・量ともに近いのだが、DTX50の方が圧力があり、特にベースやバスドラが妙に目立つ。中域はどちらも低音の量に負けて控え目。高域はHP-FX77の方がやや量が多く、明るい表現。分解能及び原音忠実性はほぼ同等。音場感はDTX50の方が耳の近くで鳴らす感じ。エッジのきつさはほぼ互角だが、DTX50の方が圧力があり聴き疲れしやすいように感じる。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-FX77の方がやや上。厚みはDTX50の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。DTX50の方が圧力や勢いがありノリが良いように感じる。響きは、低域はDTX50の方が豊か、高域はHP-FX77の方が豊か。こもり感はDTX50の方が酷い。弦楽器はDTX50の方が心地よいが、どちらが良いと感じるかは好みの差だろう。金管楽器はHP-FX77の方が明るい表現、DTX50の方が力強い。打ち込み系の音の表現は、低域の質はDTX50の方が良いが、中高域はHP-FX77の方が明るくて良い。使い分けるなら、低域の質感重視ならDTX50、高域の明るさ重視ならHP-FX77。

E2c
E2cはかなりフラット、HP-FX77は低音よりのドンシャリ。低域はHP-FX77の方がかなり量が多い。中域はE2cが癖がなくはっきり聴こえてくるのに対して、HP-FX77は低域に埋もれる上やや低めの音。高域はHP-FX77の方が高い音で、シャリつくのが気になる。分解能、音場感、原音忠実性すべてE2cの方が上。特に原音忠実性は雲泥の差。HP-FX77の方がエッジがきつい上、こもり感のせいで聴き疲れする。明瞭さはE2cの方が上、音の鮮やかさ、厚みはほぼ互角。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはどちらもあまり感じられない。E2cがモニター的な冷静な鳴らし方であるのに対して、HP-FX77は冷静さは感じられない。響きはHP-FX77の方が豊か。弦楽器、金管楽器ともにE2cの方が良い。HP-FX77はとにかく原音と違いすぎる。打ち込み系の音の表現はE2cの方がうまい。HP-FX77は低域の量だけという印象だが、E2cはそれなりに切れやスピード感がある。使い分けるなら、基本的にはE2c、よほど低域の量や刺激が欲しいときだけHP-FX77。

EG-ER50
どちらも低音よりのドンシャリだが、EG-ER50の方がフラット。低域はHP-FX77の方が量が多い。中域は、EG-ER50は低域の曇りに覆われる感じ、HP-FX77は低域の量に埋もれる感じ。高域はHP-FX77の方が若干高く、目立つ。分解能はHP-FX77の方が上。音場感、原音忠実性はほぼ互角だが、どちらかと言えばHP-FX77の方が良い。HP-FX77の方がややエッジがきつく、こもり感も気になるため聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-FX77の方がやや上。厚みはそれほど差がないが、どちらかと言えばHP-FX77の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリの良さ・繊細さ共に不満があるが、HP-FX77の方がノリが良い。響きはHP-FX77の方がやや豊か。弦楽器はHP-FX77の方が繊細。金管楽器はほぼ互角だが、どちらかと言えばHP-FX77の方が鮮やか。打ち込み系の音の表現はHP-FX77の方がうまい。EG-ER50は低域の量感や明るさがかなり不満だが、HP-FX77はそれなりに良い。得意分野はEG-ER50がロック、HP-FX77がポップス。使い分けるなら、こもり感や聴き疲れを嫌うならEG-ER50、それ以外はHP-FX77。

HP-FX300
HP-FX300はややドンシャリ、HP-FX77は低音よりのドンシャリ。低域はHP-FX77の方がやや低い音で量も多い。中域はHP-FX300の方がやや高い音ではっきり聴こえてくる。高域はHP-FX300の方がやや高い音で量も多い。この2機種を比べた場合、HP-FX300の方が高音よりと言える。分解能はHP-FX300の方がやや上。単純に細かい音まで聴こえる。音場感は広さ・明確さともにほぼ同レベルだが、HP-FX300の方が若干明確か。原音忠実性はHP-FX300の方が上。周波数特性上の癖のなさだけでなく、原音の粗や生っぽさが感じられる度合いも違う。エッジのきつさはほぼ同レベルだが、HP-FX300は中域がキンキンして聴き疲れすることがあるのに対して、HP-FX77は低域が出すぎで疲れることがある。明瞭さ、音の鮮やかさはHP-FX300の方が上。厚みはほぼ同レベル。温かみは低域が出る分HP-FX77の方が多少感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはソースによって異なる。HP-FX300でキンキンした感じが出ないものならHP-FX300の方が良いが、キンキンした感じが出るものはHP-FX77の方が良い。HP-FX300の方が明るく元気が良い。響きはほぼ同レベルだが、HP-FX77の方がこもり感が気になる。HP-FX300の方がやや硬質で澄んだ音。弦楽器はHP-FX300の方が生楽器らしさが感じられて良い。金管楽器はHP-FX300の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はHP-FX300の方がやや良い。明るく元気が良い。使い分けるなら、基本的にはHP-FX300、よほど中域のキンキンした感じが気になるならHP-FX77。

m5
どちらも低音よりのドンシャリ。低域は量的にはあまり大きな差はないが、m5の方がしっかり低い音を鳴らしてくれるし、厚みもある。中域はどちらも低域の量に負けるが、m5の方がやや高い音で低域と繋がっていないような感じがして、はっきり聴こえてくる。高域はm5の方がやや高く鋭い音を鳴らす。分解能及び原音忠実性はm5の方が上。音の分離にしろ微細な描写にしろ上。原音の粗や生っぽさも感じられる。音場感はあまり大きな差はないが、m5の方が明確。m5の方がややエッジがきつく聴き疲れする。明瞭さ、音の鮮やかさはm5の方が上。厚みもm5の方がある。温かみはHP-FX77の方がやや上、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ同等。m5の方がノリが良い。響きはHP-FX77の方がやや豊か。m5の方が明るく、音の輪郭がはっきりしている。弦楽器は、心地よさという点ではさほど差はないが、m5の方が繊細。特にヴァイオリンの澄んだ感じ等を楽しみたいならm5の方がかなり良い。金管楽器は、音の高さは大きな差はないが、m5の方が鮮やかな鳴らし方。打ち込み系の音の表現はm5の方がうまい。音の厚み、質感が合う。使い分けるなら、基本的にはm5、m5では派手すぎると感じるならHP-FX77。

MDR-EX71SL
どちらもドンシャリだが、HP-FX77の方が低音より。低域はどちらもしっかり出るが、HP-FX77の方が量が多い。中域は、MDR-EX71SLの方が低域に埋もれずしっかり聴こえる。高域はMDR-EX71SLの方がやや高い音を鳴らす。分解能及び原音忠実性はMDR-EX71SLの方がやや上。音場感はほぼ互角。MDR-EX71SLの方がややエッジがきついが、HP-FX77は低域の量が多すぎるのとこもり感がひどいせいで疲れるため、聴き疲れはソースや聴く人によって違ってきそう。明瞭さ、音の鮮やかさはMDR-EX71SLの方が上。厚みはMDR-EX71SLの方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。どちらもノリが良いが、HP-FX77は低域の量だけで押しているように感じるのに対して、MDR-EX71SLは低域だけでなく厚みと切れも良い。ノリの良さにしろ繊細さにしろMDR-EX71SLの方が上のように感じる。響きはHP-FX77の方が豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はMDR-EX71SLの方が繊細かつ心地よい。金管楽器はMDR-EX71SLの方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はMDR-EX71SLの方が厚みや締まりがあり、うまいように感じる。得意分野はどちらもポップス。使い分けるなら、よほど低域の量が欲しいときだけHP-FX77、それ以外はMDR-EX71SL。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生






※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 5Hz〜25kHz 95dB -
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
4g 8.5mm 0.8m 両出し(ネックチェーン) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2.5 4 4 5 3 5 低(高) 2900円
※生産終了

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公開日:2006.7.30